第137話 再びコアブルッズ市へ(その3) ーローレンス曹長の不満ー
(前話からの続き)
アン女王はすまし顔で答えた。
「仕方がないの~。。。
ドーラ、お前が分隊メンバに謝れ。。。
それも罰の一つじゃ。。。」
話は先週日曜日の深夜から、水曜日の朝に戻る。
(第135話)
ドーラはため息をつくと、ドーラの分隊メンバに経緯を話すと、こう締めくくった。
「と、まあ、こういう訳だ。。。」
ベリンダ上等兵はあきれてドーラを責めた。
「全部、分隊長(=ドーラ)のせいじゃないですか!」
ケイシー上等兵もあきれた表情で僕を責めた。
「修司殿も余計なことをするから!」
(第136話)
ルイス少尉もあきれた表情でドーラを責めた。
「私達は近衛兵であって、食料の仕入れ係ではありません!」
ドーラと僕は分隊メンバに頭を下げて、「すまん」とか「ごめん」と言うしかなかった。
第135話で言ったように、この水曜日の朝には、横にドーラの父親のレオ近衛師団長がいた。
彼は申し訳なさそうに、両手を掲げ、分隊メンバに語り掛けた。
「皆済まない。頼むから落ち着いてくれ。
今回の件は、僕の娘ドーラの失態であり、
君達、分隊メンバには何の落ち度もない。
僕も無関係の分隊メンバを巻き込むことには反対した。
だが、『アンは女王』だ。
『女王が暴走すると、
この国では滅多なことでは止めることができない』んだ。
我慢してくれないか?」
実際、王室のキッチンでドーラと僕と一緒にいたレオ近衛師団長は、アン女王の説得を試みた。
ドーラが罰を受けるのは仕方がないが、それを分隊メンバを巻き込むのはおかしいと説得を試みたんだ。
いや、レオ近衛師団長だけでなく、近くにいたパティシエさんも慌てて、シェフも呼んで、アン女王の説得を試みたんだ。
「今日のように午後6時に食材を持ち込まれても、、、
(第123話)
上位貴族の晩餐会は招待客が多くって、準備に大変で、
デザートは間に合いません!
そもそも、ドーラ殿下も修司殿も、果物の目利きができるのですか?」
「晩餐会のメニューは、精緻に積み上げたもので、
直前にデザインを変更されたら、調整できません!」
だが、アン女王は考えを変えなかった。
シェフとパティシエには、コアブルッズ市の食材の買い付けに同行を命じた。
加えて、晩餐会の準備に間に合うように、午後2時までに王宮に戻るよう、ドーラ、シェフ、パティシエ、僕に命じた。
最後にアン女王はレオ近衛師団長にこう言い放ち、議論を打ち切った。
「レオ、、、
ドーラの散財(第122話)は、
『晩餐会のメニューを事前検討させていた。』
と、アースキン(=財務相)に言い訳する。。。
ドーラの分隊メンバを説得してくれ。。。」
そうアン女王に言われると、レオ近衛師団長も引かざるを得なかった。
話を戻そう。
レオ近衛師団長は続けて分隊メンバに語り掛けた。
「それで、僕とアンと話し合って、、、
上位貴族の晩餐会で出されるディナーを、
君達、ドーラの分隊メンバにも振るまうことを、
アンには呑んでもらった。
それで勘弁してもらえないか?」
分隊メンバは顔を見合わせ、渋々、黙ってうなずいた。
だが、ローレンス曹長は不満を述べた。
「先週、1週間、ずっと天文台に行っていて、、、
(第109話~第125話)
子供達と一緒に遊べない日々が続いています。。。
私だけ晩餐会のディナーを振る舞われても、
子供達の不満が募るだけです。。。」
ああ、ローレンス曹長はすでに結婚していて、2歳になる息子と4歳になる娘がいる。
実はローレンス曹長は夫と2人の子供と一緒に、4人で官舎に住んでいる。
第29話で述べたが、ドーラの分隊メンバは官舎で同じフロアに住んでいる。
そして、官舎において『単身者として一番広い部屋』に住んでいるのはドーラと僕だ。
