第106話 警察消防相・リネット・ホーリスとの話(その1) ードーラ、警官になるー
僕とドーラの分隊が王城に戻ったのは水曜日の正午前だった。
(第102話)
クラレンス君をオウゴウヌ大学に送り、僕とドーラの分隊は、軍の倉庫の前で荷物の上げ下ろしをしていた。
そして、その日の夕方の午後5時、約束通り、僕とドーラは、警察消防省のリネット・ホーリス警察消防相の個室を訪ねていた。
(第97話)
いやー、やっぱり大臣の個室なんでとても広い。
実はダグ騎兵連隊長も同行してね。
ダグ騎兵連隊長はこう言ってた。
「大臣の個室なんて、お前ら(=ドーラと僕)だけで、行かせられるか。」
ということで、、、本当はレオ近衛師団長が同行する予定だったんだけど、急に会議に呼ばれたんだって。。。クラリス参謀総長も呼ばれたらしい。。。
ダグ騎兵連隊長はリネット警察消防相の個室に入ると、こうつぶやいた。
「クラリスの個室並みに広い。」
(第59話)
そう、クラリス参謀総長の個室のように、個室と言っても、2間あり、入口手前が小さな会議室があり、その会議室を突っ切ると奥にリネット警察消防相の執務室になっている。
『小さな会議室』と言っても、10人が一度に会議ができる広さがあり、僕達はその会議室に座っていた。
あ、フレッド副長も同行した。
僕が運転し、ドーラが助手席に座ったワンボックスカーを、ダグ騎兵連隊長とフレッド副長が騎乗し警護しながら、王城から警察消防省へ移動した。
移動は10分程度だったと思う。
警察消防省の受付にフレッド副長が話しかけると、すぐにコンラッド・カニング警察消防次官が迎えに来た。
彼は笑顔で、ダグ騎兵連隊長、ドーラ、フレッド副長、そして僕を、リネット警察消防相の個室に案内した。
個室に入ると、リネット警察消防相が笑顔で迎えてくれた。
その個室にはアルバート・ネビル教育次官、キース・ランバート軍事次官がすでに待っていた。
個室の小さな会議室で
警察消防省からはリネット警察消防相とコンラッド警察消防次官
教育省からはアルバート教育次官
軍事省からはキース軍事次官とダグ騎兵連隊長とドーラとフレッド副長
そして僕
が席に座った。
リネット警察消防相が笑顔で口を開いた。
「先日、近衛師団から天文台敷地内で警察活動している地元警察に
お手伝いをしたい(第45話)との申し入れがあってね。。。」
するとリネット警察消防相が僕とドーラに顔を向けた。
「何事かと聞くと、
ドーラ殿下、修司殿、御二方が2か月に一度、
天文台に行くと聞いたわ。。。」
リネット警察消防相はため息をつくと、話を続けた。
「本来、天文台に誰が行くかなんて、私まで情報は上がらない。
でも、王族が近衛師団の分隊を引き連れて、
天文台に行くなんて前代未聞でね。。。
それで私のところまで情報が上がったってわけ。。。」
そう言うとリネット警察消防相は、コンラッド警察消防次官、アルバート教育次官、キース軍事次官を顔を向けた。
そして、僕とドーラに顔を向け、更に話を続けた。
「そこで、、、
対応について、、、
コンラッド警察消防次官、アルバート教育次官、キース軍事次官で
調整を進めていたの。。。」
アルバート教育次官は少し緊張した表情で、僕に語り掛けた。
「修司殿、、、
すでに聞き及んでおられるようですが、、、
わが国には恥ずかしながら、、、
約200年前の戦争の折、
多くの国内の天文台が破壊された歴史があります。」
(第43話)
コンラッド警察消防次官も、少し緊張した表情で僕に語り掛けた。
「再度の天文台の破壊を防ぐため、
王立天文台の警備は24時間警戒の状態です」
(第45話)
リネット警察消防相はため息をつき、僕とドーラに語り掛けた。
「それプラス、王族2人の警護をどうするか、省内で議論を進めたわ。。。
もちろん、都度、教育省、軍事省とも議論を重ねてね。
やっと先週末、方針が決まったの。
で、その方針をお二方に伝えるのが今回の会議の目的よ。」
コンラッド警察消防次官は僕を見つめ、語り掛けた。
「当初、王族の二人が天文台に行くことは反対しました。。。
ただでさえ、天文台の24時間警護で大変なのに、、、
王族の警護なんて無理だと。。。」
リネット警察消防相は再度ため息をつき、僕に語り掛けた。
「私も当初反対だった。
だから、女王陛下に
『修司殿の天文台行きをあきらめるよう、説得してほしい』
と頼みに行ったの。。。」
