第二百五話 情けは人の為ならず(4/4)
「ショート捕って、一塁へ……!」
「アウト!ゲームセット!」
「試合終了!13-4!帝国代表、今日も圧勝!」
「ナイピーミサト!」
「圧倒的ではないか我が軍は……」
「いやぁみんな、ほんまありがとなぁ!」
「え、えっと……」
「ありがとうございます!」
ラスト3回をパーフェクトに抑えた唐沢さん、乃木さん、野上をベンチで労う流王さん。
「当然の結果ですわ!」
「いや、ほんまそれやわ。おばちゃんの代わりでもいけたんちゃう?」
「へ……?も、もちろんですわ!」
「頼りにしてるでぇ、美里ちゃん。恵人くんも、明日頼むで?」
「あ……はい!」
過剰なまでに若い投手を讃えるベテラン。いくら今日ちょっと打たれたからって、実績から言っても明らかに格上の流王さんがこんな調子だから、流石の野上も困惑してるみたいで……
「ウフフ……イメージとは違った?フィオナのこと」
「!?まぁ……そうですね」
いつの間にか後ろに立ってた鈴鹿監督。驚いて一瞬身がすくむ。
「フィオナが貴方達みたいな若い子をやたら可愛がるのは、多分フィオナなりの戒めでもあるんでしょうねェ」
「戒め……?」
「あの子は若い頃と比べたらだいぶ大人しくなったけど、『自分が現役の頃ばかり美化して今の現役選手をこき下ろすOB・OGが大嫌い』っていう根っこの部分は多分変わってない。でもあの子自身も間違いなく球史に名を残すレベルの現役レジェンドだから、引退して歳を重ねていく内に自分自身もそういうOGになってしまう可能性がある」
「そうならないようにするための、普段からの心がけ……そういうのも兼ねてるってことですか?」
「そんなところでしょうねェ」
そういうのも『情けは人の為ならず』……ってことかな?
「でも、だからと言ってフィオナは貴方達を『若いから』ってだけの理由で期待してるわけじゃないわァ。あの子がOB・OGに容赦なく噛み付くのも、『時代に関係なく絶対的なデータに基づいて選手を評価するべき』っていう考えが根っこにあるから。貴方達に期待してるのも、そういう力を秘めてるって認めてるからよ」
「…………」
「そしてもちろん、貴方を選んだワタシもねェ。期待してるわよォ」
「ありがとうございます!」
やっぱり10年も監督をやって、あの幾重さんを育てた人。悔しいけど、心を見透かしたり動かしたりするのが上手い。
「監督!オレはオレは!?」
「もちろん期待してるわよォ、小次郎」
「!!ひっつくなバカ!」
「…………」
「そういうのじゃないですから!」
さっきまで賑やかだったのに、何かを察したように急に黙って目を逸らす流王さん。
……こんなのとセットでってのは気に入らないけど、明日は一次突破を決定づけられるか大事な一戦。ここまでの頑張りを無駄になんかしない。




