第132話 クラリス参謀総長の苦悩(その4) ー新たな戦術ー
(前話からの続き)
クラリス参謀総長は副官の言葉が引っ掛かっていた。
『真夜中にパラグライダーで着陸されると気付くのが困難』という言葉を。。。
副官も参謀本部の一員である。
そのための諜報員としてのスキルは身に着けているはずだ。。。
(第129話)
それが『気付くのが困難』と言ったことを。。。
そして、クラリス参謀総長は「そっか!」とつぶやいた。
クラリス参謀総長はハンディの無線通信機を使って、レオ近衛師団長、ダグ騎兵連隊長、ウオーレン魔法兵連隊長、ヒラリー後方支援連隊長を呼んだ。
ああ、この頃には、ハンディの無線通信機を、レオ近衛師団長、ダグ騎兵連隊長、ウオーレン魔法兵連隊長、ヒラリー後方支援連隊長、クラリス参謀総長は持っていた。
(第70話)
魔法を使わないから便利だと言っていた。
話を戻そう。
クラリス参謀総長の個室に来た、レオ近衛師団長、ダグ騎兵連隊長、ウオーレン魔法兵連隊長、ヒラリー後方支援連隊長に、クラリス参謀総長は個室にある小さな会議室に椅子を勧めた。
(第59話)
クラリス参謀総長は笑顔で語り掛けた。
「ワスイ帝国との戦術を考えたの。。。」
レオ近衛師団長、ダグ騎兵連隊長、ウオーレン魔法兵連隊長、ヒラリー後方支援連隊長は、戸惑い、「え?」とつぶやいた。
クラリス参謀総長は、4人の戸惑いをスルーして話を進めた。
「知っての通り、約200年前、
我が国は5万の兵力で、大陸諸国連合の30万の大軍を打ち破ったわ。。。
(第27話)
勝因はいくつかあるのだけど、
これら勝因は、歴代の参謀総長しか知らないことなの。。。
今回、特別に、あんた達だけに教えてあげる。。。
そのうち勝因の一つは、
大陸諸国連合30万の兵をオウゴウヌ王国領内に引き込み、
敵の補給路を引き延ばした上で、その補給路を徹底的に叩いたからなの。。。」
第104話で述べたように、約200年前の大陸諸国連合との奇跡の勝利にはタネがある。
そのタネは歴代の王と王太子、そして歴代の外相と参謀総長しか知らない。
そのタネの一つを、クラリス参謀総長は、レオ近衛師団長、ダグ騎兵連隊長、ウオーレン魔法兵連隊長、ヒラリー後方支援連隊長に話したのだ。
話を戻そう。
ヒラリー後方支援連隊長は唖然として問うた。
「約200年前の戦争では、
『地の利と、装備に勝り、精強を誇る兵を持つ我が国が、
激戦の末、アシエシア大陸諸国連合軍の侵攻を何とか防ぎ、
連合軍は撤退した。』
(第27話)
って聞いたけど、、、
『地の利』ってそう言うこと?」
クラリス参謀総長はうなずき答えた。
「ええ、、、
大陸諸国連合は補給がままならなくなり、
撤退せざるを得なかったの。。。」
クラリス参謀総長は、ウオーレン魔法兵連隊長に顔を向け、話を続けた。
「特に大陸諸国連合の魔法の補給を最優先に叩いたの。。。
連合軍は魔法の補給が困難になったの。。。
最終的には、30万の兵のうち、かなりの兵が無力化されたの。。。」
ウオーレン魔法兵連隊長も唖然としてつぶやいた。
「そうか。。。
長期戦になれば、、、
魔法兵や後方支援兵の体内の魔法器官に貯蔵してある魔力は、
尽きてしまっているだろう。。。
魔法兵や後方支援兵は、
魔法器官に魔力を補充するために、
『聖なる岩』がある場所まで戻らなくちゃならない。。。
(第32話)
だが、その道中を叩けば、
魔法兵や後方支援兵は魔力の補充がままならなくなる。。。」
第32話で述べたが、この世界の魔法は、『聖なる岩』に左手をかざして、魔力を補充する。
しかし、第65話で述べたように、殺傷能力のある魔法は出力が大きく、魔法兵でも数発しか撃てない。
長期戦になれば、いくら後方に控えていたり、歩兵として戦っていたとしても、全く魔法を使わないわけにはいかない。
つまり、長期戦になると、ほとんどの魔法兵や後方支援兵の魔力は空になってしまうだろう。
よって、『聖なる岩』に戻って、再び魔力を補充しないといけないのだ。
クラリス参謀総長はうなずき答えた。
「ええ、、、
おそらく、約200年前の大陸諸国連合との戦争末期では、
連合軍の魔法兵や後方支援兵は、
魔法器官に貯蔵してあった魔力は、ほとんどカラだったでしょうね。。。
我が国の魔法兵と後方支援兵は、全体の5割弱よ。
