第128話 ディーンの退職
(前話からの続き)
オリビア第三王女はディーンに顔を向け、話を続けた。
「でも、創造神ガエリア様の魔力は桁違いだから、
ドーラ姉上への身体的負担は重くってね。。。
ドーラ姉上は魔法器官を失ったわ。。。
もう、ドーラ姉上は魔法を駆使することはできない。。。
(第9話)
ドーラ姉上だけじゃない。。。
母上(=アン女王)も30年前、
王城の庭と和泉家を繋ぐ際に、大魔法を連発したことが原因で、、、
危うく死にかけたそうよ。。。
(第7話)
ソフィア叔母上も魔法器官を失った。。。
(第7話)
『邪神』ですって!?
ふざけんじゃないわよ!」
そう言うと、オリビア第三王女の目から再び涙が流れた。
オリビア第三王女は慌てて涙を拭った。
ディーンは立ち上がり、オリビア第三王女に頭を下げた。
ディーンは頭を上げると、オリビア第三王女に語り掛けた。
「オリビアの気持ちはよく分かった。。。」
そう言うと、ディーンは椅子に座った。
ブリトニーとクリスティアナとディーンは互いに黙ってうなずいた。
そしてこの3人は理解した。
『なぜ、オウゴウヌ王家が
【異世界との考え方や技術の取り入れを受け入れてもらえるのならば】
に拘るのか?』
を。。。
オウゴウヌ王家は大変な犠牲を払い、異世界との接続を維持し続けているのだ。。。
大きな犠牲を払って、オウゴウヌ王家は、オウゴウヌ王国を発展させてきたのだ。。。
ブリトニーとクリスティアナとディーンは、そんなオウゴウヌ王家の犠牲の上に、今の自分達の国が成り立っていることを理解した。。。
ブリトニーとクリスティアナとディーンは、オウゴウヌ王国の歴史の重みを感じていた。。。
ブリトニーとクリスティアナとディーンは、将来有望な官僚であり、かつ上位貴族の跡取りである。
彼らはそんなオウゴウヌ王国を、官僚として、上位貴族として、守らなくてはならないのだ。
ディーンは気を取り直すと、苦笑いを浮かべて、オリビア第三王女とブリトニーとクリスティアナに話しかけた。
「父上(=ウイルフレッド・ウエストウイック伯爵)の話では、
今回の外国渡航から帰ったら、当主の座を僕に譲るそうだ。
すでに女王陛下の内諾は得ている。
帰ったら、徐爵式を行うそうだ。」
(第105話)
ディーンは苦笑いを浮かべながら、話を続けた。
「で、、、僕は役人を退職しようと思う。。。」
オリビア第三王女は驚き問うた。
「どうして?」
ディーンは答えた。
「父上(=ウイルフレッド・ウエストウイック伯爵)曰く、
今回だけでなく、これから何度も外国渡航が必要になるとのことだ。。。
だって、戦争回避のため、何度も秘密外交することになるだろうから。。。
僕はウエストウイック伯爵家の当主として、
その任に当たる必要がある。。。
でも、そうなると、役人の仕事がおろそかになる。、、
そもそも当主になれば、
当主としての仕事だってしなきゃならない。。。
とても無理だ。」
(第105話)
ブリトニーはうなずき、「そっか。。。」とつぶやいた。
クリスティアナもうなずきつぶやいた。
「私も伯爵家を継いだら、役人を辞めるつもりだし。。。」
オリビア第三王女は驚き問うた。
「そうなの!?」
ブリトニーは苦笑いを浮かべて答えた。
「私達、『選外の6伯爵家』だしね。。。」
(第84話)
ディーンは苦笑いを浮かべて、オリビア第三王女に語り掛けた。
「役人を辞めても、元老院議員として、
この国の政治行政には携わるよ。
元老院の外務専門委員会の席を、
父上(=ウイルフレッド・ウエストウイック伯爵)から譲ってもらう。
父上(=ウイルフレッド・ウエストウイック伯爵)曰く、
『このことは、
オスカー・デービス元老院議長閣下と
外務専門委員長のトーマス・ライト公爵閣下の
