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第136話 再びコアブルッズ市へ(その2) ーアン女王からの罰ゲームー

(前話からの続き)

 

 

 

アン女王は「仕方がないのう」と言って、その場では許してくれた。

 

 

 

でも、これで終わらなかったんだ。。。

 

 

 

アン女王からやっと許してもらって、僕は僕の部屋に戻った。

 

僕が僕の部屋に戻って、10分ほど後、ノックの音がした。

 

何事かと思い、ドアを開けると、そこにはドーラが立っていた。

 

 

 

ドーラは僕の部屋に入ると、頭を下げ、「すまん」とつぶやいた。

 

僕は苦笑いを浮かべて、ドーラに語り掛けた。

 

「いいんですよ。

 

 いつもはドーラさんに世話になっているんですから。。。」

 

 

 

そう、この国に来て以来、ドーラには世話になりっぱなしだ。

 

これくらいは当然だ。

 

 

 

そして僕は無理に笑顔を作って、ドーラに語り掛けた。

 

「それに、なんとかアン女王に許してもらったんだし、

 気にしないでください。」

 

 

 

すると、ドーラは苦笑いを浮かべ、顔を横に振った。

 

「いや、母上は、あれくらいでは許してはくれぬ。

 

 きっと、後日、罰を下す。」

 

 

 

僕は戸惑い、「そうなんですか?」とつぶやいた。

 

 

 

ドーラは黙ってうなずいた。

 

 

 

僕はため息をつき、ドーラに語り掛けた。

 

「まあ、甘いものでも食べて、気を紛らわせましょう。」

 

 

 

そう言うと、僕はドーラを誘って、王室のキッチンに向かった。

 

これが、実は『余計なこと』であったのである。。。

(第135話)

 

 

 

 

 

僕はドーラを連れて、王室のキッチンに向かい、パティシエさんにカットフルーツとホイップクリームとアイスクリームを準備してもらった。

 

カットフルーツは南西州の州都コアブルッズ市の土産の高級果物詰め合わせ(第122話)から、パティシエさんに作ってもらった。

 

アイスクリームもパティシエさんに作ってもらった。

 

ダンブラを2つ用意してもらい、僕はスプーンで、ダンブラの底にアイスクリームを敷くと、その上にカットフルーツを置き、その上にホイップクリームの添えた。

 

その3層に対して、更にアイスクリーム・カットフルーツを敷くと、パティシエさんに頼んでホイップクリームの飾り付けをしてもらった。

 

 

 

僕はドーラに一つのダンブラを差し出すと、「どうぞ」と言った。

 

そして、僕はもう一つのダンプラの中身をスプーンで食べだした。

 

 

 

ドーラも差し出されたダンブラを受け取ると、戸惑いながら、スプーンで食べ始めた。

 

「修司殿、、、これはうまいが、何という料理だ?」

 

 

 

僕は微笑み答えた。

 

「パフェです。

 

 パフェもいろんな種類がありますが、

 こうしてフルーツを使ったパフェをフルーツパフェと言います。」

 

 

 

ドーラも食べながら微笑んだ。

 

「フルーツパフェか? これは美味い!」

 

 

 

僕とドーラが美味しそうにフルーツパフェを食べていると、興味を持ったパティシエさんが自分でもフルーツパフェを作って、試食を始めた。

 

「今回は素材は適当でしたけど、

 工夫すれば王室にふさわしいフルーツパフェが作れると思います。」

 

 

 

ドーラは微笑み、「期待してます。」と答えた。

 

 

 

 

 

こうして盛り上がっていると、レオ近衛師団長が王室のキッチンにやって来た。

 

レオ近衛師団長は、王室のキッチンでドーラと僕を見つけると、「何をしているんだい?」と話しかけてきた。

 

 

 

ドーラは微笑みながら答えた。

 

「父上、修司殿がフルーツパフェなるものを作ってくれて、

 それを食しております。」

 

 

 

ドーラは続けてレオ近衛師団長に問うた。

 

