第79話 続、練兵場からの帰り道(その1) ーアン女王との会話ー
(前話からの続き)
ジョージ・ロビンソン宰相は腕時計を見ると、アン女王に話しかけた。
「女王陛下、そろそろ王城に戻りませんと。。。」
アン女王も腕時計を見て、つぶやいた。
「そうじゃな。。。」
だが、アン女王は僕を見て、微笑み、語り掛けた。
「修司殿、、、
一緒に王城に戻らぬか?
帰りの車中で話がしたい。。。」
すると、シャーロット第二王女も黙ってうなずいた。
ジョージ宰相も「そうですな。。。」とうなずいた。
これに困ったのは練兵場の所長だった。
「ちょっと待ってください。。。
あの巨大生物を誰に解体させよと?」
そう言うと、地上に落下した翼竜のような巨大生物の死骸を指した。
(第77話)
練兵場の所長は話を続けた。
「それに、、、
巨大生物を退治するために、空中から多くの矢を射りました。。。
(第76話、第77話)
その矢だって回収しないといけません。。。」
先週は大隊500人で巨大生物を解体させた。
(第54話)
実はこの時は、ドーラの分隊と、後方支援連隊隷下の分隊しか、練兵場にいなかったんだ。
練兵場には常駐のスタッフがいるが、それほど多くの要員がいる訳じゃない。。。
しかも、今回は翼竜のような巨大生物を、空中から撃退するために、パラグライダーで飛び回り、大量の矢を射た。
加えて、はじめのうちは、全然矢が当たらなかった。
(第76話、第77話)
つまり、多くの矢が、練兵場のあちこちに落ちている状態だった。
この状態を放置して、すなわち矢を残したままだと、次に練兵場で訓練を行う兵士が怪我をするかもしれない。。。
また、このオウゴウヌ王国は、アシエシア大陸の中では、鉄が比較的豊富な国だ。
(第26話)
だが、有り余るほど生産できるわけではなく、鉄は貴重なのだ。
(第21話)
となると、、、矢、特に鏃を回収しなければならないのだ。。。
アン女王はため息をつき、シャーロット第二王女、オリビア第三王女に話しかけた。
「仕方ない。。。
我らも、巨大生物の解体処理と、矢の回収に手伝おうぞ。。。」
そう言って、巨大生物の死骸へ向けて歩き出した。
すると、練兵場の所長は益々困った顔で、アン女王の前に駆け寄り、両手を横に延ばして話しかけた。
「お待ちください!
女王陛下と王太子殿下と第三王女殿下に、
そのようなことをさせるわけには参りません!」
アン女王はニヤリと笑い、練兵場の所長に問うた。
「では、、、どうしろと?」
練兵場の所長はほとほと困った様子で、空を見上げた。
レオ近衛師団長は微笑み、練兵場の所長に近寄り、問うた。
「つぎに、この練兵場を使うのは誰か?」
練兵場の所長は渋々答えた。
「二日後に近衛師団の歩兵連隊の第三歩兵大隊が、
訓練に来る予定です。。。」
すると、レオ近衛師団長は笑顔で練兵場の所長に語り掛けた。
「それでは、第三歩兵大隊長に、上司である僕から、
矢を回収するよう、指示を出しておこう。」
ヒラリー後方支援連隊長が練兵場の所長に語り掛けた。
「我が連隊の分隊を残しておくわ。。。
申し訳ないけど、練兵場のスタッフと、残しておいた分隊メンバで、
巨大生物の解体処理だけ、お願いできないかしら?」
そう言うと、ヒラリー後方支援連隊長は、後方支援連隊隷下の分隊に顔を向けて、語り掛けた。
「大変だと思うけど、巨大生物の解体処理を手伝ってあげて。。。」
後方支援連隊隷下の分隊メンバは一斉に「は!」と答えた。
練兵場の所長はため息をつき、黙ってうなずいた。
そう言うことで、僕を含むドーラの分隊は、アン女王一行と王城に戻ることになった。
そもそも、アン女王とシャーロット第二王女とジョージ宰相は、僕と話したいから、一緒に王城に戻ることを希望した。
なので、当然、僕が運転するワンボックスカーに3人は乗車した。
助手席はドーラが座り、一行の指揮を担い、後部座席にアン女王とシャーロット第二王女とジョージ宰相が座った。
あ、さすがにクラレンス君は別の軽トラに乗車した。
彼は別の軽トラに乗ることになった時は、ホッとした表情を浮かべた。
まあ、そりゃ、先週はレオ近衛師団長とクラリス参謀総長が同乗したからね。。。
(第58話)
女王陛下の夫と同乗するだけでも緊張するのに、女王陛下と王太子と同乗するのは嫌だわな。。。
ジョージ宰相の車は、つまり練兵場に来るときに、アン女王とシャーロット第二王女とジョージ宰相が乗った車は、、、
(第72話)
運転手は行きと同じオリビア第三王女だが、後部座先にクラリス参謀総長とヒラリー後方支援連隊長が乗った。
レオ近衛師団長とウオーレン魔法兵連隊長は練兵場に来た時と同じで、レオ近衛師団長が運転して、軽トラで帰った。
