第85話 若手有望官僚との出会い(その3) ージョージ宰相の思いー
(前話からの続き)
さて、水曜日の午前、僕とクラレンス君とドーラの分隊が練兵場に行った話に戻そう。
この日は、ジョージ宰相が、若手官僚のブリトニーさん、クリスティアナさん、ディーン君を連れて、オリビア第三王女を運転手に、僕達と一緒に練兵場に来た。
第44話で述べたように、王城と練兵場との距離は約50kmだ。
それを自動車を使って、2時間弱で着くのは、僕からすれば不満だ。
しかし、初めて車で練兵場まで来たドーラの分隊メンバのように(第44話)、若手官僚のブリトニーさん、クリスティアナさん、ディーン君は一様に驚いていた。
ブリトニーさんは
「まあ、宰相閣下からは2時間弱で着くとは聞いていたけど、、、」
とつぶやいた。
クリスティナさんは
「でも、実際ついてみると驚きね。。。」
とつぶやいた。
ディーン君はうなずき、ブリトニーさんとクリスティナさんに語り掛けた。
「軍事教練で、王城から練兵場まで、騎乗して一晩掛けて移動するよね?」
(第73話)
まあ、彼等も伯爵家で上位貴族なので、数か月に一度の軍事教練には参加しているのだろう。
クリスティナさんは、クリアさんとディーン君に話しかけた。
「自動車で前日に移動しておこうか?」
どうやら、先週のシャーロット第二王女とオリビア第三王女と同じことを思いついたらしい。。。
(第73話)
(あきれた笑い)ははは。。。
慌ててジョージ宰相が3人の若手官僚を罵った。
「あれは、上位貴族の義務みたいなもんだ!
ズルは許さんぞ!」
オリビア第三王女も3人の若手官僚を罵った。
「そうよ!
先週、同じことをシャーロット姉上と思いついたら、
母上(=アン女王)に、ものすごく叱られたんだから!
(第73話)
あんた達がズルするのは許さないわよ!」
ブリトニーさんは苦笑いを浮かべて、ジョージ宰相とオリビア第三王女に反論した。
「そりゃ、現宰相であるジョージ閣下と、
第三王女であるオリビアはサボると一発でバレますが、、、
公爵家より下っ端の伯爵家で、
しかも閣僚がいない伯爵家ならバレませんよ。」
クリスティナさんも続く。
「そもそも、
アルフィおじじ様が財務相だったのは約25年前ですし。。。」
ディーン君も苦笑いを浮かべて続いた。
「そ!
バードおじじ様が外相を辞めて、
年を取って引退してから、もう約20年経っています。
前外相を輩出した伯爵家なんて、誰も見向きもしません。
だから、僕らがいなくたって、バレやしません。」
ブリトニーさんもクリスティナさんも黙ってうなずいた。
ジョージ宰相は、半ばあきれながら、罵った。
「お前ら~!
もしサボったら、仕事増やしてやるぞ!」
ブリトニーさん、クリスティアナさん、ディーンさんは一斉に不満の声をあげた。
「「「えー!」」」
ジョージ宰相は気を取り直して、優しく、3人の若手官僚に話しかけた。
「(ため息)はー、、、まったく。。。
君達も容易に想像できると思うが、、、
遠くない将来、アン女王陛下は退位され、
シャーロット王太子殿下が即位される。
(第39話)
そのシャーロット王太子の治世では、
我が国の自動車はもっと増えるだろう。
その頃には、軍、政府、上位貴族への自動車は、
最低限必要な数の配備が終わっているだろう。
(第79話、第80話)
そして、いよいよ一般庶民に、自動車が普及する時代になる。」
3人の若手官僚は黙ってうなずいた。
ジョージ宰相は僕を横目でちらりと見て、3人の若手官僚に話しかけた。
「今回は我々はバイクの警護で、2時間弱で王城から練兵場に来た。
でも、日本では自動車が普及しているが、
交通ルールや信号などの機械もあり、警護のバイクなど不要だそうだ。
しかも、、、
日本では、王城から練兵場は自動車で1時間の距離だそうだ。」
(第80話)
3人の若手官僚は一様に驚いた。
クリスティアナさんは「たったの1時間?」とつぶやいた。
ブリトニーさんとディーン君は唖然として、お互いを見つめた。
ジョージ宰相は、3人の若手官僚の驚きをスルーして、更に語り掛けた。
「なぜ、今日、君達をドーラ殿下の分隊と共に、
自動車で王城から練兵場に来たのか分かるか?」