「父上こそ、なぜここ(=王室のキッチン)に?」

 

 

 

レオ近衛師団長は苦笑いを浮かべて答えた。

 

「ちょっと、飲みたくってね。。。」

 

 

 

第93話で述べたように、ワスイ帝国の脅威がオウゴウヌ王国に迫っているにも関わらず、政治の上で微妙な立場に置かれているレオ近衛師団長は、装備はフランクリン軍事大臣と、作戦はクラリス参謀総長が担い、彼等のサポートに徹しざるを得なかった。

 

歯がゆい思いをしながら、一人、悩むしかなかったのだ。

 

後にレオ近衛師団長自身、「この時期は酒量が増えた。」と言っていた。

 

 

 

ドーラはレオ近衛師団長からワスイ帝国の脅威が迫っていることを知らされていた。

(第97話)

 

ドーラはレオ近衛師団長の気持ちを察した。

 

しかし、ワスイ帝国の脅威が迫っているからこそ、戦時に元帥となり最高司令官になるレオ近衛師団長の健康は、極めて重要である。

 

ドーラは顔をしかめると、レオ近衛師団長に語り掛けた。

 

「父上、あまり飲まない方が。。。」

 

 

 

レオ近衛師団長は苦笑いを浮かべたまま答えた。

 

「あはは、、、そうだね。。。」

 

 

 

レオ近衛師団長は王室キッチンの一つの席に腰を下ろすと、背伸びをした。

 

「でも、毎回のことながら、貴族との夕食は疲れる。。。」

 

 

 

そしてレオ近衛師団長は僕に顔を向け問うた。

 

「修司殿、そう思うだろ?」

 

 

 

僕は苦笑いを浮かべ、「はい」とうなずくしかなかった。

 

第123話で述べたように、オウゴウヌ王家は週末の土日、上位貴族の家族を招いて、夕食をとる。

 

だが、その夕食は政治の一部であり、政治の駆け引きの場だ。

 

 

 

一品一品の料理やお酒が、招かれた貴族に対する王家のメッセージが込められている。

 

たとえば、わざと旬ではない野菜を使った料理が出されることがある。

 

 

 

その野菜が旬より早いのなら、『青二才』と王家は貴族に暗黙のメッセージを送っている。

 

その貴族は家族も招かれている。当然、その家族には跡取りも同席する。

 

つまり、王家は『その跡取りはまだ青二才だ。当主の交代はまだ早い』と言っているのだ。

 

 

 

逆に野菜が旬より遅いのなら、王家は『当主は老いたから、早く跡取りに当主を交代させよ』と言っているのだ。

 

 

 

夕食にどんな皿や酒を出すのかは、アン女王と王太子であるシャーロット第二王女が、相談して決める。

 

夕食会に参加する、レオ近衛師団長、ドーラ、オリビア第三王女、そして僕は、その皿や酒から、アン女王とシャーロット王太子が何を貴族に伝えようとしているのかを察しなくてはならない。

 

だって、それで口にしていいことと、してはいけないことを、察しなくてはならない。

 

 

 

もう、それだけで疲れてしまうのだ。

 

 

 

 

 

話を戻そう。

 

レオ近衛師団長はそばにいたパティシエさんに語り掛けた。

 

「酒はやめよう。

 

 僕にも、そのフルーツパフェなるものをくれるかい?」

 

 

 

 

パティシエさんは「は!」と答えると、レオ近衛師団長にフルーツパフェを供した。

 

レオ近衛師団長もフルーツパフェを受け取ると、スプーンで食べ始めた。

 

レオ近衛師団長は笑顔で僕に語った。

 

「これは美味い!」

 

 

 

こうして、レオ近衛師団長とドーラと僕でフルーツパフェを楽しんでいると、そこにアン女王がやって来た。

 

アン女王はあきれてレオ近衛師団長に語り掛けた。

 

「なんじゃ、レオ、、、、

 

 ちっとも寝室に戻ってこないと思ったら、、、

 

