第二百五話 情けは人の為ならず(3/?)
「日本代表、選手の交代をお知らせします。ピッチャー、唐沢に代わりまして、乃木。ピッチャー、乃木。背番号13」
「育成出身のバニーズ唐沢、帝国代表デビュー登板を三者凡退、2奪三振と華々しく飾りました。この回からは4番手としてウッドペッカーズの乃木が登板します。通算196セーブ、昨シーズンもセーブ王となりました左の絶対的クローザー」
「まーたリプ勢かぁ……」
「長尾だけやんけ、今日投げたの……」
「また、ファーストの猪戸に代わりまして、篠花がファーストの守備に入ります。4番ファースト、篠花。背番号38」
「「「「「おお、もう……」」」」」
「…………」
ベンチで静かに顔を拭く猪戸さん。あの歌舞伎メイクは落ちないのかとか、そんなのはともかく……
「お疲れ、猪戸くん」
「長尾さん……面目なか」
「何を言ってる?たかが2試合のことだろう?」
「ばってん……」
「君が重責を背負ってくれていることで、今日だってこうやって優勢なのだ。前のオリンピックの綿津見くんだって最後は花開いてただろう?」
「今のおいには……」
同じリーグの最強打者を励ます長尾さん。
……背負ってるから、ってのは確かにあると思う。猪戸さんが本調子じゃないからこそ、長尾さんは頑張れたってのも多分あると思う。そう考えると、長尾さんはある意味負い目のようなものを感じてるのかもしれない。情けは人のためならず……ってね。
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「13-4、大量リードのまま最終回を迎えました、1次ラウンドB組2戦目。宿敵・韓国、一矢報いることはできるか……」
「何でわざわざ宿敵宿敵言い続けてるんや……?」
「そらもうアレよ」
「日本代表、選手の交代をお知らせします。ピッチャー、乃木に代わりまして、野上。ピッチャー、野上。背番号28」
「最終回には5番手、帝国代表最年少メンバー、サラマンダーズの野上美里が世界の大舞台にデビューします。2020年ドラフト1位、昨年は高卒2年目にして19試合に先発登板、規定には未到達ながらも防御率2.47。116回2/3で134の奪三振、空振りを奪う能力は鈴鹿監督のお墨付きです」
「「「「「みさとぉぉぉぉぉ!!!」」」」」
強化合宿からずっと風刃さんのストーカーをやってた野上って奴。でもここで投げる以上、プロ入り前の経歴とか話題性だけで選ばれたわけじゃ決してない。
(スコアとかはどうでも良いですけど、できれば風刃様と同じ試合に投げてデビューしたかったですわ)
「6番ライト、B.H.キム。背番号37」
「この回の韓国代表は6番のキムからとなります。今日は3打数1安打、好調の長尾から唯一の失点となったソロホームランを放っております」
(ふん、見た目だけはやたら派手な若造が……!?)
「ファール!」
「初球外角低めは逆方向へファール!初球から155km/hが出ました!」
(くそっ、今度は振り遅れないように……!!?)
「ストライーク!」
「落とした!144km/h、スピードも落差も抜群の落ちる球、得意のスプリットで追い込みました!」
「え、何アレ……」
「トカゲにあんな奴おったんか……?」
たった2球で相手側だけじゃなく、こっち側の応援席もざわつく。2000年代は勝ちまくってたけど2010年代に入ってからは低迷続きのサラマンダーズ、普段リプを追ってる人にとっては馴染みのない投手だからね。
「ボール!」
「これは外高め外れましたが156km/h!」
「ボール!」
「バットは止まりました!146km/hスプリット!」
「ストライク!バッターアウト!」
「スイングアウト三振ッ!最後も落としました、145km/hスプリット!」
「いやちょっと、やべーだろアイツ……」
「何で日帝ばっかりあんなのか……」
まっすぐのスピードもスプリットの質もすごいけど、何よりすごいのは適応力。おれもWBF球への適応に手間取ったのに、JPBで投げてる時と変わらない品質でまっすぐもスプリットも再現してる……
「ボール!」
「これは外外れましたが156km/h!世界の大舞台でも臆しません、強心臓の野上!」
『おれよりずっと身体がでかいから』、なんて言えないよね。ここまですごいと……
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