第83話 若手有望官僚との出会い(その1) ー名門伯爵家の跡取りー
第80話でも述べたように、ジョージ宰相は若手官僚を連れて、水曜日の午前、僕達と練兵場に来ることが増えた。
そう、末席ながら彼の秘書を務めていた、オリビア第三王女を運転手として、彼の車で、僕達と一緒に練兵場に来ることが増えた。
ま、ジョージ宰相も多忙の身なので、毎週って訳じゃなく、多くて2週に1回ってペースだったけど。
一番最初に連れてきたのは2人の女性若手官僚と1人の男性若手官僚だった。
あ、いつも王城内の軍の倉庫の前で落ち合ってね。
そこから途中でオウゴウヌ大学でクラレンス君を拾って、それから練兵場に向かうんだ。
軍の倉庫前で、ジョージ宰相、オリビア第三王女、そして3人の若手官僚と落ち合った。
ジョージ宰相は笑顔を向けて、「今日はよろしく」と、僕達に声をかけた。
オリビア第三王女も笑顔を向け、片手を振った。
そして3人の若手官僚は笑顔で「お願いします。」と頭を下げた。
この3人を見た時、その顔に見覚えがあった。。。
でも、、、どこで会ったっけ?
僕が怪訝な表情を浮かべると、あきれたドーラが僕に語り掛けた。
「修司殿、彼等には今月の貴族との晩餐会で会ったであろう?」
(第37話)
オリビア第三王女も、あきれた表情で僕に語り掛けた。
「そうよ。彼らは伯爵家の跡取りとして、出席しているわよ。。。」
僕は戸惑い、つぶやいた。
「つまり、この人達は、伯爵家の跡取りで、官僚ってこと?」
ドーラとオリビア第三王女は、苦笑いを浮かべ、黙ってうなずいた。
一人の女性若手官僚は、笑って、オリビア第三王女に語り掛けた。
「ふふふ。。。
あの晩餐会は、上位貴族の当主と妻と跡取りが参加したけど、
参加者はとても多かったわ。。。
そりゃ、日本から来たばかりの修司殿は、
全員覚えてられないわよ。。。」
一人の男性若手官僚も笑って、オリビア第三王女に語り掛けた。
「ははは。。。
しかも、上位貴族の中では下っ端の伯爵家の、
その跡取りまでは覚えられるわけないって!」
もう一人の女性若手官僚も笑って、オリビア第三王女に語り掛けた。
「晩餐会のときは、女性は白のローブデコルテか、
男性は黒の礼服か軍服着ていたけど、、、
今は3人ともスーツか背広だし。。。
貴族の晩餐会で会ったとは、修司殿は思いもしないわよ。。。」
僕は慌てて、3人の若手官僚に頭を下げ、「大変申し訳ありませんでした!」と叫んだ。
僕は頭を上げると、オリビア第三王女に語り掛けた。
「オリビアさん、お三方の紹介をよろしいでしょうか?」
オリビア第三王女はため息をつくと、黙ってうなずいた。
まず、オリビア第三王女は右手を指し、一人の女性若手官僚を紹介した。
さっき、笑って、オリビア第三王女に「日本から来たばかりの修司殿は、全員覚えてられない」と話しかけた女性若手官僚だ。
彼女は髪はブロンドであるが、短髪横分けで、瞳は青く、肌は白く、顔は小さく丸型だった。
背は低く、160cm前後で華奢な感じだ。
「彼女はブリトニー・ヨークと言って、
産業農林水産省から宰相官邸に出向してきた。
実は前宰相ブライズ・ヨーク閣下の孫娘よ。」
ここからは、彼女をブリトニーさんと呼ぶことにする。
次にオリビア第三王女は、右手をもう一人の女性若手官僚を指した。
さっき、オリビア第三王女に「貴族の晩餐会で会ったとは、修司殿は思いもしない」と話しかけた女性若手官僚だ。
彼女は髪は黒髪でロングパーマ、顔の彫りが深く、瞳も黒く、肌は白く、顔は釣り鐘型だった。
背は170cm前後でグラマラスな感じだ。
「彼女はクリスティアナ・ワーシントンといって、財務省からの出向してきたわ。
彼女も前の財務相アルフィ・ワーシントン閣下の孫娘よ。」
ここからは、彼女をクリスティアナさんと呼ぶことにする。
最後にオリビア第三王女は、右手で男性若手官僚を指した。
さっき、笑って、オリビア第三王女に話しかけた男性若手官僚だ。
彼は髪はシルバーで短髪横分けで、瞳は青く、肌は白く、顔は四角型だった。
背は180cm前後で痩せ型だ。
「彼はディーン・ウエストウイックといって、外務省から出向して来たわ。
彼も前の外相バート・ウエストウイック閣下の孫息子よ。」
ここからは、彼をディーン君と呼ぶことにする。
僕は驚き、オリビア第三王女に問うた。
「へ? 三人とも前の主要閣僚の孫?」
ドーラはあきれて僕を罵った。
「そうだ!
