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第133話 クラリス参謀総長の苦悩(その5) ー娘の失敗ー

(前話からの続き)

 

 

 

ちょうどそのころ、場所は練兵場だった。

 

練兵場の官舎の個室で、ドーラは本を読んでいた。

 

そのとき、ハンディの無線通信機に、ルイス少尉から連絡が入った。

 

「分隊長(=ドーラ)! 聞こえますか?」

 

 

 

ドーラはハンディの無線通信機に応答した。

 

「ん? ルイス、どうした?」

 

 

 

ハンディの無線通信機からルイス少尉の声が聞こえた。

 

「すみません。。。

 

 パラグライダーが木に引っかかって、

 降りられないんです。」

 

 

 

ドーラはあきれて、ハンディの無線通信機に応答した。

 

「ルイス、、、何をやっているんだ?

 

 どうして、こんな夜中に、パラグライダーで飛んだ?

 

 練兵場の夜なんて真っ暗だぞ?」

 

 

 

ハンディの無線通信機からルイス少尉の声が聞こえた。

 

「夜間飛行訓練していたんです。

 

 月のない夜なら、パラグライダーなら敵に気づかれることなく、

 接近できますから。。。」

 

 

 

ドーラはハッとした表情を浮かべた。

 

なぜなら、ドーラは父親であるレオ近衛師団長からワスイ帝国の脅威を知らされていたからだ。

 

そして、ドーラは、あまり武芸の腕が高くはない、ジャクソン少尉とケント准尉とケイシー上等兵に武芸を鍛え始めていた。

(第97話)

 

 

 

ドーラはルイス少尉の意図を理解した。

 

ドーラはため息をつくと、ハンディの無線通信機に語り掛けた。

 

「仕方がない。。。

 

 ルイス、、、練兵場のどのあたりだ?」

 

 

 

ハンディの無線通信機から、ルイス少尉の困った声が聞こえた。

 

「それが、、、

 

 真っ暗で皆目見当もつきません。。。」

 

 

 

思わず、ドーラはハンディの無線通信機に向かって、ルイス少尉を罵った。

 

「あほか!」

 

 

 

ハンディの無線通信機から、ルイス少尉の困った声が聞こえた。

 

「すみません。。。」

 

 

 

 

 

困ったドーラはルイス少尉以外の分隊メンバを、官舎のドーラの部屋に集めた。

 

僕もハンディの無線通信機を通じて呼ばれた。

 

 

 

フレッド副長はあきれて、ドーラに問うた。

 

「練兵場って広大ですよ?

 

 その広大な練兵場で、真っ暗の中、たった10人で、

 どうやってルイス少尉を見つけろって言うんですか?」

 

 

 

確かに練兵場は、その名のごとく、軍隊が演習を行う場所だ。

 

とても広大だ。

 

そんな中で僕を含めて、たった10名で、夜、真っ暗の中、ルイス少尉を探すのは至難だ。

 

しかも、ルイス少尉曰く、『どこにいるのか皆目見当がつかない』状態なのだ。

 

 

 

加えて、この世界にはGPS衛星なんぞはない。

 

ルイス少尉の位置を特定することは容易ではない。

 

 

 

フレッド副長以外の他のメンバも、フレッド副長の意見にうなずいた。

 

 

 

ドーラは僕に顔を向けると、ほとほと困った表情で僕に語り掛けた。

 

「修司殿、、、

 

 なんとかならんのか?」

 

 

 

ルイス少尉以外の分隊メンバも僕を見つめた。

 

 

 

先ほど言ったように、この世界にはGPS衛星なるものはない。

 

となると、、、方法は一つしかなかった。。。

 

僕はため息をついて、ドーラに答えた。

 

「仕方がない。。。

 

 ドーラさん、、、

 

 権限の一時委譲よろしいでしょうか?」

 

 

 

ドーラもため息をついて、うなずいた。

 

「許す。」

 

 

 

僕はヒュー少尉に顔を向けて、語り掛けた。

 

「ヒューさん、、、

 

 簡易的な指向性アンテナを作りましょう。」

 

 

 

ヒュー少尉は戸惑い、「え?」とつぶやいた。

 

 

 

 

 

僕はヒュー少尉の戸惑いをスルーして、ドーラを始め、分隊メンバに語り掛けた。

 

