第86話 ウオーレン魔法兵連隊長の追及
さて、ジョージ宰相と共に来た、3度目の練兵場だったが、あの日は水曜日の午前中には練兵場に着いていた。
(第83話~第85話)
僕とクラレンス君を含むドーラの分隊と、ジョージ宰相の一行(ジョージ宰相、オリビア第三王女、若手官僚3人)は、天幕の下で昼食をとった。
そして、ジョージ宰相の一行はオリビア第三王女を運転手にして、ジョージ宰相の車で王城に戻っていった。
ただし、バイクの警護が必要なので、エイミー少尉とローレンス曹長が警護について行った。
エイミー少尉とローレンス曹長は、ジョージ宰相の一行を王城まで送り届けた後、練兵場に戻ってきた。
たしか、夕方近くだったと思う。
その間、つまり水曜日の午後は、エイミー少尉とローレンス曹長以外は、先週と同じだった。
(第64話)
僕とクラレンス君は夜に天文観測するための準備を行った。
フレッド副長はドローンの操作練習を行った。
ヒュー少尉は天幕の下で長距離無線通信機を組み立てていた。
ベリンダ上等兵は練兵場をオフロードバイクで走って、不整地走行を練習した。
ジャクソン少尉とケント少尉は、自分の得意な雷魔法や火炎魔法の練習を行った。
ケイシー上等兵は、訓練中のけがに備えて、天幕の下でポーションの瓶を持って待機していた。
ルイス少尉はドーラと一緒に遠笠懸の訓練を行った。
だいぶ上達し、命中率は3分の2ほどだろうか。
翌日、木曜日の朝、エイミー少尉は日報を持って、オフロードバイクに乗って王城へ向かった。
(第63話)
ルイス少尉は前日と異なり、パラグライダーに乗って、空中からの弓矢の訓練を行った。
フレッド副長にドローンを操作し、弓矢の的を吊るした。
最初はドローンを静止させ、固定した的に対し、パラグライダーから弓を射た。
(第70話)
先週はいきなり実戦となり、巨大生物を撃退した。
(第75話~第77話)
なので、先週よりは矢の命中率は高かった。
ま、それでも命中率は半分ってところだが。。。
明日以降は的を吊り下げているドローンをゆっくりと移動させ、難度を高める予定だ。
(第70話)
それ以外のドーラの分隊のメンバーは前日と同じ訓練を行った。
さて、エイミー少尉は正午前に王城から練兵場に戻ってきた。
エイミー少尉は戻ってくると、笑顔でドーラの分隊のメンバー全員に告げた。
「はい! 頼まれていた昼食よ~!
王城の売店から買ってきた~!」
分隊メンバはエイミー少尉に駆け寄ると、代金と引き換えに、昼食を受け取った。
あ、僕とドーラは、王城の売店ではカード決済でね。王族と政府要人用のカードがあるんだ。
王城の売店には、月末にまとめて、王城の売店に支払われる仕組みとなっている。
僕とドーラは、エイミー少尉に預けていたカードと頼んだ昼食を受け取った。
実はクラレンス君の昼食代は僕が払っている。ま、それくらいはアン女王も目を瞑ってくれるだろう。
その、カードと昼食を受け取った際に、エイミー少尉は一通の手紙を僕に手渡した。
「あ、それから、修司殿、、、
小隊長から修司殿向けの手紙を預かっています。」
僕は戸惑いながら、手紙を受け取った。
手紙の差出人を確認すると、ヒラリー後方支援連隊長からだった。
ヒラリー後方支援連隊長が、ダグ騎兵連隊長を介して、ドーラの直接の上司の小隊長に手紙を託したのだろう。
手紙の中身を確認すると、以下のことが書かれていた。
『頼まれていた物資が手に入った。
(第71話)
明日、金曜日の正午に持っていく。』
僕は笑顔でヒュー少尉、エイミー少尉、ベリンダ上等兵に語り掛けた。
「ヒューさん、エイミーさん、ベリンダさん。。。
御三方の魔法強化の物資が入手できました。。。
明日、ヒラリー後方支援連隊長が届けてくれるそうです。。。
早速、明日、実際に強化されるか試してみましょう。。。」
ヒュー少尉、エイミー少尉、ベリンダ上等兵は戸惑いながら、黙ってうなずいた。
翌日、金曜日の正午、練兵場の待ち合わせ場所に行った。
そこには、ヒラリー後方支援連隊長と、後方支援連隊隷下の分隊が待っていた。
そこには、レオ近衛師団長、ダグ騎兵連隊長、ウオーレン魔法兵連隊長、クラリス参謀総長もいた。
