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第135話 再びコアブルッズ市へ(その1) ーアン女王の追及ー

話は水曜日の朝にさかのぼる。

 

先週は日曜日の夕方に、天文台から帰ってきた。

(第123話)

 

分隊メンバには月曜日と火曜日に公休を与えた。

 

つまり、水曜日の朝は公休明けだった。

 

当初の予定では土曜日と日曜日に公休を与え、来週は月曜日から金曜日までの勤務の通常のシフトに戻る予定だった。

 

 

 

ドーラは最初は言いにくそうだった。

 

だが、この日の朝は珍しく、彼女の父親のレオ近衛師団長も横にいた。

 

レオ近衛師団長は無言でドーラに話を促した。

 

しかたなく彼女はため息をつくと、練兵場に向かう、王城の軍の倉庫前で分隊メンバに話しかけた。

 

 

 

「元々の予定では、

 水曜日から金曜日まで練兵場、

 土曜日と日曜日に公休を与える予定であったが、、、

 

 すまぬが、その予定を変更することになった。。。」

 

 

 

分隊メンバは「は?」と浮かぬ表情を浮かべた。

 

だが、ドーラはそれをスルーして、話を続けた。

 

「練兵場に行くのは、水曜日と木曜日まで。

 

 金曜日の朝6時に、王室のキッチンのシェフとパティシエと共に、

 南西州の州都コアブルッズ市に行く。

 

 翌日土曜日の、

 早朝、まだ夜も明けぬうちにコアブルッズ市の青果市場に行き、

 遅くとも午後2時には王城に戻ってくることになった。。。」

 

 

 

分隊メンバは慌てて「えー!?」と声をあげた。

 

だが、ドーラはそれもスルーして、話を続けた。

 

「よって、当初の予定の土曜日と日曜日の公休は取り消す。

 

 日曜日と月曜日に公休を与える。」

 

 

 

エイミー少尉は両手で頭を抱えた。

 

「折角の土曜日の予定が。。。」

 

 

 

エイミー少尉はアイスクリーム騒動(第92話)の処分が明け、ようやく公休が与えられる予定だった。

 

その処分明けの公休を楽しみにしていたのだろう。

 

たぶん、その処分明けの公休に遊びに行く予定を立てていたのだろう。

 

 

 

 

 

フレッド副長も動揺の表情を浮かべ、問うた。

 

「分隊長(=ドーラ)、一体どうして?」

 

 

 

ドーラは申し訳なさそうな表情で僕を見た。

 

僕も申し訳ない表情で、分隊メンバを見渡し、答えた。

 

「ゴメン、、、、

 

 僕とドーラのせいだ。。。」

 

 

 

分隊メンバは「は?」と問うた。

 

 

 

話はさらに、日曜日の夜、アン女王の個室に呼び出されたときにさかのぼる。


 

 

(第123話引用始まり)

 

 

 

アン女王は、僕とドーラの入室を見ると、微笑み、語り掛けた。

 

「土産は上位貴族の家族との夕食で提供した。

 

 貴族は驚いていたぞ。。。

 

  『朝にコアブルッズ市で購入した果物が、

    当日に提供されるなんて』

 

 とな。。。

 

 王家の力を見せつけてやったわ。。。」

 

 

 

シャーロット第二王女も微笑み、僕とドーラに語り掛けた。

 

「宮殿スタッフに配布した100個の果物ゼリーは、

 かなり余りました。

 

 その果物ゼリーの一部も、その夕食でデザートとして頂きました。

 

 あの果物ゼリーを、本日、数年ぶりに食せるとは思いもしませんでした。

 

 当然、貴族にも提供し、彼らは驚いてました。

 

 王家の権威を示すことができました。」

 

 

 

(第123話 引用終わり)

 

 

 

まあ、ここまでは良かったのだが、、、

 

 

 

 

 

次の瞬間、アン女王はドーラを睨み、伝票の束を振って、話しかけた。

 

「じゃが、ドーラ、、、

 

 なんじゃ? この伝票の束は?

 

 さんざん、散財しおって!?

 (第121話、第122話)

 

 特に果物ゼリーが500個とはどういうことだ!?」

 

 

ドーラはすました表情で答えた。

 

「今回の天文台へはとても多くの人の支援がありました。

 

 我と修司殿の警護のためだけに、

 天文台警備員と地元警察消防署は増員していたのです。。。

 (第112話)

 

 これに対する『とりあえずの礼』が必要と判断しました。。。」

 (第121話)

 

 

 

アン女王は驚いた。

 

「なに!?」

 

 

 

ドーラは話を続けた。

 

「これでも足らぬくらいです。

 

 果物ゼリーを天文台と地元警察消防署に配ったくらいでは、、、

 

 天文台警備員を増員した地元警察消防署の署長、

 地元警察消防署を増員した地元警察消防本部長の

 礼にはなっておりません。。。」

 (第121話)

 

