第103話 上位貴族王族派メンバの会合(その1) ーアシエシア大陸の国家構成ー
僕とドーラの分隊が練兵場から王城に戻った水曜日(第102話)、その日の午後、宮殿内の一室で元老院における王族派の中核メンバが集まっていた。
ああ、元老院には大きく分けて、三つのグループの上位貴族がいてね、『王族派』と『反王族派』と『中間派』に別れる。
『王族派』は言わずもがなアン女王に方針に付き従うグループで、日本からの技術や知識を取り入れるのに積極的な賛成を唱えるグループだ。ただし、ごく少数である。
『反王族派』は、アン女王の方針にはことごとく反対するグループで、当然、日本からの技術や知識を取り入れることは絶対反対を唱えるグループだ。どちらかと言うと、オウゴウヌ王国建国当時からの上位貴族が比較的多い。
『中間派』は、まあ是々非々で、アン女王の方針に賛成したり、ときに反対したりするグループで、このグループが大半を占める。
今回集まったのは、『王族派』でも、その中核をなすメンバーである。
この会合には王族からはアン女王とシャーロット第二王女が出席した。
そして、元老院議長として、オスカー・デービス公爵とその妻ソフィア、要するにソフィア叔母さんだ。
次に現主要閣僚である、ジョージ・ロビンソン伯爵(現宰相)、アースキン・バーナード伯爵(現財務相)、ジャック・パーシー伯爵(現外相)だ。
さらに前元老院議長の息子である、トーマス・ライト公爵だ。
加えて、前主要閣僚の子息である、アーチボルト・ヨーク伯爵(母が前宰相)、ジェイラス・ワーシントン伯爵(父が前財務相)、ウイルフレッド・ウエストウイック伯爵(父が前外相)だ。
すなわち、オスカー元老院議長、ジョージ宰相、アースキン財務相、ジャック外相、トーマス公爵、アーチボルト伯爵、ジェイラス伯爵、ウイルフレッド伯爵が、元老院における『王族派』の中核メンバというわけだ。
そう、現元老院議長、現主要閣僚、前元老院議長と前主要閣僚の子息が、元老院での『王族派』の中核メンバなのだ。
現閣僚は当然ながら『王族派』の中核メンバとして、女王に対して忠誠を示し、女王に貢献する。
そして、前主要閣僚の子息は元老院で『王族派』の中核メンバとして、女王に対して忠誠を示し、女王に貢献する。
その2代にわたる忠誠と貢献の見返りとして、前主要閣僚の伯爵家は、あくまで公爵家の空きがあればだが、公爵家への昇格という褒美を得るのだ。
(第84話)
話を戻そう。
オスカー元老院議長は参加者を見渡した。
そして彼はトーマス公爵に視線を向けると口を開いた。
「トーマス、練兵場で言ったように、
『女王陛下と王太子殿下に同席を願った上で、
今回の補正予算の背景』
を説明しようと思う。」
(第96話)
そう言うと、オスカー元老院議長はジャック外相に目を向けた。
ジャック外相はため息をついた。
そしてトーマス公爵を見つめ、口を開いた。
「トーマス・ライト公爵閣下、、、
先月の国防秘密会議にて、
王室調査室長から、
『ピレアスワ王国の現国王、
アロイス・ピレアスワが死の床についている。』
との報告がありました。」
(第60話)
すると、トーマス公爵は目を見開き、「あ!」とつぶやいた。
トーマス公爵だけではなかった。ウイルフレッド伯爵もハッとした表情を浮かべた。
実は、トーマス公爵とウイルフレッド伯爵は、オウゴウヌ王国の秘密外交の中心を担っていた。
トーマス公爵とウイルフレッド伯爵は、『ピレアスワ王国の現国王が死の床についている』という情報だけで、それが何を意味するのか、すぐにわかったのだ。
トーマス公爵は唖然としてジョージ宰相に問うた。
「ジョージ、、、この補正予算はそう言うことか?」
ジョージ宰相は黙ってうなずいた。
ウイルフレッド伯爵も唖然としてジャック外相に問うた。
「ジャック、、、
『アロイス・ピレアスワが死の床についている。』
と言うのは、事実か?」
ジャック外相は困った表情で顔を横に振った。
「わからん。。。
あくまで王室調査室の『諜報』によればだ。。。」
取り残されたジェイラス伯爵とアーチボルト伯爵は戸惑った。
ジェイラス伯爵は戸惑いの表情を浮かべたまま、トーマス公爵に問うた。
「トーマス・ライト公爵閣下、、、
どういうことでしょうか?」
アーチボルト伯爵も戸惑いの表情のまま、ウイルフレッド伯爵に問うた。
「ウイルフレッド、、、どういうことだ?」
トーマス公爵とウイルフレッド伯爵は苦笑いを浮かべ、その理由を述べた。
ま、くわしくは第60話を読んでほしい。
トーマス公爵とウイルフレッド伯爵は交互に、ジェイラス伯爵とアーチボルト伯爵に説明を終えた。
そしてトーマス公爵はジョージ宰相に顔を向けると、真剣な表情で問うた。
「ジョージ、、、戦争しかないのか?」
ジョージ宰相が答える前に、ジャック外相が頭を振り、答えた。
「いえ、、、もちろん秘密外交も行います。」
オウゴウヌ王国は約200年前の戦争後、アシエシア大陸の諸国とは断交状態にあり、正式な外交は行えない。
(第27話)