まあ、先週も来たからね。
(第69話~第80話)
ヒラリー後方支援連隊長の他に、レオ近衛師団長、ダグ騎兵連隊長、ウオーレン魔法兵連隊長、クラリス参謀総長がいるのは驚かないけど、、、
ドーラは半ば驚き、半ば戸惑い、問うた。
「フランクリン・クーパー軍事大臣閣下、キース・ランバート軍事次官、、、
なぜ、ここ、練兵場に?」
そう、フランクリン軍事大臣と、キース軍事次官、そして軍事大臣の秘書も、練兵場の待ち合わせ場所にいたのだ。
レオ近衛師団長が笑顔で代わりに答えた。
「魔法強化と聞いて、ここに来た。」
ダグ騎兵連隊長は、半ばあきれ、半ば苦笑いを浮かべて、紙の束を振り、話しかけた。
「ドーラ中尉、この始末書の束は何だ?」
すると、フレッド副長、ケント准尉、ローレンス曹長、ベリンダ上等兵は、苦笑いを浮かべ、「ははは。。。」とごまかし笑いを浮かべた。
実はね。。。
ジャクソン少尉の合体雷魔法だけでなく(第68話)、、、
フレッド副長・ケント准尉・ローレンス曹長の合体火炎魔法(第66話)や、ケント准尉・ローレンス曹長・ベリンダ上等兵の合体竜巻魔法(第66話)の練習をしていたんだけど、、、
時々手元が狂って、練兵場の木を燃やしちゃったり、木をなぎ倒しちゃったりして、、、
練兵場の設備をいくつか壊しちゃったんだ。。。
(ごまかし笑い)ははは。。。
そのたびに、ドーラは「えーい、仕方がない」って、何枚も始末書を書いていたってわけ。。。
ヒラリー後方支援連隊長は、ダグ騎兵連隊長から始末書の束を受け取ると、あきれて、ドーラと僕に語り掛けた。
「何、この始末書?
もう始末書をテンプレート化してるじゃないの。。。」
ジャクソン少尉の合体雷魔法の始末書の作成を、僕は手伝ったんだ。
(第68話)
パソコンで始末書を作成してね。
その始末書をテンプレートにして、僕のパソコンで、ドーラの指示通り、僕が他の始末書を書いて、ドーラが提出していたってわけ。。。
この世界にはパソコンが20台もない。
(第4話)
始末書のテンプレートは、ドーラの分隊しか持っていない。。。
あ、実は、ドーラが毎日提出する日報(第63話)も、僕のパソコンでテンプレート化して、ドーラの指示通り、僕が書いている。
ダグ騎兵連隊長はあきれて、ドーラの分隊メンバを見渡し、語り掛けた。
「魔法を強化したら、今以上の始末書の山となるのは、
火を見るよりも明らかだ。」
ま、確かに。。。
(ごまかし笑い)ははは。。。
ウオーレン魔法兵連隊長はため息をつき、ドーラの分隊メンバに語り掛けた。
「そう。。。
どんな魔法の強化になるのか、見る必要があるってこった。」
ダグ騎兵連隊長はニヤリと笑った。
「しかも、エイミー少尉の魔法の強化となると、、、
同じ魔法、つまり身体強化魔法を持つ、俺の魔法も強化できるしな。。。
俺も早く見たい。。。」
クラリス参謀総長はあきれて、ダグ騎兵連隊長に語りかけた。
「あんた、それが本音?」
ダグ騎兵連隊長は、「ははは。。。」とごまかし笑いをした。
フランクリン軍事大臣は笑顔でドーラに語り掛けた。
「練兵場自体は、内局、つまり背広組の管轄だ。
ドーラ中尉の分隊は新しい魔法の開発を行っていると言うことで、
練兵場の設備破壊は、私から練兵場を説得しよう。
『多少の設備破壊は目を瞑れ』
とね。。。
今後は始末書の提出は不要だ。
だから、代わりに新しい魔法を見せなさい。」
ドーラは頭を下げ、「は!」と答えた。
ウオーレン魔法兵連隊長は、ヒラリー後方支援連隊長から、始末書の束を受け取った。
彼は始末書を幾つか読み、ドーラを始め、ドーラ分隊のメンバに語り掛けた。
「練兵場の木を燃やしたのは、
始末書の記載の通り、
フレッド、ケント、ローレンスの合体火炎魔法の操作を
誤ったからだろう。。。」
フレッド副長、ケント准尉、ローレンス曹長は黙ってうなずいた。
ウオーレン魔法兵連隊長は、真剣な表情で語り掛けた。
「しかし、練兵場の木を倒したことについては、、、
ローレンスの風魔法の練習中に、突然突風が吹き、
風魔法と相まって、木が倒れたとある。。。
これは『嘘』だな?
