第60話 練兵場からの帰り道(その3) ーオウゴウヌ王国に迫る脅威ー
(前話からの続き)
クラリス参謀総長は微笑み、ダグ騎兵連隊長、ウオーレン魔法兵連隊長、ヒラリー後方支援連隊長に、話を続けた。
「これから話すことは現時点において口外無用よ。
でも、あなた達には特別に話すわ。
くれぐれも絶対に、他人に話さないでね。」
ダグ騎兵連隊長、ウオーレン魔法兵連隊長、ヒラリー後方支援連隊長は、戸惑いながらも、黙ってうなずいた。
レオ近衛師団長は口を開いた。
「席上、王室調査室長のブレント・レイ男爵が報告したのだが、、、」
ああ、王室調査室とは、女王直轄の組織で、オウゴウヌ王国にて国内外の諜報活動を行う組織だ。
ブレント・レイは男爵の爵位を持ち、王室調査室のトップというわけ。
レオ近衛師団長は話を続けた。
「ピレアスワ王国の現国王、アロイス・ピレアスワが死の床についている。」
ダグ騎兵連隊長、ウオーレン魔法兵連隊長、ヒラリー後方支援連隊長は一様に戸惑い、「「「は?」」」とつぶやいた。
ダグ騎兵連隊長は困惑しながら、レオ近衛師団長に問うた。
「ピレアスワ王国はそこそこ大きな国だけど、
隣国でないし、しかもかなり北方の遠い国だぜ?
我が国、オウゴウヌ王国とは、
あんまり関係ねーじゃねえのか?」
クラリス参謀総長は苦笑いを浮かべて答えた。
「ダグ、それが関係大ありなのよ。」
レオ近衛師団長も苦笑いを浮かべて、話を続けた。
「知っての通り、約200年前、
我が国は大陸諸国連合軍30万に侵攻されたが、それを撃退した。」
(第27話)
ダグ騎兵連隊長、ウオーレン魔法兵連隊長、ヒラリー後方支援連隊長は黙ってうなずいた。
クラリス参謀総長は話を続けた。
「これも知っての通り、
その後、我が国は大陸諸国とは和平を結んでおらず、
国際政治上は戦争状態になっている。
でも、『実際の戦闘は行われていない』。」
(第27話)
レオ近衛師団長が話を繋いだ。
「その
『戦闘が行われていない』
ってことに、
ピレアスワ王国が関わっているんだ。」
ウオーレン魔法兵連隊長は怪訝な表情で問うた。
「どういうことだ?」
クラリス参謀総長は苦笑いを浮かべ、答えた。
「ウオーレン、まあ、慌てなさんな。
約200年前の戦争の時、
大陸諸国連合の敵国は我が国だった。
そして、約200年経った今も、
『大陸諸国連合の敵国は建前上は我が国』
となっているわ。。。」
ヒラリー後方支援連隊長も怪訝な表情で問うた。
「なに、その『建前上は』って?」
レオ近衛師団長は苦笑いを浮かべて答えた。
「約200年経ち、
『国際情勢は大きく変わった』
と言うことさ。
大陸諸国連合にとって、
『本当の敵国は北の大国、ワスイ帝国』
に代わったのさ。。。」
ああ、ワスイ帝国は、アシエシア大陸の最も北にあり、最も広い領土と、最大人口を有する大国だ。
いや、規模で言えば、超大国だ。
クラリス参謀総長は、両手の手のひらを天井に向け、両手を伸ばし、苦笑いを浮かべて、話を繋げた。
「北の大国、ワスイ帝国は伝統的に南進政策をとり、
隙あれば、以南の中小国家を飲み込もうと、
虎視眈々と狙っている。
特にこの10年、南進政策を『強引に』進めているわ。」
レオ近衛師団長はため息をついて話を繋げた。
「大陸諸国のなかで、単独でワスイ帝国に対抗できる国はない。
比較的大きな国である、ピレアスワ王国でもそれは同じだ。
だから、約200年前、我が国向けに結成した大陸諸国連合を、
ワスイ帝国向けに変更して、
大陸諸国はワスイ帝国に対抗しているんだ。」
クラリス参謀総長もため息をついて話を繋げた。
「でも、大陸諸国を結集しても、
ようやくワスイ帝国と五分ってところでね。。。
大陸諸国はワスイ帝国の脅威に対抗するので精一杯で、
我が国に構っているゆとりはないの。。。
これが約200年前の戦争以降、
我が国と他国との実際の戦闘が行われていない理由なの。。。」
ダグ騎兵連隊長は唖然としてつぶやいた。
「約200年、戦闘が行われていないのは、、、
そういうことかよ。。。」
