第78話 女王、苦笑いを浮かべる。
(前話からの続き)
その巨大生物は、悲鳴も上げることもできず、息もすることもできず、そのまま、頭から地上に落下した。
落下した時は『ドオオオオン!!!』という大きな音を立てた。
そして、その落下した巨大生物は、地上でピクリとも動かなくなった。
巨大生物が落下し、動かなくなったことを確認すると、ダグ騎兵連隊長と娘のエイミー少尉は、互いにニヤリと笑い、無言でハイタッチした。
先週は、身体魔法を使って、ダグ騎兵連隊長とエイミー少尉は強弓から何本も矢を放った。
そして、その身体強化魔法の反動で力が入らなくなった。
特にエイミー少尉は座り込み、しばらく動けなくなった。
(第54話)
だが、今回は強弓で矢を一つ射ただけだ。
ダグ騎兵連隊長曰く、「この程度、何の反動もないぜ。」と言うことだ。
つまり、今回は身体強化魔法の反動はなかった。
無線通信機から、ルイス少尉の声が聞こえてきた。
「ところでさ~、修司殿。。。
パラグライダーって、どうやって降りるの?」
僕は無線通信機を通じて、ルイス少尉に話しかけた。
「8の字を描きながら、旋回を続けてください。
自然と速度が落ち、高度が落ちていくはずです。」
しばらくすると、無線通信機を通じてルイス少尉の声が聞こえた。
「本当だ。」
僕は無線通信機を通じて、さらにルイス少尉に話しかけた。
「着陸するときは、なるべく風上に向かってまっすぐ飛んでください。
着陸寸前にハーネスからおしりを前にずらしてください。
そして左右のブレークコードを引いて、ブレーキをかけてください。
そして、少し前傾姿勢になり、片足から着地して、
前に前に走り抜けてください。」
クラリス参謀総長もルイス少尉も、8の字を描きながら、旋回を行っている。
つまり、着陸態勢に入った。
ただし、翼竜のような巨大生物との戦いで、練兵場の上空を二人は飛び回った。
だから、僕達、つまりドーラの分隊がいる所より、少し離れた場所に着陸しそうだ。
ドーラは、上空でパラグライダーで旋回している、クラリス参謀総長とルイス少尉を目で追っていた。
そんな時、王太子である、シャーロット第二王女が真剣な表情で、ドーラに近づき、問うた。
「ドーラ姉上、、、、
先週も巨大生物を撃退したと、父上が仰いました。
(第75話)
一体どうやって、撃退したのですか?」
ドーラはシャーロット第二王女に笑顔を向けた。
「ああ、、、そのことか。。。」
次に、フレッド副長、ケント准尉、ローレンス曹長に顔を向け、優しく話しかけた。
「フレッド、ケント、ローレンス、、、
シャーロットに、お前たちの合体魔法を見せてやってくれ。。。」
フレッド副長、ケント准尉、ローレンス曹長は、直立し、「「「は!」」」と答えた。
フレッド副長は、軽トラから、アルコールの入っている缶を持ち出した。
そして、フレッド副長は、ケント准尉とローレンス曹長に黙ってうなずいた。
ケント准尉は何もいない空に向かって火炎魔法を放った。
その後ろにローレンス曹長が移動し、風の魔法を放った。
それによって、火炎魔法の射程が延びた。
その射程が延びた火炎魔法の先端付近に、フレッド副長がアルコールを転移させた。
アルコールが引火し、さらに射程が延びた。
シャーロット第二王女を唖然としてつぶやいた。
「なに!? この、長距離火炎魔法!?」
ジョージ・ロビンソン宰相を驚き、つぶやいた。
「こりゃ、大魔法レベルだ。。。」
ドーラは微笑み、フレッド副長、ケント准尉、ローレンス曹長に指示した。
「もうよい。魔法を止めよ。」
フレッド副長、ケント准尉、ローレンス曹長は「「「は!」」」と答え、合体魔法を停止した。
ドーラはシャーロット第二王女に顔を向けると、笑顔で語り掛けた。
「この、フレッド、ケント、ローレンスの合体魔法で、
巨大生物を撃退したんだ。。。」
(第53話)
シャーロット第二王女は、目を見開いたまま、黙ってうなずいた。
オリビア第三王女は戸惑いながら、ドーラに近づき、問うた。
「ドーラ姉上、、、、
今みせてもらった合体魔法と、
従来の大魔法とでは、どう違うのですか?」
