第98話 練兵場の大雨(その2) ーパラグライダーで降り立つー
(前話からの続き)
さて、翌朝、雨はやんでいた。
しかし、大雨だったので、念のため、練兵場周辺をドローンとパラグライダーで調査した。
ああ、実は先週、魔法強化の際(第86話~第92話)、クラリス参謀総長にルイス少尉のパラグライダーからの弓の腕もチェックしてもらってたんだ。
クラリス参謀総長曰く、
「ルイスのパラグライダーからの弓の腕はまだまだ不十分だけど、
今後を期待して、地上からの支援が受けられる高度であれば、
練兵場から離れて飛行しても良いわ。」
と、了解を得ていたんだ。
話を戻そう。
フレッド副長は
「ドローンによる調査の結果、練兵場周辺の道路は冠水してます。」
と報告した。
そして、ルイス少尉はパラグライダーによる調査から戻ってくると、
「練兵場周囲だけでなく、王城に行く道のいくつかも冠水しているわ。」
と報告した。
ドーラはフレッド副長とルイス少尉に問うた。
「つまり、現状、
ロードバイクで練兵場から王城に行くことは不可能ということか?」
フレッド副長とルイス少尉は黙ってうなずいた。
ドーラは空を見上げ、ため息をついた。
「毎朝の日報が提出できないと言うことか。。。」
(第63話)
フレッド副長が困った表情でドーラに語り掛けた。
「分隊長(=ドーラ)、、、
問題は日報ではありません。。。」
ドーラは怪訝な表情で「どういうことだ?」とフレッド副長に問うた。
フレッド副長はドーラに答えた。
「たぶん、首都レワヅワも昨夜は大雨であったはず。。。
王城におられる騎兵大隊スタッフも、
我々が被災していないか心配しているかも知れません。。。
何らかの方法で安否報告が必要かと。。。」
ドーラはため息をついた。
「それもそうか。。。」
ドーラはフレッド副長に問うた。
「でも、どうする?
オフロードバイクでも王城へは行けぬのだぞ?」
僕はドーラに語り掛けた。
「ドーラさん、意見よろしいでしょうか?」
ドーラは僕に顔を向けた。
「許す。」
僕はドーラに意見を言った。
「冠水により地上からは王城へはいけません。
となると、空中から、、、
つまりパラグライダーでルイスさんに王城へ行ってもらい、
安否報告してもらうより他はないかと。。。」
僕は続けて課題を述べた。
「ですが、、、
王城内にパラグライダーが離発着できる場所が思い当たりません。。。
もう一つ、アン女王陛下が住まう王城に、
パラグライダーで乗り込んで良いのか、判断ができません。」
ドーラは腕を組んで考えた。
「うーん、、、その通りだ。。。
パラグライダーで直接王城に乗り込むのは、
母上が怒るであろうな。。。」
ドーラは腕を組んだまま、分隊メンバに語り掛けた。
「諸君、、、
王城周辺で、パラグライダーが乗り降り可能で、
かつ、パラグライダーで乗り降りしても支障のない場所ってないか?」
フレッド副長も腕を組んで考えたが、
「分隊長(=ドーラ)、
私は思い当たりません。。。」
そのほかのメンバも黙ってうなずいた。
しかし、ルイス少尉がニヤリと笑い、答えた。
「分隊長(=ドーラ)、問題ありません。
王城でパラグライダーで乗り降り可能で、
乗り降り支障のない場所に心当たりがあります。」
ドーラは露骨に嫌な顔を示した。
「ルイス、、、お前を信用して良いのか?」
ドーラだけでなく、分隊メンバは不信な表情でうなずいた。
ま、日頃のルイス少尉の行状があるからね。。。
ルイス少尉は周りを見渡し、頬を膨らまして答えた。
「大丈夫です! 信用してください!」
続けて、ルイス少尉はニヤリと笑い、ドーラに話しかけた。
「それに、、、
今の状況は、私しかいない。。。
そうでしょ?」
