第115話 麓の町、ギレエ町へ
時間はさかのぼり、天文台台長のデニス教授とイーサン警備隊長との打ち合わせまでに戻る。
(第112話)
ドーラは苦笑いを浮かべ、イーサン警備隊長に話しかけた。
「ところで、我が分隊は、今日、月曜日の朝、王城を出立しました。」
デニス教授は驚く。
「え?
今日の朝、首都レワヅワを出て、夕方、ここに到着したのですか?」
傍らにいたカドワダドル教授は苦笑いを浮かべ、デニス教授に話しかけた。
「私も一緒に来たが、、、
まったく、驚いて、あきれた。。。
これまで、首都レワヅワから天文台まで、4日と半日かかったのに、、、
(第45話、第110話)
たった1日だ。(第110話)」
デニス教授は天井を見上げ、ため息をついた。
ドーラは苦笑いを浮かべたまま、話を続けた。
「そして、日曜日の朝、ここ、天文台を発ち、
日曜日の夕方に王城に戻る予定です。」
カドワダドル教授も苦笑いを浮かべたまま、両掌を空に向け、両手を伸ばした。
ドーラは更に話を続けた。
「つまり、我が分隊は1週間、ずっと働いていることになり、
明日から土曜日の間、順次、休暇を与えたいのですが。。。」
同席していたダグ騎兵連隊長も苦笑いを浮かべ、話を繋げた。
「分隊メンバは警察官を装ってはいるが、中身は近衛兵です。。。
軍のルールとして、戦争や演習でもない限り、
1週間連続の勤務はダメなんです。。。」
イーサン警備隊長は天井を見上げ、「ははは!」と笑った。
イーサン警備隊長は顔をドーラに向け、笑顔で語った。
「もちろん、構いませんよ。
配下には私から説明します。
『ドーラ巡査部長の部隊メンバは1週間働きづめになるから、
順次休養を与えている』
って。。。」
ドーラは微笑み、「ありがとうございます。」と頭を下げた。
イーサン警備隊長はいたずらっぽく、ドーラに語り掛けた。
「でも、どうされます?
休日をここ天文台で過ごしても、
天文台はレクレーション施設はありますが、
観光したり、ショッピングを楽しむなんてできませんよ?
麓の町、ギレエ町に降りたとしても、
その町にはそんなに観光施設はありませんよ?」
ドーラは天井を見上げた。
実際、天文台の麓の町、ギレエ町はとても小さな町でね。
町と言うより、村に近いんだ。
小さな八百屋と小さな定食屋と小さな宿屋があるくらいで、観光施設はほとんどない。
天文台の常駐スタッフは家族を含め、このギレエ町に住んでいる。
そして交代でギレエ町から天文台に来ているわけ。
でも、彼等もちょっと大きな買い物をしようと思うと、50km離れた州都コアブルッズ市に行かなきゃならないんだ。
話を元に戻そう。
イーサン警備隊長は微笑み、ドーラに語り掛けた。
「ということで、、、
こうしませんか?
ちょうど、頼みたいこともあったし。。。」
そう言うと、イーサン警備隊長は、彼のアイデアをドーラに話した。
ドーラは戸惑いながら、うなずいた。
翌朝6時、つまり火曜日の早朝6時、ドーラとドーラの分隊は、天文台の警備隊の朝礼に参加した。
滅茶苦茶、朝が早いが、これには天文台特有の理由がある。
その理由は後で説明するので待ってほしい。
イーサン警備隊長は警備員19名を前に立った。
イーサン警備隊長の横にドーラを始め、ドーラの分隊メンバが並んだ。
そして、ぼくもドーラの横に立った。
実は、この日の朝礼だけ、僕も参加してくれと、イーサン警備隊長から頼まれた。
イーサン警備隊長は、警備員19名に話しかけた。
「昨日夕方、到着したが、今日から土曜日の夜まで、
首都レワヅワからドーラ巡査部長の部隊が加わる。
ドーラ巡査部長の部隊は天文台を警護するのが目的ではなく、
ここにいる、修司殿を警備するためである。
修司殿は政府要人が招いた留学生だ。
よって、リネット・ホーリス警察消防相閣下が、
首都レワヅワの警察本部に直接指示し、
首都レワヅワの警官の精鋭がやって来たというわけだ。」
(第107話)
イーサン警備隊長はドーラに顔を向け、話しかけた。
「それではドーラ巡査部長、
君の部隊の紹介を行ってくれ。」
ドーラはイーサン警備隊長に向け頭を下げ、「は!」と答えた。
そして頭を上げ、警備員19名に顔を向けると、話しかけた。
「我がドーラ巡査部長である。」
そう言うと、ドーラは分隊メンバに顔を向け、話しかけた。
「我が分隊メンバを紹介する。
横から、フレッド巡査長、ヒュー巡査、ジャクソン巡査、ケント巡査である。
そして、ローレンス巡査、エイミー巡査、ルイス巡査、ベリンダ巡査、
ケイシー巡査である。」
分隊メンバは一斉に頭を下げ、「は!」と答えた。
ドーラは再び警備員19名に顔を向け、頭を下げた。
「慣れぬ場所故、迷惑を掛けるやもしれぬ。
だが、我らに指導を頼む。」
イーサン警備隊長は苦笑いを浮かべ、拍手を送った。
警備員19名も苦笑いを浮かべ拍手を送った。
ドーラとドーラの分隊メンバが頭を上げるのを見ると、イーサン警備隊長は再び警備員19名に顔を向けた。
「さて、皆に注意を促したいことがある。
ドーラ巡査部長の部隊は、所属は首都レワヅワの警察消防本部である。
それどころか、修司殿を護衛しているときは、
リネット・ホーリス警察消防相閣下の直下の部隊である。」
(第107話)
警備員19名は全員、戸惑いの表情を浮かべた。
だが、イーサン警備隊長は警備員達の戸惑いをスルーして話を続けた。
「南西州の警察消防本部の所属である我らとは命令系統が異なる。
よって、我らは、ドーラ巡査部長の部隊に直接指示はできぬ。
例外は私だけだ。
私だけは、リネット・ホーリス警察消防相閣下の特別の許可を得て、
ドーラ巡査部長の部隊に指示ができることになっている。
つまり、諸君はいかなる場合でもドーラ巡査部長の部隊に指示はできない。
それは肝に銘じてほしい。」
(第107話)
こうして朝礼が終わると、エイミー巡査(本当は少尉)は、父親であるダグ騎兵連隊長を送っていった。
(第114話)
イーサン警備隊長は朝礼が終わると、笑顔で警備員19名に話しかけた。
「本日交代予定の10名は、
ドーラ巡査部長の部隊が麓の町、ギレエ町まで送ってくれるそうだ。
午前7時にここに集まれ!