ローレンスの風魔法の威力では、それは無理なはずだ。
これは正直に話せ。」
やはり、近衛師団・魔法兵連隊長は、魔法の専門家だ。
そんな嘘はすぐに見破った。
実は、ケント准尉・ローレンス曹長・ベリンダ上等兵の合体竜巻魔法は秘密にしていた。
分隊メンバで話し合い、合体竜巻魔法は分隊の切り札になりうるもので、可能な限り、隠しておいた方が良いとの結論だった。
ドーラはため息をつくと、ケント准尉・ローレンス曹長・ベリンダ上等兵に語り掛けた。
「ケント、ローレンス、ベリンダ。。。
ウオーレン・ウッドハウス魔法兵連隊長閣下に、
3人の合体竜巻魔法を見せよ。」
ケント准尉・ローレンス曹長・ベリンダ上等兵は直立し、一斉に「は!」と答えた。
まず、ローレンス曹長がつむじ風のような弱い竜巻を生成した。
ウオーレン魔法兵連隊長はつぶやいた。
「そう、ローレンスの風魔法の竜巻はこのレベルで、、、
練兵場の木を倒すほどの威力はなかった筈だ。。。」
すると、ケント准尉が、ローレンス曹長が生成した竜巻の少し下に、彼の火炎魔法を飛ばした。
次にベリンダ上等兵が、竜巻の上に、彼女の冷却魔法を飛ばした。
すると、最初はつむじ風のような弱い竜巻が、木を倒すのに十分な威力の竜巻に変わった。
ウオーレン魔法兵連隊長は叫んだ。
「この竜巻は魔法兵レベルだ!」
(第66話)
ドーラはウオーレン魔法兵連隊長に頭を下げ、語り掛けた。
「ウオーレン・ウッドハウス魔法兵連隊長閣下、
この合体竜巻魔法の操作を誤り、
練兵場の木を倒してしまったのであります。」
ウオーレン魔法兵連隊長は戸惑いながら、黙ってうなずいた。
ヒラリー後方支援連隊長も戸惑い、僕に問うた。
「修司殿、、、
どうして、ケントとベリンダの魔法で、竜巻が強くなるの?」
僕は苦笑いを浮かべて答えた。
「僕は竜巻の仕組みを知っているだけです。
(第66話)
竜巻は上昇気流で細く引き伸ばされるから、
回転のスピードが増し、破壊力が増大するんです。
僕は試しに、ケントさんとベリンダさんの魔法で
上昇気流を作ってみただけです。。。
下の空気を温め、上の空気を冷やして、上昇気流を作ってみただけです。。。
そしたら、こんな竜巻になっちゃったんです。。。」
ヒラリー後方支援連隊長はなおも戸惑いながら、「つまり?」と僕に問うた。
僕は苦笑いを浮かべて答えた。
「この世界の、、、
いえ、、、
ローレンスさんとケントさんとベリンダさんの魔法がすごいんです。」
ヒラリー後方支援連隊長は、なおも戸惑いながら、ウオーレン魔法兵連隊長に問うた。
「ウオーレン、、、
竜巻に上昇気流が重要だと言う認識はあった?」
ウオーレン魔法兵連隊長は、顔を横に振った。
「いや、、、
そんな認識はなかった。。。
そもそも、その竜巻の仕組みは初めて知った。。。」
ウオーレン魔法兵連隊長は戸惑いながら、僕に問うた。
「修司殿、、、
上昇気流を作ることができれば、、、
つまり、別の方法で上昇気流を作ったとしても、
