第67話 魔法強化の試み(その2) ー失敗ー
(前話から続き)
そんなケント准尉を見て、不服そうにジャクソン少尉が僕に話しかけてきた。
「修司殿、、、
ケントの魔法ばかり使わず、
僕の魔法を使ってくれよ。。。
一応、僕は魔法兵科じゃケントの先輩なんだ。。。
先輩の面目丸つぶれじゃないか。。。」
僕は思わず、「え?」とつぶやきそうになったが、それを飲み込んだ。
ジャクソン少尉のことも配慮しなきゃいけなかった。
だって、この世界で魔法兵に憧れる人は多い。
(第32話)
だが、授かった魔法が使い物にならなかったり、授かった魔法に殺傷能力がなければ、魔法兵にはなれないのだ。
(第49話)
ある意味、魔法兵はこの世界でのエリートなのだ。
プライドだってあるだろう。
そのプライドに気がつくべきだった。
ましてやジャクソン少尉はウオーレン魔法連隊長の息子だ。
(第30話)
魔法兵としてのプライドは、魔法兵の中でも人一番高いだろう。
ケント准尉の魔法ばかり活用して、ジャクソン少尉の魔法を活用しないのは、、、
そりゃ、ジャクソン少尉は面白くないだろう。。。
僕は慌てて謝った。
「ジャクソンさん、すみません。」
そう言うと頭を下げた。
ジャクソン少尉は僕が謝るとは思わなかったのだろう。
彼は慌てて両手を振って、僕に語り掛けた。
「いや、そう意味じゃなくって、、、」
彼は苦笑いを浮かべると、僕に問うた。
「この前、ルイスが巨大生物に襲われた時、、、
修司殿は、
『ジャクソンさん、火花でもいい!
火花だけでも、
あの巨大生物に届かせることはできませんか!?』
(第53話)
って言ったよね?
一体、何を思いついていたんですか?」
僕は思わず、苦笑いを浮かべた。
だって、あれは今考えると、ヤバかったから。。。
だから、ごまかし笑いをしながら、こう答えた。
「(ごまかし笑い)ははは。。。
あの時は慌てていて、、、
今考えると、止めておいてよかったと思っています。。。
まあ、忘れてください。」
ジャクソン少尉は僕の答えが気に食わない様子で、口を膨らませて、僕に問うた。
「先日から、とても気になっているんですよ。。。
僕が火花だけでも、もっと飛ばせていたら、、、
何ができたんだろうって?」
だが僕は教えたくなかったんだ。。。
だって、ヤバすぎるから。。。
「だから、、、勘弁してください。。。」
でも、ジャクソン少尉は引き下がらなかった。
「いいから! 教えてください!」
その様子を見かねたドーラが苦笑い浮かべて、僕に話しかけた。
「修司殿、ジャクソンが納得できないようだ。
仕方ないから、見せてはもらえまいか?」
僕は困って、ドーラに問うた。
「ちょっと危険ですよ?
良いんですか?」
ドーラは苦笑いを浮かべたまま、黙ってうなずいた。
僕は空を見上げ、ため息をついた。
仕方がない、、、試してみるか。。。
僕は苦笑いを浮かべ、ジャクソン少尉に語り掛けた。
「じゃあ、試しに火花は斜め上に飛ばしてもらって、
火花を飛ばせる範囲を見せてもらえますか?」
するとジャクソン少尉は右手を掲げて、火花を斜め上に飛ばした。
大体数百メートルってところだろうか、巨大生物のスピードに対応できる雷魔法(第53話)よりは、遠くに飛ばすことができた。
しかし、パラシュート降下訓練中のルイス少尉が襲われた高度には及ばなかった。
でも、まあ、この高度なら大丈夫だろう。。。
僕はジャクソン少尉に告げた。
「軽トラタンクローリーを持ってきます。」
ジャクソン少尉は戸惑いながら問うた。
「そういえば、あの時も軽トラタンクローリーで乗り付けたよね?