(第72話)
先週と同様に、エイミー少尉、ローレンス曹長、ベリンダ上等兵はオフロードバイク、ケイシー上等兵はスクーターに乗って帰った。
(第58話)
フレッド副長、ヒュー少尉、ジャクソン少尉、ルイス少尉、ケント准尉は軽トラを運転して、王城に帰った。
あ、クラレンス君はフレッド副長の運転する軽トラに同乗した。
また、ダグ騎兵連隊長も先週と同様にオフロードバイクに乗って、王城に帰った。
(第58話)
さて、そんな帰りの道中、ワンボックスカーの後部座席に座ったアン女王は僕に問うた。
「修司殿、つかぬことを尋ねるが、、、
日本でも、王城から練兵場までは、、、
たったの2時間弱で着く距離なのか?」
僕は運転しながら、苦笑いを浮かべ、ルームミラーに映るアン女王をちらりと見て、答えた。
「いえ、1時間くらいの距離ですね。」
やはり後部座席に座っていたジョージ宰相は驚き、つぶやいた。
「たった1時間?」
助手席に座ったドーラも驚き、無言で僕を見つめた。
後部座席のシャーロット第二王女も驚きつぶやいた。
「王城から練兵場まで、2時間弱でも驚きなのに、、、
日本ではたった1時間?」
僕は苦笑いを浮かべながら、運転しながら、話を続けた。
「馬車が道の真ん中を走ってふさいでいたり、、、
放牧されている家畜の群れが道路の上にいたりで、、、
車を止めることが多いですから。。。」
(第44話)
アン女王な戸惑いながら、僕に語り掛けた。
「そのためにバイクを使っているが。。。」
僕は答えた。
「そもそも、馬車がルールを守って、左側を走っていたり、、、
家畜の群れが道路の上にいなければ、、、
本当はバイク要りませんよね?」
シャーロット第二王女は「そうか。。。」とつぶやいた。
僕は続けた。
「市街地でも、何らかのルールを作って、そのルールを皆が守れば、、、
やっぱりバイクは要りません。。。」
ジョージ宰相も「それもそうだな。。。」とつぶやいた。
僕はさらに続けた。
「日本では交通ルールがあり、それを守ります。。。
また、信号と言って、交通整理する機械もあります。。。
それらによって、車はもっと高速に動けるので、
王城と練兵場の間は1時間の距離ですね。。。」
僕は実現は難しいと思ったが、更に話した。
「また、日本では高速道路と言って、
自動車専用で時速100kmで走ることができる道路もあります。
そんな道路なら、王城と練兵場の約50kmの距離なら、
30分で到達可能ですね。。。」
シャーロット第二王女は半ば不満そうに、半ばボヤく。
「この国には、たった100台くらいしかないわ。。。
(第30話)
その100台しかない自動車のために、、、
ルールを定めたり、、、
信号を設けたり、、、
専用道路を作るのは、、、
この国では無理よ。。。」
ドーラもシャーロット第二王女に同意した。
「そうだな。。。
その約100台の自動車は、、、
軍や政府や王室や上位貴族に配布されており、、
まだ庶民には行き渡っていない。。。
庶民にとっては、
自動車は『特権階級の象徴』になってしまっている。。。
そんな状態でルールを定めるのは、、、
庶民から新たな反発を招きかねない。。。」
補足すると、約100台の自動車のうち、40台は軍に配備されている。
(第72話)
残りの約60台の自動車は、政府や王室や上位貴族に配備されているんだ。
まだ、庶民向けには一台も配備されていない。
後日、アン女王はこう言っていた。
「ようやく、軍、政府、王室、上位貴族への、
自動車の目途がついたところだ。
庶民へは、まだまだこれからだ。。。」
この状態で交通ルールを作り、庶民に『守れ』というのは、、、
特権階級からの『押し付け』に映る恐れがある。。。
しかも、自動車専用道路をつくるは、、、
『特権階級』の象徴を増やす行為に映るおそれがある。。。
いずれにせよ、今はすべきではない。。。
話を元に戻そう。
シャーロット第二王女とドーラに僕はうなずいた。
「ええ、、、現状はバイクで安全を確保するしかありませんね。。。」
そう言うと、再び、ルームミラーのアン女王をちらりと見て、話を続けた。
「むしろ、、、この状態で、、、
よくぞ舗装道路を整備してくれたと思いますよ。。。」
(第58話)
アン女王はシャーロット第二王女に顔を向けて、語り掛けた。
「シャーロット、今はこうするしかない。。。
しかし、お前の治世、そしてお前の子の治世では、
もっと自動車を増やし、庶民にも車が普及するよう努めるのだ。。。
そして、交通ルールを定め、信号を設置し、専用道路を作り、
もっと物流を改革するのだ。」
(次話に続く)
次話は2026/4/26 0時に更新予定です。