了解済だ』
って。。。」
『王族派』の上位貴族の跡取りが大臣の秘書となったり、役人になるケースは少なくない。
例えば、ソフィア叔母さんの娘、アリシア・デービスはアースキン・バーナード財務相の秘書を務めている。
(第33話)
トーマス・ライト公爵の娘、イライザ・ライトはジャック・パーシー外相の秘書を務めている。
(第33話)
ブリトニー、クリスティアナ、ディーンは名門伯爵家の跡取りである。
(第83話)
これは跡取りに対する教育の一面があり、行政や政治が何たるかを体験できるため、上位貴族にとって大きなメリットがある。
一方、受け入れる役所側もメリットがあるのだ。
その跡取りが上位貴族の当主となり、元老院議員となったとき、元老院内の専門委員会のメンバになってもらって、政策実現のための一助となるからだ。
上位貴族の当主となった跡取りは元の職場である役所との繋がりがあり、何かと話を通しやすくなるからだ。
ブリトニー、クリスティアナ、ディーンは『選外の6伯爵家』であり、主要閣僚として選ばれることはない。
だったら、伯爵家を継いだ時に、役人を辞め、上位貴族の当主に専念するのも仕方がないのかもしれない。
上位貴族の当主に専念し、その後は元老院議員として、オウゴウヌ王国を支えるのだ。
一方で、『反王族派』の上位貴族の跡取りは、大臣の秘書になったり、役人になるケースはあまりない。
これは、『反王族派』の上位貴族達が、下手すると跡取りが『王族派』に取り込まれると警戒しているからである。
そのころ、その『反王族派』の上位貴族の会合が開かれていた。
場所は『反王族派』のボス、リーヴァイ・キーナン公爵邸である。
リーヴァイ公爵は銀髪のオールバックで、瞳は青く、丸顔で、スコッチの髭、身長は170cm前後のポッチャリとした体形の年齢は60歳前後の男性である。
『反王族派』の一人、ローガン・アサル公爵は午前中なのに酒をあおって、不満を漏らした。
「強引に補正予算を通されてしまった。」
ローガン公爵だけでなく、『反王族派』の若い上位貴族達は悔しそうに、午前中なのに酒をあおった。
リーヴァイ公爵は冷笑を浮かべてローガン公爵に声をかけた。
「ローガン殿、、、
その割に賛成していたではないか。」
ローガン公爵は再び酒をあおると、悔しそうに返した。
「財務相に脅されたんだ。。。」
リーヴァイ公爵は冷笑を浮かべたまま、同じ年代の貴族に念話を飛ばした。
「(念話)
こやつ(=ローガン公爵)、、、
二重帳簿に手を染めたな。。。」
すると、即座に念話で返事が返ってきた。
「(念話)
フン!
コヤツ(=ローガン公爵)は、
『国を憂う、心ある貴族』(第38話)などと、
日頃から自惚れておる。。。
だから、足元をすくわれるのだ。。。」
「(念話)
青二才(=ローガン公爵)が、、、
いい気味だ。。。。」
実は『反王族派』の上位貴族といっても、2つの派閥がある。
『反王族強硬派』と『反王族穏健派』に分かれる。
『反王族強硬派』は比較的若い貴族が多い。ローガン公爵はその『反王族強硬派』のリーダー格だ。
一方、『反王族穏健派』は中高年の貴族が多く、リーヴァイ公爵はその『反王族穏健派』のリーダー格である。
『反王族強硬派』と『反王族穏健派』は、あまり仲が良いわけではない。
『反王族』の一点で共闘しているだけだ。
ローガン公爵を念話で嘲り笑ったのは、『反王族穏健派』のメンバーだ。
実際のところ、『反王族穏健派』にとって、『反王族強硬派』は困った存在なのだ。
『反王族強硬派』はともかくすべてに反対だ。
いますぐにでも異世界の学門や技術を捨てよと強硬だ。
(第38話)
一方、『反王族穏健派』はすべてに反対なのは『反王族強硬派』と同じだ。
