腹が減っては…
米を炊いている鍋と蓋の隙間から沸々と蒸気が上がっている、その隣で平鍋に猪の脂を塗り熱すると切り分けた猪肉を数枚並べ、深皿に溶いた調味液を回しかける
『ジュッ』という音と共に香ばしい匂いが立ち込め、思わず身を乗り出したタマフジが喉を鳴らす
「シズル姐様、良い匂い!」
キラキラした顔で焼かれている肉を見つめるタマフジに
「沢山有りますのでお腹いっぱい召し上がって下さい、起きなかった場合は彼女の分も」
とアスタリスを見ながら答えたシズルだったが、匂いに釣られて身動ぎしつつ目を開けたのを認めると
「残念でしたね、タマフジ様」
と肩をすくめてみせた
「ん…ふゎ…ぁ、良い匂いだねぇ」
気怠げに立ち上がり焚火の側にやって来ると、スンスンと匂いを嗅いで見せるアスタリスに
「ほらアスタリス、顔を洗っておいでよ」
とマヤが背を押して少し離れた場所へ連れて行く、同じように水を生み出して顔を洗わせると再び焚火の近くに腰を落ち着けさせ炊き上がった米を各々の皿に盛る
その上に焼き上がった猪肉を乗せ、先ずはタマフジに渡すと
「姫様、どうぞ」
と勧めるシズル、食欲をそそる匂いに唾を飲み込んでから箸で肉を1枚取り口に運ぶ
程良い大きさの肉を噛み締めると少々濃いめの甘辛い味に野性味溢れる歯応え、更に噛み続けると染み出して来る肉汁が相まって得も言われぬ美味しさだ
そこに白飯を一口、丁度良い塩梅の濃さに薄まったそれらをモグモグと咀嚼し飲み下す
「はぁ… 美味しい…」
ポツリと呟くように漏れた言葉にシズルとマヤは笑顔で答えた
タマフジの一口が終わるとアスタリスも肉と白飯を同時に頬張る、数度噛み締めると目を見開き
「んぐっ…ん、なんだいこれ、本当に猪肉かい?」
と驚いた顔でシズルを見ながら言葉を続ける
「アタシが冒険者をしてた頃に食べた猪肉はもっと硬くて獣臭かったよ?」
と疑問を口にした、マヤが笑いながら
「それ、ちゃんと血抜きしたの?でないと臭みが残るよ」
「それに、シズルが細かく隠し包丁を入れてるからこの厚さでも柔らかく感じるでしょ?」
と自慢げに答える
「血抜き…そこまでキチッとやった記憶は無いねぇ、そうかい、こんなに違うのかい…」
「シズル姐様、おかわり欲しいの」
マヤとの会話の向こうでタマフジが肉のおかわりを求めて半分ほどに減ったご飯の皿を差し出している
追加の肉を焼いていたシズルは焼き具合を確認して再び白飯の上に乗せると平鍋に残るタレと肉汁の混ざった汁も一緒に回しかける
幸せそうな顔で汁の染みた飯をかき込むタマフジを目を細めて見つめた後、自分とマヤの分を改めて焼き始める
「アンタ達、ホントに何でも出来るんだねぇ…コレだけで立派な看板料理になるじゃないか」
半ば呆れた顔でアスタリスが言うと、最後の一口を飲み込んだタマフジが
「そうだよ、シズル姐様とマヤ姐様は凄いんだから!」
何故か自分が胸を張って得意げに言うのだった
ペ「お料理回、やってみたかったんや…」
マヤ「某先達の作品に似てるわね?」
ペ「あう…最近アニメを見返して良いなぁって、テヘ」
マヤ「オッサンが『テヘ』してもキモいだけよ?」




