5 初雪の記憶
ひらひらと、白くて軽いものが降ってくる。
「あ、初雪――」
今年ももうそんな季節か。
ふと、手にあの頃の感覚が戻ってくる。
あれは物心がつくかつかないかの頃――、
私は父の実家のおばあちゃん家に泊まった日のコト――
――――――
「よく来たねぇ」
「わぁー! おばあちゃん!!」
車から降り、大はしゃぎでおばあちゃんに飛びついた。
「これこれ、腰が折れてしまうよ」
「わぁーい!……おばあちゃん。あの白いかたまり、何て言うの?」
私は庭に積もっていたものを指差した。
「イマ子、あれはねぇ……」
「?」
「『雪』って、言うんだよ」
私はこの日、初めて雪を知った。
「ほえない?」
「吠えないよ」
「かみつかない?」
「噛み付かないよ」
「こわくない?」
「怖くないよ、触ってごらん」
じりじりと雪に近付いた。
「……!」
意を決して触ってみると、シャリ……という音と共に雪は形を変えた。
「おばあちゃん! へっこんだ!!」
「ほほ……こちらへ持って来てみなさい」
「うん!」
夢中で雪を掴んだ。雪は手の中に入り、冷たく、そして少しずつ溶けていった。
「おばあちゃん、みて! つめたァーい」
「ほほ……雪だからねぇ」
それから私は雪で遊んだ。踏んで、掴んで、口に入れ、手で固めた。
『雪だるま』を知ってから、手のひらくらいのそれを作った。
気付けば、外が見えなくなるまで雪と遊んでいた。
――、
「うぅ……てがヒリヒリするぅ……」
それは吠えないし、噛み付かないが――
後に私は、おばあちゃん家に入りストーブの前で雪の怖さを体験する。
――――――
ひらひらと舞い落ちる白くて軽いものを手に載せてみる。
それは手に振れた瞬間、じわりと水滴に変わっていった。
あの頃の私は知らない。
雪を見るたびに、あの日のことを思い出すようになることを――。
ブルブルっと身体が震える。
「さみっ……」
初雪の記憶、イマ子の記憶――。