(第53話)
何か関連があるの?」
僕は黙ってうなずいた。
そして僕は、軽トラとワンボックスカーが駐車してある場所まで歩いて行った。
10分程度経った後、僕は軽トラタンクローリーを運転して、ドーラの分隊がいた場所に止めた。
そして軽トラから降りると、フレッド副長に話しかけた。
「フレッドさん、僕が合図したら、
この軽トラのタンクの中のガソリンを指先ほどの量で良いので、
さっき、ジャクソンさんが火花を飛ばしたところに転移してもらいますか?」
フレッド副長は戸惑いながら、黙ってうなずいた。
次にジャクソン少尉に話しかけた。
「ジャクソンさん、フレッドさんがガソリンを少量転移したら、
すぐに転移した場所に向けて火花を飛ばしてくれますか?」
ジャクソン少尉も戸惑いながら、黙ってうなずいた。
僕はフレッド副長に向けて、黙って手を振った。
するとフレッド副長が給油機内のガソリンをほんの少量、上空に転移させた。
その刹那、ジャクソン少尉がそこを狙って、斜め上に火花を飛ばした。
僕はドーラの分隊全員に叫んだ。
「頭を下げて!」
ジャクソン少尉が飛ばした火花は、フレッド副長がガソリンを少量転移させた場所より、かなり手前の空中で引火した。
そしてすぐに空中で燃え広がり、「バン!」と爆発した。
僕は苦笑いを浮かべ、ジャクソン少尉に話しかけた。
「ルイスさんが巨大生物に襲われた時、
これを思いついていたんですが、、、
やっぱり、危なくて、実施しなくてよかったですね。。。」
ドーラが怒って、僕に近づいてきた。
「修司殿!
こんな危ないことするな!」
そして、僕をグーパンチで殴ろうとした。
慌てて僕は両手をかざし、ドーラに言った。
「だから、
『危険ですよ?』
って聞いたじゃないですか。。。
ドーラさん、うなずいて了解しましたよね?」
すると、拳を震わせて、悔しそうな表情を浮かべた。
数秒後、拳を降ろすと、僕を罵った。
「だったら、どんなに危険か、ちゃんと説明せぬか!」
いや、これを口で説明するのは無理だと思う。。。
ルイス少尉はあきれてつぶやいた。
「こんなもの、上空でやられてたら、、、
爆風で大変なことになったかも。。。
最悪、パラシュートが絡まって、
地上に叩きつけられていたかも。。。」
僕は苦笑いを浮かべ、ルイス少尉に語り掛けた。
「いや、ルイスさん、、、
問題は爆風だけじゃないんです。。。」
ルイス少尉は「え?」とつぶやき、僕を見つめた。
僕は苦笑いを浮かべたまま、話を続けた。
「ガソリンは気化しますから、上空の風で、
その気化したガソリンがどんなふうに流れるのか分かりません。。。
最悪、パラシュートに引火したかも。。。」
ルイス少尉はハッとした表情を浮かべると、次の瞬間、僕を罵った。
「こんな危ないもの、思いつくな!」
僕はごまかし笑いをするしかなかった。
「ははは。。。」
エイミー少尉は戸惑いながら問うた。
「修司殿、、、
フレッド副長が転移させた場所より、、、
かなり手前で引火したようですが。。。。」
僕はごまかし笑いをしながら答えた。
「ははは。。。
気化したガソリンは空気より重いからです。。。
今回はそれを考慮して、斜め上にガソリンを転移させて、
僕らに危険は小さかったですが、、、、
ルイスさんが巨大生物に襲われた時は、
僕らの真上にいましたから、、、
最悪、地上に火が移って、
僕らも巻き込まれたかも。。。」
すると、エイミー少尉も僕を罵った。
「危ないったら、ありゃしないわよ!」
僕はここでもごまかし笑いをするしかなかった。
「ははは。。。」
僕はごまかし笑いをしながら、ジャクソン少尉に語り掛けた。
「ははは。。。
だから、、、
『今考えると、止めておいてよかった。』
って言ったんです。」
ジャクソン少尉も僕を罵った。
「当たり前だ!」
もう、ごまかし笑いするしかなかった。
「ははは。。。」
そう、こんな風に失敗した魔法もあったんだ。
(次話に続く)
次話は2026/4/14 0時に更新予定です。




