第101話 ルイス少尉の執念、再び。
(前話からの続き)
さて、ダグ騎兵連隊長がオフロードバイクに乗って、練兵場から王城に戻った後(第98話)、ルイス少尉が僕に近づき問うた。
「修司殿、、、
パラグライダーからの弓矢の腕は上がったんだけど、、、
巨大生物の生命力って半端なくって、、、
矢が数本当たったくらいじゃ、死なないんだ。。。
(第100話)
どうしたらいい?」
まあ、弓矢程度だと巨大生物に対する殺傷能力が十分でないのだろう。。。
でも、どうする?
念のため、確認した。
「ルイス少尉、、、
念のためですが、授かった魔法は飛行の魔法だけですか?」
ルイス少尉は黙ってうなずいた。
ルイス少尉はロケットかジェットエンジンの魔法以外は授かっていない。。。
となると、魔法以外の方法、空中で使える武器となる。
ただし、パラグライダーの大きさを考慮すると、間接攻撃可能な武器じゃないとダメだ。。。
やっぱり弓矢しかない。。。
矢の一本の攻撃力を上げるしか方法がないだろう。。。
ふと、僕は先週の巨大生物は、ダグ騎兵連隊長とエイミー少尉の強弓で仕留めたことを思い出した。
(第77話)
僕はドーラに顔を向けて、恐る恐る問うた。
「ドーラさん、、、強弓のクロスボウってありませんか?」
ドーラはあきれて返した。
「クロスボウって、ただでさえ、普通の弓より強弓なんだ。
クロスボウより強弓するなんて、バリスタになっちまうぞ?
バリスタなんて大きなものを、空に持っていけるのか?
空に持って行けたとしても、空で操作できるのか?
空で矢を装填できるのか?」
確かに空に持っていくこと自体が難しいし、持って行けたとしても空で操作も難しい。
何より、空で矢を装填するのは難しいだろう。。。
だが、ルイス少尉は真剣な表情でドーラに語り掛けた。
「分隊長(=ドーラ)、
試しにパラグライダーからバリスタの操作をさせてください。」
ルイス少尉は、アイスクリーム騒動を起こしたり(第92話)、パラグライダーで王城に乗り込んだり(第98話)、ドーラの分隊メンバの中で一番のトラブルメーカーだ。
でも同時に、執念強くパラシュート降下訓練したり(第50話、第51話)、空中での弓矢の訓練をしたり(第64話、第65話)、とても意志が強く、鍛錬を怠らない。
その部分は分隊メンバは一目置いている。
ドーラはため息をつくと、「まあやってみろ」と答えた。
というわけで、練兵場の倉庫からバリスタを出すと、台座から発射機のみを取り出した。
発射機に矢を一本装填し、ルイス少尉の背に括り付けた。
そのうえでパラグライダーで離陸した。
いつもより重いので、助走が長かったが、何とか離陸した。
僕はハンディの無線通信機を通じて、ルイス少尉に話しかけた。
「ルイスさん、、、
バリスタを空中で放てば、弓やクロスボウより、
はるかに大きな反作用の力がかかります。
なるべく高速で、かつまっすぐ飛んだ時に放ってください。」
ルイス少尉はインカムを介して、答えた。
「わかった。」
ルイス少尉の乗るパラグライダーは加速して上昇した。
そして上昇を止め、まっすぐ飛んだ。
やがて「ガシャ」という音がして、バリスタから矢が放たれた。
矢が放たれた瞬間、ブレーキがかかったようにパラグライダーの速度が落ち、高度が下がった。
しかも、大きくパラグライダーが揺れた。
先々週、パラグライダーから矢を射ると、反対の方向にパラグライダーは流れた。
(第76話)
普通の弓を射てもそうなるのだ。
それよりはるかに強力なバリスタから矢を射れば、その反対の向きにかかる力は弓の比ではない。
ルイス少尉は何とかパラグライダーの姿勢を立て直した。
そして、たぶん、ルイス少尉が慌てて後方に彼女のロケットかジェットエンジンの魔法を放ったのだろう。
再び、加速してパラグライダーは上昇した。
ハンディ無線通信機を通じて、ルイス少尉のボヤキが聞こえた。
「こりゃ、相当難しいわ。。。」
ルイス少尉は空中でバリスタの矢を装填することも試みたが、一人の力ではできるものではなかった。
ドーラはあきれて語った。
「バリスタの矢の装填は通常はウインチや滑車で行うもので、
空中では無理だ。」
結局、ルイス少尉は空中でバリスタから一本の矢を放っただけで、地上に戻ってきた。
ドーラは苦笑いを浮かべ、戻ってきたルイス少尉に語り掛けた。
「ほら?
