第96話 オスカー元老院議長の視察(その2) ー補正予算ー
(前話からの続き)
アリシアさんとイライザさんの会話にあきれ顔だったリネット警察消防相は、気を取り直して口を開いた。
「ま、確かにオフロードバイクの護衛によって、
馬ならば10時間程度かかる王城と練兵場を間を、
2時間弱で着いたわ。
必要性は認めざるを得ないわね。。。」
リネット警察消防相は、髪は黒髪で短髪横分けで、瞳は黒、肌は白く、顔は小さく丸型だった。
すらりとした体形で、身長は175cm位、年齢は55歳くらいってところだ。
フェリックス交通建設相は、ブリトニーさんに話しかけた。
「ブリトニー君の言うとおり、将来、専用道路は必要だ。
王城と練兵場間はもっと近くなるだろう。」
リネット警察消防相は、クリスティアナさんに話しかけた。
「クリスティアナ君の言う通りね。
将来、自動車が増えた時を考えると、
交通規則作りや、信号などの機械も必要よ。」
補足すると、先週、ジョージ宰相は、ブリトニーさん、クリスティアナさん、ディーン君を連れてきた。
(第83話~第85話)
ブリトニーさん、クリスティアナさん、ディーン君は王城に帰った後、宰相官邸の同僚や内閣メンバに色々話したらしいんだ。
だが、ドム産業農林水産相は懐疑的だ。
「いや、我が国で車の生産が始まって、約10年が経つ。
初期に生産された自動車は、すでに老朽化が始まっている。
現在の我が国には車が約100台あるが、
それからはあまり増えないのではないか?」
ドム産業農林水産相は僕に問う。
「修司殿、日本は自動車は何台あるんだい?」
僕は答えに窮した。
「さあ?
でも8000万台程度あるのでは?」
その場にいた人々は一応に驚いた。
「8000万台?」
「我が国の何倍だ?」
「日本はとんでもない自動車を有しているんだ。。。」
ドム産業農林水産相は苦笑いを浮かべ、人々に語り掛けた。
「日本と同じものを取り入れても、意味がないのでは?」
リネット警察消防相も苦笑いを浮かべ、うなずいた。
「そうね。
日本と我が国では事情が全く異なる。
同じものを取り入れても意味がないわ。。。」
ジョージ宰相は戸惑いながら、僕に問うた。
「修司殿。。。
たとえば、少ない車をどう活用する方法がありますか?」
僕は戸惑いながら答えた。
「うーん、、、
車を運転できる人には、
車を貸すレンタカーとか、
車を共有するカーシェアリングと言うのがありますし、、、
車を運転できない人には、
料金を払って車に乗せてあげるタクシーとか、
料金を払って荷物を運ぶ配送業なんてものがありますが。。。」
ドム産業農林水産相とフェリックス交通建設相とリネット警察消防相は、顔を見合わせて、たがいに話しかけた。
「そうか、車が配備されているのは、
現状、公爵と伯爵の上位貴族だけで、
子爵に配備されるのは当分先だ。」
「近接している子爵領同士で車を共有するアイデアはアリだ。。。」
「カーシェアリングのルールを急ぎ決める必要があるわ。。。」
補足すると、ドム産業農林水産相とフェリックス交通建設相とリネット警察消防相は、主要閣僚、つまり宰相、外相、財務相ではない。
主要閣僚である宰相と外相と財務相は、伯爵から選出されるしきたりとなっている。
(第21話)
逆に主要閣僚以外は、子爵や男爵や准男爵や平民から選ぶしきたりとなっている。
実は、ドム産業農林水産相とフェリックス交通建設相とリネット警察消防相は子爵なんだ。
そして、同じ子爵にはまだ車が配布されていない現状を良く知っていた。
一方、公爵である、オスカー元老院議長、ソフィア叔母さん、トーマス公爵も、顔を見合わせて、たがいに話しかけた。
「そうか、配布されている車を用いて、
『タクシー』なるものを領民に提供したり、
荷物を配送して、車の恩恵を領民に示すことはアリだ。」
「自動車は『特権階級の象徴』ではないことを示す必要があるわ。」
「『タクシー』なるものや、
自動車による荷物配送業のルールを定める必要がある。」
だが、トーマス公爵が口を開いた。
「ところで、、、
オフロードバイクの必要性は認める。
オフロードバイクによって、自動車の機動力を示すことができるからな。。。
しかし、、、
『補正予算で対応しなきゃならないほどの、
緊急性が無い』
んだが。。。」
アースキン財務相は黙ってうなずいた。
ジョージ宰相は苦笑いを浮かべ、ドーラに話しかけた。
「ドーラ殿下、
パラグライダーのデモンストレーションをお願いできますか?」
ああ、軍人はドーラを「ドーラ中尉」と呼ぶが、軍人以外の人はドーラを「ドーラ殿下」と呼ぶんだ。
話を戻そう。ドーラは戸惑いながら、ルイス少尉に話しかけた。
「ルイス、皆様にパラグライダーの離陸と飛行を見せよ。」
ルイス少尉は直立し、「は!」と答えた。
