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868回敬遠された月出里逢  作者: 夜半野椿
第六章 可能性の代行者
1330/1335

第二百四話 影響(8/8)

「2番ライト、草薙(くさなぎ)。背番号8」

「3-1、なおもノーアウト一塁二塁。打席にはプロ12年目を迎え、今シーズンからヴァルチャーズの一員となった草薙。通算打率3割超え、また、現役選手では非常に希少な『四球数が三振数を上回る』巧打者。エペタムズ時代からその打棒を買っていた鈴鹿(すずか)監督により、今回の帝国代表(チームエンパイア)の2番打者に抜擢されました」


 ……月出里(すだち)さんの狙いはともかく、逆転するには絶好のチャンス。


「ボール!」

(まだスライダーはキレてる……狙うなら……)

「!!左中間、長打コース!」


「「「「「うおおおおお!!!」」」」」


「セーフ!」

「二塁ランナーホームイン!3-2!草薙も続きましたタイムリーツーベース!」


 さすがは草薙さん。外スラを警戒しつつ、外に少し浮いたまっすぐを逃さなかった。


「3番指名打者、幾重(いくえ)。背番号16」

「ツーアウト二塁三塁、一打逆転の場面でこの男に回ってきました!"スーパースター"幾重光忠(いくえみつただ)!鈴鹿監督の愛弟子が続きます!」


「ちょっと話ができすぎてんよー」

「ちょうちょももしかしてわざとホーム突っ込まんかったんか……?」


(外野を完全に抜かなかったからだよ……!あたしだって、わざとあの人に魅せ場なんか……)


 ……でもここは多分……


「ああっと!敬遠です!申告敬遠です!」


「「「「「おいィ!!?」」」」」


 日本側の応援席からブーイング。気持ちはわかるけど、ここの判断はね……


(リスクもあるが、ここで向こうの支柱である幾重に打たれたら完全に流れを奪われるニダ。それに、満塁の方が守りやすいし、何より……)

「4番ファースト、猪戸(ししど)。背番号55」


 『今の幾重さんより猪戸さん』、ってことだろうね……


「ノーアウト満塁、一発逆転の大チャンス。打席には"史上最年少三冠王"猪戸。その実績を買われて4番に抜擢されましたが、本戦に入ってからまだヒットはありません」

(……おいは引っ張り、センター返し、流し。外内高低、あらゆる球に対しちどげなホームランでん打つると信じちゃってきた。あげなホームラン、おいだって……!)

「打ち上げた!しかしこれはショートへの平凡なフライ……」

「アウト!」

「捕りました!韓国代表、これでようやくワンナウト!」


「「「「「あああああ……」」」」」

「いやいや、今のど真ん中のまっすぐやん……」

「昨日やって四球はあったんやし、せめて粘れや……」


 しかもツーボールノーストライクから……月出里さんはまだ最低限ヒットは打ててるけど、猪戸さんは……


「5番レフト、十握(とつか)。背番号34」

「逆転のチャンスをものにできるか、帝国代表(チームエンパイア)。打席にはバニーズが誇るもう1人の天才打者、十握。月出里と共に打線の軸としてバニーズの2連覇に貢献しました。プロ2年目から3年連続打率3割超え、小兵ながら一発もあります」

「ストライーク!」

「まずは初球、外低めまっすぐ!」

「ボール!」

「これは抜いた球、チェンジアップワンバウンドでワンボールワンストライク」

(低めの抜いた球でワンチャン転がさせてホームゲッツー狙いなんだろうけど……)

「合わせたバッティング!センター右……落ちましたヒット!」


「「「「「いよっしゃあああああ!!!」」」」」


「セーフ!」

「三塁ランナーホームイン!」

「セーフ!」

「続けて二塁ランナーもホームライン!4-3!帝国代表(チームエンパイア)、すぐさま逆転!」


「346!お前もバニの誇りや!」

「いや、ほんま日本代表はリプ組とメジャー組だけで十分やな」

「"人気のリコ"とかいう聖域」

「まぁ小池(こいけ)はセーフやろ」

「「「「「…………」」」」」


 ……そりゃ同じバニーズの一員として嬉しいし、よりレベルの高いリーグでやってるっていう自負があるのも誇らしいけど、世界一を目指す以上、今のこの状況が続くのは全然嬉しいことじゃないよね……

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