12 海の記憶
あ……17時だ。
「はい、今井ちゃん。今日もいつも通りお疲れ様」
「あー、はい。先輩、お疲れ様です(くー、嫌味かこのジジイ……)」
今日も検品の作業が終わった。フリーターである私の仕事だ。
今日は商品を数える際、数が合わず混乱してしまった。
「ビニールが滑って手につかないんだよーだ……」
後で数え直すと、合っていて数え直した分時間がかかってしまった。数が合わないという報告と、あとで合っていた報告を済ませる時に先輩社員の年配男性にいびられてしまった。
「なーにが『さすが今井ちゃんだねぇ』だ! クッソー!!」
海沿いの道を歩きながら、両手を上げていた。
ビュオーと、潮風が吹いた。
鼻をツンとする匂いが届く。
「!」
思わず、風が来た方向を見つめる。
(わぁ……)
日が強く照り付ける海面――、
キラキラとゆらゆらと光っていた。
その揺れに――、
心が凪いだ。
「……ま、いっか」
今日のことは忘れよう。海を見ていると悩みも愚痴も苦みも全部どうでも良くなってくる。
あの頃の私は知らない。
この日の失敗が、成功を作る記憶になることを――。
あの頃の私は知らない。
あの海を、先輩社員も大好きだったことを――。
海の記憶、イマ子の記憶――。




