そうと決まれば善は急げ
四人とも食事を済ませお腹がくちくなった頃合いにシズルが話を切り出した
「姫様、我々は少々訳有ってここから半日程の距離に有るとある町に行かねばならなくなりました」
伏し目がちにタマフジを見上げ、とてもすまなそうな表情のシズル、普段はまず見る事の出来ない顔だ
そちら側の趣味が有る一部の人間には加虐心を煽る表情、とも言える(勿論タマフジにそんなモノは無いが)
゛誰からの依頼か ”と言う部分を濁し゛急を要する ”と言う部分を強調すると人の好いタマフジは困難な目に遭っている姉弟に痛く共感し急いで発とう、と荷をまとめ始めた。その作業中に『非常事態なので転移陣を使います』と言うシズル
「転移陣?なんだいそりゃぁ?」
聞きなれない言葉にオウム返しに質問するアスタリスにマヤが大分端折って答える
「私達が使う魔法陣を使った移動術だと思って欲しい、それ以上は説明のしようが無いの」
「出来れば他言無用にしてくれると嬉しいんだけど」
「ふぅん、ま、アンタ達に付いて行くって決めたんだ、それくらいはお安い御用さね」
「うん、ありがとアスタリス」
「じゃあシズル、先に行って迎えの陣を敷く良い場所を探しておいてくれる?」
そう言われたシズルが三人を置いて木々の間を先に行ってしまう、『姫様、少々お待ち下さいませね』との言葉を残して
数呼吸の後、大きな羽音と木々が揺れるほどの風が吹き抜けると辺りは再び朝の静寂に包まれた
「何だったんだい今のは?近くにワイバーンでも居たのかね?」
「そう言えば行先はここから半日?位の町って話だったね、シズルが着いて陣とやらを準備するまで半日、アタシ等は待ってれば良いのかい?」
至極まっとうな疑問を口にするアスタリス、それに答えたのはタマフジだった
「シズル姐様が本気で急いだなら四半時も掛からないで目的地に着くと思うの、マヤ姐様、こっちも準備始めよう」
そう言われたマヤは地面が平らな場所を探して白い布を広げると直径が五尺ほどの円を描く、そこに同心円や複雑に絡み合った直線、漢字に似た文字を次々に書き入れると最後は自分の指先に刃を当て滴る血でなぞり始めた
「堕ちし光が血と魔力を以って扉を興す、光の端緒は闇の結末へ、全ての隔たりを無き物とせよ」
陽光の魔力と共に陣が光り、その揺らぎが視認出来る程に魔力が満ちている事が見て取れる
「・・・いったいこりゃ何だい?とんでもない程強い魔力じゃないか、アタシも魔法についちゃ少しは自信が有ったけど…」
そう言って絶句するアスタリスに
「その辺りも含めて詳しい説明は出来ないの、乙女の秘密って事で、ね?」
『パチリ』と片目を瞑って見せるマヤに『マヤ姐様かっこいい』と無邪気に喜んでいるタマフジ、それを見てため息をついた後で顔を上げポツリと呟いた
「ここまで来たんだ、もう驚くのは止めにするよ…」
その言葉を何回も繰り返すことになるとはつゆとも知らないアスタリスであった
ぺ「久しぶりに仙術っぽい呪文を出しました、良いよね仙術」
マヤ「創主様、『央華封神』とか好きだもんね」
ぺ「ただまあ、私は学が無いのであくまで『それっぽい』呪なだけですけどね、なので突っ込みは勘弁してくださいね」