ルイス少尉は、無線機のインカムを装着し、さらにヘルメット、防刃チョッキ、ゴーグル、1本の弓と1つの矢筒を装着した。
最後にパラグライダーを装着した。
ルイス少尉はそのパラグライダーを引っ張りながら、後ろへ走り出した。
パラグライダーは引っ張られ、風を受けて、ゆっくりと上昇した。
パラグライダーは、ルイス少尉の斜め上より、ちょっと上の位置まで上昇した。
ルイス少尉はその瞬間、彼女の魔法を放ち、離陸した。
パラグライダーの離陸と飛行を見た一行は、ジョージ宰相以外は驚いていた。
「これがパラグライダーか。。。」
「こんな飛行方法があったなんて。。。」
ジョージ宰相は笑顔で一堂に語った。
「軍はこう言っているんだ。
『パラグライダーは飛行兵のあり方を根本から変えるだろう』
と言っている。
(第74話)
そして、それは女王陛下も同意見だ。」
(第78話)
アースキン財務相は戸惑いながら語る。
「確かに、このパラグライダーは飛行兵のあり方を変えるだろう。
必要性は認める。
でも、、、
『補正予算を組まなきゃならないほど、
緊急性は無い』
と思うんだが。。。」
トーマス公爵も黙ってうなずいた。
困ったジョージ宰相は、ジャック外相を見つめた。
ジャック外相は顔は長く、大きな黒目で、肌は白で、白髪のショートヘアを横分けにした中年男性だった。
ジョージ宰相に見つめられたジャック外相は、ハッとした表情でジョージ宰相に問うた。
「ジョージ、、、
もしかして、、、
オフロードバイクもパラグライダーも、
先月の秘密会議に関することか?」
(第59話、第60話)
ジョージ宰相は黙ってうなずいた。
ジャック外相は、ワスイ帝国の脅威が迫っており、軍の強化が喫緊の課題であることを理解していた。
そして、今回の補正予算による、オフロードバイクやパラグライダーの配備は、その一環であることを察した。
ジャック外相は真剣な表情で、オスカー元老院議長とソフィア叔母さんに近づくと、頭を下げた。
「オスカー・デービス元老院議長閣下、
ソフィア・デービス殿下、、、
お二方も出席された先月の秘密会議に関することです。
どうか補正予算での対応をお願いします。」
オスカー元老院議長はハッとした表情で、「そう言うことか。。。」とつぶやいた。
ソフィア叔母さんもハッとした表情で、「そう言うことね。。。」とつぶやいた。
ソフィア叔母さんは真剣な表情でジョージ宰相に問うた。
「ジョージ、、、
このオフロードバイクとパラグライダーは、あくまで第一弾であって、
今後も続くと思った方が良いのかしら?」
ジョージ宰相は黙ってうなずいた。
ソフィア叔母さんはため息をつくと、オスカー元老院議長に顔を向けて、話しかけた。
「これから、何本も補正予算を通すことになるわ。
仕方がないわ。
やりましょう。。。」
オスカー元老院議長もため息をつき、黙ってうなずいた。
そう、ジャック外相も、オスカー元老院議長も、ソフィア叔母さんも、先月の国防秘密会議に出席していた。
(第59話)
そして軍の大幅な強化が必要なことを聞かされていた。
今回のオフロードバイクとパラグライダーは、あくまで軍の強化の第一弾であって、今後も強化策を必要となる。
当然、予算措置も必要となるだろう。
すなわち、今後も元老院にて、補正予算を何度も通さなくてならない。
元老院議長のオスカー・デービス氏と、その妻のソフィア叔母さんには、その大変な重責が課せられていた。
一方、その他の参加者は怪訝な表情を浮かべた。
とくにトーマス公爵はソフィア叔母さんに問うた。
「ソフィア、、、どういうことだ?」
オスカー元老院議長は、ソフィア叔母さんの代わりに、緊張した表情でトーマス公爵に答えた。
「信用できる貴族当主に限定し、別に会議を設け、そこで説明する。
その会議には女王陛下と王太子殿下に同席願う。
トーマス、今はそれで勘弁してもらえないか?」
トーマス公爵は戸惑いながら、黙ってうなずいた。
ソフィア叔母さんは、緊張した表情で、ブリトニーさん、クリスティアナさん、ディーン君に話しかけた。
「ブリトニー、クリスティアナ、ディーン、、、
ヨーク伯爵家、ワーシントン伯爵家、ウエストウイック伯爵家の現当主も、
その会議に呼ぼうと思う。
話をしておいてくれる?」
ブリトニーさん、クリスティアナさん、ディーン君は戸惑いながら、黙ってうなずいた。
ジョージ宰相も、その他の閣僚、つまりアースキン財務相とドム産業農林水産相とフェリックス交通建設相とリネット警察消防相に、緊張した表情で話しかけた。
「女王陛下と王太子殿下にも臨席いただき、
閣議で説明するから。。。」
アースキン財務相とドム産業農林水産相とフェリックス交通建設相とリネット警察消防相は、戸惑いながら、黙ってうなずいた。
次話は2026/5/13 0時に更新予定です。