「指向性アンテナを作るには、材料が必要です。

 

 材料を調達してもらえますか?」

 

 

 

ドーラは戸惑い、「は?」とつぶやいた。

 

 

 

 

 

僕は分隊メンバに頼み、長さ1~2mの木の棒4本と、アルミホイルと、針金を準備してもらった。

 

僕とヒュー少尉は、ドーラにあてがわれた部屋の廊下で、木の棒にそれぞれにアルミホイルをらせん状に巻き、針金をその上をらせん状に巻いた。

 

それをハンディの無線通信機を繋いだ。

 

これで手製の簡易的な指向性アンテナを作った。

 

 

 

フレッド副長に頼み、ハンディの無線通信機を介して、ルイス少尉に指示を送った。

 

ルイス少尉自身の無線通信機を操作し、ビープ音を発信してもらった。

 

 

 

僕は、官舎を出て、そのアルミホイルと針金を巻いた木の棒の向きを変えながら、ビープ音が強くなるおおよその方向を調べた。

 

そして、ビープ音が強くなった方向を指さした。

 

「ルイスさんは、おおよそですが、この方向にいます。」

 

 

 

まあ、いわゆる電波方向探知だ。

 

 

 

僕と一緒に官舎の外に出ていたドーラは訳が分からないように尋ねた。

 

「それで?」

 

 

 

僕はドーラに語り掛けた。

 

「この練兵場の地図を3枚準備してもらえますか?

 

 それと方位磁石4個と、懐中電灯4個も。

 

 また、ここで地図を広げるためのテーブルも。

 

 僕は暗視用の赤外線カメラ4個をとっていきます。」

 

 

 

僕は暗視用の赤外線カメラを持って、ワンボックスカーに行き、赤外線カメラを取りに行った。

 

 

 

ワンボックスカーから赤外線カメラ4個持って、戻ってくると、すでに地図、方位磁石、懐中電灯が準備されていた。

 

また、あらかじめ、地図は南北に10個、東西に10個に分割し、合計100個のブロックを作成してもらっていた。

 

 

 

次に分隊メンバを3つのグループに分けた。

 

ヒュー少尉とジャクソン少尉とローレンス曹長はA班、エイミー少尉とケント准尉とベリンダ上等兵はB班、ドーラとフレッド副長とケイシー上等兵はC班である。

 

各班に地図を1枚ずつ配った。

 

そしてA班とB班には、指向性アンテナ・方位磁石・懐中電灯・赤外線カメラを2個ずつ渡した。

 

 

 

A班にはヒュー少尉とローレンス曹長には騎乗してもらい、B班にはエイミー少尉とベリンダ上等兵はオフロードバイクに乗ってもらった。

 

 

 

 

 

僕はA班に指示した。

 

「A班はワンボックスカーの近くに移動してください。

 

 ヒューさんとローレンスさんは騎乗して、ルイスさんを探してください。

 

 ジャクソンさんはワンボックスカーから動かないで。」

 

 

 

ヒュー少尉、ジャクソン少尉、ローレンス曹長は「了解」と言うと、ワンボックスカーへ向かった。

 

 

 

その間、僕はテーブルの上の地図にA班が向かったワンボックスカーのある所に青の丸シールを、それ以外のメンバーがいる官舎を赤の丸シールを貼った。

 

 

 

 

数分後、ハンディの無線通信機からヒュー少尉の声が聞こえた。

 

「移動完了。」

 

 

 

僕はハンディーの無線通信機を通じて、ルイス少尉に指示した。

 

「ルイスさん、ビープ音を鳴らしてください。」

 

 

 

次にA班のヒュー少尉と、B班のエイミー少尉に、ハンディーの無線通信機を通じて指示した。

 

「ヒューさんとエイミーさんは、

 指向性アンテナと方位磁石を用いて、

 ルイスさんのおおよその方向を報告してください。」

 

 

 

するとハンディの無線通信機からA班のヒュー少尉の声が聞こえた。

 

「ほぼ東の方向」

 

 

 

続いて、ハンディの無線通信機からB班のエイミー少尉の声が聞こえた。

 

「ほぼ北東の方向」

 

 

 

僕はC班のフレッド副長とケイシー上等兵に指示した。

 