竜巻魔法の強化は可能ってことか?」
僕はうなずき、答えた。
「ええ、、、理屈の上では。。。」
ドーラはレオ近衛師団長に頭を下げ、話しかけた。
「父上、、、
我が分隊の強化のために、、、
ケント、ローレンス、ベリンダの合体竜巻魔法の練習を、
この練兵場で行うことを許可ください。。。
もちろん、練兵場の施設を破壊せぬよう、注意は払います。。。」
レオ近衛師団長はフランクリン軍事大臣に顔を向けた。
フランクリン軍事大臣は笑顔でうなずいた。
レオ近衛師団長はため息をつくと、ドーラに語り掛けた。
「許す。」
ドーラは頭を下げたまま、「ありがとうございます。」と答え、頭を上げた。
そして、笑顔をケント准尉、ローレンス曹長、ベリンダ上等兵に向けた。
ウオーレン魔法兵連隊長は気を取り直すと、別の始末書を取り出した。
「ところで、、、
この始末書には、ジャクソンが誤って、極大雷魔法を用いたとある。。。
(第68話)
我が息子ながら、ジャクソンがそんなミスをするはずがない。。。
これも『嘘』だな?
正直に話せ。」
やはり、ウオーレン魔法兵連隊長とジャクソン少尉は親子だ。
ウオーレン魔法兵連隊長は父親として、ジャクソン少尉の能力を良く知っていた。
ウオーレン魔法兵連隊長は、ドーラ分隊が真相を隠そうとしていることは、すぐに見破った。
しかし、ドーラはウオーレン魔法兵連隊長に頭を下げ、語り掛けた。
「ウオーレン・ウッドハウス魔法兵連隊長閣下、
それは本当にジャクソンが誤って、
極大雷魔法を出してしまったのであります!」
ドーラだけでなく、ジャクソン少尉もウオーレン魔法兵連隊長に頭を下げ、語り掛けた。
「父さん、、、
いえ、魔法兵連隊長閣下、、、
確かにそれは僕が誤って、極大魔法を出してしまいました!」
実は、この合体雷魔法については、威力が凄すぎるのと、制御が難しいことから、真相は絶対に伏せようと、ドーラの分隊メンバが話し合っていた。
そこで、ドーラとジャクソン少尉だけでなく、エイミー少尉とルイス少尉も頭を下げ、ウオーレン魔法兵連隊長に話しかけた。
「ウオーレン魔法兵連隊長閣下、
確かにジャクソンが誤って、極大魔法を出しました!」
「エイミー少尉の言う通りです!」
4人の気迫に押され、ウオーレン魔法兵連隊長は戸惑いながら、「だが、これは嘘だろ?」とつぶやいた。
見かねたレオ近衛師団長がウオーレン魔法兵連隊長に話しかけた。
「ウオーレン、、、
ドーラの分隊メンバがこう言い張るんじゃ、
どうしようもないじゃないか?」
基本的に娘のエイミー少尉には甘いダグ騎兵連隊長が、ウオーレン魔法兵連隊長の肩を叩いて、話しかけた。
「ウオーレン、、、
エイミーがそう言うんじゃ、引いてくれないか?」
娘のルイス少尉の気迫を見たクラリス参謀総長も、ウオーレン魔法兵連隊長に耳元でささやいた。
「ウオーレン、、、ここは引きましょう。。。
どこかで真相は明らかになるわよ。。。」
ウオーレン魔法兵連隊長は、しぶしぶ黙ってうなずいた。
(次話に続く)




