第76話 巨大生物、再び。(その2) ー数撃ちゃ○○○ー
(前話からの続き)
クラリス参謀総長の声を聞いたドーラは少し緊張した表情で、ケント准尉とローレンス曹長に静かに語り掛けた。
「ケント、ローレンス、、、
母上の近くを警護せよ。
もし、巨大生物が母上を襲う仕草を示したら、
直ちに迎え討て。」
ケント准尉とローレンス曹長は直立し「「は!」」と答えると、アン女王、シャーロット第二王女、オリビア第三王女、ジョージ宰相の2,3m近くまで駆け寄り、上空を飛ぶ、巨大生物を目で追った。
次にドーラはジャクソン少尉にも静かに語り掛けた。
「ジャクソン、、、
念のためだ。。。
そなたも母上の近くを警護せよ。。。
巨大生物が母上を襲う仕草を示し、、、
かつ、ケントとローレンス曹長の魔法を、
巨大生物がくぐりぬけたなら、、、
そのときはそなたの魔法で迎え討て。」
ジャクソン少尉は直立し「は!」と答えると、彼もアン女王、シャーロット第二王女、オリビア第三王女、ジョージ宰相の2,3m近くまで駆け寄り、巨大生物を目で追った。
そして、いつでも魔法を放てるように、右掌を少し持ち上げ、ポーズをとった。
ドーラはジャクソン少尉、ケント准尉、ローレンス曹長が、アン女王の近くで警護に着いたことを見ると、父親であるレオ近衛師団長に顔を向け、黙ってうなずいた。
レオ近衛師団長も、ドーラに向けて、黙ってうなずいた。
クラリス参謀総長とルイス少尉は、離陸の際、1本の弓と、1つの矢筒を持っていった(第70話、第71話)。
もちろん、自衛のためだ。
ルイス少尉の乗るパラグライダーは、翼竜のような巨大生物に近づいた。
そして、ルイス少尉の乗るパラグライダーと、翼竜のような巨大な生物は互いに旋回した。
旋回している間、ルイス少尉は何本か矢を射たが当たらなかった。
ま、これは予想されていたことだった。
そりゃ、空中では揺れるし、風で矢はまっすぐ飛ばない。
しかも矢を射ると、矢を射た反対の方向にパラグライダーが流れるのだ。
ルイス少尉は無線通信を通じて、不平をもらした。
「ちょっと!
どうして、矢を射た反対の方向にパラグライダーが流れるの?」
僕は無線通信を通じて答えた。
「空中では踏ん張りが効かないからです。
矢を射た反動で、
矢を射た反対の方向にルイスさんの身体は流れてしまいます。」
僕は続けて述べた。
「ルイスさん、良いですか?
矢を射るときはまっすぐ、それなりの速度で飛んでください。
そして、なるべく正面方向に矢を射るんです。
そうしないと、矢を射た後の姿勢が安定しません。」
すると、無線通信機を通じて、ルイス少尉が再び不満を述べた。
「それじゃ、矢を射るチャンスがほとんどないじゃない!」
まあ、翼竜のような巨大生物が、まっすぐ飛んでいる時しか、矢を射るチャンスがないからね。。。
しびれを切らしたのだろうか?
無線通信機を通じて、クラリス参謀総長の「下手くそね」との声が聞こえた。
そして、クラリス参謀総長が乗るパラグライダーも、翼竜のような巨大生物に近づき、矢を数本射た。
でも、やっぱり当たらなかった。
地上から、ダグ騎兵連隊長がその様子を見ていた。
たぶん、見かねたのだろう。
ダグ騎兵連隊長は無線通信機を通じて、クラリス参謀総長に問いかけた。
「クラリス、、、
やっぱり、地上から射落とそうか?」
だが、無線通信機を通じて、クラリス参謀総長から声が聞こえた。
「ダメよ! もう少し、やらせて!」
レオ近衛師団長は、苦笑いを浮かべ、ダグ騎兵連隊長に語り掛けた。
「ダグ、、、
いよいよ危ないと判断したら、僕からダグに指示する。。。
それまで、待ってくれないか?」
ダグ騎兵連隊長は黙ってうなずいた。
無線通信機を通じて、クラリス参謀総長のため息が聞こえた。
そして、次の声が聞こえた。
「修司殿、、、なんとかならない?」
僕の周辺にいた人達は、僕に一斉に顔を向けた。
僕は内心頭を抱えた。
『なに!? この無茶ブリ!?』
でも、、、しかたない。。。
と言って、、、
命中率を劇的に上げる方法なんて、、、
ない。。。
『数撃ちゃ当たる』戦術をとるしかないだろう。。。
だったら、、、
『どうしたら良い?』。。。
僕はドーラに語り掛けた。
「ドーラさん、、、
ここに、クロスボウってありますか?」
近くにいたヒラリー後方支援連隊長は戸惑いながら問うた。
「修司殿、、、
弓からクロスボウに変えて、
命中率が上がるとは思えないのだけど。。。」
僕はうなずき答えた。
「おそらく、、、
命中率は若干上がるかもしれませんが、、、
劇的には命中率は上がらないでしょうね。。。」
ダグ騎兵連隊長も戸惑い問うた。
「じゃあ、どうして、クロスボウに変えるんだ?」
僕は苦笑いを浮かべて答えた。
「クロスボウにあらかじめ矢を装填した状態で、
フレッドさんの魔法を使って、
次から次へとクラリス参謀長とルイスさんに転移させるです。」
レオ近衛師団長はハッとしてつぶやいた。
「そうか!