空中からバリスタを射るなんて無理であろう?」
だが、ルイス少尉は頑なだった。
彼女は直立し、ドーラに答えた。
「いえ、分隊長(=ドーラ)、
しばらく、空中からのバリスタの操作を訓練させてください。」
ドーラは戸惑い問うた。
「ルイス、、、それはなぜ?」
ルイス少尉は真剣な表情で返した。
「弓矢で空飛ぶ巨大生物の生命力を削ることはできますが、
とどめの一撃を加えることはできません。
パラグライダーからとどめの一撃を加えることができなければ、
私は一人で空を飛ぶことはできません。
私はずっと、地上からの援護が必要になります。」
ドーラはなおも戸惑い問うた。
「それはわかるが、バリスタに矢を装填することができなかったではないか?」
ルイス少尉は顔を横に振って、答えた。
「あらかじめ矢を装填して、離陸しておけば良いだけのことです。」
ドーラはあきれて問うた。
「それじゃ、矢は一本しか撃てないぞ?」
ルイス少尉は苦笑いを浮かべて答えた。
「その一本の矢を巨大生物に当てればよいのです。
確かにパラグライダーからバリスタを操作することは極めて難しいです。
でもバリスタからの矢が一発でも当たれば、
とどめの一撃になりえます。
しばらく訓練させてください。
お願いします。
もしダメなら、別の方法を考えます。」
そう言うと、ルイス少尉はドーラに頭を下げた。
何度も言うが、ルイス少尉はとても意志が強い。
ドーラは空を見上げ、ため息をつくと、ルイス少尉を見つめ、あきれた表情で語った。
「ルイス、、、勝手にしろ。。。」
ルイス少尉は頭を上げると、笑顔で答えた。
「ありがとうございます。」
これはかなり後になってダグ騎兵連隊長から教えてもらったことなんだけど、、、
まあ、官舎の僕の部屋に彼が訪ねてきて、僕が出したコーヒーを飲み、ビスケットを頬張りながら、あきれて話してくれた。
(第63話)
「翌日の水曜日、エイミーが代わりに提出した
ドーラ中尉の日報を読んでな~。。。
(第63話)
その日報には、
『ルイスがパラグライダーからバリスタで
矢を射たこと』
が書かれており、
かつ
『今後とも訓練を重ねること』
が報告されていた。。。
俺も、
『空中からバリスタで矢を射るのは無茶だ』
と思ったのさ。。。
それで、クラリスの個室に行って、相談したら、、、
クラリスの奴、あきれた表情を浮かべながらも、
『しばらく、娘(=ルイス少尉)の好きにさせて』
って頼まれたんだ。。。
で、どうもクラリスの奴、
空中でも扱いやすいバリスタの製作を
関係部署に頼んだらしい。。。」
実は後日、ヒラリー後方支援連隊長を通じて、空中でも操作しやすいバリスタがルイス少尉に配備された。
もちろん、それでも空中では矢を装填するのは無理だから、空中では矢を一発しか撃てない。
また、バリスタで矢を放った時の反作用の力はハンパないから、それを狙ったところに当てるのはとても難しい。
でも、ルイス少尉は喜んで、訓練を重ねていたよ。。。
(次話に続く)
次話は2026/5/18 0時に更新予定です。