レオ近衛師団長は再びため息をつくと、話を続けた。
「で、、、
ここからが、ピレアスワ王国の動向が、
我が国と関連することなんだが、、、
プレアスワ王国は大陸諸国連合の中では、
比較的大きな国で強大な国だ。
そして、ワスイ帝国と国境を接している。
つまり、ピレアスワ王国は、ワスイ帝国に対する、
大陸諸国連合の防波堤の役割を、
ずっと担ってきたんだ。。。」
クラリス参謀総長も再びため息をつき、話を続けた。
「でも、プレアスワ王国単体では、ワスイ帝国には敵わないし、
国境を接しているから、ワスイ帝国の脅威を肌で感じているのよ。。。
だから、プレアスワ王国の国内は一枚岩ではないの。。。
大陸諸国連合の一員として自主独立を保とうとする連合派と、
ワスイ帝国に従属しようとする従属派が、
激しく対立しているの。。。」
レオ近衛師団長は、憂いのある表情を浮かべ、話を続けた。
「で、、、
プレアスワ王国の現国王、アロイス・ピレアスワは連合派なんだが、、、
その息子、王太子のカミル・ピレアスワは、妻をワスイ帝国から迎え、
バリバリの従属派なんだ。。。」
クラリス参謀総長も、憂いのある表情を浮かべ、話を続けた。
「もし、ピレアスワ王国の現国王、アロイス・ピレアスワが死去すれば、
従属派のカミル・ピレアスワが即位する。
カミル・ピレアスワが王になれば、
ピレアスワ王国は大陸諸国連合から抜け、
ワスイ帝国に従属する可能性が極めて高いわ。。。」
レオ近衛師団長は、ダグ騎兵連隊長、ウオーレン魔法兵連隊長、ヒラリー後方支援連隊長に問うた。
「さっき言ったように、
プレアスワ王国は大陸諸国連合の中では、
比較的大きな国で強大な国だ。
しかも、ピレアスワ王国は、ワスイ帝国に対する、
大陸諸国連合の防波堤の役割を、
ずっと担ってきた。
その『防波堤が無くなったらどうなる?』」
ヒラリー後方支援連隊長は、呆然としてつぶやいた。
「大陸諸国連合は一気に崩壊の危機に直面する。。。」
クラリス参謀総長は、さらにダグ騎兵連隊長、ウオーレン魔法兵連隊長、ヒラリー後方支援連隊長に問うた。
「じゃ、大陸諸国連合が崩壊したら、どうなる?
ワスイ帝国はどうする?」
ウオーレン魔法兵連隊長も、呆然としてつぶやいた。
「ワスイ帝国は一気に南下する恐れがある。。。
最悪、我が国に迫る可能性がある。。。」
クラリス参謀総長は苦笑いを浮かべて、ウオーレン魔法兵連隊長に語り掛けた。
「もし、ウオーレンの言うように、
ワスイ帝国が一気に南下したら、
我が国の国境は一気に緊張が高まるでしょうね。。。
だって、ワスイ帝国は単体でも、40万人の大軍を動員可能だもの。。。
しかも、もし、、、
大陸諸国連合が崩壊したら、一部中小国も飲み込むだろうから、
兵力はもっと増加する。。。」
レオ近衛師団長は、緊張の面持ちで、ダグ騎兵連隊長、ウオーレン魔法兵連隊長、ヒラリー後方支援連隊長を見渡し、話しかけた。
「対する我が軍の総兵力は、、、
約200年前、当時のアンジェラ女王陛下の王権強化から、
動員可能な兵員は増加している。。。
(第36話)
加えて、約200年間、
ワスイ帝国を始め、大陸諸国の経済はほとんど発展しなかった。
(第27話)
もともと、我が国はアシエシア大陸の南端に位置し、温暖な気候で、
農作物に恵まれ、豊かな国だ。
(第26話)
しかも、我が国は異世界の技術を、約200年間、
積極的に導入したこともあり、経済は大いに発展した。
(第27話)
よって、人口も増加している。。。
したがって、
約200年前の戦争に動員した5万人から、
動員可能な兵力は最大20万人まで増大しているが、、、」
ダグ騎兵連隊長は深刻な表情で顔を何度も横に振りながら、つぶやいた。
「それでも2倍の兵力に相対しなきゃならねー。。。」
ヒラリー後方支援連隊長は、深刻な表情でダグ騎兵連隊長に話しかけた。
「ダグ、、、『2倍じゃない』わよ。。。
さっき、クラリスが
『大陸諸国連合が崩壊したら、一部中小国も飲み込むだろうから、
兵力はもっと増加する』
と言った。
