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第127話 オリビア第三王女の涙

『第9章 苦悩するオウゴウヌ王国』の公開を開始します。


ワスイ帝国の脅威の前に、苦悩するオウゴウヌ王国の人々を描きます。


ドーラと僕が王城に戻ってきた翌日の月曜日の午前、場所は宰相官邸内の小さな会議室だった。

 

その小さな会議室には、オリビア第三王女、ブリトニー・ヨーク、クリスティアナ・ワーシントン、ディーン・ウエストウイックがいた。

 

4人は長机を囲み、座っていた。

 

 

 

ディーンが口を開いた。

 

「まずは、オリビア、ブリトニー、クリスティアナ、、、

 みんな忙しいのにありがとう。。。

 

 週末、実家(ウエストウイック伯爵家)に帰った。。。

 

 そして、父上(=ウイルフレッド・ウエストウイック伯爵)に、

 今回の外国渡航の目的を尋ねた。。。」

 (第119話)

 

 

 

そう言うと、ディーンは一つため息をつき、天井を見上げた。

 

数秒後、視線を降ろすと、オリビア第三王女とブリトニーとクリスティアナを見渡し、語り掛けた。

 

「極めて重大な情報を

 父上(=ウイルフレッド・ウエストウイック伯爵)から聞いた。。。

 

 そして、あまりにも秘匿性が高いため、

 こうして会議室をとって、皆に来てもらったというわけさ。。。

 

 皆、これから話すことは、絶対に秘密にしてほしい。。。」

 

 

 

オリビア第三王女とブリトニーとクリスティアナは、黙ってうなずいた。

 

 

 

ブリトニーは身を乗り出して、ディーンに問うた。

 

「ディーン、、、それで、今回の外国渡航の目的は?」

 

 

 

ディーンは再びため息をついた。

 

そして、静かに語った。

 

「皆、、、我が国に、ワスイ帝国の脅威が迫っている。。。」

 (第103話)

 

 

 

そう言うと、ディーンは詳細を話した。

 

その詳細は第60話を読んでもらいたい。

 

 

 

ディーンは詳細を離すと、こう話した。

 

「これは父上(=ウイルフレッド・ウエストウイック伯爵)曰く、

 

 ジャック・パーシー外相閣下の予測だが、、、

 

  『我が国は、最悪4倍の兵と対決しなければならない』

   (第104話)

 

 そうだ。。。」

 

 

 

オリビア第三王女とブリトニーとクリスティアナは息をのんだ。

 

 

 

ディーンはオリビア第三王女とブリトニーとクリスティアナは真剣な表情で見つめ、こう結んだ。

 

「それを避けるため、ガエリア教皇国との和平を急ぐ必要がある。

 (第105話)

 

 だから、今回、

 僕は父上(=ウイルフレッド・ウエストウイック伯爵)と共に、

 大陸諸国連合の主要3か国と、ガエリア教皇国に行くんだ。。。

 (第109話)

 

 そして、トーマス・ライト公爵閣下と、

 その娘、イライザ・トーマスも一緒に行く。。。」

 

 

 

オリビア第三王女は驚く。

 

「えー!、、、伯父上(=トーマス公爵)とイライザも!?」

 

 

 

そう、オリビア第三王女にとって、トーマス公爵は伯父であり、イライザは従姉妹だ。

 

ブリトニーはつぶやく。

 

「今回の秘密外交は、かなり本気ね。。。」

 

 

 

第105話で述べたように、トーマス公爵は前元老院議長の息子であり、しかもアン女王の従兄妹にあたる。

しかも、アン女王の夫、レオ近衛師団長の兄だ。

(第17話)

 

そしてウイルフレッド伯爵は前外相の息子だ。

 

『秘密外交の使者として誰を選んだのか?』だけでも、今回の秘密外交の本気度をオウゴウヌ王国は他国に示しているのだ。

(第105話)

 

 

 

 

 

クリスティアナはディーンに問うた。

 

「それで?

 

 和平は結べそうなの?」

 

 

 

ディーンはため息をつき、何度も顔を横に振った。

 

「正直、難しい。。。」

 (第105話)

 

 

 

ブリトニーはいぶかしげな表情で「なぜ」と問うた。

 

 

 

ディーンはうなずくと答えた。

 

「我が国は譲歩するが、、、

 

 父上(=ウイルフレッド・ウエストウイック伯爵)曰く、

 

  『それでも不十分』

 

 だ。。。」

 

 

 

クリスティアナはディーンを凝視して問うた。

 

「我が国はどこまで譲歩するつもりなの?」

 

 

 

ディーンは答えた。

 

「これは父上(=ウイルフレッド・ウエストウイック伯爵)の話だが、、、

 

 女王陛下が、

  『異世界との考え方や技術の取り入れを

   受け入れてもらえるのならば、、、

 

   女王陛下、自らがガエリア教皇国に赴き、

   教皇猊下に頭を下げても良い。』

   (第105話)

 と密書をしたためるそうだ。」

 

 

 

