第121話 南西州都コアブルッズ市からの土産(その2) ー予約ー
(前話からの続き)
ドーラは苦笑いを浮かべてジャクソン巡査(本当は少尉)に答えた。
「100個では足らんな。。。」
ジャクソン巡査(本当は少尉)は戸惑い、「え?」とつぶやいた。
ドーラは苦笑いを浮かべつつ、答えた。
「ジャクソン、お前はいなかったが、、、
イーサン・ポーレット警備隊長と、
デニス・ウオートン天文台台長との話し合いで、
ダグ・ハミルトン騎兵連隊長閣下が明かしてくれたんだ。
『天文台で何かあれば、翌日、
首都レワヅワの近衛師団から第一陣として、
1個分隊、つまり10名が、自動車やバイクに分乗して、
駆けつける。
第二陣が急行馬車に乗って、
数個分隊、つまり数十名が二日半後に駆けつける。
そして、4,5日後には騎兵小隊、
つまり100名を引き連れて、駆けつける。』
と、つまり、騎兵小隊100名、プラス数個分隊の数十名が、
王城で待機しているってことだ。。。」
ジャクソン巡査(本当は少尉)は驚きながら、問うた。
「じゃあ、少なくとも200個の果物ゼリーがいると?」
ドーラはため息をつき答えた。
「300個ほど、果物ゼリーを買っていくか。。。」
僕は戸惑いながら、ドーラに語り掛けた。
「では、天文台とギレエ町警察消防署の礼はどうしましょう?
マシュー・南西州警察消防本部長はギレエ町警察消防署を増員し、
ヒューバート・ギレエ町警察消防署長は天文台の警備員を増員したん
ですよね?」
(第112話)
ドーラはため息をつき、腕を組んだ。
「そうなんだ。。。
その礼をせねばならぬが、、、難しいな。。。」
脇にいたエイミー巡査(本当は少尉)が語り掛けた。
「とりあえず、その果物ゼリーはいかがでしょう?
ギレエ町警察消防署署員全員と、天文台スタッフ全員に。。。」
ドーラはあきれて返す。
「それじゃ、
ギレエ町警察消防署長のヒューバート・スタイルズ警視の礼にはならんぞ。。。
それに、
南西州警察消防本部長のマシュー・ヒリヤー警視監への礼はどうする?」
エイミー巡査(本当は少尉)は苦笑いを浮かべ、両掌を上に向け、両手を伸ばして答えた。
「仕方がありません。。。
とりあえずの礼として、
ギレエ町警察消防署署員全員と、天文台スタッフ全員に、
果物ゼリーを土産として渡し、、、
マシュー本部長とヒューバート署長への礼は、
首都レワヅワに戻った後、女王陛下と近衛師団長閣下と相談の上、
改めて贈るべきかと。。。」
ドーラは再びため息をつき、つぶやいた。
「仕方がない。。。
マシュー・ヒリヤー警視監とヒューバート・スタイルズ警視の礼は、
王城に戻った後、母上(=アン女王)と父上(=レオ近衛師団長)に、
相談しよう。。。」
やはり脇にいたルイス巡査(本当は少尉)は、ドーラより預かっていた、王室メンバ専用の買い物カードを返し、ため息をついて話しかけた。
「残念ながら、このカードは使えませんでした。
(第120話)
立て替えておいたので、首都レワヅワに戻ったら払ってくださいね?」
ドーラは戸惑い、ルイス巡査(本当は少尉)に問うた。
「このカードが使えなかった?
それは何故?」
ルイス巡査(本当は少尉)の横にいた、ベリンダ巡査(本当は上等兵)が苦笑いを浮かべて代わりに答えた。
「ルイス巡査がカードを見せたら、
店員が不審な表情でこう言ったんです。
『王族がここ、コアブルッズ市にいるはずがない。
このカードは偽物だろう。』
で、、、
カードでの支払いを拒否されたので、やむなく。。。」
ルイス巡査(本当は少尉)はそれを思い出したのか、渋い表情を浮かべた。
ドーラは慌ててルイス巡査(本当は少尉)をなだめた。
「ルイス、済まなかったな。。。
我の配慮が足りなかった。。。」
ルイス巡査(本当は少尉)は不服そうだったが、黙ってうなずいた。
僕はため息をつき、ドーラに話しかけた。
「大量の果物ゼリーと、果物の詰め合わせを購入する必要があります。
賞味期限の問題もありますから、
明日、ドーラさんが直接、高級果物店に行く必要があるかと。。。」
ドーラもため息をつき、うなずいた。
「そうだな。。。
明日、我が高級果物店に行こう。。。」
翌日の木曜日の朝の午前8時過ぎ、休暇中のヒュー巡査(本当は少尉)、ジャクソン巡査(本当は少尉)、ケイシー巡査(本当は上等兵)以外で、南西州州都コアブルッズ市の高級果物店に向かった。
高級果物店に着いたのは午前11時過ぎだったと思う。
ドーラは警官姿であるが、そのまま高級果物店に行くと、店員が気付かない可能性がある。
そこで、コアブルッズ市に着くと、その停車場で、近衛兵の軍服に着替えた。
最初にワンボックスカー内でドーラをはじめ女性メンバが着替えた後、男性メンバもワンボックスカー内で着替えた。
もちろん、僕はスーツ姿なので、そもそも着替えなかったけど。
さて、ドーラをはじめ分隊メンバは高級果物店に入った。
近衛兵の軍服を着たドーラはショーケースの後ろに立つ若い女性店員に笑顔で話しかけた。
「果物の詰め合わせ15個と、果物ゼリー500個を所望したい。
ただし、土曜日の午前に果物ゼリー150個、
日曜日の朝に残りを受け取りたいのだが。。。」
店員は驚き、答えた。
「そんなに大量に購入なさるのなら、当店も準備が大変です。
前払いでお願いします。」
ドーラはポケットから財布を取り出し、その財布から王室専用の買い物カードを出し、店員に渡した。
「このカードで購入したいのだが。。。」
カードを見ると、不審な表情を浮かべ、ドーラに問うた。
「このカードは王室専用です。
このカードは本物ですか?
