3 夕立の記憶
「今日も真夏日かぁ……」
平成の夏を生きる私――。
あの頃の私は知らない、
令和の夏は35℃を超え猛暑日と呼ばれる日がざらにあることを――
シャツは汗でべとべとだ。
「キモチワル……シャワー浴びないと」
外ですれ違うハズの車は遠くで陽炎に歪む。
(車も溶けちゃってるのか……? あっ)
遂にすれ違った車は近くで輪郭をはっきりとさせた。
僅かに吹くそれが、時間差で来た。
「あ~いいねぇ。風よぉーもっと吹けぇ~。神風が今まさに我が為に吹かんことを……!」
両手を掲げて天を仰いでいると、モクモクと白い雲が蒼に映えていた。
「夏だねぇ~。暑いのが夏か……ん?」
モクモクと上がったそれは、段々灰色に染まっていき――
「カッ……ゴロゴロ……シャー!」
空が泣き始めた。
「あ――!!」
手頃な屋根を探し、走る、走る――
――、
「あー、シャツびしょびしょ……」
バス停の下で、暫く留まるコトとした。
上に着た布をできるだけ絞る。ボタボタっと白地の布が泣き始めた。
「!」
ふと、思い出す。
今日は、濃い目の下着を着ていた……。
(……。透けブラ……)
キョロキョロ見渡しても、車が足早に去っていくだけだった。
(……でもまぁ)
ちょっとは涼しくなったかな? 雨がシャワーの代わりにもなった。
(これもまた、夏か……)
雨のにおいは、
何だか水中にいるようで
何だか生々しいんだけれど
このにおいは、
「落ち着く……嫌いじゃない……」
平成の夏を生きる私――。
あの頃の私は知らない、
令和の夏はゲリラ豪雨と呼ばれる雨が降る日がざらにあることを――
夕立の記憶、イマ子の記憶――。