連合軍もほぼ同じだったはず。
つまり、約200年前の大陸諸国連合との戦争末期では、
連合軍の戦力30万のうち、5割弱は無力化されていたの。。。」
クラリス参謀総長はダグ騎兵連隊長に顔を向けて話しかけた。
「そして、連合軍の延びきった補給路を叩いたのは、
我が国の騎兵だったの。。。
騎兵が主力になって、
連合軍の補給路を徹底的に叩いたの。。。
夜襲をしかけてね。。。」
ダグ騎兵連隊長はうなずいた。
「まあ、そうだろな。。。
と言うか、、、
遠隔地の敵を襲撃するのは、騎兵の役割だ。。。」
補足すると戦場では騎兵は、敵陣地に穴が生じない限り、下馬して後方で待機するか、歩兵として戦うしかない。
(第65話)
むしろ、騎兵の機動力を活かして、敵後方を襲撃し、敵をかく乱させるのが騎兵の役割である。
そう、約200年前の戦争で、敵の補給路を徹底的に叩くのに最も適していたのは、騎兵であったのだ。
また、騎兵の機動力を活かして、偵察任務を行うのも、騎兵の役割だ。
ダグ騎兵連隊長がオフロードバイクが偵察任務に適用できると聞いた時、『騎兵科の範疇』と言ったのはちゃんと理由があるのだ。
(第59話)
話を戻そう。
クラリス参謀総長はうなずいた。
「ワスイ帝国との戦争でも、基本同じ戦術を使うわ。」
すると、レオ近衛師団長が懸念を述べた。
「クラリス、、、
敵も対策を講じてくるんじゃないのか?」
クラリス参謀総長はうなずいた。
「ええ、、、全く同じ戦術では通用しないでしょうね。。。
だから、より強力にするの。。。」
レオ近衛師団長は戸惑い問うた。
「どうやって?」
クラリス参謀総長はニヤリと笑って答えた。
「パラグライダーやオフロードバイクを活用するの。。。
騎兵よりも早く展開できるから、
襲撃可能な領域が広がるわ。。。
敵はそれを防衛するのは難しいわよ。。。」
ヒラリー後方支援連隊長が懸念を述べた。
「ちょっと待って、、、
軍はオフロードバイクを20台欲しいと言って、
(第72話)
警察消防も30台欲しいと言って、
そのオフロードバイクはしばらく軍の所属となるわ。
(第99話)
それをなんとか補正予算で通した。
(第128話)
つまり、今後、オフロードバイクは50台増やすけど、
その程度で、戦況を変えることができるかしら?」
ダグ騎兵連隊長もうなずき懸念を述べた。
「ああ、、、
現在、パラグライダーに乗れるのは、クラリスとルイスだけだ。
パイロットを増やしたとしても、戦況を変えるほどの大量に見つかるのか?
そもそも、空を飛ぶ魔法を授かる人はレアなはずだ。。。」
(第48話)
クラリス参謀総長はうなずき答えた。
「ええ、、、
もっと、オフロードバイクとパラグライダーは生産してもらうつもりよ。
再度の補正予算を組んでもらう必要があるわ。。。
ただ、それでも戦況を変えるほどの量は揃わないでしょうね。。。」
クラリス参謀総長はダグ騎兵連隊長に顔を向け、語り掛けた。
「だから、、、
やはり敵補給路攻撃の主力は騎兵よ。
ダグ、、、あなたに頼むわ。。。」
ダグ騎兵連隊長はため息をつき、黙ってうなずいた。
クラリス参謀総長は、さらにダグ騎兵連隊長に語り掛けた。
「少数のパラグライダーとオフロードバイクと連携しながら、
騎兵は敵の補給路を叩いて頂戴。」
そして、クラリス参謀総長はダグ騎兵連隊長に微笑み、語り掛けた。
「ダグ、、、
しばらく、パラグライダーやオフロードバイクは、
現在の騎兵連隊所属のままとして、、、
騎兵との連携強化を訓練してほしいの。。。
特に夜間戦闘訓練を行ってほしいの。。。」
ダグ騎兵連隊長はうなずいた。
「わかった。。。」
レオ近衛師団長は苦笑いを浮かべ、ダグ騎兵連隊長、ウオーレン魔法兵連隊長、クラリス参謀総長に語り掛けた。
「それにしても、、、
ダグ、ウオーレン、クラリスの子が、
僕の娘、ドーラの分隊に配属されているなんてな。。。。
そして、そのドーラの分隊が、
ワスイ帝国との戦争のキーになるとはな。。。
運命を感じるな。。。」
ダグ騎兵連隊長、ウオーレン魔法兵連隊長、クラリス参謀総長も、苦笑いを浮かべ、黙ってうなずいた。
ちょうどそのころ、場所は練兵場だった。
(次話に続く)
次話は2026/6/25 0時に更新予定です。