そもそもあなたは誰ですか?
当店に詐欺を行うつもりですか?」
昨日と同様に、南西州州都のコアブルッズ市に王族がいるはずがないと思っているのだろう。
ドーラは苦笑いを浮かべ、答えた。
「我は第一王女のドーラだ。」
昨日、よほど悔しかったのだろう。
ルイス少尉がニヤリと笑い店員に語り掛けた。
「先ほどから畏れ多くもドーラ第一王女殿下に対し、その態度は何事か!
非礼であるぞ!」
店員は慌てて「失礼しました!」と頭を下げると、店の奥に駆けだしていった。
数十秒後、店員は店主を連れて走って戻ってきた。
店主は走りながらドーラを見つけると、店員に叫んだ。
「間違いない! ドーラ第一王女殿下だ!
数年前の女王陛下の地方視察で、
私は女王陛下を始め、ご家族に対面している!」
そう言うと、店主はドーラに駆け寄り、ドーラに頭を下げた。
「ようこそ! ドーラ第一王女殿下!
しかし、、、なぜこの地に?」
ドーラは笑顔で答える。
「いや、、、
実は軍務でこの地にやってきていてな。。。
それにしても店主殿、久しいな。
何年振りであろうか?
この店の果物ゼリーがまた食べたくなった。
まずは店主殿、頭を上げてもらえぬか?」
店主は緊張した表情を浮かべながら、頭を上げた。
ドーラは店主が頭を上げるのを確認すると、笑顔で語り掛けた。
「実は今週末、この地を離れる。
この店の果物を土産で持って帰りたいと思って、
注文に来たというわけだ。。。
我が妹、シャーロットとオリビアも、
この店の果物をまた食したいと申しておるしな。。。
(第109話)
注文内容はそこの店員殿に伝えた。。。」
店員はその時まで緊張して頭を下げていた。
だが、店主が店員に近づき、「本当か?」と尋ねた。
店員は恐る恐る頭を上げ、注文内容を店主に告げた。
僕は笑顔で店主に問うた。
「土曜日と日曜日にここに来たいと思います。
土曜日は昼前にここに来ますが、
日曜日は都合上、午前8時半に受け取りたいのですが、、、
対応可能でしょうか?」
店主は緊張の表情を浮かべながら答えた。
「大急ぎで準備し、その時間に店を開け、お渡しします。」
ドーラはすまし顔で店主に語った。
「先ほど、店員殿が前払いしてくれとのことだが、
カードで支払いたいのだが。。。
良いだろうか?
カードは店員殿が持っている。。。」
店主は再び、店員に顔を向けた。
店員は緊張した表情で、カードを店主に渡した。
店主はカードを確認すると、緊張した表情で述べた。
「確かにカードを確認しました。
伝票を作成しますので、お待ちください。。。」
店主は土曜日受け取り分と日曜日受け取り分の予約票を2枚書き、ドーラに手渡した。
「当日はこれをもって、当店にお越しください。」
これで土産を確保した。
それにしても、、、
やはりドーラは第一王女なんだってわかる。
先ほど言ったように、僕も王室専用の買い物カードを持っている。
だが、僕は存在を知られていない。
そんな僕が王室専用の買い物カードを見せても、ルイス少尉と同様に、信用されず、拒否されるだろう。
ドーラを始め、アン女王陛下の家族は土日も公務を行っている。
数年前の地方視察も公務であっただろう。
その公務を行っていたから、店主はドーラの顔を知っていたのだ。。。
公務を免除されている僕ではこんなまねはできないのだ。。。
その高級果物店から、自動車の停めてあった停車場までの帰り道だった。
ドーラはふと、足を止めて、あるレストランを見つめ、つぶやいた。
「あのレストラン、、、ここだったのか。。。」
(次話に続く)
次話は2026/6/7 0時に更新予定です。




