第二百六話 差異(4/?)
「3番指名打者、幾重。背番号16」
「帝国代表、いきなり追いかける展開となり、月出里、草薙が完璧に抑えられるというまさかの事態。この男が流れを変えられるか?本大会ここまで.571と絶好調の幾重光忠」
「「「「「ホームランホームラン光忠!!!」」」」」
一応、『球の速さ』っていう情報は持った状態。
「ストライーク!」
「内角高め、入りましたストライク!いきなり緩い球から入ってきました!」
(……こういう感じかぁ……)
いったん打席から離れて軽く素振りをする幾重さん。まぁ普段とは明らかに球速帯の違う相手だからな。
投手にとっての球速っていうのはあくまで平均から離れるための手段。平均より速いのが常に正解とは限らない。『どれだけ球速が速いか』じゃなく、『ピッチングそのものがどれだけ特異か』というのが一番大事。要はかけ離れれば良いんだから、プラスの方向ばかりじゃなく、マイナスの方向だって間違ってない。そういうのも多分、月出里さんと草薙さんが打ち取られた理由の1つ。
「ボール!」
「これはワンバウンド!」
(ここか……!?)
「ストライーク!」
「空振り!3球続けましたチェンジアップ!"世界の二刀流"をわずか110km/h台の球だけで翻弄します、チェコ代表バルトシュ!」
(くっ……!)
「引っ掛けた当たり!そのままファースト捕って……」
「アウト!」
「これでスリーアウトチェンジ!チェコ代表バルトシュ!WBF初登板の立ち上がりを最高の形で飾りました!」
「ええやんええやん!やるやんけ向こうのピッチャー!」
「まぁ最近のマスコミにはええ薬やろ」
「いや、どうせあのピッチャーも幾重絡めてネタにするって……」
相手も讃える日本の良き文化……というのとはちょっと違うよなぁ、こういうのは。
「ストライク!バッターアウト!」
「ストライク!バッターアウト!」
「スイングアウト!最後はど真ん中への163km/h!大神、2者連続の三球三振ッ!」
「こんなん普通にやってたら点なんて取られるわけないのになぁ……」
「ストライク取れさえすれば無敵よ小次郎は」
「8番サード、スパテネク。背番号16」
「早くもツーアウト、打席には1戦目でマルチヒットを放っているスパテネク」
「ボール!」
「これは高めはっきり外れました!しかし162km/h出ております!」
(まじデ速イ……デモ、百発百中デモナイ)
「ファール!」
「ここは当ててきました!真ん中高め、158km/h!」
「これで遅く感じるのマジでバグだよなぁ……」
「日本は20年くらい前まではこの辺でずっと頭打ちやったんやけどな」
「ボール!」
「ストライーク!」
「高め!これは入ってきましたフォークボール!ツーツー、追い込みました!」
(多分狙ッタワケジャナイ……ココハ焦ラズ……)
「……ボール!」
「スイング、止まりました!フォークボール見極めてフルカウント!」
ほんとやるなぁ、向こう。ピッチャーのインパクトがデカいだけで、打線も小次郎の球にしっかりついてきてる。これだけの相手と戦った経験なんてほとんどないはずなのに、全然無抵抗ってわけじゃなく、だからこそいきなり先制できた。
「ボール!フォアボール!」
「高め!ここは選びました!」
……ただまぁ。
「初球打ち!これはショートへの当たり、二塁へトス!」
「アウト!」
「これでスリーアウトチェンジ!」
「よっしゃよっしゃ!やればできるやんけ!」
「あんなトスで褒めるの逆にバカにしてるやろ……」
ホームを踏めなきゃ、ってな。




