第104話 上位貴族王族派メンバの会合(その2) ージャック外相の予測ー
(前話からの続き)
それでも『なんとかワスイ帝国の侵攻を撃退した』と言う状態であり、プレアスワ王国がワスイ帝国に屈服すれば、大陸諸侯連合派ワスイ帝国の侵攻を防げなくなるのは自明であった。
トーマス公爵はつぶやいた。
「隣国のヘリワセ王国の本音は、我が国との戦争はイヤなはずだ。
ヘリワセ王国がガエリア教皇国をはじめ、
大陸諸国との橋渡しをしてくれるだろう。。。」
トーマス公爵はつぶやいた後、ジャック外相に顔を向け、問うた。
「ジャック、、、
仮にプレアスワ王国現国王が亡くなった場合、どうなるのか?」
ジャック外相は天井を見上げた。
そして、視線をトーマス公爵に戻し、答えた。
「あくまで私個人の予測ですが、、、
いくつかのシナリオが考えられます。。。」
ジャック外相は右人差し指を立て、トーマス公爵に話した。
「まず、
『我が国がガエリア教皇国と和平を結び、大陸諸国連合に加入し、
ワスイ帝国と対する』
のです。
しかも、
『プレアスワ王国がワスイ帝国に吸収される前に大陸諸国に加入する』
のです。
これが一番良いシナリオです。」
トーマス公爵は問うた。
「その一番良いシナリオではどうなる?」
ジャック外相は微笑み答える。
「大陸諸国は我が国が加盟したことで、兵力はワスイ帝国を上回ります。
『長期にわたって』、ワスイ帝国の南進を食い止められるでしょう。」
ウイルフレッド伯爵はあきれて答える。
「そのガエリア教皇国との和平を200年前から結ぼうとして、
うまくいかないのだぞ?
プレアスワ王国がワスイ帝国に吸収される前に、
和平を結ぶのは至難の業ではないのか?」
補足すると、オウゴウヌ王国は約200年前の戦争後、ずっと大陸諸国と秘密外交を行い、和平の道を探ってきた。
特に、盟主である、ガエリア教皇国との和平は悲願であった。
しかし、約200年間、そのガエリア教皇国との和平交渉はことごとく失敗に終わっていた。
話を戻そう。
ジャック外相はため息をつくと、右人差し指と右中指を立て、トーマス公爵に話した。
「ウイルフレッドの言う通りです。
二番目に良いシナリオは、
『我が国がガエリア教皇国と和平を結び、大陸諸国連合に加入し、
ワスイ帝国と対する』
までは、一番良いシナリオと同じですが、
『プレアスワ王国がワスイ帝国に吸収されることを防げなかった』
場合です。」
トーマス公爵は問うた。
「その二番目に良いシナリオではどうなる?」
ジャック外相は苦笑いを浮かべて答えた。
「プレアスワ王国がワスイ帝国に吸収されたとしても、
大陸諸国は我が国が加盟したことで、
兵力はワスイ帝国と拮抗します。
『当面の間』、
ワスイ帝国の南進を食い止められるでしょう。」
ウイルフレッド伯爵は再度あきれて答える。
「再度言うが、
そのガエリア教皇国との和平を200年前から結ぼうとして、
うまくいかないのだぞ?
今回だって、和平は困難だぞ?」
何度も言うが、約200年間、オウゴウヌ王国はガエリア教皇国との和平交渉はことごとく失敗に終わっているのだ。
簡単ではないのだ。
この2番目に良いシナリオの実現でさえ、簡単ではない。
トーマス公爵はため息をつき、ジャック外相に問うた。
「ウイルフレッドの言うとおり、
ガエリア教皇国との和平は困難だ。
その場合、何が起こる?」
ジャック外相は再びため息をつき、天井を見上げた。
そしてトーマス公爵に顔を向け、苦笑いを浮かべ、答えた。
「その場合も、幾つかシナリオがありますが、、、
その中で最も良いシナリオをお話しします。」
そう言うと、ジャック外相はテーブルの上のコーヒーを一口飲んだ。
そして口を開いた。
「我が国とガエリア教皇国との和平がならず、
かつプレアスワ王国がワスイ帝国に吸収されれば、
大陸諸国連合の崩壊は不可避でしょう。。。
その場合、最も我が国にとって、最も良いシナリオは、
隣国ヘリワセ王国、シプアオ王国、ウチルイ王国と同盟を結び、
ワスイ帝国に対抗することです。」
すると、アーチボルト伯爵がジャック外相に問うた。
「その同盟がワスイ帝国に対抗できるのか?」
ジャック外相はアーチボルト伯爵に答えた。
「おそらく、ワスイ帝国はプレアスワ王国だけでなく、
エシテルン王国やガエリア教皇国も屈服させるでしょう。。。
そのワスイ帝国陣営の兵力数は、
我が国・ヘリワセ王国・シプアオ王国・ウチルイ王国の兵力数を凌駕します。
対抗するのは、かなり不利な状況に陥るかと。。。」
アーチボルト伯爵が、あきれてジャック外相に語り掛けた。
「そもそも、シプアオ王国とは狭い海沿いで援軍が通るのは難しい。
ウチルイ王国に至っては、高い山脈越えで、援軍を送るのは不可能に近い。
