第122話 南西州都コアブルッズ市からの土産(その3) ードーラの暴走ー
(前話からの続き)
その高級果物店から、自動車の停めてあった停車場までの帰り道だった。
ドーラはふと、足を止めて、あるレストランを見つめ、つぶやいた。
「あのレストラン、、、ここだったのか。。。」
そしてドーラはニヤリと笑った。
僕は足を止め、「ドーラさん、、、どうしました?」と問うた。
すると、ドーラはニヤリと笑ったまま、顔を横に振り、答えた。
「なんでもない。。。
さあ、天文台に帰るぞ。」
そう言うと、停車場まで歩いて行った。
そして、ワンボックスカーで男女別に警官の制服に着替え、天文台に帰った。
土曜日の朝、午前8時過ぎに、休暇中のケント巡査(本当は准尉)とベリンダ巡査(本当は上等兵)を除き、僕とドーラと分隊メンバは、天文台から南西州州都コアブルッズ市の高級果物店に向かった。
やっぱりコアブルッズ市の停車場で、男女別交互にワンボックスカーの中で近衛兵の軍服に着替え、高級果物店に着いたのは午前11時すぎだった。
この時は果物ゼリーを150個受け取った。
果物ゼリーが入った段ボール箱を抱えながら、天文台を帰るため、停車場へ歩いていた。
突然、ドーラが分隊メンバ全員に声をかけた。
「どこへ行く?
昼食はここで食べよう♪!」
そう言うと、ドーラはニヤリと笑い、一軒のレストランを指さした。
僕は戸惑い、ドーラに問うた。
「ドーラさん、、、
ここ安全なんですか?」
そう、僕とドーラは暗殺の危険がある。
安全を確認したところで、安全を確認した食べ物しか、食すことは許されない。
ドーラはニヤリと笑って答えた。
「このレストランも王室御用達で、食す物は安全だ。
実際、数年前、母上(=アン女王)と地方視察でこの地域を訪れた時、
このレストランで食事をした。
それに護衛の分隊メンバと一緒だ。
安全であろう?」
確かに安全だ。
ドーラはニヤリと笑ったまま、僕に語った。
「それにここの豚料理は美味いぞ!」
だが、ローレンス巡査(本当は曹長)はあきれてつぶやいた。
「また?」
ベリンダ巡査(本当は上等兵)も、あきれて黙ってうなずいた。
ドーラはニヤリと笑ったまま、ローレンス巡査(本当は曹長)とベリンダ巡査(本当は上等兵)に語りかけた。
「良いではないか!
我だって、コアブルッズ市の観光を楽しみたいのだ!」
ローレンス巡査(本当は曹長)とベリンダ巡査(本当は上等兵)は、互いに顔を見合わせ、ため息をついた。
そしてローレンス巡査(本当は曹長)は、「はー、やれやれ」とつぶやいた。
僕とドーラと分隊メンバはそのレストランでランチを食した。
ランチと言っても、そこは王室御用達のレストランだ。
当然高い。
分隊メンバの一部はメニューを一目見て、あまりの高額さに驚いた。
特にケイシー巡査(本当は上等兵)は「こんな高いとこ払えない!」と悲鳴を上げた。
だが、ドーラは涼しい顔で分隊メンバに語り掛けた。
「大丈夫だ。我の奢りだ。」
実際、本当に分隊メンバ全員に奢った。
ローレンス巡査(本当は曹長)とベリンダ巡査(本当は上等兵)は、その様子を見て、互いに顔を見合わせ、再びため息をついた。
支払いの際は、ウエイターを呼び、ドーラは王室専用の買い物カードで払おうとした。
やっぱり、高級果物店と同様に(第121話)、ウエイターが不審な表情を浮かべ、ドーラに問うた。
「このカードは王室専用です。
このカードは本物ですか?
そもそもあなたは誰ですか?」
ドーラは苦笑いを浮かべ答えた。
「第一王女のドーラだ。
この店には数年前の地方視察の際、
母上(=アン女王)を始め、家族で夕食をとったが、
覚えておらぬか?」
その答えを聞いてウエイターは慌てて、厨房まで走って行った。
厨房からオーナーシェフが走ってきた。
「間違いない!
ドーラ第一王女殿下だ!」
そう言うとオーナーシェフはドーラに駆け寄り、頭を下げた。
「この度は、当店のものが失礼しました!」
ドーラは微笑み返した。
「よい。
今回は軍務でたまたまこの地を訪れただけだ。
よもや王族が訪れるなど、思うはずがないだろうしな。。。」
ドーラはさらに続けた。
「ところで、、、
物は相談なのだが。。。。
まずは頭を上げてくれぬか?」
オーナーシェフは恐る恐る頭を上げた。
ドーラはオーナーシェフが頭を上げたのを確認すると、微笑み問うた。
「実は、明日、この地を離れなければならぬ。
この店はテイクアウトはやっているのだろうか?
