第73話 女王の驚き(その2) ー王族と上位貴族の責務ー
(前話からの続き)
レオ近衛師団長は笑って答えた。
「あはは。。。
近衛師団に配備されていた軽トラに乗ってね。。。
宰相閣下の車には、アン、シャーロットが乗り、オリビアが運転したんだ。
僕とウオーレンは、軽トラに乗って、僕が運転した。
オリビアが運転する車の後ろを、僕が運転する軽トラで走ってね。。。
自動車2台に対して、スクーターと、
ダグが運転したオフロードバイクで警護して、
ここ、練兵場までやってきたってわけ。。。」
ウオーレン魔法兵連隊長は微笑み、「そういうこった」と答えた。
オリビア第三王女は、レオ近衛師団長の言葉を聞いて、半ば呆れ、半ばボヤいた。
「宰相閣下の車を運転してきて、
後部座席に母上と宰相閣下、
助手席にシャーロット姉上に乗ってもらったけど、、、
2時間弱で着いちゃったじゃないの。。。
自動車で来れば、王城と練兵場なんてこんなに近いんだ。。。」
そしてオリビア第三王女は、シャーロット第二王女に顔を向け、話しかけた。
「シャーロット姉上、、、
軍事教練でここ、練兵場に来るけど、、、
騎乗して1日がかりだったよね?」
シャーロット第二王女は、オリビア第三王女を見つめ、語り掛けた。
「軍事教練では前日の夜に騎乗して王城を発し、
翌朝、練兵場に着くけど、、、
自動車とバイクの警護があれば、
その必要はないってこと?」
慌てて、アン女王が、シャーロット第二王女とオリビア第三王女を罵った。
「あれはセレモニーじゃ!
ズルは許さんぞ!
特にシャーロット!
そなたは王太子じゃ!
ズルは絶対に許されん!
肝に銘じておけ!」
シャーロット第二王女とオリビア第三王女はハモって不平を漏らした。
「「え~~~~~!!」」
補足すると、王族と上位貴族は、数か月に一度、数日にわたって、練兵場で軍事教練を受けなくてならない。
というのも、王族と上位貴族の権威や存在意義は、巨大生物や外国の侵略から国民を守ることによって、得られるものであるからだ。
(第36話)
ましてや、この国は、約200年前の戦争以降、国際政治上は戦争状態が続いている。
(第27話)
つまり、軍事教練の参加は、王族と上位貴族の義務みたいなものなんだ。
で、、、
その軍事教練の初日の前日の夜、王族と上位貴族は騎乗して王城に集結するんだ。
上位貴族が集結すると、アン女王は馬上から、上位貴族達に「これより教練に参る!」という掛け声を掛けるんだ。
その後、アン女王・シャーロット第二王女・オリビア第三王女は馬に乗って、先頭に立ち、練兵場へと出発するんだ。
その後ろを、オスカー元老院議長、その妻のソフィア叔母さん、その娘のアリシアさんとベティさんが騎乗する馬が続く。
あ、まだシェリーさんは年齢に達していないと言うことで免除されているけど、数年後は参加しなくちゃいけないんだって。
そのまた後ろに、その他の公爵家の当主と妻と年齢に達した子供達の乗る馬が続き、さらにその後ろに伯爵家が続くんだ。
要するに上位貴族も王族に後を追って、馬に乗り、練兵場に向かうんだ。
第44話でも述べたが、馬は常歩で時速5~6kmなので、王城から練兵場には10時間近くかかる。
そう、前日の夜に王城を発して、翌朝、練兵場に着くんだ。
もちろん、途中で数回、休憩をはさむらしい。
つまり、軍事教練の初日の前日の夜、王族と上位貴族は騎乗して王城に集結するところから、軍事教練は実質始まっているんだ。
アン女王の掛け声は、軍事教練開始の儀式みたいなもんだから、省くことはできない。
だから、アン女王は「あれはセレモニーじゃ!」と言ったわけ。
ちなみに、軍事教練の最終日の夕方、騎乗して練兵場を発し、翌日の早朝、王城に帰ることになる。
やっぱり、アン女王を先頭に、シャーロット第二王女、オリビア第三王女が続き、その後ろを元老院議長の家族、公爵家、伯爵家が続くんだ。
王城に帰った時、アン女王は上位貴族達に馬上から、「これにて解散! ご苦労であった!」という掛け声をかけるんだ。
そこでやっと解散で、この替え声も軍事教練終了の儀式みたいなもんだから、省くことはできない。
しかも、、、
初日の前日の夜の集結の場所と、最終日の翌朝の解散場所は、王城の北の区域で、一般人も立ち入り可の場所なんだ。
(第23話)
要するに、軍事教練開始の儀式と、軍事教練終了の儀式は、大衆が目にする場所なんだ。
大衆に対して、王族や上位貴族は、国民を守るために、備えを怠らない姿勢を示す必要がある。
だから、大衆が目にする場所で、軍事教練開始の儀式と、軍事教練終了の儀式を行っているんだ。
となると、、、自動車で練兵場に行くなんてズルは、、、特に王族はするわけにはいかない。。。
だから、アン女王は、シャーロット第二王女とオリビア第三王女に、「ズルは許さんぞ!」と罵ったってわけ。。。
特にシャーロット第二王女は王太子だからね。。。
絶対にズルは許されない。。。
え?