 ここで何をやっておるんじゃ?」

 

 

 

レオ近衛師団長は笑顔で答えた。

 

「アン、、、修司殿がフルーツパフェなるものを作ってね。。。

 

 それを食しているんだ。。。

 

 美味いぞ~!」

 

 

 

アン女王は戸惑いながら僕に問うた。

 

「フルーツパフェとは何じゃ?」

 

 

 

僕は苦笑いを浮かべ、パティシエさんに頼んだ。

 

「パティシエさん、フルーツパフェをもう一つ。」

 

 

 

パティシエさんは「は!」と答えると、アン女王ににフルーツパフェを供した。

 

アン女王もフルーツパフェを受け取ると、恐る恐るスプーンですくい、口の中に入れた。

 

口の中に入れた瞬間、アン女王はつぶやいた。

 

「これは美味い!」

 

 

 

さらにアン女王はフルーツパフェを食しながら、つぶやいた。

 

「ホイップクリームと、カットフルーツと、アイスクリームがある。。。

 

 アイスクリームを応用すると、このようなスイーツも可能なのか。。。」

 

 

 

そして、アン女王はニヤリと笑った。

 

「王室しかアイスクリームを提供できない。。。

 

 つまり、王室しか、このパフェとやらを提供できないという訳だな。。。」

 

 

 

僕は、アン女王にアイスクリームの製法を教えた時を思い出した。

(第19話)

 

 

 

たぶん、レオ近衛師団長も同じだったのだろう。

 

レオ近衛師団長はおそるおそるアン女王に問うた。

 

「アン、、、まさか、フルーツパフェも王家で独占しようと?」

 

 

 

アン女王はニヤリと笑ったまま、レオ近衛師団長の問いに答えた。

 

「当然じゃ!

 

 次回の貴族向けの晩餐会でパフェを提供し、

 王家の権威を見せつけるのじゃ!

 

 前回はアイスクリームを提供したから(第37話)、

 今回はパワーアップしたものでなくてならぬ!」

 

 

 

アン女王はパティシエさんに問うた。

 

「このフルーツパフェとやらは、次回の貴族の晩餐会で提供可能か?」

 

 

 

パティシエさんは緊張した表情で返した。

 

「フルーツパフェで使ったカットフルーツは、

 南西州のフルーツです。

 

 次回の貴族の晩餐会まではもたないでしょう。。。

 

 よって、この首都周辺のフルーツとなりますが、、、

 

 南西州のフルーツと比べると、、、

 

 この時期は少し劣るものになると思います。。。」

 

 

 

話を補足すると、第109話で述べたように、自動車が少なく、かつ冷蔵庫があまりないこの世界では、傷みやすい果物や野菜の流通には限界がある。

 

加えて、果物や野菜を始め、食べ物には旬がある。

 

実は、首都周辺ではこの時期では、旬の果物が少なかった。

 

だから、パティシエさんは「この時期は少し劣る」と答えたのだ。

 

 

 

すると、アン女王はニヤリと笑い、ドーラに顔を向け、命じた。

 

「よし!

 

 ドーラ、次回の貴族の晩餐会の当日の朝、

 南西州の州都、コアブルッズ市に行って、果物を仕入れてこい。

 

 あ、、、ついでに、、、

 

 お前が行ったレストランのランチボックスも購入して来い。

 

 それをもって、上位貴族への土産とする。

 

 これを以て、お前が散財した罰とする。」

 

 

 

ドーラは困った顔で答えた。

 

「母上、、、

 

 我の罰は仕方がありませんが、、、

 

 それでは修司殿や、我の分隊メンバも巻き込んでしまいます。。。」

 

 

 

アン女王はすまし顔で答えた。

 

「仕方がないの~。。。

 

 ドーラ、お前が分隊メンバに謝れ。。。

 

 それも罰の一つじゃ。。。」

 

 

 

(次話に続く)

次話は2026/7/3 0時に更新予定です。

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