すると、ドーラが答える前に、ウオーレン魔法兵連隊長が頭を下げて答えた。
と言うのも、ウオーレン魔法兵連隊長は、オウゴウヌ王国の魔法兵のトップだ。
(第33話)
つまり、ウオーレン魔法兵連隊長は、オウゴウヌ王国において、一番の魔法の専門家なのだ。
だから、彼がオリビア第三王女の質問に答えた。
「オリビア殿下、、、
ドーラ中尉の代わりに、私がお答えします。。。
大魔法は魔法兵でも数発しか撃てない上に、
そもそも高速に移動する物体を撃つには向いていないのです。。。」
(第53話)
ウオーレン魔法兵連隊長は、なおも頭を下げて、話を続けた。
「でも、この合体魔法は、
一人一人の魔法は大魔法ではありません。
よって、何発も撃てます。
しかも高速に移動する物体にも対処可能です。」
(第54話)
そう言うと、ウオーレン魔法兵連隊長は頭を上げた。
アン女王は戸惑いながら、ウオーレン魔法兵連隊長に問うた。
「つまり、『魔法の革命』を余は見ていると?」
ウオーレン魔法兵連隊長は黙ってうなずいた。
ま、『革命』なんて、そんな大層なもんじゃないと思うけどね。。。
そうこうしているうちに、クラリス参謀総長とルイス少尉が着陸した。
予想通り、二人とも、僕を始め、ドーラの分隊がいるところとは離れたところに着陸した。
ドーラは二人の着陸を見ると、騎乗しようとした。
その時、ダグ騎兵連隊長がドーラを呼び止めた。
「ドーラ中尉、、、
着陸したクラリスとルイスを回収しに行くのか?」
ドーラは戸惑いながら、黙ってうなずいた。
ダグ騎兵連隊長は微笑み、ドーラに語り掛けた。
「二人を一度に回収するなんて無理だろ?」
ダグ騎兵連隊長は、ローレンス曹長とベリンダ上等兵に顔を向けて、語り掛けた。
「ローレンス、ベリンダ。。。
オフロードバイクで、クラリスとルイスを回収して来い。
もう、オフロードバイクの操作にも慣れ、練兵場内を駆け回れるはずだ。」
ローレンス曹長とベリンダ上等兵は直立し、「「は!」」と答えると、オフロードバイクに乗り、二人の着陸地点に向けて走って行った。
しばらくすると、ローレンス曹長がクラリス参謀総長をオフロードバイクの後ろに乗せて、ベリンダ上等兵がルイス少尉をオフロードバイクの後ろに乗せて戻ってきた。
僕を含めドーラの分隊メンバ、ヒラリー後方支援連隊長に同行した後方支援連隊隷下の分隊メンバは、クラリス参謀総長とルイス少尉を拍手で迎えた。
クラリス参謀総長はオフロードバイクから降りると片手をあげ、拍手を制した。
そして、オフロードバイクに降りた娘のルイス少尉に近づき、笑顔で、優しく語り掛けた。
「まずは、巨大生物の撃退、おめでとう。。。
(第77話)
よくやったわ。。。
でも、今回は地上からの支援があったからよ。。。
地上からの支援がなくても、撃退できる状態じゃなければ、
もっと高く飛んだり、練兵場の外に飛ぶのは認めないわよ。」
ルイス少尉は少し不満げな表情であったが、うなずき、答えた。
「分っているわよ。。。
もっと空中からの弓矢の腕を上げて、、、
加えて空中での戦術を考えるわよ。。。」
クラリス参謀総長は、笑顔で、娘のルイス少尉に語り掛けた。
「そうよ。がんばりなさい。」
シャーロット第二王女は、真剣な表情のまま、クラリス参謀総長に近づき、問うた。
「参謀総長、従来の飛行魔法で、
巨大生物に対する自衛策は可能であったか?」
ああ、、、シャーロット第二王女は、王太子だ。
すなわち、将来はこのオウゴウヌ王国の女王となるよう、生まれた時から、この国を統べる宿命を背負っている。
だが、この国は約200年前の戦争以来、和平を結んでいないから、ずっと戦争状態にある。
しかも、鎖国状態にある。
(第27話)
加えて、ワスイ帝国の脅威が迫っている。。。
(第60話)
そんな国の女王にならなければならないのだ。
5年後には彼女は、そんな国の女王にならなければならないんだ。
10年後にはアン女王の全てを引き継がなければならないんだ。
(第39話)
王太子としてのプレッシャーは凄まじいものがあったんだ。。。
ほら?