午前7時に発すれば、麓の町、ギレエ町には午前8時頃に着くらしい。
着替えや荷造りの時間を考慮しても、
ギレエ町から州都コアブルッズ市の急行馬車の出発時間、
午前9時には十分間に合うぞ!」
すると、10名の警備員が「おー!」と歓声を上げた。
実は、麓の町のギレエ町と天文台の間には馬車が定期運航している。
そして麓の町のギレエ町と州都コアブルッズ市の間には急行馬車が定期運航している。
それぞれ2往復している。
天文台からギレエ町には、午前9時と午後2時に出発する馬車がある。
到着はそれぞれ午後1時過ぎと午後6時過ぎである。ま、おおよそであるが。
天文台の警備員達が、早朝の午前6時に朝礼を行うのは、この馬車に乗るためなんだ。
同様にギレエ町からコアブルッズ市にも、午前9時と午後2時に出発する急行馬車がある。
やっぱり、到着はそれぞれ午後1時過ぎと午後6時過ぎらしい。
つまり、午前9時までにギレエ町の急行馬車の発着場にいれば、午後1時過ぎにはコアブルッズ市に行けるってわけ。
だから、10名の警備員が喜んだってわけ。
イーサン警備隊長は一通の手紙をドーラに手渡した。
「それとドーラ巡査部長、
この手紙をギレエ町の警察消防署に持って行って、
署長に渡してもらえますか?」
ドーラは戸惑いながら手紙を受け取った。
イーサン警備隊長はドーラの耳元でささやいた。
「署長と本部長が、ギレエ町の警察消防署で待っております。」
ドーラは戸惑いながら、黙ってうなずくしかなかった。
さて、午前7時、警備員の交代要員10名と荷物を載せ、僕とドーラの分隊メンバは、天文台から麓の町、ギレエ町の警察消防署に向けて出発した。
交代要員10名は、ワンボックスカーと給油用の軽トラと、軽トラ4台に分乗してもらった。
いやー、結構大変だった。
ワンボックスカーは元々7人乗りなんだが、キャンピングカーに改造したので、5人乗りなんだ。
僕が運転し、ドーラが助手席に乗ると、3人しか乗れない。
で、給油用の軽トラと、軽トラ4台の助手席は合計5人だ。
つまり、交代要員10名のうち、8名しか乗れない。
軽トラの荷台に乗せるという案もあった。
と言うのも、天文台のあるギレエ山は標高300mの低い山(第110話)で、登ってみると、かなりなだらか道のりだった。
そうは言っても山道だ。
やっぱり、荷台では安全上問題があると言うことで、ワンボックスカーに載せてあった装備、まあ長距離無線通信機等を一旦降ろし、なんとか5人分のスペースを確保した。
あ、朝礼の後、長距離無線通信機でヒュー巡査(本当は少尉)は、王城の騎兵連隊事務所に定期連絡をしていたよ。
また、人通りのない山道のため、オフロードバイクやスクーターの護衛は必要ないのだが、、、
麓の町のギレエ町の警察消防署で、署長と本部長が待っているということで、なるべく全員で挨拶した方が良いと言うことで、、、
ローレンス巡査(本当は曹長)とベリンダ巡査(本当は上等兵)はオフロードバイクに乗って、ケイシー巡査(本当は上等兵)はスクーターに乗って同行した。
昨日、麓の町であるギレエ町から天文台まで登った時はスクーターでは難しいかもしれないと荷台に積んだが(第110話)、登ってみるとなだらかなであったので、問題なかろうと言うことで、ケイシー巡査(本当は上等兵)もスクーターで同行させた。
さて、午前7時に天文台を発し、午前8時過ぎには、麓の町のギレエ町の警察消防署に到着した。
(次話に続く)
次話は2026/6/1 0時に更新予定です。