「フレッドさん、ケイシーさん、

 地図上でヒューさんの位置から東に線を、

 エイミーさんの位置から北東に線を引いてください。

 

 交差したところがおおよそのルイスさんの位置です。

 

 あと、交わったところに黒の丸いシールを貼ってくれますか?」

 

 

 

フレッド副長とケイシー上等兵は戸惑いながら、ヒュー少尉の位置、つまり地図上で青の丸シールから東に線を引き、エイミー少尉の位置、つまり地図上で赤の丸シールから東北に線を引いた。

 

そして交点に黒い丸シールを貼った。

 

 

 

ドーラは地図上の交点、つまり黒い丸シールを見て、つぶやいた。

 

「ルイスの位置は、ここから結構遠いな。。。」

 

 

 

僕は苦笑いを浮かべて答えた。

 

「使っている指向性アンテナは簡易的なものですから、

 おおよその方向しかわかりません。

 

 だから、この距離だと、実際のルイスさんの位置と、この交点とは、

 かなりの誤差があると思います。

 

 これから、ヒューさんとエイミーさんに近づいてもらって、

 徐々にルイスさんの位置を正確に特定します。」

 

 

 

ドーラは苦笑いを浮かべて、黙ってうなずいた。

 

 

 

続けて、僕はハンディ無線通信機を介して、A班のヒュー少尉に指示を送った。

 

「ヒューさん、

 ジャクソンさんに方位磁石と指向性アンテナを1つ渡してください。

 

 ジャクソンさんを残して、A班は地図と方位磁石と指向性アンテナを持って、

 騎乗して駆歩(かけあし)で東へ1分ほど移動してください。

 

 障害物等で東に進めなかったら、そこを避けてください。

 赤外線カメラと懐中電灯を使って、慎重に移動してください。」

 

 

 

さらに続けて、B班のエイミー少尉に指示を送った。

 

「エイミーさん、A班と同様に、

 ケントさんに方位磁石と指向性アンテナを1つ渡してください。

 

 ケントさんを残して、B班はオフロードバイクに乗って、

 時速20kmほどで北東へ1分ほど移動して。

 

 A班と同様に、障害物等で北東に進めなかったら、そこを避けてください。

 

 赤外線カメラとオフロードバイクのライトを使って、

 慎重に移動してください。」

 

 

 

ヒュー少尉とエイミー少尉の声が、ハンディの無線通信機から聞こえた。

 

「「了解」」

 

 

 

 

 

そして、数分後に、ハンディの無線通信機からヒュー少尉とエイミー少尉の声が聞けた。

 

「「移動完了」」

 

 

 

僕は、ハンディの無線通信機を通じて、ルイス少尉とA班のヒュー少尉に指示を送った。

 

「ルイスさん、ビープ音を止めてください。

 

 ヒューさんはビープ音を鳴らしてください。」

 

 

 

次にA班とB班の出発地点にいるジャクソン少尉とケント准尉に、ハンディの無線通信機を通じて指示を送った。

 

「ジャクソンさんとケントさんは、

 A班のヒューさんのおおよその方向を報告してください。」

 

 

 

すると、ハンディの無線通信機を通じて、ジャクソン少尉の声が聞こえた。

 

「ほぼ北北西の方向。」

 

 

 

またジャクソン少尉の声も聞こえた。

 

「ほぼ北東の方向。」

 

 

 

すると、A班のヒュー少尉の戸惑いの声が、ハンディの無線通信機から聞こえた。

 

「あれ? 少し北に移動してる?」

 

 

 

僕は苦笑いを浮かべ、ハンディの無線通信機を通じて、A班のヒュー少尉に語り掛けた。

 

「あくまでわかるのは、おおよその方向です。

 

 それに第一、真っ暗の中、障害物を避けながらですから、、、

 思った方向には進めなかった可能性だってあります。。。」

 

 

 

僕はC班のフレッド副長とケイシー上等兵に指示した。

 

「フレッドさん、ケイシーさん、、、

 

 テーブルの上の地図に、

 ジャクソンの位置から北北西に線を引き、

 ケントさんの位置が東北東に線を引き、

 交差する箇所に赤の丸シールを貼ってくだい。

 

 それが今のヒューさんとローレンスさんのおおよその位置です。」

 

 

 

