第70話 ルイス少尉、再び空へ(その2) ー今後の訓練ー
(前話からの続き)
再び、クラリス参謀総長の遠笠懸に話を戻す。
クラリス参謀総長は、ドーラの分隊メンバに手伝ってもらって下馬した。
そして苦笑いを浮かべてルイス少尉に語り掛けた。
「こりゃ、遠笠懸は難しいわ。。。」
ルイス少尉はどや顔でうなずいた。
だが、クラリス参謀総長は少し真剣な表情でルイス少尉に語った。
「でも、難しいからって、
それが的に当たらないことに対する、正当な理由にはならないわよ。
あなたは空で自衛策として矢を射て、命中させなくちゃいけないの。
たぶん、空での弓の難しさは、
馬上での弓の難しさとは異なるはずよ。」
ルイス少尉はグッと詰まった。
だって、クラリス参謀総長の言うとおりだからだ。
それを見たドーラは、クラリス参謀総長とヒラリー後方支援連隊長に1m手前に近づき、頭を下げた。
「クラリス・イング参謀総長閣下、
ヒラリー・エイリー後方支援連隊長閣下、
当分の間、
すなわち空中での自衛策の練度が十分であると、
私が認めぬ限り、、、
ルイスの飛行は、
練兵場の上空で、かつ地上からの支援が得られる高度内に留めます。
それを条件に、
ルイスに新たな空を飛ぶ装備を与えてもらえませんか?」
ヒラリー後方支援連隊長は、少し真剣な表情でドーラに尋ねた。
「空中での自衛策は、地上訓練だけ?」
ドーラは頭を下げながら、僕をちらりと見た。
僕は笑顔でクラリス参謀総長とヒラリー後方支援連隊長に語り掛けた。
「もちろん、地上訓練だけでなく、空中での弓矢の訓練も行います。」
クラリス参謀総長は戸惑いながら僕に問うた。
「空中ってどうやって?
空中に的は置けないわよ?」
僕は笑顔で答えた。
「大丈夫です!
ドローンで的を吊るしますから!」
ヒラリー後方支援連隊長は戸惑い問うた。
「修司殿、ドローンって?」
クラリス参謀総長も戸惑い、黙ってうなずいた。
僕はフレッド副長に顔を向け、彼に語り掛けた。
「フレッドさん、ドローンを操作してもらえませんか?」
フレッド副長は「は!」と答えると、軽トラの荷台から、ドローン1台と操作盤と操作画面を取り出し、ドローンを操作した。
ドローンが空を飛ぶ様を見たクラリス参謀総長とヒラリー後方支援連隊長は驚いた。
僕はドローンに驚く2人をスルーし、更に話しかけた。
「ドローンが飛ぶ姿だけでなく、
ドローンが映す映像もご覧ください。」
そう言うと、フレッド副長のそばにある、操作画面を指さした。
そこで、2人はドローンを操作している操作画面に表示されるドローンからの映像を見て、再度驚いた。
ルイス少尉と同様に(第48話)、クラリス参謀総長は「これは偵察に使える!」とつぶやいた。
フレッド副長とケイシー上等兵と同様に(第48話)、ヒラリー後方支援連隊長は「災害派遣にも使えるわ!」とつぶやいた。
僕はフレッド副長に話しかけた。
「フレッドさん、ドローンをホバリングさせてください。」
すると、フレッド副長は「は!」と返し、ドローンをホバリングさせた。
僕はクラリス参謀総長とヒラリー後方支援連隊長に話しかけた。
「ドローンはこのように空中で静止させることができます。
その空中で静止したドローンに的を吊るせば、
静止目標ができます。
最初は空中から、その静止目標を射る訓練を、
ルイスさんにしてもらいます。」
僕はフレッド副長に再び話しかけた。
「フレッドさん、ドローンをゆっくり移動させてもらえますか?」
フレッド副長は、再び「は!」と返し、ドローンをゆっくり移動させた。
僕はクラリス参謀総長とヒラリー後方支援連隊長に話しかけた。
「このようにドローンはゆっくり移動させることもできます。
だから、ゆっくり移動する目標ができます。
ルイスさんが静止目標を正確に射ることができれば、
次にゆっくり移動する目標を射てもらいます。」
そして僕はクラリス参謀総長とヒラリー後方支援連隊長に頭を下げ、言葉を続けた。
「それが出来たら、さらに難度を上げて、
ルイスさんの空中からの弓矢の腕を上げてもらいます。
よって、これをもって、ルイスさんに新しい装備を与えてください。」
ルイス少尉も頭を下げた。
「空中での自衛策が十分になるまでは、
飛行区域及び高度制限はやむを得ないと思っております。
空中での自衛策の訓練はこれからも行っていきます。
どうか、私に新しい装備をお与えください。」
ルイス少尉だけじゃなかった。
分隊メンバ全員が、クラリス参謀総長とヒラリー後方支援連隊長に頭を下げた。
ヒラリー後方支援連隊長はため息をつき、クラリス参謀総長を見つめ、うなずいた。
クラリス参謀総長は、うなずくヒラリー後方支援連隊長を見ると、ため息をつき、上空を見上げた。
そして数秒後、ルイス少尉を見つめ、口を開いた。
「仕方がない。。。
ルイス、あなたに新しい装備を渡すわ。。。」
クラリス参謀総長はそう言うと、ヒラリー後方支援連隊長と一緒に来た、後方支援連隊隷下の分隊長にうなずいた。
後方支援連隊隷下の分隊長は直立し、「は!」と頭を下げた。
そして、彼は頭を上げ、配下に向け「新しい装備を広げろ!」と指示した。
彼の配下9名は直立し「は!」と答えると、持ってきた包みのうち一つを、一斉に広げた。
予想通り、その中には、ルイス少尉の新たな装備が入っていた。
その新たな装備を一目見て、ルイス少尉はつぶやいた。
「パラシュートに似ているけど、、、
ちょっと違うわね。。。」
僕は微笑み、ルイス少尉に語り掛けた。
「これはパラグライダーと言います。
パラシュートはゆっくり空を降りるものですが、
パラグライダーは高速に前に移動したり、
左右に曲がることができます。」
そう、僕は空を自由に動ける装備を2つ思いつき(第55話)、その内の一つがパラグライダーってわけだ。
ルイス少尉はハッとしてつぶやく。
「そうか、それなら巨大生物から逃げやすくなる。。。」
だが、ヒラリー後方支援連隊長が懸念を述べた。
「でも、修司殿、パラグライダーでどうやって離陸するの?