でも、広さで言えば、『ローレンス曹長の部屋は家族用』なので、分隊メンバの中では一番広い。
ただし、家族用とは言っても、家族4人で暮らすには、ローレンス曹長曰く『手狭』なんだそうだ。
今は子供2人が幼いため、待機任務中はローレンス曹長の部屋で、子供達と一緒に住んでいる。
待機任務中はローレンス曹長は白い軍服を着ているため、2人の子供は幼いながら、『ママ(=ローレンス曹長)はお仕事中』だとわきまえているらしい。
ローレンス曹長曰く、
「子供達が大きくなったら、官舎から引っ越す。
そのためのお金を夫と共に貯めている。」
らしい。
ローレンス曹長の2人の子供は、待機任務中は、ドーラを含む分隊メンバとよく遊んでいる。
まあ、ローレンス曹長の2人の子供は、分隊メンバのアイドルみたいなものだ。
とってもかわいい。
ローレンス曹長の2人の子供は、待機任務中、ドーラの部屋によく遊びに行く。
たまに、2人の子供の「どーらー」と、ドーラを呼ぶ声が聞こえる。
ローレンス曹長の2人の子供は、2歳と4歳の子供だ。
だから、ドーラが第一王女であることが、まだよくわかっていない様子だ。
ドーラは笑顔で、ローレンス曹長の2人の子供について語る。
「我が軍に配属されたころ、ローレンスの上の子供はまだ1歳だった。
だから上の子供も下の子供も、我も抱き上げたこともある。
それは我と同じ時期に配属されたベリンダも同じだ。
ローレンスの2人の子供は、我とベリンダにとっても、
自分達の子供ようなものだ。」
ああ、数年前、ドーラは士官学校を卒業して軍に配属され、ベリンダ上等兵は中学を卒業すると軍を志願した。
軍に入隊したときは同じだった。
どうもローレンス曹長は、軍に入隊した当時のドーラとベリンダ上等兵の教育係だったらしい。
だから、ローレンス曹長の4歳の娘がまだ赤ん坊だった頃、まだ新兵だったドーラとベリンダ上等兵は抱き上げたことがあるらしいんだ。
ちなみに、ローレンス曹長の夫は普通の会社員で、首都レワヅワの企業に勤めている。
ローレンス曹長とは幼馴染なんだそうだ。
ローレンス曹長の夫は、当然、ドーラを第一王女と知っている。
だから、彼は二人の子供がドーラと遊んでいるのは、気が気でない様子だ。
(あきれた笑い)ははは。。。
実は、ローレンス曹長の2人の子供は、僕の部屋にも「しゅーじー」と言って、遊びに来る。
ただし、『菓子が目当て』だ。
実はダグ騎兵連隊長が菓子目当てに僕の部屋に遊びに来た時、ローレンス曹長の2人の子供と偶然出くわしてね。。。
彼等にも菓子を与えざるを得なくなっちゃって、、、
その日からたまに、「しゅーじー、お菓子ちょーだーい。」とやってくる。
あきれたローレンス曹長からは、「夕食前と夜遅くは、子供に菓子を与えないで」と言われている。
話が何度もそれてしまった。
幼い子供2人を抱えるローレンス曹長は、先週一週間、家を不在にし、子供に寂しい思いをさせた罪悪感を抱えている。
そして次の週もそんな思いを子供達にさせるのはやるせないだろう。
そんなローレンス曹長の不平を聞いたレオ近衛師団長は、困った顔で語り掛けた。
「分隊メンバだけなく、
分隊メンバの家族にも振る舞うよう、、、
アンに掛け合ってみる。。。」
翌日、木曜日の朝、練兵場にドーラ宛にレオ近衛師団長から手紙が届いた。
ドーラは手紙を読むと、苦笑いを浮かべ、分隊メンバに語り掛けた。
「父上によると、
晩餐会と同じディナーを、
分隊メンバーだけでなく、分隊メンバーの家族にも振る舞うことを、
なんとか了解してくれたそうだ。」
すると、ローレンス曹長はため息をついて、黙ってうなずいた。
(次話に続く)
次話は2026/7/5 0時に更新予定です。