それなら、クラリスとルイスはチャンスと思ったら、
矢の装填されているクロスボウの引き金を引くだけですむ。
命中率はわずかだか上がるだろう。。。」
僕はうなずき、話を続けた。
「クラリス参謀総長とルイスさんは、
矢を射たらクロスボウを手放してもらいます。
落下中のクロスボウを、
フレッドさんの魔法で転移させて地上で受け取ります。
そのクロスボウを地上で再び矢を装填し、
またクラリス参謀長とルイス少尉に転移させるんです。
そうやって、次から次へ、
パラグライダーから巨大生物に向かって矢を射るんです。」
ドーラはつぶやいた。
「つまり、数撃ちゃ、、、」
僕は黙ってうなずいた。
ドーラはフレッド副長・ヒュー少尉・ベリンダ上等兵・ケイシー上等兵に叫んだ。
「フレッド、ヒュー、ベリンダ、ケイシー!
クロスボウと矢筒をありったけ持ってこい!」
フレッド副長・ヒュー少尉・ベリンダ上等兵・ケイシー上等兵は直立し、一斉に「「「「は!」」」」と言って、倉庫へ走って行った。
レオ近衛師団長はドーラとウオーレン魔法兵連隊長に語り掛けた。
「ドーラ、、、
お前はしばらく、クラリスとルイスへの地上支援に専念せよ。
ウオーレン、、、
ドーラには地上支援に専念させるため、
ジャクソン、ケント、ローレンスの指揮を執ってくれ。
アン、シャーロット、オリビア、宰相閣下の護衛のためだ。
ドーラ、、、
しばらく、ジャクソン、ケント、ローレンスの指揮権を
ウオーレンに委ねてくれ。」
ドーラはレオ近衛師団長に頭を下げ、答えた。
「父上、配慮ありがとうございます。」
そしてドーラはウオーレン魔法兵連隊長に頭を下げ、話しかけた。
「ウオーレン・ウッドハウス魔法兵連隊長閣下、
しばらく、ジャクソン、ケント、ローレンスの指揮をお願いします。」
ウオーレン魔法兵連隊長は「いいってことよ」とつぶやくと、アン女王、シャーロット第二王女、オリビア第三王女、ジョージ宰相の2,3m近くまで駆け寄り、巨大生物を目で追った。
無線通信機を通じて、クラリス参謀総長の声が聞こえた。
「ま、それが今は現実的ね。。。
修司殿のアイデアを私が少しアレンジする。。。
ルイス、私が囮になる。。。
あなたは私を追いかける巨体生物の後ろに近づき、
矢を射なさい。」
無線通信機を通じて、ルイス少尉の戸惑いの声が聞こえた。
「それって、母さん、、、
じゃない!
参謀総長閣下が危険では?」
すると、無線通信機を通じて、クラリス参謀総長があきれて罵る声が聞こえた。
「バカ!
あなたが矢を放ったら、
次はあなたを巨大生物が追ってくるわ!
その時はあなたが囮となりなさい!
私が巨大生物の後ろに近づき、矢を射るから!
こうやって、囮役と矢を射る役を交代しながら、
巨大生物を振り回すのよ!」
無線通信機からルイス少尉の声が聞こえた。
「了解!」
(次話に続く)
次話は2026/4/23 0時に更新予定です。