テイクアウトをやっているのなら、
明日の朝、午前8時半に受け取りたいのだが、
対応可能であろうか?
帰りの車中、昼食にそれを食しながら、
この地の思い出に浸りたいのだが。。。」
オーナーシェフは半ば緊張して、半ば困った顔で答えた。
「テイクアウトは通常やっておりませんが、、、
殿下のために、特別に用意いたしましょう。。。」
ドーラは微笑んだ。
「そうか!
それはありがたい!
我が隊、13人分をお願いしたいがよろしいか?」
オーナーシェフは頭を下げ、「かしこまりました」と答えた。
当然、今回のランチの分と合わせて、テイクアウト分もドーラは王室専用の買い物カードで支払った。
その様子を見ながら、ローレンス巡査(本当は曹長)とベリンダ巡査(本当は上等兵)は顔を下に向けて、三度目のため息をついた。
さて、こうして南西州の州都、コアブルッズ市から天文台に帰ったわけだが、途中でギレエ町の警察消防署に寄った。
そして警察消防署の受付に行くと、ドーラは微笑み語り掛けた。
「明日、我が隊は首都レワヅワに戻ります。
1週間、大変世話になりました。
礼として、コアブルッズ市の老舗高級果物店から、
銘菓の果物ゼリーを買ってきました。
どうか、署員で分けてもらえまいか。」
そして受付の机の上に、100個の果物ゼリーの入った段ボール箱を数箱置いた。
そのとき、受付には若い男性警官が座っていた。
彼は慌てて署内に走って行った。
数分後、彼はヒューバート署長と共に戻ってきた。
ヒューバート署長はドーラに駆け寄り、小声で話しかけた。
「ドーラ巡査部長、困ります!」
ドーラは微笑み、ヒューバート署長に語り掛けた。
「いいのだ。
今回はヒューバート・スタイルズ警視殿を始め、
ギレエ町の警察消防署の署員の皆様には大変世話になった。
どうか受け取ってはもらえまいか?
受け取ってもらえないと、我が困ってしまうのだ。。。」
ヒューバート署長は天井を見上げ、ため息をつくと、うなずいた。
「分りました。署員で分けます。。。」
こうして、果物ゼリー100個を受け取ってもらった。
ギレエ町警察消防署を後にすると、天文台に戻った。
やはりギレエ町警察消防署と同様に、天文台に勤めている、科学者、技師、警備員に50個の果物ゼリーを礼として渡した。
翌日の日曜日、この日、いよいよ首都レワヅワに帰る。
朝6時、天文台の警備隊は朝礼を行う。(第115話)
その朝礼で、ドーラは隊員達の前で話しかけた。
「我が隊は本日、修司殿を連れて、首都レワヅワに帰る。
1週間、大変世話になった。礼を言う。
そして2か月後、またここに来る。
その時は温かく、迎えてほしい。」
そう言うと、ドーラは分隊メンバに話しかけた。
「分隊メンバ諸君、警備隊員達に礼!」
すると、ドーラを始め、分隊メンバは全員一斉に、隊員達に頭を下げた。
「ありがとうございました!」
警備隊員達は戸惑いながら、拍手を送った。
ドーラを始め、分隊メンバと、カドワダドル教授とクラレンス君と僕は、朝6時の朝礼が終わると、すぐにワンボックスカー・軽トラ数台・オフロードバイクに分散し、天文台を発った。
麓の町、ギレエ町を素通りし、南西州の州都、コアブルッズ市に向かった。
事前にカドワダドル教授とクラレンス君には話してあったが、直接、首都レワヅワに帰らず、コアブルッズ市に寄ると聞いて、戸惑っていた。
午前8時半過ぎ、コアブルッズ市に着いた。
コアブルッズ市の停車場で、男女別交互にワンボックスカーの中で、警官の制服から近衛兵の軍服に着替えた。
最初に高級果物店に行った。
すでに店主と店員数名が待っていた。
分隊メンバは手分けして、果物ゼリーが450個が入っている段ボール数箱と、高級果物の詰め合わせ15箱を、ワンボックスカーと軽トラに詰め込んだ。
次に王室御用達のレストランへ行った。
やっぱりオーナーシェフとコック数名が待っていた。
分隊メンバは手分けして、ランチボックス13個が入っている段ボール1箱をワンボックスカーに詰め込んだ。
そして、ようやく、一路、首都レワヅワに向かった。
午前9時半ごろだったと思う。
あ、もう着替えは不要と言うことで、近衛兵の軍服で首都レワヅワに向かった。
(次話に続く)
次話は2026/6/8 0時に更新予定です。