つまり、『少なくとも2倍』よ。」
クラリス参謀総長はうなずきながら、ダグ騎兵連隊長、ウオーレン魔法兵連隊長、ヒラリー後方支援連隊長に語り掛けた。
「そう、、、我が軍は今、大幅な強化が求められているの。。。
『そのタイミングで、修司殿が日本から来た』の。。。」
レオ近衛師団長は再びため息をつき、半ば困った表情で、半ば困惑した表情で、口を開いた。
「約2週間前、アンから、
『首都レワヅワの夜空が紫や赤や緑に染まった。
これは女王代々の引継ぎ事項じゃが、
創造神ガエリア様からの
【日本へ迎えに行け】
との、合図じゃ。』
(第7話)
と聞かされた。。。」
レオ近衛師団長は半ば困った表情で、半ば困惑した表情のまま、話を続けた。
「それを聞かされた時、、、
『軍の大幅強化で忙殺されているときに、
警護が面倒な日本からの客が来た。』
と思ったんだ。。。」
レオ近衛師団長は、さらに話を続けた。
「次に、この時は、こう思った。
『最悪のタイミングで、日本から客が来た。』
と。。。」
クラリス参謀総長は苦笑いを浮かべて、レオ近衛師団長に語り掛けた。
「レオ、、、
さっき言ったように、私も『最悪のタイミング』と思った。」
(第59話)
クラリス参謀総長は苦笑いを浮かべたまま、ダグ騎兵連隊長、ウオーレン魔法兵連隊長、ヒラリー後方支援連隊長に話しかけた。
「でも、修司殿が来て、まだ2週間程度で、、、
ドーラ中尉の分隊はあり得ない展開力を手にしたし、、、
(第58話)
うちの娘(=ルイス少尉)は空を飛んだし、、、
(第52話)
3人の魔法を組み合わせて、即興で大魔法を生み出した。。。」
(第53話)
クラリス参謀総長は更に話を続ける。
「しかも、、、
うちの娘(=ルイス少尉)だけでなく、、、
ダグとウオーレンの子(=エイミー少尉、ジャクソン少尉)も今、
ドーラ中尉の分隊に配属されているのよ。。。
何か『運命』を感じちゃう。。。」
ダグ騎兵連隊長とウオーレン魔法兵連隊長は、クラリス参謀総長と同様に、運命を感じていたのだろう。
二人は黙ってうなずいた。
クラリス参謀総長は微笑み、レオ近衛師団長に語り掛けた。
「レオ、さっき言ったように、、、
もしかしたら、『絶好のタイミング』で
修司殿は我が国に来たのかも?」
レオ近衛師団長はため息をつくと、天井を見上げた。
そして視線を戻すと、少し真剣な表情で口を開いた。
「どうだろう?
修司殿を含め、ドーラ分隊にはしばらく自由にやらせて、
観察してみようと思うんだ。。。
もしかしたら、
軍を強化するヒントがいっぱい得られるかもしれないし。。。」
ヒラリー後方支援連隊長は懸念を述べた。
「私達みたいに『暴走集団』になると思うけど。。。
いえ、『私達以上の暴走集団』になると思うけど。。。」
クラリス参謀総長は苦笑いを浮かべ、ヒラリー後方支援連隊長に答えた。
「ふふふ。。。
そうなる可能性が大ね。。。」
クラリス参謀総長はダグ騎兵連隊長に視線を向け、いたずらっぽく話しかけた。
「直接の上司であるダグは大変だと思うけど~♪
お願いできる~♪?」
ダグ騎兵連隊長はガクッと肩を落とし、片手で頭を抱えた。
数秒後、ダグ騎兵連隊長はため息をつき、少し憂鬱そうな表情で答えた。
「(ため息)はー、ヤレヤレ。。。
仕方ねーなー。。。」
そして彼はうなずいた。
クラリス参謀総長は少し真剣な表情になると、他の4人に話しかけた。
「ねえ、定期的に話し合わない?
参謀総長として、ワスイ帝国の脅威に対抗する策を考え、
実行しなくちゃいけないの。。。
レオ、ダグ、ウオーレン、ヒラリー、力を貸して?」
レオ近衛師団長、ダグ騎兵連隊長、ウオーレン魔法兵連隊長、ヒラリー後方支援連隊長は、黙ってうなずいた。
そう、このとき、オウゴウヌ王国には、『ワスイ帝国の脅威』が迫っていた。。。
でも、このとき、『別の脅威』もオウゴウヌ王国に迫っていた。
だけど、このとき、その『別の脅威』について、僕を含めオウゴウヌ王国の人全員、全く気付いていなかったんだ。。。
次話は2026/4/7 0時に更新予定です。