ドーラはため息をつくと、ルイス少尉に話しかけた。
「仕方がない。。。
ルイス、パラグライダーで王城へ行って、
分隊メンバおよび練兵場スタッフの安否報告と、
日報を提出せよ。」
ルイス少尉は直立し、「は!」と答えた。
ドーラはフレッド副長に顔を向け、話しかけた。
「フレッド、念のためだ。
練兵場の所長殿の所に伺い、
練兵場スタッフの安否確認と、練兵場の被害状況を教えてもらえ。」
フレッド副長も直立し、「は!」と答えた。
1時間後、ルイス少尉は練兵場の被害状況をまとめたメモと、ドーラの日報を持って、王城に向けて、パラグライダーに乗って離陸した。
自動車を用いても王城までは2時間弱の距離だが、空には障害物がないため約1時間で王城に到着した。
そして、、、王城内の参謀本部の屋上に着陸した。
後にルイス少尉は得意げに語った。
「参謀本部の屋上はフラットで細長いのよ。
だから、パラグライダーの離着陸には最適なのよ。」
だが、アン女王が住まう王城に、パラグライダーで乗り付けたことで大騒ぎになったらしい。
パラグライダーを知らない人がほとんどだったから、「女王陛下へのテロ攻撃です!」と叫んだ人もいたと言う。
(あきれた笑い)ははは。。。
パラグライダーを知っているクラリス参謀総長は、上空からパラグライダーが王城に近づいたときから、スタッフからの急報で慌てて、窓から娘のルイス少尉の姿を見つけた。
そして、ルイス少尉が参謀本部の屋上に着陸したのを見ると、屋上に駆けあがり、ルイス少尉を罵った。
「ルイス! バカ者!
畏れ多くも王城にそんなもの(=パラグライダー)で乗り付けるな!
しかも、(母親であるクラリス参謀総長が働く)参謀本部の屋上に、
乗り付けるとは何事か!」
しかし、着陸したルイス少尉は何食わぬ顔で答えた。
「昨日の大雨で練兵場は被災しており、その被災報告に参りました。
道路が冠水しており、空からしか被災報告の方法はございませんでした。」
クラリス参謀総長はルイス少尉を罵った。
「だったら、王城近くの別の建物に降りなさい!」
するとルイス少尉はクラリス参謀総長に耳元でささやいた。
「ダグ・ハミルトン騎兵連隊長閣下がまた逃げ出したら、、、
ここからパラグライダーで追いかけられますよ。」
クラリス参謀総長はため息をつき、答えた。
「当分、、、やむを得ない事情があった時だけ、、、
ここで離発着を許す。」
ルイス少尉は頭を下げた。
「は! 参謀総長閣下、ご高配ありがとうございます!」
と言うことで、本当にやむを得ない時だけ、王城内の参謀本部の屋上に、ルイス少尉がパラグライダーで乗り降りすることになった。
実際、ダグ騎兵連隊長が苦手な書類作業から逃げ出した時、クラリス参謀総長が参謀本部の屋上からパラグライダーに乗って、追いかけたそうだ。
で、空中には障害物がない分、たとえダグ騎兵連隊長がオフロードバイクで逃げたとしても、パラグライダーの方が速いから、すぐ捕まえてしまうそうだ。
で、、、ダグ騎兵連隊長が逃げ出すことはなくなったらしい。。。
(あきれた笑い)ははは。。。
その日の正午前、ルイス少尉が戻ってきた。
当然、王城の売店から、分隊メンバの昼食を買い付けて戻ってきた。
そして、その約2時間後、ダグ騎兵連隊長がオフロードバイクに乗って、練兵場にやってきた。
ドーラは戸惑いながらダグ騎兵連隊長に問うた。
「ダグ・ハミルトン騎兵連隊長閣下、
王城と練兵場との道路は冠水していたはずですが。。。」
ダグ騎兵連隊長はうんざりした表情で答えた。
「昼頃には、何とか道路の冠水は解消された。。。」
ダグ騎兵連隊長は困った表情で、ドーラに語り掛けた。
「ルイスが王城に直接パラグライダーで乗り付けて、
王城内は大騒ぎになったぞ!
