↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
イマ子の記憶  作者: 時田総司(いぶさん)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
11/14

11 傘の記憶

「あ……」


 灰色の空からパラパラとまばらに、雫が降ってきた。


「やっぱりかぁ……見ていて良かった、天気予報ってね!」


 それでも私は準備万端。何時ぞやの時とは違って、500円の透明ビニール傘を用意しているのだよ。


「ポチっとな!」


 ボタンを引くと、それはバサッと目一杯開いた。


 ポツポツとビニールを不規則に水が鳴らす。


「♪」


 何となく落ち着くなぁー。靴は少し濡れるけど。

 よし、コンビニに到着だ。今晩は豪勢に炭火焼豚丼にするぞっ!



 ――、


「ありがとうございましたー」


(へへっ。売り切れてなかったぜぇー。お茶を選ぶのに、少し時間を取ったが……!)


 傘立ての右奥の私の傘が……



「あ……無い」



 頭を抱えた。


「ウッソー!? さっきの間に!? マジか! ちょっとお茶選んでただけで!!! 酒買ってたオッサン? 化粧品の女? 誰だよクッソ!」


 雨は音を立てて激しくなっていた。


「……」


 チラリと、手に下げたビニール袋と炭火焼豚丼を見る。


(同じビニール傘をチェンジして帰るか……? いや、それでは私のビニール傘(私の子)を誘拐した犯人と同じ罪を背負うコトとなってしまう……かくなる上は……)




「ダッシュだ!」




 私は猛スピードでコンビニを後にした。


――


「……って無理だぁ!!」


 私は猛スピードでコンビニにUターンしてきた。


「靴ビシャビシャだぁ!! 炭火焼も浸水してまうわぁ!!」


 ……踏ん切りをつけるしかないのか。


「あぁ! 私の、500円傘(可愛い子)!!」


 結局8年間愛用した傘(我が子)に今生の別れを告げ、新たなビニール傘(新生児)を授かることにしたのだが……


「は? 770円?」


 物価高でビニール傘(子供)を授かる(の出生届を出す)のにも世知辛い世の中になっているとは……



 ――、


「あー損した損した!」


 家に着いた私は、腹いせに『傘 盗難 対策』の検索キーワードで調べ物をするコトに……


「えぇ……!? 世にはこんなモノがぁ!?」


 あの頃の私は知らない。

 この国には、盗難防止アクセサリーなるグッズがあることを――。


「何!? なんて便利! でもこっちの田舎には無いわー(涙目)」


 あの頃の私は知らない。

 傘を買わずに、必要な時だけ借りられるサービスが存在することを――。


 傘の記憶、イマ子の記憶――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。