調べると、傾斜を駆け下りて離陸するようだけど、
ここ、練兵場にはそんな斜面はないわよ?」
僕はヒラリー後方支援連隊長に顔を向け、ニヤリと笑い答えた。
「そうなんですけど、、、
たぶん、、、
ルイス少尉の魔法を使えば、平地でも離陸できますよ。。。」
次に僕はルイス少尉に顔を向けて問うた。
「早速、飛んでみますか?」
ルイス少尉は戸惑いながら、「ええ」とうなずいた。
ルイス少尉はパラシュート降下訓練と時と同じように、ルイス少尉はヘルメット、少しでも衝撃を和らげるための防刃チョッキ、ゴーグルを装着し、当然パラグライダーも装着した。
また、空での自衛策のため、1本の弓と、1つの矢筒も装着した。
そしてヘルメット下には無線通信機のインカムも装着した。
(第51話)
あ、それと、クラリス参謀総長から「私にも無線通信機くれない?」と言われたし、ヒラリー後方支援連隊長からも「私にも一つ」と言われたので、二人に無線通信機を配った。
ルイス少尉が離陸の準備をしている間、僕はルイス少尉に思いついた離陸方法を教えた。
ルイス少尉は戸惑いの表情を浮かべながら、黙ってうなずいた。
ルイス少尉は準備を整えると平地に立った。
ルイス少尉の後ろには広げられたパラグライダーが置かれていた。
そのわきで、僕を含めたドーラの分隊と、クラリス参謀総長とヒラリー後方支援連隊長、そして後方支援連隊隷下の分隊が立っていた。
ルイス少尉はドーラに顔を向けると、黙ってうなずいた。
それを見たドーラも黙ってうなずいた。
ルイス少尉はそのパラグライダーを引っ張りながら、後ろへ走り出した。
パラグライダーは引っ張られ、風を受けて、ゆっくりと上昇した。
そしてパラグライダーは、ルイス少尉の斜め上より、ちょっと上の位置まで上昇した。
僕は無線通信機を通じて、ルイス少尉に話しかけた。
「今です。ルイスさんの魔法を放ってください。」
ルイス少尉は彼女の正面、このとき後ろ向きに走っていたので、移動方向の真後ろに向けて、右手をかざした。
そして、その瞬間、彼女は物凄い速度で後ろに飛んだ。
すると、彼女の移動速度とパラグライダーの揚力で、ルイス少尉の身体は宙に浮いた。
そう、ルイス少尉は再び空に飛んだのだ。
ま、「ギャ~~~!!!」と言う大きな悲鳴を叫びながらだったんだけど。。。
たぶん、パラグライダーに引っ張られて、体が宙に浮いたのが怖かったんだと思う。。。
(あきれた笑い)ははは。。。
高度が数十メートルくらいになった時、僕は無線通信機を通じて、ルイス少尉に話しかけた。
「ルイスさん、もう魔法を放たなくても良いですよ。
それと、前を向いて、パラグライダーのハーネスに座ってください。」
そう、ルイス少尉はパラグライダーで空を飛んだが、実質はモーターパラグライダーのオウゴウヌ王国版ってわけ。
モーターをルイス少尉の魔法で代用したってわけ。。。
ところで、離陸時のルイス少尉の「ギャ~~~!!!」と言う悲鳴を聞いたとき、クラリス参謀総長は片手で頭を抱えて、あきれてつぶやいていた。
「まったく、、、
イング家の恥さらしが。。。」
その横で、ヒラリー後方支援連隊長は、ルイス少尉の悲鳴を上げながらの離陸を見て、「ふふふ」と笑っていた。
ルイス少尉も空を飛んでしばらくすると、落ち着いたようだ。
前を向いてハーネスに座って、空を飛ぶのが気持ちが良かったのだろう。
無線機を通じて、ルイス少尉の「ひゃっほーい」との歓声が聞こえてきた。
知らず知らず、ドーラの分隊メンバは全員、拍手を送っていた。
それだけでなく、後方支援連隊隷下の分隊メンバも拍手を送っていた。
クラリス参謀総長もヒラリー後方支援連隊長も、笑顔で、空を飛ぶルイス少尉を見送っていた。
(次話に続く)
次話は2026/4/17 0時に更新予定です。