よって、非公式に秘密外交を行うしかないのだ。
アン女王はジャック外相にうなずくと、トーマス公爵に話しかけた。
「秘密外交のため、何人かの上位貴族には国外へ行ってもらう。
そのための渡航費用も、王室調査費から捻出する。」
そう言うと、アン女王はため息をつき、さらにトーマス公爵に話しかけた。
「そのために、これもいずれ補正予算を組まねばならぬだろう。。。」
アン女王はアースキン財務相に顔を向けた。
アースキン財務相はため息をつくと、黙ってうなずいた。
アン女王はトーマス公爵とウイルフレッド伯爵に顔を向けなおし、語り掛けた。
「トーマス、ウイルフレッド、、、
大陸諸国連合の主要3か国と、ガエリア教皇国に行ってくれぬか?」
トーマス公爵とウイルフレッド伯爵はうなずいた。
そして、トーマス公爵はつぶやいた。
「隣国のヘリワセ王国の本音は、我が国との戦争はイヤなはずだ。
ヘリワセ王国がガエリア教皇国をはじめ、
大陸諸国との橋渡しをしてくれるだろう。。。」
ああ、オウゴウヌ王国はアシエシア大陸の南端にある。
(第26話)
オウゴウヌ王国は、北の中央から北東にはヘリワセ王国、北西にシプアオ王国、北の中央から北西の半分くらいにウチルイ王国と接ししている。
でも、大軍が通れるのは北東のヘリワセ王国との国境しかない。
北のウチルイ王国の国境は標高6000mを越える山脈が連なっている。(第26話)
北西のシプアオ王国との国境には海岸線に山脈が迫っており、やっぱり大軍は通りにくいんだ。
(第26話)
北東のヘリワセ王国との国境も海岸線に山脈が迫っている。
だが、北東の国境の方が、まだ大軍は通りやすい。
実際、約200年前の戦争も(第27話)、ヘリワセ王国との国境地帯で起こった。
あのとき、ヘリワセ王国は大陸諸国連合軍30万人に兵糧や宿舎を提供しなければならず、大変な負担がかかったんだ。
だから、ヘリワセ王国はオウゴウヌ王国との戦争は、もうコリゴリというのが本音なんだ。
それがあって、ヘリワセ王国は、オウゴウヌ王国とガエリア教皇国との橋渡しをずっと担ってきた。
ここでオウゴウヌ王国のあるアシエシア大陸を構成する国家を説明しようと思う。
アシエシア大陸に南端にオウゴウヌ王国、北端にワスイ帝国がある。
ただし、ワスイ帝国の領土は極めて広く、アシエシア大陸の4割程度である。
一方、オウゴウヌ王国の領土は、アシエシア大陸の2割弱である。
でも、赤道にまで達する細長い半島が、オウゴウヌ王国の領土の半分を占め、この半島は巨大生物が多く、人が住めない。
よって、実際のところ、オウゴウヌ王国で人が住めるのは、領土の半分程度なんだ。
アシエシア大陸の面積の4割ほどが大陸諸国連合の領土があり、大陸の真ん中やや南寄りに位置する。
現在のところ、大陸諸国連合は6か国から構成される。
このアシエシア大陸の真ん中、やや南寄りの領域を、大きく分けて、北東・北西・南東・南西に区分けして、6か国が存在する。
北東にエシテルン王国、北西にプレアスワ王国、南東にヘリワセ王国があり、この3カ国は大陸諸国連合の中では比較的大きく、兵力も多い。
つまり、実質的にはエシテルン王国、プレアスワ王国、ヘリワセ王国の3カ国が、大陸諸国連合の主要国である。
南西の部分に、シプアオ王国とウチルイ王国とガエリア教皇国があり、この3カ国は領土も狭く、兵力も少ない。
そう、実際のところ、ガエリア教皇国は国力や兵力では弱小国にすぎない。
しかし、このアシエシア大陸の民衆のほとんどは、ガエリア教に帰依している。
(第27話)
すなわち、ガエリア教皇国の影響力は極めて大きい。
よって、ガエリア教皇国は大陸諸国連合の盟主となっており、その他の5カ国の王は、ガエリア教皇に対して臣下の礼をとっている。
だが、国力や兵力の面では、エシテルン王国、プレアスワ王国、ヘリワセ王国の主要3カ国が支えている。
この3カ国が大陸諸国連合の兵力の4分の3を占める。
しかも、シテルン王国とプレアスワ王国がワスイ帝国と国境を接しており、両国がワスイ帝国の南下を防いでいた。
ただし、エシテルン王国もプレアスワ王国も、導入可能な兵力はワスイ帝国の4分の1に過ぎず、ワスイ帝国の両国への侵攻により、これまで何度も危機に陥った。
残る主要国のヘリワセ王国は、エシテルン王国の南、プレアスワ王国の南東の国境に接している。
よって、エシテルン王国とプレアスワ王国のどちらかがワスイ帝国の攻撃により、危機に陥った時、その都度、ヘリワセ王国は援軍を出した。
だが、ヘリワセ王国が援軍を送っても、危機を緩和できるだけであった。
南西の弱小3カ国がさらに援軍を出したり、エシテルン王国とプレアスワ王国のどちらかがワスイ帝国を牽制することで、なんとかワスイ帝国の侵攻を撃退してきた。
それでも『なんとかワスイ帝国の侵攻を撃退した』と言う状態であり、プレアスワ王国がワスイ帝国に屈服すれば、大陸諸侯連合がワスイ帝国の侵攻を防げなくなるのは自明であった。
(次話に続く)
次話は2026/5/20 0時に更新予定です。




