第75話 巨大生物、再び。(その1) ークラリス参謀総長の指示ー
(前話からの続き)
再び、「巨大生物よ!」との声が鳴り響いた。
僕はその声の方向を振り向いた。
そこにはオリビア第三王女が空を指さしていた。
オリビア第三王女は、クラリス参謀総長とルイス少尉がパラグライダーで空を飛んでいる方向とは、別の方向を指さしていた。
指さした方向を見ると、第53話と同じ、大きさが10m以上もある、巨大な生物が空を飛んでいた。
その生物は胴体に比べ首は長く、頭も大きかった。
しかも、頭はこぶのようなものがあり、大きなくちばしを有していた。
そう、翼竜のような巨大生物が飛んでいた。
やはり、第53話のように、その翼竜のような巨大生物は、パラグライダーで空を飛ぶ、クラリス参謀総長とルイス少尉に興味を持ったのか、近づいてきた。
ジョージ・ロビンソン宰相は、巨大生物を確認すると、慌ててアン女王に進言した。
「女王陛下! 危険です!
直ちに避難を!」
練兵場の所長も官舎から慌てて走ってきた。
たぶん、練兵場にアン女王がいることを知っていたのだろう。
練兵場の所長だけでなく、練兵場の官舎のスタッフの多くが走ってきた。
練兵場の所長も、アン女王に叫んだ。
「その通りです!
直ちに避難してください!
我々が官舎まで先導いたします!」
だが、それをレオ近衛師団長が大声で制した。
「避難する必要はない!
ここには巨大生物に対抗できる戦力が十分にある!
下手にここから動く方が危険だ!」
アン女王はレオ近衛師団長を見た。
レオ近衛師団長はアン女王に無言でうなずいた。
アン女王は静かにジョージ宰相と練兵場の所長に話しかけた。
「余はレオを信じる。
レオが動かぬ方が良いと言うなら、ここに留まる。」
ジョージ宰相は戸惑いながら、レオ近衛師団長に問うた。
「近衛師団長閣下、、、
巨大生物に対抗できる十分な戦力が、、、
ここにあると言うのは本当ですか?」
レオ近衛師団長はニヤリと笑い答えた。
「ああ、、、
先週、ここ練兵場に、同じ巨大生物が襲来したが、、、
ここにいるドーラの分隊が撃退した。。。」
(第53話)
ジョージ宰相は「なんと!」とつぶやいた。
それだけでなく、アン女王、シャーロット第二王女、オリビア第三王女も驚きの表情を浮かべた。
レオ近衛師団長は練兵場の所長に顔を向けて語り掛けた。
「所長はこの件を知っていると思うが?」
練兵場の所長は黙ってうなずいた。
レオ近衛師団長は上空を見上げ、ダグ騎兵連隊長に語り掛けた。
「それに、、、
今回の巨大生物は、先週より、ずっと低く飛んでいる。。。
ダグ、、、
君の強弓なら十分届くだろ?」
補足すると、ルイス少尉が離陸した際、ドーラから高く飛ばないように念押しされていた。
(第71話)
ルイス少尉も先週の失敗から、自衛策が十分になるまで、高く飛ぶことを自重していたのだ。
(第70話)
話を戻そう。
レオ近衛師団長から話を振られると、ダグ騎兵連隊長は巨大生物を目で追いながら、ニヤリと笑い、「おうよ!」と答えた。
そして指をポキポキならしながら、なおも巨大生物を目で追いながら、娘のエイミー少尉に話しかけた。
「エイミー!
強弓を持ってこい!
この高度なら十分届く!
この前は高度が高くて、矢が届かず、
フラストレーションが溜まったんだ!
この前のリベンジだ!」
(第53話)
エイミー少尉もニヤリと笑い、「は!」と言って、倉庫まで走って行った。
レオ近衛師団長は微笑み、ジョージ宰相に話しかけた。
「そう言うことで、、、
ここには、巨大生物を撃退するだけの十分すぎる戦力がある。
ここから離れる方が、危険だ。」
ジョージ宰相は唖然としながらも、黙ってうなずくしかなかった。。。。
ドーラはフレッド副長、ケント准尉、ローレンス曹長に向けて、叫んだ。
「フレッド、ケント、ローレンス、
あの巨大生物を、合体火炎魔法で迎え討て!」
フレッド副長、ケント准尉、ローレンス曹長は直立し、「「「は!」」」と答えた。
だが、ケント准尉はニヤリと笑い、ドーラに話しかけた。
「しかし、分隊長(=ドーラ)、、、
この高度なら、副長の手助けはなくとも、
ローレンス曹長との二人の合体魔法、、、
つまりミドルレンジで迎撃可能です。」
ドーラは巨大生物を目で追い、ニヤリと笑った。
「あの高度なら余裕だな。。。」
ドーラはフレッド副長、ケント准尉、ローレンス曹長に合体火炎魔法の完成度を高めるように指示していた。
(第66話)
そして練兵場にて合体火炎魔法の練習をしていた。
(第69話)
当然ドーラは合体火炎魔法の練習を見ていたから、射程距離も把握していた。
ドーラはケント准尉とローレンス曹長に叫んだ。
「ヨシ!