俺はアン女王陛下に呼びつけられて、散々怒られた!」
そのわきにいたルイス少尉は得意満面で答えた。
「でも、参謀総長閣下から、
今後ともパラグライダーで離発着して良いと許可を得ました。」
ダグ騎兵連隊長は「あいつ(=クラリス参謀総長)、勝手なことを。。。」とぼやいた。
ダグ騎兵連隊長はドーラに語り掛けた。
「ともかく、可能な限り、パラグライダーで直接、王城に乗り込むな!」
僕はダグ騎兵連隊長に語り掛けた。
「ドーラさん、ダグ騎兵連隊長、、、
意見よろしいでしょうか?」
ドーラは僕に顔を向けて「許す」と答えた。
僕は意見を述べた。
「ヒューさんが、長距離用の無線通信機を2台、組み立てました。
そのうちの1台を騎兵連隊の事務所に置いたらどうでしょう?
それなら、今回のように地上から王城に報告ができない場合でも、
安否報告が可能になります。
これなら、今後、
ルイスさんにパラグライダーで王城まで行ってもらう必要は無くなります。」
ダグ騎兵連隊長はヒュー少尉に顔を向けた。
ヒュー少尉は直立し、答えた。
「は!
長距離用の無線通信機は組み立て終わり、
いつでも騎兵連隊の事務所に設置可能であります!」
ダグ騎兵連隊長は僕に問うた。
「だが、修司殿、、、
騎兵連隊の事務所に、
誰に長距離無線通信を担当させればよい?
ヒュー以外、扱えるのか?」
僕はヒュー少尉に問うた。
「ヒューさん、、、
ゲイリーさんとトビーさんに、
長距離無線通信の基本的な使用方法だけ良いので、
今日と明日の2日間で伝授できますか?
ゲイリーさんとトビーさんは、
オフロードバイクの教習を受けながらで、
大変ですが。。。」
ヒュー少尉は戸惑いながら答えた。
「できると思います。」
エイミー少尉も戸惑いながら答えた。
「オフロードバイクと通信機の操作の教習はヒューと調整して進めるわ。」
僕は笑顔でダグ騎兵連隊長で話しかけた。
「来週、僕達は天文台へ行きます。
王城から天文台までは約200kmあります。
でも、長距離用の無線通信機なら、
即時に天文台から王城へ安否報告可能となります。」
ダグ騎兵連隊長はため息をついてつぶやいた。
「確かに来週の天文台行きを考えると、
天文台と王城との連絡方法は必要だな。。。」
ダグ騎兵連隊長はドーラに話しかけた。
「事務所にスペースを作るよう指示する。」
そして、ダグ騎兵連隊長はオフロードバイクに乗って、王城へ帰っていった。
その日の夕食以降、ゲイリー少尉とトビー軍曹には、長距離無線通信機の使用方法の教習を行った。
と言っても、明日の午後には王城に帰るので、このときはあくまで基本的な使い方だけだった。
翌日の午後、王城に帰ったのだが、ヒュー少尉とゲイリー少尉とトビー軍曹は、騎兵連隊の事務所に長距離無線通信機を設置した。
あと、僕のワンボックスカーにも長距離通信機を設置した。
両方の設置が終わると、ヒュー少尉とゲイリー少尉とトビー軍曹は試験通信を行い、無事、通信ができることを確認した。
実際、騎兵連隊の事務所と、ワンボックスカーの長距離無線通信機は、次の週の天文台の定期的な安否報告で活躍したよ。
次話は2026/5/15 0時に更新予定です。




