第124話 僕とドーラが天文台を去った後で(その1) ー副台長と警備副隊長の疑問ー
ドーラと僕が天文台を去った日曜日の午後だった。
第111話で述べたように、天文台にはいくつか建物があり、それは警備担当者と研究者と技師が共有している事務所で行われた。
天文台の台長であるデニス・ウオートン教授と、警備隊長であるイーサン・ポーレット警部と、カドワダドル教授とダグ騎兵連隊長とドーラと僕が打ち合わせをした会議室(第112話)で行われた。
その会議室で、天文台のトップである、天文台の台長と副台長と警備隊長と警備副隊長の会議が開かれた。
つまり、天文台の台長であるデニス教授、副台長であるイアン准教授、イーサン警備隊長、ライオネル警備副隊長の4人の会議が行われた。
ま、週に1度の定例会議なのだか。。。
デニス台長はホッとした表情で、イーサン警備隊長に話しかけた。
「何とか無事に、ドーラ巡査部長と修司殿が帰っていったな。。。」
イーサン警備隊長もホッとした表情で返した。
「ええ。。。」
そのときイアン副台長が真剣な表情でデニス台長に問うた。
「ところでデニス教授。。。
修司殿は何者なんですか?」
デニス台長は慌てた表情で答えた。
「イアン君、、、君にも言ったじゃないか。。。。
『修司殿は政府要人が招いた留学生』
(第107話)
だって。。。。」
イアン副台長は何度も顔を横に振った。
「そんなことはありえません。」
デニス台長は戸惑いながら、「なぜ?」と問うた。
イアン副台長は真剣な表情のまま、右人差し指を立て、答えた。
「まず、修司殿は、球状星団の立体的位置の分布から、
『ここ、天の川銀河じゃない』
ってつぶやいたのです。。。」
(第118話)
イアン副台長は続ける。
「事前に修司殿は球状星団の立体的位置の分布を知っていたとしか思えません。
そうじゃなければ、そんなことは言えるはずがないのです。」
イアン副台長はさらに続ける。
「アシエシア大陸の中で望遠鏡があるのは、ここの天文台だけのはず。
(第111話)
修司殿の母国に望遠鏡はないはず。
でも、なぜ修司殿は球状星団の立体的位置の分布を知っていたのですか?」
イアン副台長は真剣な表情を崩さず、右人差し指と右中指を立て、話を続けた。
「そして、修司殿は、、、
銀河の距離と銀河の後退速度の分布が、、、
『あまりにもきれいすぎる』
とつぶやいたのです。。。」
(第118話)
イアン副台長は話を続けた。
「銀河の距離と銀河の後退速度の分布は、学会未発表で、
天文台所属の者以外は誰も知らない筈。。。
それなのに、『きれいすぎる』とつぶやいたのです。。。
事前に銀河の距離と銀河の後退速度の分布を知っていたとしか思えません。
どうして、修司殿は知っていたのですか?」
イアン副台長は真剣な表情のまま、右人差し指と右中指と右薬指を立て、話を続けた。
「さらに、修司殿は
『局所銀河群や超銀河団』
とつぶやいたのです。」
(第118話)
イアン副台長は話を続けた。
「約10年前、1.5mの口径を誇る望遠鏡を設置しました。
(第111話)
でも、オウゴウヌ王国で望遠鏡はこの天文台、たった一つしかありません。
たった一つの望遠鏡しかないため、それほど多くの銀河を観測できていません。
多くの銀河の動きはわかっていないのが現状です。
だから、銀河の階層構造まではわかっていません。」
イアン副台長は更に話を続けた。
「私も昔、コアブルッズ大学の大学図書館で、
日本からの専門書で局所銀河群や銀河団と言う概念を
読んだことがあるだけです。
なのに、修司殿は知っている。。。」
イアン副台長は右手を降ろすと、デニス台長を凝視した。
「しかも、、、
『おとめ座銀河団とかラニアケア超銀河団』
ってつぶやいたんですよ。。。」
(第118話)
イアン副台長は話を続けた。
「これも大学図書館の日本からの専門書で、
おとめ座銀河団は読んだことがあります。
だが、ラニアケア超銀河団なんて、
日本からの専門書にもなかった。」
補足すると、30年前、父・普一が持ってきた専門書には、まだラニアケア超銀河団は記載がなかった。
ラニアケア超銀河団の存在が明らかになったのは、ここ10年のことだから。
僕が持ってきた専門書にはラニアケア超銀河団の記述はあるが、ようやく先日、オウゴウヌ大学で閲覧可能になったばかりだった。
しかし、イアン副台長が所属するコアブルッズ大学で閲覧可能になるのは、数年後の見込みだ。
(第112話)
イアン副台長はデニス台長に再び問うた。
「なぜ、修司殿は私が知らないことを、知っているのですか?