ブリトニーさん、クリスティアナさん、ディーン君は、戸惑い、黙って顔を横に振った。
ジョージ宰相は微笑み、3人の若手官僚に語り掛けた。
「君達、若い官僚は、そんな時代が到来した時、
我が国が整備すべきものを考えてほしいのだ。
それはなにも、自動車や信号や道路のような機械やインフラだけでなく、
法体系等も含め、考えてほしいのだ。
シャーロット王太子殿下と、第三王女であるオリビアと共に、
どうあるべきかを考えてほしいのだ。」
(第80話)
ブリトニーさんは右手を顎に当て、つぶやいた。
「たしかに、本来、警護のバイクは不要ね。」
ディーン君は戸惑いながら、ブリトニーさんに話しかけた。
「でも、、、わが国には約100台しか自動車はない。。。
現状は警護のバイクはやむを得ない。。。」
クリスティーナさんは腕を組み、ディーン君に話しかけた。
「我が国で車がもっと増えたら、、、
警護のバイク以外の方法で、安全を確保する必要がある。。。」
ブリトニーさんは、右手を顎に当てたまま、クリスティーナさんに話しかけた。
「でも、我が国で車が増やしたくても、、、
そもそも、鉄の生産量は限られているわ。。。
加えて、戦時下だし、、、
それほど多くは自動車は増えないかも。。。」
ジョージ宰相は笑顔でさらに若手官僚3人に語り掛けた。
「日本では時速100kmで走れる自動車専用道路だってあるそうだ。
すると王城と練兵場は30分の距離になる。」
(第79話)
するとディーン君は驚いた表情で、つぶやいた。
「時速100km?
僕のウエストウイック伯爵領と首都レワヅワとは、
約500km離れているけど、、、
それが1日で着けるってこと?」
クリスティーナさんは、戸惑いながら、ディーン君に話しかけた。
「あなたの伯爵領と首都レワヅワの行き来って、
馬車の急行便でも片道4日間だっけ?
それがたったの1日?」
ブリトニーさんも、戸惑いながら、ディーン君に話しかけた。
「ディーンのウエストウイック伯爵領だけじゃない、、、
私のヨーク伯爵領と首都レワヅワは約300km離れているけど、
その行き来がとても楽になる。。。」
ディーン君は戸惑いながら、ブリトニーさんとクリスティーナさんに話しかけた。
「それだけじゃない。。。
僕のウエストウイック伯爵領から首都レワヅワに
運べる商品等の物資の種類が増える。
ウエストウイック伯爵領には、
美味い肉や野菜や果物の特産物がいっぱいあるんだ。。。
馬車の急行便でも片道で4日間かかるから、
それらを首都レワヅワを輸送・販売することをあきらめていたんだ。。。
でも自動車を活用すれば、
それらを首都レワヅワで販売することも可能になる。。。」
ブリトニーさんはディーン君に向けて叫んだ。
「あなたのウエストウイック伯爵領だけじゃない、
私のヨーク伯爵領も豊かになるわ!」
クリスティーナさんはつぶやいた。
「確かに、自動車の普及に向けて、、、
いろんな課題を今から考えておく必要があるわね。。。」
こんな感じで、3人の若手官僚の議論は続いた。。。
3人の若手官僚、ブリトニーさん、クリスティアナさん、ディーン君は、時々、官舎の僕の部屋(第29話)を訪ねてきた。
ま、宮殿の僕の部屋(第23話)は、彼らは伯爵家の跡取りであっても、簡単には訪ねることができないからね。
(第80話)
それに彼等も官舎に住んでいるんだ。
もちろん、首都レワヅワには、かれらの実家の伯爵家の私邸がある。
でもね。。。当主以外は、私邸から王城までを馬車や自動車で通うことを禁じられているだ。
理由は、王城には、そんなに広い駐車場がないからだって!
だから、騎乗するか、乗り合い馬車しか認められていない。
で、、、彼らは官舎に住んでいるってわけ。。。
3人の若手官僚、ブリトニーさん、クリスティアナさん、ディーン君が、僕の官舎の部屋(第29話)を訪ねる理由は、シャーロット第二王女が僕の宮殿の部屋(第23話)を訪ねる理由と同じだ。
そう、自動車がオウゴウヌ王国に普及した時、どうしたら良いのか、相談しに来た。
特に、ディーン君は人懐っこくてね。。。
よく酒とツマミを僕の部屋まで持ってきて、夜遅くまで話をしたな。。。