だが、これ以上の異世界の学問や技術の導入は反対という立場だ。
『反王族穏健派』は『反王族強硬派』の意見は行き過ぎと思っている。
だが、『反王族強硬派』は『反王族穏健派』を手ぬるいと思っている。
ローガン公爵はリーヴァイ公爵をキッと睨んだ。
「リーヴァイ・キーナン公爵閣下だって、最後は折れたではないですか。。。」
『反王族強硬派』の若い貴族達も、『反王族穏健派』の中高年の貴族達を睨んだ。
リーヴァイ公爵は何も答えず、せせら笑った。
そして、『反王族穏健派』の貴族達に念話を飛ばした。
「(念話)
この青二才共(=『反王族強硬派』)、、、
あの補正予算の意味を全く分かっておらぬ。。。」
即座に念話で返事が返ってきた。
「(念話)
左様、、、あの補正予算は戦争準備だ。。。」
「(念話)
ああ、、、今は補正予算を通した方が無難だ。。。」
リーヴァイ公爵は更に念話を飛ばした。
「(念話)
ところで、、、
王家や政府首脳に動きはないのか?」
即座に念話で返事が返ってきた。
「(念話)
わからぬ。。。
政府上層部に協力者が複数いるが、、、
彼等でも詳細は分からないそうだ。。。」
「(念話)
ああ。。。
ただ、この1か月ほど、
王室調査室と軍と外務省の上層部の動きが激しいらしい。。。
だが、分かったのはそこまでだ。。。」
リーヴァイ公爵は顔色一つ変えず、念話で返す。
「(念話)
情報統制が厳しいな。。。
『王族派』の動きはどうだ?」
念話で返事が返ってきた。
「(念話)
『王族派』も監視しているが、、、
『王族派』の中核メンバの動きが激しい。。。」
「(念話)
あと、、、ここ1週間ほど、、、
どうもライト公爵家とウエストウイック伯爵家が、
長旅の準備をしているらしい。。。」
やはりリーヴァイ公爵は顔色一つ変えず、念話で返した。
「(念話)
秘密外交で外国渡航するかもしれんな。。。」
念話で返事が返ってきた。
「(念話)
そうかもしれぬ。。。」
リーヴァイ公爵は『反王族穏健派』の貴族達に顔を向け、念話で語った。
「(念話)
我らの先祖は約200年前の戦争の時、
うまく立ち回って、地位を守った。
今再び、慎重な行動が必要だ。」
『反王族穏健派』の貴族達もリーヴァイ公爵に顔向け、念話で語った。
「(念話)
左様。。。」
リーヴァイ公爵は再びローガン公爵を始め、『反王族強硬派』の若い貴族達に顔を向けた。
そして『反王族穏健派』の貴族達に念話で語った。
「(念話)
青二才共(=『反王族強硬派』)とは、今後距離をとるぞ。。。」
念話で返事が返ってきた。
「(念話)
賛成だ。
青二才共(=『反王族強硬派』)は、
戦争が近付けば暴走し、いずれ自滅するだろう。」
「(念話)
その自滅に巻き込まれるのは御免だ。」
『反王族穏健派』は中高年の貴族が多いが、とりわけオウゴウヌ王国建国当初からの上位貴族が多い。
実は、約200年前、反乱を起こさず、派兵を拒まず出兵し、処分を免れた。
(第36話)
慎重に情勢を見極め、オウゴウヌ王国が勝利すると判断し、出兵し、処分を免れたのだ。
そうして自らの地位を守ってきたのだ。
『反王族穏健派』は『反王族強硬派』ほど強硬に反対はしない。
だが狡猾なのだ。
王太子であるシャーロット第二王女は後にこう語っていた。
「まだ、『反王族強硬派』は、
元老院で真正面から議論を挑んでくる。
だから、そう言うところは買っていたわ。。。
ま、彼らの論理には与しないけどね。。。
でも、『反王族穏健派』は真正面から議論はしない。
だけど、裏から突き崩そうとする。。。
陰湿で、狡猾で、厄介だったわ。。。」
オウゴウヌ王国の政治状況は様々な人物の思惑が絡み、どんどん複雑な様相を呈していく。
次話は2026/6/17 0時に更新予定です。