僕は戸惑い、「え?」とつぶやいた。
だが、リネット警察消防相は僕のつぶやきをスルーし、苦笑いを浮かべ、話を続けた。
「そしたら、女王陛下から叱られたの。。。
『この国は異世界の考え方や技術を取り入れて発展してきた。
修司殿は何かをもたらすはずだ。
修司殿の好きにさせよ。』
と言われてね。。。」
リネット警察消防相は微笑み、僕とドーラに語り掛けた。
「だから、修司殿が天文台に来ることと、
その修司殿を警護するため近衛師団の分隊が来ることを前提に、
検討をすすめたというわけ」
僕は思わず、リネット警察消防相に頭を下げた。
「ありがとうございます。」
頭を上げると、ダグ騎兵連隊長、ドーラ、フレッド副長も頭を下げていた。
リネット警察消防相は笑顔でドーラに語り掛けた。
「で、、、その検討結果なんだけど、、、
まず最初に、ドーラ殿下、あなたと、あなたの部下が、
『あからさまに』近衛師団の軍人として、
天文台敷地内に入ることは禁じます。」
ドーラは慌てて質問しようとした。
だが、リネット警察消防相は片手を上げて制止した。
コンラッド警察消防次官は苦笑いを浮かべ、リネット警察消防相の代わりに答えた。
「制服の異なる者の出入りは目立ちます。
過激な信徒が見張っているときもあるのです。。。
ときどき天文台に否定的な人々からの天文台閉鎖運動があり、
緊張があるのですよ。。。
そんな状態で、制服の異なる者の出入りは、
過激な信徒を刺激する恐れがあります。。。」
(第45話)
リネット警察消防相も苦笑いを浮かべ、ドーラに語り掛けた。
「というわけで、、、
修司殿が天文台にいる間、
ドーラ殿下の分隊は警官となってもらいます。」
ダグ騎兵連隊長は唖然として問うた。
「つまり、軍人から警察官に転籍せよと?」
リネット警察消防相は苦笑いを浮かべ、片手を振って否定した。
「いえいえ、、、
あくまで、『見た目だけ』警官になってください。」
コンラッド警察消防次官も苦笑いを浮かべ、ドーラに語り掛けた。
「1年間、ドーラ殿下の分隊には、
警官の制服と身分証を支給します。
それを着て、天文台に来てください。
あ、帯剣も禁止します。
警棒を着用してください。
あくまで見た目は警官なので。」
ダグ騎兵連隊長は戸惑いながら問うた。
「約150年前、当時の第一王女が暗殺された。
30年前も、普一殿に対する暗殺未遂事件があった。
警棒では、万が一、襲われた時、反撃できないのでは?」
コンラッド警察消防次官も真剣な表情で答えた。
「あくまで『帯剣を禁止』するだけです。
装備は天文台敷地に持ち込んでも可とします。
ただし、覆いで隠す等の処置をお願いします。
物凄い装備を持っていれば、それだけで疑われます。」
ダグ騎兵連隊長は戸惑いながら、確認した。
「つまり、、、
万が一、襲われ、ドーラ中尉や修司殿に身の危険が迫った時、
近衛師団の兵士として反撃して良いと?」
リネット警察消防相は、緊張した表情ではあったが、黙ってうなずいた。
ダグ騎兵連隊長はドーラに顔を向けた。
「ドーラ中尉、念のため、近衛師団の制服も持っていけ。
反撃の際は、それを着て、帯剣しろ」
するとドーラはダグ騎兵連隊長に頭を下げた。
「は!」
コンラッド警察消防次官は苦笑いを浮かべ、黙ってうなずいた。
リネット警察消防相はドーラに語り掛けた。
「ドーラ殿下、、、
天文台の敷地内では警官として振る舞っていただきます。。。
よって、天文台の敷地内では『ドーラ巡査部長』と名乗ってください。
決して、第一王女と気取られないよう、言動には注意ください。」
コンラッド警察消防次官はフレッド副長に語り掛けた。
「フレッド副長は『フレッド巡査長』と名乗ってください。
そのほかの分隊メンバは『巡査』と名乗ってください。
その旨、徹底してください。」
フレッド副長はコンラッド警察消防次官に頭を下げ、「は!」と答えた。
リネット警察消防相はフレッド副長に語り掛けた。
「部下にはドーラ殿下を『巡査部長』と言わせるように、、、
『分隊長』とか『中尉』とか『殿下』なんて言わせないようにね。。。」
フレッド副長はリネット警察消防相に頭を下げ、「こころえました!」と答えた。
ま、ドーラもフレッド副長も、ダグ騎兵連隊長と一緒なのでね。。。
返事が軍人風で、、、軍人以外の参加者は苦笑いを浮かべていた。。。
(次話に続く)
次話は2026/5/23 0時に更新予定です。