ブリトニーはあっけに取られて、問うた。

 

「女王陛下がガエリア教皇猊下に臣下の礼を取り、、、

 約200年前の戦争の敗者は我が国だと示してもダメってこと?」

 

 

 

ディーンはため息をついて答えた。

 

「父上(=ウイルフレッド・ウエストウイック伯爵)曰く、、、

 

 約200年間、秘密外交で、

  『異世界との考え方や技術の取り入れを

   受け入れてもらえるのならば』

 を条件に和平をガエリア教皇国と結ぼうとした。。。

 

 でも、、、

 受けいれてもらえなかったんだ。。。」

 (第105話)

 

 

 

ディーンは続けた。

 

「父上(=ウイルフレッド・ウエストウイック伯爵)曰く、

  『女王陛下自らがガエリア教皇国に赴き、

   教皇猊下に頭を下げても良い。』

 の我が国の妥協は、、、

 

 ガエリア教皇国には不十分だろうとのことだ。」

 

 

 

クリスティアナは唖然として問う。

 

「ガエリア教皇国は

 

  『異世界との考え方や技術の取り入れを受け入れることは

   絶対認めない』

 

 ってこと?」

 

 

 

ディーンはため息をつき、うなずいた。

 

「あくまで、、、

 

 父上(=ウイルフレッド・ウエストウイック伯爵)によれば、、、

 

 だ。。。」

 

 

 

オリビア第三王女はあきれて問うた。

 

「どうして、ガエリア教皇国はそんなにかたくななの?」

 

 

 

ディーンは苦笑いを浮かべて答えた。

 

「これも、父上(=ウイルフレッド・ウエストウイック伯爵)によればだが、、、

 

  『ガエリア教皇国は、

  

    【約1000年前に創造神ガエリア様が、

     我が国に限り、30年に一度、

     異世界の人を招致することを認めた。】

     (第26話)

  

   こと自体、気に食わない。』

 

 らしい。。。」

 

 

 

オリビア第三王女だけでなく、ブリトニーもあきれて、「は?」と問うた。

 

 

 

ディーンは視線を宙に浮かせて答えた。

 

「ガエリア教皇国曰く、

 

  『戒律の中で自らを厳しく律している我が国(=ガエリア教皇国)でさえ、

   そんなことは認められていない。

   

   それは【嘘】に決まっている。

   

   我が国を差し置いて、創造神ガエリア様が、

   オウゴウヌ王国を選ぶなどあってはならぬ。』

 

 との一点張りだそうだ。」

 

 

 

オリビア第三王女が思わず叫んだ。

 

「嘘の筈がないでしょう!」

 

 

 

オリビア第三王女は、ブリトニーとクリスティアナとディーンを見渡し、話しかけた。

 

「1か月前、首都レワヅワの空が紫や赤や緑に染まったでしょ?

 

 1年の始まりでもないのに。。。」

 (第7話)

 

 

 

オリビア第三王女の気迫に押され、クリスティアナは「ええ。。。」とうなずいた。

 

 

 

オリビア第三王女は更に話を続けた。

 

「あれはね。。。

 

 創造神ガエリア様からの知らせなの。。。

 

 『日本へ迎えに行け』という知らせ。。。

 

 あんなこと、創造神ガエリア様以外、できると思う?」

 (第7話)

 

 

 

ブリトニーは呆然としてつぶやいた。

 

「あれって、、、そういうこと。。。」

 

 

 

クリスティアナは右人差し指を顎に当て、天井を見上げて、つぶやいた。

 

「そう言えば、、、

 

 修司殿がはじめて貴族との晩餐会に参加されたのは、、、

 

 首都レワヅワの空が紫や赤や緑に染まった10日ほど後だった。。。」

 (第37話)

 

 

 

ディーンはオリビア第三王女を落ち着かせたいと思ったのだろう。

 

ディーンは両手をオリビア第三王女に向け、「オリビア、まずは落ち着け」とつぶやいた。

 

そして、ディーンはオリビア第三王女に話しかけた。

 

「約200年間、我が国はガエリヤ教皇国と秘密外交を行った。

 

 いや、約200年前の戦争の前も、ずっとガエリヤ教皇国とは交渉を重ねた。

 

 その首都レワヅワの空が紫や赤や緑に染まることも説明した。。。

 

 だが、それもガエリア教皇国は認めようとしなかったそうだ。。。

  

  『それは創造神ガエリア様ではない。【邪神】に相違あるまい。』

  

 と。。。」

 

 

 

オリビア第三王女は立ち上がり、バンと両手を机で叩きつけた!

 

そして、ディーンに叫んだ。

 

「ふざけんじゃないわよ!!」

 

 

 

オリビア第三王女は涙を浮かべ、立ち上がったまま、ディーンに話しかけた。

 

「修司殿を日本から連れてくるのに、どんなに大変だったと思うの?