フレッド副長は、ジャクソン少尉の位置、つまり地図上のA班の出発地点から北北西に線を引いた。

 

次にケイシー上等兵は、ケント少尉の位置、つまり地図上のB班の出発地点から東北東に線を引いた。

 

そして交点に赤い丸シールを貼った。

 

 

 

ドーラは地図を見ながらつぶやいた。

 

「ヒューとローレンスの位置は、

 目標の北から結構ずれているな。。。」

 

 

 

 

 

次に僕はA班のヒュー少尉とB班のエイミー少尉に、ハンディの無線通信機を通じて指示を送った。

 

「ヒューさん、ビープ音を止めて。

 

 エイミーさんはビープ音を鳴らして。」

 

 

 

続いて、A班とB班の出発地点にいるジャクソン少尉とケント准尉に、ハンディの無線通信機を通じて指示を送った。

 

「ジャクソンさんとケントさんは、

 B班のエイミーさんのおおよその方向を報告して。」

 

 

 

すると、ハンディの無線通信機を通じて、ジャクソン少尉の声が聞こえた。

 

「東南東の方向」

 

 

 

次にケント准尉の声が、ハンディの無線通信機を通じて聞こえた。

 

「北北東の方向」

 

 

 

すると、エイミー少尉の戸惑いの声が、ハンディの無線通信機を通じて聞こえた。

 

「あれ? 私も少し北に移動してる?」

 

 

 

僕は再び苦笑いを浮かべ、ハンディの無線通信機を通じて、エイミー少尉に話しかけた。

 

「さっき言ったように、

 あくまでわかるのはおおよその方向です。

 

 第一、真っ暗の中、障害物を避けながらでは、

 思った方向には進めなかった可能性もあります。」

 

 

 

すると、ハンディの無線通信機から、エイミー少尉の声が聞こえた。

 

「そっか。」

 

 

 

僕はC班のフレッド副長とケイシー上等兵に指示した。

 

「フレッドさん、ケイシーさん、、、

 

 テーブルの上の地図に、

 ジャクソンの位置から東南東に線を引き、

 ケントさんの位置が北北東に線を引き、

 交差する箇所に青の丸シールを貼ってくだい。

 

 それが今のB班のエイミーさんとベリンダさんのおおよその位置です。」

 

 

 

ヒュー少尉の位置を推定した時と同様に、フレッド副長は、ジャクソン少尉の位置、つまり地図上のA班の出発地点から東南東に線を引いた。

 

次にケイシー上等兵も、ケント少尉の位置、つまり地図上のB班の出発地点から北北東に線を引いた。

 

そして交点に青の丸シールを貼った。

 

 

 

ドーラは地図を見ながらつぶやいた。

 

「エイミーとベリンダの位置も、

 目標の東北から結構ずれてる。。。」

 

 

 

 

 

僕はハンディの無線機通信機を通じて、ルイス少尉、エイミー少尉、ヒュー少尉に指示を送った。

 

「エイミーさん、ビープ音を止めて。

 

 ルイスさんはビープ音を鳴らして。

 

 ヒューさんとエイミーさんは、ルイスさんのおおよその方向を報告して。」

 

 

 

(中略)

 

 

 

こうして、騎乗したA班のヒュー少尉とローレンス曹長、オフロードバイクに乗ったB班のエイミー少尉とベリンダ上等兵は、徐々にルイス少尉に近づいていった。

 

C班のフレッド副長とケイシー上等兵は、ジャクソン少尉とケント准尉からの報告から、おおよそのA班とB班のおおよその位置を把握した。

 

加えてC班は、A班のヒュー少尉とB班のエイミー少尉の報告から、ルイス少尉のおおよその位置を把握した。

 

 

 

そして、徐々にルイス少尉に近づいて行った。

 

 

 

(中略)

 

 

 

最初のうちは地図上の黒い丸シール、つまり推定されるルイス少尉の位置は大きく移動した。

 

まあ、手製の簡易的な指向性アンテナなので、おおよその方向しかわからないからだ。

 

だが、A班とB班がルイス少尉に近づくにつれ、黒い丸シールはあまり動かなくなった。

 

 

 

ドーラは地図のある一点を指さした。

 

「たぶん、ルイスはこのあたりにいるな。。。」

 

 

 

(次話に続く)

次話は2026/6/27 0時に更新予定です。

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