第二百五話 情けは人の為ならず(1/?)
******視点:山口恵人******
「日本代表、選手の交代をお知らせします。ピッチャー、流王に代わりまして、長尾。ピッチャー、長尾。背番号21」
「月出里、草薙、十握のタイムリーでゲームをひっくり返しました帝国代表。4-3と逆転したところで最年長の流王は降板し、2番手、左の長尾七果がマウンドに上がります。プロ8年目、昨シーズンはキャリア3度目の2桁勝利、防御率もリーグ3位の2.26。シャークスのエースとして依然君臨し続けております」
「えぇ……リコのピッチャーに任せるのかよぉ……」
「せめてクイーン出せや……」
「クイーンが復活してもエースは七果なんだ!」
前の回までのことがあったから、逆転した割にはいまいち盛り上がりに欠ける観客席。今回はメンバーが豪華で、とりあえず1次リーグは間違いなく突破できるんだろうっていう安心感もあるんだろうけど。
(……普段リプを応援している観客は大方こう思っているのだろうな。『リコの投手は猪戸くんに三冠王を許した程度のもの』だと。まぁ現状、現役のリプ勢ばかりが活躍し、メジャー組もリプ出身者だらけなのだからな。綿津見くんの不在がこんな形でも痛手になるとは私自身も考えていなかった。妃房くんも怪我から復帰して間もないからそこまで多くは投げない予定)
「6番ライト、B.H.キム。背番号37」
(なら……)
(!!!)
「ファール!」
「初球まっすぐ!いきなり152km/hが出ました!」
(私が何としてでも、『リコ強し』を証明せねばな……!)
「「「「「おおおおお!!!」」」」」
背丈は風刃さんと同じくらい。でも左の先発としては球界でも屈指のスピードを誇る本格派左腕。実績から言っても、リーグの違い関係なく、まだおれより全然格上。
「低め拾った!しかしこれはピッチャー正面!」
「アウト!」
「ピッチャーライナー!まずは2球で仕留めました!」
「ストライーク!」
「まっすぐ見送りました!これも153km/h、速い球!」
「ストライーク!」
「ここもまっすぐ!153km/h、今度は空振り!」
「ええぞええぞ長尾!」
「リコやってヒョロガリばっかちゃうんやぞ!」
スピードがあって、スリークォーターで投げてるけど、元の回転数が多いのもあってか、そこいらのオーバースロー投手よりもノビを感じさせるまっすぐ。これとチェンジアップか速いスライダーを織り交ぜるのが基本軸みたいだけど……
「ボール!」
「高め!またもやまっすぐ153km/h!」
(日の丸を背負ってる最中で申し訳ないが、リコのメンツも背負っているのでな)
「……ボール!」
「これはインコース外れました!フロントドアのカットボール!」
「ファール!」
「ここもまっすぐ!この打席4球目の153km/h!」
「やるやんけあのポニテ!」
「そっから落としたらええで!」
(スライダー、チェンジアップを外せる状況……!?)
「ストライク!バッターアウト!」
「スイングアウト!最後はど真ん中に153km/h!先ほどツーベース、絶好調のパクを力でねじ伏せました!」
「「「「「よっしゃあああああ!!!」」」」」
「アイゴー!」
「ど真ん中でやられるなんて何やってるニダ!?」
「ピッチトンネル、やな」
「ですね」
むしろど真ん中だからこそ。スライダーやチェンジアップが普段通過する道をまっすぐでなぞった結果が真ん中ってだけ。だから、カウント的に変化球の外しも頭にあった打者は振り遅れざるを得なかった。
「ストライーク!」
「ここでカーブ!手が出ませんストライク!」
「ファール!」
「ここもまっすぐ!154km/h!今日はまっすぐがキレています、マウンドの長尾!」
「アウト!」
「まっすぐ打って最後はショートへの平凡なゴロ!これでスリーアウトチェンジ!長尾、逆転後のマウンドでパーフェクトピッチング!」
「横須賀にもこんな選手がいるんだ!」
「10年前はノーカンなんだ!」
「ナイピー七果ちゃん!」
「ありがとうございます!」
自分の結果に凹むことなく、笑顔で七果さんを讃える流王さん。
……外野が格差とか色々アレコレ言ってても、今のおれ達は世界一を目指す仲間だし、代表に選ばれた以上は選手個人として相応の格があるってことなんだから、そういうのは関係ないよね。
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