ヨーク家、ワーシントン家、ウエストウイック家は、
主要閣僚を輩出した名門伯爵家だ!
顔と名前ぐらい、ちゃんと覚えておけ!」
僕は再び、慌てて頭を下げた。
「大変申し訳ありませんでした!」
ディーン君は笑いながら、片手を振って、僕に語り掛けた。
「ははは!
バードおじじ様が外相だったのは、約25年前のことです。
そして約20年前には、バードおじじ様は完全に引退してました。
そう、僕が物心ついたときには、引退してました。。。」
ブリトニーさんも笑いながら、うなずき、続いた。
「ふふふ!
私も幼少期に、
ブライズおばば様が宰相から引退しちゃっていて、、、
いくら、ブライズおばば様が前宰相だと言われても、、、
ピンと来ないのよ。。。」
クリスティアナさんも笑いながらうなずく。
「そ!
私にとって、アルフィおじじ様は、
あくまで『おじじ様』であって、、、
『前財務相』って思ったことはないの。。。
だから、名門伯爵家と言われても、ちっとも実感わかないの。。。」
その3人の様子を見て、あきれてジョージ宰相は片手で頭を抱えた。
そして、オリビア第三王女もあきれて、3人を罵った。
「あんたたちねー!
もうちょっと、自分達の置かれた立場と言うものを考えなさいよ!」
ディーン君は苦笑いを浮かべて、オリビア第三王女に語り掛けた。
「オリビア、、、そうは言ってもさ~。。。」
ブリトニーさんも苦笑いを浮かべて、オリビア第三王女に語り掛けた。
「そうそう、、、オリビア、、、無理よ。。。」
クリスティアナさんも苦笑いを浮かべながら、うなずいた。
「オリビア、無理!」
オウゴウヌ王国軍内では、第一王女であるドーラが軍務についているとき、「ドーラ『殿下』」と呼ばず、「ドーラ『中尉』」と呼ぶ。
同じように、宰相官邸の官僚達は、オリビア第三王女を「オリビア『殿下』」とは呼ばず、「オリビア」と呼ぶ。
これは、オリビア第三王女は、今、ジョージ宰相の秘書であり、同僚であるからだ。
そして、オウゴウヌ王国の軍人も、ドーラが第一王女として公務を行っているときは、「ドーラ『殿下』」と呼ぶ。
(第82話)
同様に、宰相官邸の官僚達も、オリビア第三王女が第三王女として公務を行っているときは、「オリビア『殿下』」と呼ぶ。
事実、次の月の上位貴族との晩餐会の時、3人の官僚達は、オリビア第三王女を「オリビア『殿下』」と呼んだ。
ちなみに、オリビア第三王女の上司であるジョージ宰相も、彼も伯爵なので、上位貴族との晩餐会に出席するのだが、そのときはオリビア第三王女を「オリビア『殿下』」と呼ぶ。
この練兵場へ出発するときの軍の倉庫の前では、オリビア第三王女はジョージ宰相の秘書であるので、彼女を「オリビア」と呼ぶのは正しい。
しかし、3人の官僚達のオリビア第三王女に対する口調、そしてオリビア第三王女の3人の官僚達の口調を聞くと、かなり親しい間柄なのだと察した。
ディーン君を人懐っこい笑顔を浮かべると、僕に語り掛けた。
「それはそうと、修司殿、、、
今月の晩餐会での食材と酒の提供ありがとうございました。
(第37話)
いやー、うまかったです。。。」
ブリトニーさんも笑顔をディーン君に向け、話しかけた。
「そうそう。。。
あの牛肉はうまかった。。。
それに加えて酒も。。。
そして、、、アイスクリームと言うスイーツも。。。」
クリスティアナさんも笑顔でうなずく。
「そして、、、魚料理に驚いた。。。
海の魚って食べられるって初めて知った。。。
いやー、あの時は伯爵家の跡取りとして、
生まれて良かったーと思ったわ。。。」
すると、オリビア第三王女はニヤリと笑い、ジョージ宰相を横目で見て、3人の官僚達に語り掛けた。
(次話に続く)
次話は2026/4/30 0時に更新予定です。