つまり実現したところで、維持が難しいのではないか?」
そう、シプアオ王国とウチルイ王国に、オウゴウヌ王国から直接援軍を送るのは難しい。
しかも、そもそも、オウゴウヌ王国・ヘリワセ王国・シプアオ王国・ウチルイ王国の兵力数は、プレアスワ王国・エシテルン王国・ガエリア教皇国を吸収したワスイ帝国の兵力数に劣るのだ。
オウゴウヌ王国・ヘリワセ王国・シプアオ王国・ウチルイ王国の4カ国同盟が実現しても、維持はほとんど不可能だ。
ジャック外相はため息をつき、うなずくと、アーチボルト伯爵に答えた。
「ええ、、、
隣国ヘリワセ王国、シプアオ王国、ウチルイ王国と同盟を結んだとしても、、、
最終的には我が国とヘリワセ王国との2か国の同盟に落ち着くでしょうね。。。
これが、我が国とガエリア教皇国との和平がならなかった場合の、
2番目に良いシナリオです。」
アーチボルト伯爵がジャック外相に問うた。
「そのヘリワセ王国との同盟で、ワスイ帝国に対抗できるのか?」
すると、ジャック外相はまたため息をついた。
そして、彼は両掌を天井に向け、両手を伸ばして、アーチボルト伯爵に語り掛けた。
「ワスイ帝国は、ヘリワセ王国以外の全大陸諸国連合の国家を
飲み込んでいるでしょう。。。
その兵力は、我が国とヘリワセ王国の全兵力の2倍以上となります。
極めて不利な状況に陥るでしょう。。。」
トーマス公爵はあきれてジャック外相に語り掛けた。
「ジャック、、、
そんな状況に陥ることが分かっていて、
ヘリワセ王国が我が国と同盟を結ぶとは到底思えんぞ。。。」
ジャック外相はうなずき、トーマス公爵に答えた。
「ええ、、、
我が国とガエリア教皇国との和平がならなかった場合、、、
我が国は、ワスイ帝国が大陸諸国連合の全加盟国を吸収した全兵力と、
戦うことになる可能性が一番高いですね。。。
これが最悪のシナリオです。」
ジェイラス伯爵は恐る恐るジャック外相に問うた。
「その場合、我が国は、何倍の兵力と戦わねばならぬのか?」
ジャック外相は真剣な表情でジェイラス伯爵に答えた。
「およそ4倍です。」
すると、ジェイラス伯爵だけでなく、会議の全出席者が天井を見上げ、ため息をついた。
アーチボルト伯爵は、アン女王を見つめ、語り掛けた。
「約200年前の戦争では、反王族派の貴族が反乱を起こし、
国内も騒乱状態となりました。
あの約200年前の戦争当時の状況が再現しかねませんぞ。。。」
(第36話)
アン女王はだまって、アーチボルト伯爵にうなずいた。
アースキン財務相は苦笑いを浮かべ、アーチボルト伯爵に語り掛けた。
「アーチボルト、、、
200年前は5万対30万で勝った。
(第27話)
今回もなんとか勝てるのではないか?」
だが、アン女王は苦笑いを浮かべ、アースキン財務相を窘めた。
「アースキン、、、、
あまり楽観的になるべきではない。。。」
約200年前、オウゴウヌ王国は、大陸諸国連合の30万の大軍に対して、5万の兵で打ち破ると言う奇跡を起こした。
(第27話)
しかし、これは当時の国際情勢も味方した。
当時の国際情勢から、当時オウゴウヌ王国首脳陣は、大陸諸国連合に勝てると判断し、降伏せず、頑強に抵抗を続け、最後は撃退したのだ。
そう、『奇跡にはタネがあった』のだ。
ただし、このタネについては歴代の王と王太子、そして歴代の外相と参謀総長しか知らない秘密なのだ。
この会議でその秘密を知っているのは、アン女王、シャーロット第二王女、ジャック外相だけだった。
そう、アン女王の妹であるソフィア叔母さんも、夫であるレオ近衛師団長も、第一王女であるドーラも、オリビア第三王女も、この秘密を知らない。
秘密としているのは、王家のカリスマ性を維持するためだ。
でも同時に現状を見誤らないために、歴代の王と王太子、そして歴代の外相と参謀総長しか知らない秘密なのだ。
200年前の戦争の勝利は、決して奇跡ではないことを、アン女王とシャーロット第二王女とジャック外相、そしてこの会議に参加していないクラリス参謀総長は知っていた。
話を戻そう。
アン女王がアースキン財務相を窘めるのを見た、シャーロット第二王女とジャック外相は苦笑いを浮かべた。
アン女王は、オウゴウヌ王国にとって、国際情勢は200年前より現在の方が悪化していると見ていた。
アン女王は、約200年前の戦争では5万対30万の6倍の敵に勝利したからと言って、今、4倍の敵に勝てるとは限らないと判断していた。
それは、シャーロット第二王女も、ジャック外相も同意見であった。
トーマス公爵はアン女王に向けて話しかけた。
「我が国とガエリア教皇国との和平が必要だな。」
(次話に続く)
次話は2026/5/21 0時に更新予定です。




