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868回敬遠された月出里逢  作者: 夜半野椿
第六章 可能性の代行者
1337/1342

第二百六話 差異(3/?)

「1回の裏、バニーズの攻撃。1番サード、月出里(すだち)。背番号25」

「いきなり1点を追いかける展開となりました帝国代表(チームエンパイア)。しかし、昨日の試合は宿敵・韓国にいきなり3点を奪われる展開となっても最後には大勝しました。何より、帝国代表(チームエンパイア)にはこの打者がいます。"4割打者"月出里。ここまで2試合続けてマルチヒット、得点源としての役割を見事に果たしております」

(ヨーロッパの人だけど身体はあんまり大きくない。どんな球投げるんだろ?)

「対するチェコ代表の先発はカジェフケ・バルトシュ。今大会初登板となります」

「ストライーク!」

「まずはアウトコース低めいっぱい。球速は126km/h……」


「遅っ」

小次郎(こじろう)のフォークより二回りも遅いやんけ……」


 ……確かに事実として遅い。おれが高校の時に体重付ける前と同じくらい。特別キレも感じない。


「ボール!」

「これは外高め、はっきりと外れました!」


 コントロールは良くて、今のはたまたま外れただけなのか……


(様子見は十分。これなら低めだって……!?)

「ストライーク!」


「「「「「え……?」」」」」


「低め空振り!113km/h、これはチェンジアップでしょうか……?」


 あの球単体の球速だけを見れば、まごうことなきチェンジアップ。でもストレートとのスピードと比較すると……


「ボール!」

「2球続けましたがここはバットが止まっております!114km/h、低め外れました!」


「ある意味アタシの高速チェンジと同じだね」

「そうっすね……」


 ストレートとの球速差は10km/hほどしかない。そういう意味では、160km/hのまっすぐ投げて150km/hのチェンジアップを投げる妃房(きぼう)さんと同じ。山口(やまぐち)さんみたいな緩急が目的のそれとは全く別物。


「ファール!」

「ここで高めまっすぐ!126km/hですが差し込まれております!」


「おいおい、ちょうちょの好きなとこやんけ!」

「今ので仕留めろや!」


(今度こそ……!?)

「ストライク!バッターアウト!」

「スイングアウト!最後も落としましたチェンジアップ!バルトシュ、いきなりの大金星!昨シーズンの三振の数は全打席中わずか3.8%の月出里を仕留めました!」


「「「「「ヘスキィィィィィ!!!」」」」」


「らしくない、だけじゃないよね」

「でしょうね」


 確かに月出里さんはいつもとちょっと違う。得意なはずの高めをイマイチ仕留めきれなくて、妙に低めに食いつく。月出里さんは単純に安定してるだけじゃなく打球のスピードが速いから、他の打者と比べて運に左右されにくいタイプのバッターだけど、ここ最近の月出里さんは正直かなり運に恵まれてるだけで、実際ははっきりと数字に出てる猪戸(ししど)さんと大して変わらない、そんな感じがする。


「2番ライト、草薙(くさなぎ)。背番号8」

「ストライーク!」

「まずは内側いっぱい!」

「ボール!」

「ボール!」

「ボール!」

「これはワンバウンド!」


 ボールこそ先行してるけど、コントロールは悪くなさそうだ。おそらく草薙さん相手だから際どいとこに投げようとしての結果。その証拠に、キャッチャーミットはそんなに動いてない。


「ストライーク!」

「これは胸元まっすぐ125km/h、フルカウント!」

(さっきと同じ、いや少し高い……これは……!?)

「ストライク!バッターアウト!」

「見逃しの三振ッ!最後はインハイへのチェンジアップ!バルトシュ、日本が誇るアベレージヒッターを2人続けて三振に斬って取りました!」


「すげぇぇぇぇぇ!!!」

「130km/hも出てへんのにようやるわ……」

「最近速いピッチャーばっかりやし、やっぱこういうタイプもおらんとつまらんわ」


 そしてやっぱりあのピッチャーの生命線は、あのチェンジアップ。

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