ケント、ローレンス、合体火炎魔法で迎え討て!」
そして、フレッド副長に叫んだ。
「フレッド、巨大生物が空高く逃げるかもしれぬ。
その時に備えて、待機せよ!」
フレッド副長、ケント准尉、ローレンス曹長は再び直立し、「「「は!」」」と答えた。
ちょうどそこにエイミー少尉が2本の強弓と、2つの矢筒を持って、走って戻ってきた。
エイミー少尉から、ダグ騎兵連隊長は1本の強弓と、1つの矢筒を受け取ると、ドーラに語り掛けた。
「ドーラ中尉、済まないが、俺にやらせてくれ。
先週、矢が届かなかったから、フラストレーション溜まってんだ。」
すると、ドーラはダグ騎兵連隊長に頭を下げ、答えた。
「は! それではお譲りします!」
そう言うと、ドーラは頭を上げると、ケント准尉とローレンス曹長に叫んだ。
「ケント、ローレンス、しばし待て!」
ダグ騎兵連隊長は上着を脱ぎ始めた。
おそらく、先週と同じで、上着を脱いで、身体強化の魔法を発動する気だろう。
(第53話)
そのとき、無線通信機を通じて、クラリス参謀総長の声が聞こえた。
「皆、迎撃はちょっと待って。。。」
そして、次の声が聞こえた。
「ルイス、あの巨大生物を撃退しなさい。」
その声にダグ騎兵連隊長は戸惑い、無線通信機を通じて、クラリス参謀総長に語り掛けた。
「クラリス、大丈夫か?
ルイスは今日、再び、空を飛んだばかりだろ?」
(第70話)
ああ、ダグ騎兵連隊長には、先週、練兵場から王城に戻る際、オフロードバイクに乗って帰ったから(第58話)、その時、無線通信機を渡してあったんだ。
話を戻そう。
クラリス参謀総長は、無線通信機を通じて、ダグ騎兵連隊長に返した。
「ええ、確かに、ルイスは、今日、再び空を飛んだばかりよ。。。
でも、今日は、十分な地上からの支援が得られる。
だから、もし、、、
ルイスが巨大生物の撃退に失敗したとしても、、、
十分リカバーできる。。。
だから、いまは、、、
ルイスが巨大生物との自衛を実戦で身に着けるには、
絶好の機会よ。。。」
確かに、クラリス参謀総長の言うとおりだ。
レオ近衛師団長は苦笑いを浮かべ、ダグ騎兵連隊長に語り掛けた。
「ダグ、、、ここは、クラリスに任せよう。。。」
ダグ騎兵連隊長はため息をつき、黙ってうなずいた。
再び、無線通信機からクラリス参謀総長の声が聞こえた。
「ただし、もし、、、
陛下に危険が及んだら、そちら(=地上)で対処して。。。
お願い。。。
それまではルイスにやらせて。。。」
クラリス参謀総長の声を聞いたドーラは少し緊張した表情で、ケント准尉とローレンス曹長に静かに語り掛けた。
「ケント、ローレンス、、、
母上の近くを警護せよ。
もし、巨大生物が母上を襲う仕草を示したら、
直ちに迎え討て。」
ケント准尉とローレンス曹長は直立し「「は!」」と答えると、アン女王、シャーロット第二王女、オリビア第三王女、ジョージ宰相の2,3m近くまで駆け寄り、上空を飛ぶ、巨大生物を目で追った。
次にドーラはジャクソン少尉にも静かに語り掛けた。
「ジャクソン、、、
念のためだ。。。
そなたも母上の近くを警護せよ。。。
巨大生物が母上を襲う仕草を示し、、、
かつ、ケントとローレンス曹長の魔法を、
巨大生物がくぐりぬけたなら、、、
そのときはそなたの魔法で迎え討て。」
ジャクソン少尉は直立し「は!」と答えると、彼もアン女王、シャーロット第二王女、オリビア第三王女、ジョージ宰相の2,3m近くまで駆け寄り、巨大生物を目で追った。
そして、いつでも魔法を放てるように、右掌を少し持ち上げ、ポーズをとった。
(次話に続く)
次話は2026/4/22 0時に更新予定です。