 

 

シャーロット第二王女は戸惑いながら、アン女王に話しかけた。

 

「母上、、、

 

 それが本当なら、王家として、

 地元警察消防署の所長と、地元警察消防本部長に、

 正式の礼をしませんと。。。」

 

 

 

アン女王は黙ってうなずいた。

 

 

 

ドーラはさらに続けた。

 

「それだけでなく、近衛師団の方にも礼が必要でした。

 

 ダグ・ハミルトン騎兵連隊長閣下の話によると、

  『天文台で何かあれば、

 

   翌日、近衛師団から第一陣として、

   1個分隊が自動車やバイクに分乗して、

   駆けつける。

 

   第二陣が急行馬車に乗って、

   数個分隊が二日半後に駆けつける。

 

   4,5日後には騎兵小隊が駆けつける。』

 という体制をとっておりました。

 (第112話)

 

 ということは、100名以上が王城で待機していたはず。

 

 彼等に対する礼も必要だったのです。」

 (第121話)

 

 

 

アン女王は驚き、レオ近衛師団長に顔を向けた。

 

レオ近衛師団長は黙ってうなずいた。

 

やはり、レオ近衛師団長とダグ騎兵連隊長が、もしもの時のため、話し合っていたのだ。

(第112話)

 

 

 

アン女王はため息をつき、つぶやいた。

 

「まあ、果物ゼリー500個は良しとしよう。。。」

 

 

 

 

だが、アン女王は一枚の伝票を取り出し、ドーラを睨み、問うた。

 

「では、この伝票をどう弁明する?

 

 ドーラ、そなた、コアブルッズ市の高級レストランで、

 食事をしたな?

 

 しかも、分隊メンバの食事代まで払っている。

 

 加えて、13人分のランチボックスまで。。。

 

 これについて、どう釈明するつもりだ?」

 (第122話)

 

 

 

ドーラは苦笑いを浮かべ、「それは。。。」とつぶやいた。

 

ドーラは、答えに窮したのだろう。

 

つぶやいたまま、黙り込んでしまった。

 

 

 

オリビア第三王女はあきれて、「また?」とつぶやいた。

 

 

 

僕はオリビア第三王女の「また?」と言ったのが気になった。

 

そう、コアブルッズ市の高級レストランに入るとき、ローレンス曹長とベリンダ上等兵も「また?」と言って、なんどもため息をついたからだ。

(第122話)

 

僕は恐る恐る、ドーラに問うた。

 

「そう言えば、そのレストランに入るとき、、、

 

 ローレンスさんもベリンダさんも、、、

 

  『また?』

 

 って言ってましたが。。。」

 

 

 

すると、ドーラの代わりに、アン女王があきれて答えた。

 

「こやつ(=ドーラ)はグルメでな。

 

 地方に行くと、その有名レストランで食事してくるのだ。

 

 数年前、まだ副長だったが、

 分隊メンバを奢って、有名レストランで食事しよった!

 

 そのとき、ローレンスとベリンダが同席していたというわけだ!」

 

 

 

僕は戸惑いながら、「つまり再犯?」と問うた。

 

 

 

シャーロット第二王女もあきれて、黙ってうなずいた。

 

 

 

ドーラは開き直ったかのように、口を開いた。

 

「良いではないか!

 

 分隊メンバは全員、コアブルッズ市の観光を楽しんでおったのだ。。。

 

 我だって、コアブルッズ市の観光を楽しみたかったのだ。。。」

 

 

 

僕はため息をつき、ドーラをかばうため、アン女王に話しかけた。

 

「実は天文台は山の上にあり、

 鉄条網で張り巡らされ、さらに3mの高い壁に囲まれているのです。。。

 (第110話)

 

 とても警戒厳重で、天文台スタッフでさえ、気が滅入るそうです。。。

 (第107話)

 

 僕はそこに計測に行ったので仕方がありませんが、、、

 

 僕を警護しなければならなかったドーラさんは、

 ずっと1週間、そこにいて、大変だったと思います。

 

 気晴らしが必要だったのです。。。

 

 どうか、大目に見てもらえませんか?」

 

 

 

アン女王は困った顔で返した。

 

「大目に見てくれと言われてもな~。

 

 ドーラが支払ったお金は、元を辿れば、国民からの税金なのだ。。。

 

 ドーラ一人の享楽のために出してよいお金ではないのだ。。。」

 

 

 

ま、それもそうだ。

 

「ええ、、、2か月に1度、天文台には行く予定です。

 

 次、天文台に行くときは、

 高級レストランには行かせませんから、

 今回だけ、許してもらえませんか?」

 

 

 

そう言うと、僕はアン女王に頭を下げた。

 

 

 

アン女王は「仕方がないのう」と言って、その場では許してくれた。

 

 

 

でも、これで終わらなかったんだ。。。

 

 

 

(次話に続く)

次話は2026/7/1 0時に更新予定です。

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