 

 王城の庭から日本の修司殿の家につなぐのに3日半かかるのよ。。。

 

 しかも、聖なる岩に手を添えた大魔法を、、、


 つまり、『命がけの大魔法を連発』するの。。。」

 (第7話~第9話)

 

 

 

ブリトニーは立ち上がったオリビア第三王女を見上げ、唖然として問うた。

 

「そんなに大変なの!?」

 

 

 

補足すれば、通常は一度に数人の人にしかヒール魔法を掛けることはできないにもかかわらず、オウゴウヌ王家は一度に数百人の人にヒール魔法をかけることができる。

(第32話)


ドーラは魔法器官を失う前、魔法兵でも1~2kmしか飛ばせぬ念話を、10km先まで飛ばした。

フレッド副長は、ドーラを『バケモノ』と形容した。

(第47話)


そんなオウゴウヌ王家の3人の王女をもってして、3日半かかるほど、日本からオウゴウヌ王国に人を連れてくるのは、大変な魔力が必要なのだ。





話を戻そう。

オリビア第団王女はブリトニーを見つめると、涙を流して答えた。

 

「『3日半、大魔法を連発』してね。。。

 

 最初はみぞおちやへそ周辺に痛みが走るの。。。

 

 次に吐き気が襲ってきてね。。。

 

 右下腹部に耐えられない痛みが走るの。。。

 

 ポーションを飲みながらでも、治らないの。。。

 

 食事なんか喉を通らないわ。。。

 

 それでも創造神ガエリア様の指示に従いながら、、、

 やっと修司殿の家と王城の庭を繋げたの。。。」

 (第7話~第9話)

 

 

 

オリビア第三王女はディーンに顔を向けると、涙を流しながら話しかけた。

 

「あの痛みと苦しみがわかる?

 

 『ふざけんじゃない』わよ!」

 

 

 

クリスティアナは立ち上がったオリビア第三王女を見上げながら、オドオドと問うた。

 

「『創造神ガエリア様の指示に従いながら』って?」

 

 

 

オリビア第三王女は涙を拭うと、少し落ち着き、クリスティアナに顔を向け答えた。

 

「ええ、3日半、創造神ガエリア様の指示通り作業するの。。。

 

 だから、私は創造神ガエリア様の声を聞いたことがあるわ。。。」

 

 

 

オリビア第三王女は再びディーンに顔を向け話しかけた。

 

「私だけじゃない。。。

 

 シャーロット姉上も創造神ガエリア様の声を聞いた!

 

 30年前、母上(=アン女王)もソフィア叔母上も、

 創造神ガエリア様の声を聞いているの!

 

 ドーラ姉上なんか創造神ガエリア様に会っているの!

 

 それを『邪神』ですって!?

 

 ふざけんじゃないわ!」

 

 

 

そう言うと、オリビア第三王女は椅子に座った。

 

 

 

ブリトニーは唖然として、オリビア第三王女に問うた。

 

「『ドーラ第一王女殿下は創造神ガエリア様に会ったことがある』って?

 

 創造神ガエリア様の声を聞いたことがあるだけでも、

 凄いことなのに、、、

 

 ドーラ第一王女殿下は創造神ガエリア様に会ったことがあるの?」

 

 

 

オリビア第三王女はうなずき答えた。

 

「王城の庭と修司殿の家を結ぶ時は、

 聖なる岩に蓄えられている魔力ではとても足らないの。。。

 

 だから、そのときは創造神ガエリア様が降臨されて、

 ドーラ姉上に直接魔力を注ぐ必要があったの。。。

 

 後でドーラ姉上に訊くと、創造神ガエリア様に会ったことがあるのは、

 創造神ガエリア様曰く、今存命している人間では、

 ドーラ姉上と、修司殿の母上のエリーゼ伯母上だけだそうよ。。。」

 (第9話)

 

 

 

クリスティアナは目を見開いてつぶやいた。

 

「そういうこと。。。」

 

 

 

オリビア第三王女はディーンに顔を向け、話を続けた。

 

「でも、創造神ガエリア様の魔力は桁違いだから、

 ドーラ姉上への身体的負担は重くってね。。。

 

 ドーラ姉上は魔法器官を失ったわ。。。

 

 もう、ドーラ姉上は魔法を駆使することはできない。。。

 (第9話)

 

 ドーラ姉上だけじゃない。。。

 

 母上(=アン女王)も30年前、

 王城の庭と和泉家を繋ぐ際に、大魔法を連発したことが原因で、、、

 危うく死にかけたそうよ。。。

 (第32話)

 

 ソフィア叔母上も魔法器官を失った。。。

 (第32話)

 

 『邪神』ですって!?

 

 ふざけんじゃないわよ!」

 

 

 

そう言うと、オリビア第三王女の目から再び涙が流れた。

 

オリビア第三王女は慌てて涙を拭った。

 

 

 

ディーンは立ち上がり、オリビア第三王女に頭を下げた。

 

ディーンは頭を上げると、オリビア第三王女に語り掛けた。

 

「オリビアの気持ちはよく分かった。。。」

 

 

 

そう言うと、ディーンは椅子に座った。

 

 

 

(次話に続く)

次話は2026/6/15 0時に更新します。

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