修司殿はいったい何者ですか?」
デニス台長は答えに窮した。
「それは。。。」
イアン副台長はさらに畳みかけた。
「修司殿だけではない。。。
ドーラ巡査部長は何者ですか?」
見かねたイーサン警備隊長が、デニス台長の代わりに答えた。
「ドーラ巡査部長は、
首都レワヅワの警察消防本部に所属している警官です。」
イアン副台長はイーサン警備隊長に顔を向け、答えた。
「私は所属を問うているわけではありません。」
イアン副台長は再びデニス台長に顔を向けた。
「ドーラ巡査部長は、
『写真乾板に映った銀河を見た』
と言いました。
しかも、
『星の固まり』
と言いました。」
(第118話)
イアン副台長はデニス台長に語り掛けた。
「肉眼で銀河を星の固まりとして見ることは、ほぼ不可能なはずです。。。
なのに、ドーラ巡査部長は、銀河を星の固まりとして見たと言った。。。」
イアン副台長は真剣な表情でデニス台長に話しかけた。
「加えて、、、
デニス教授はドーラ巡査部長に、
相当気を遣っているように見えました。。。
本来、許可された者しか入れない筈の望遠鏡のある建物に、
特別に望遠鏡を見せました。。。」
(第113話、第118話)
イアン副台長は真剣な表情で、デニス台長に再度問うた。
「教えてください。
ドーラ巡査部長と修司殿は、
一体何者なんですか?」
デニス台長は天井を見上げ、「うーん」とつぶやいた。
そう、デニス台長は再び答えに窮したのだ。
ライオネル警備副隊長が口を開いた。
「私からも問いたい。
警備隊長、ドーラ巡査部長が率いる部隊は何者ですか?
警官ではないですよね?」
イーサン警備隊長は戸惑い、「なぜ」と問うた。
ライオネル警備副隊長は答えた。
「剣道の所作を知らない。
警官なら警察学校で基礎として知っているはず。
それなのにべらぼうに強い。
他の剣の訓練を積んでいるとしか思えない。」
(第117話)
ライオネル警部副隊長は続けた。
「乗馬も、
警官の乗馬の所作とは異なるのです。。。」
ライオネル警備副隊長はさらに続けた。
「だから、気になって、
ドーラ巡査部長が率いる部隊を観察したら、、、
同じ巡査でも階級差があるような振る舞いをしているんです。。。
彼らは警官ではないですね?」
補足すれば、ドーラの分隊は、天文台では、ドーラは巡査部長、フレッド副長は巡査長、それ以外は全員、巡査として活動していた。
だが、本来、ジャクソン、ヒュー、ルイス、エイミーは少尉であり、ケントとローレンスとベリンダとケイシーは准尉と曹長と上等兵である。
そこには階級差がある。
『巡査』であるとしても、本来階級差があるので、特に上等兵であるベリンダとケイシーは遠慮したのだろう。
デニス台長とイーサン警備隊長は、互いに顔を見合わせた。
そして二人ともため息をついた。
そしてデニス台長が口を開いた。
「わかった。。。」
(次話に続く)
次話は2026/6/10 0時に更新予定です。