じゃあ、なぜ、その儀式にレオ近衛師団長とドーラがいないのかって?
実は近衛師団、とくに近衛師団の上層部と、近衛師団の騎兵連隊は、王族と上位貴族の軍事教練の教官として、初日の前日には移動して待っているんだ。
そう、第72話で言ったように、近衛師団・騎兵連隊には雑務が多いんだ。
王族と上位貴族の軍事教練の教官も、近衛師団・騎兵連隊の業務ってわけ。
ちなみに、レオ近衛師団長とドーラは、軍事教練の最終日の翌日の夕方に、帰ってくるらしいんだけど。。。
さて、話を戻そう、アン女王、シャーロット第二王女、オリビア第三王女の姿を見ると、ドーラの分隊メンバ、特に女性メンバが寄ってきた。
ドーラは驚き、3人に駆け寄った。
「母上、シャーロット、オリビア。。。
どうしてここに?」
アン女王は苦笑いを浮かべて答えた。
「ドーラ、そして修司殿、、、
お前たちが驚くべきスピードで、
王城と練兵場を行き来していると聞いて、、、
(第58話)
実際に同じやり方をすると、
2時間もかからず、ここ、練兵場に着いて
驚いたぞ。。。」
シャーロット第二王女もオリビア第三王女も苦笑いを浮かべ、黙ってうなずいた。
他のメンバも駆け寄った。
エイミー少尉は笑顔で頭を下げた。
「女王陛下、王太子殿下(=シャーロット第二王女)、第三王女殿下、
お久しぶりです!」
ケイシー上等兵は、おどおどとしながらも、「お久しぶりです」と頭を下げた。
ローレンス曹長とベリンダ上等兵も笑顔で、黙って頭を下げた。
先ほど、王族と上位貴族の軍事教練の教官として、近衛師団の騎兵連隊は練兵場で待っていると言った。
実は、アン女王、シャーロット王太子、オリビア第三王女の教官は、ドーラの分隊メンバが務めているんだ。
だから、ドーラの分隊メンバと、アン女王、シャーロット第二王女、オリビア第三王女は、顔見知りなんだ。
え?
なぜ、ドーラの分隊メンバが、アン女王、シャーロット第二王女、オリビア第三王女の軍事教練の教官を務めているかって?
そりゃ、フレッド副長、ヒュー少尉、ジャクソン少尉、ケント准尉が、ドーラの分隊に配属された理由は、僕はおおよそ察している。
(第37話)
その推測が正しいなら、、、そういうことじゃない?
シャーロット第二王女は、ローレンス曹長とベリンダ上等兵に笑顔を向け、話しかけた。
「ローレンス、ベリンダ、、、
息災であったか?」
オリビア第三王女もローレンス曹長とベリンダ上等兵に笑顔を向け、話しかけた。
「ローレンス、ベリンダ、、、久しぶり。。。」
ローレンス曹長とベリンダ上等兵も笑顔で、再び、黙って頭を下げた。
ローレンス曹長とベリンダ上等兵は、ドーラの分隊に配属された年月が、他のメンバより長い。
だから、ローレンス曹長とベリンダ上等兵は、シャーロット第二王女とオリビア第三王女に、軍事教練の教官として接したことが、メンバの中では特に多いんだ。
ところで、ドーラ分隊が軍事教練の際、アン女王、シャーロット第二王女、オリビア第三王女の教官を務めている理由も、おおよそ察することができる訳なんだけど。。。
実は、シャーロット第二王女には、男性メンバは遠慮して、近寄ろうとしなかった。
そりゃ、相手が王太子では、おいそれとは近づけんわな。。。
それには、ドーラが苦笑いを浮かべていた。
(あきれた笑い)ははは。。。
シャーロット第二王女はニヤリと笑い、ドーラに話しかけた。
(次話に続く)
次話は2026/4/20 0時に更新予定です。