だから、僕の歓迎晩餐会のビデオメッセージ放映会で、彼女はこう言ったんだ。
「王太子になぞ、なるものではありません。。。」
(第16話)
王太子として責任感からか、シャーロット第二王女は、普段、とってもまじめな人なんだ。
僕は1年間、王族として、彼女とは接していたんだけど、たまに『もっと肩の力を抜いても良いんじゃ?』と思う程だったよ。。。
話を戻そう。
再び、オウゴウヌ王国の一番の魔法の専門家として、ウオーレン魔法兵連隊長が頭を下げ、答えた。
「王太子殿下(=シャーロット第二王女)、、、
参謀総長閣下に代わり、私がお答えします。
従来の飛行魔法で、
巨大生物に対する自衛は難しいと思います。」
シャーロット第二王女は、戸惑い、「なぜ?」と問うた。
ウオーレン魔法兵連隊長は頭を下げたまま、答えた。
「まず、従来の飛行魔法では、
右手からずっと飛行魔法を放ち続ける必要があり、
右手が塞がっております。
そこから、自衛のために、別の魔法で放つことは不可能です。」
そう、この世界の魔法は右手から放たれる。
(第32話)
その右手が塞がっている状態で別の魔法を放つのは不可能なのだ。
シャーロット王太子は「あ!」とつぶやいた。
ウオーレン魔法兵連隊長は、なおも頭を下げたまま答えた。
「となると、、、
左手一本で自衛策をとる必要がありますが、、、
左手のみで矢を射るのは難しく、、、
自衛策はかなり限られたものになると存じます。。。」
シャーロット王太子はため息をつき、上空を見上げた。
アン女王は戸惑いながら問うた。
「これまで飛行する者は自衛策はなかったというわけか?」
クラリス参謀総長はうなずき答えた。
「はい、、、
これまで飛行魔法を操る者を偵察任務に使っておりました。
しかし、大変危険な任務でした。。。
そもそも、空にいるから目立つ上に、隠れる場所や逃げ場がございません。。。
(第48話)
加えて、自衛策がないに等しいのです。。。
ここぞと言う時しか、飛行魔法を操る者を偵察任務に使えませんでした。」
アン女王はなおも戸惑い問うた。
「パラグライダーなら、飛行する者が自衛策を講じることが可能だと?
偵察任務がしやすくなると?」
クラリス参謀総長は「はい」とうなずいた。
アン女王はヒラリー後方支援連隊長を横目でちらりと見て、つぶやいた。
「ヒラリーの言うとおり、
『パラグライダーは、
我が国の飛行する兵士のあり方を根本的に変える』
であろうな。。。」
(第74話)
アン女王は気を取り直し、僕を見て、苦笑いを浮かべ、ため息をついた。
「修司殿、、、
ここ、練兵場に来て、余は驚いてばかりじゃ。。。
修司殿がこの国に来て、まだ3週間程度であろう?」
僕は戸惑い、「はあ」と答えた。
アン女王は苦笑いを浮かべたまま、僕とドーラを見て、あきれて語った。
「その3週間程度で、、、
ドーラの分隊は、エリーゼ姉上の分隊に似てきたな。。。」
僕は怪訝な表情を浮かべ、母、エリーゼの分隊メンバだった、レオ近衛師団長、ダグ騎兵連隊長、ウオーレン魔法兵連隊長、ヒラリー後方支援連隊長、クラリス参謀総長に顔を向けた。
レオ近衛師団長は、言いにくそうに、ぽつりと言った。
「いや~、晋一殿(=修司の父)は、
ときどき我々が思いもつかないことを、思いつくんだ。。。」
クラリス参謀総長は、ウオーレン魔法兵連隊長とヒラリー後方支援連隊長を横目でちらりと見て、ため息をついて話した。
「で、、、晋一殿(=修司の父)は、思いついたことを、
ウオーレンとヒラリーに最初に相談するわけ。。。」
ダグ騎兵連隊長もため息をついて、話した。
「最初のうちは、、、
晋一殿(=修司の父)とウオーレンとヒラリーで話し合っているんだけど、、、
それが、徐々に盛り上がっていくんだ。。。」
ヒラリー後方支援連隊長もため息をついて、話した。
「で、、、知らぬ間に、その輪の中に、、、、
レオとクラリスが混ざっているの。。。」
クラリス参謀総長は頬を膨らませて反論する。
「だって~、面白そうなんだもん。。。」
レオ近衛師団長は苦笑いを浮かべて、黙ってうなずいた。
ウオーレン魔法兵連隊長もため息をついて、話した。
「エリーゼ分隊長は(=修司の母)、
修司殿もご存じの通り、豪快な性格をしているから、、、
歯止めをかけないんだ。。。
エリーゼ分隊長は歯止めをかけない、
副長だったレオは一緒に暴走している。。。
で、、、エリーゼ分隊は暴走集団と化した。。。」
アン女王もため息をついて話した。
「しかも、、、
当時の女王、ブリジット母上が、
『晋一殿(=修司の父)の自由にさせよ』
ってお墨付きを与えちゃってな~。
王国内で歯止めとなる者がいなくなってしまって、
エリーゼ分隊はもう、やりたい放題。。。
当時の近衛師団長、ダグラス父上は、
『エリーゼ分隊は問題児集団』
って困っていた。。。」
ヒラリー後方支援連隊長は空を見上げ、ため息をついた。
「晋一殿(=修司の父)と分隊長(=修司の母)が結婚する頃には、
分隊規模じゃないメンバ数になっていたっけ。。。」
クラリス参謀総長はため息をつき、苦笑いを浮かべた。
「今振り返ると、よくも、まー、あれだけ暴走したよね。。。」
えー!?
父さん(=普一)、母さん(=エリーゼ)、30年前、何をヤラカシタの!?
(次話に続く)
次話は2026/4/25 0時に更新予定です。




