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868回敬遠された月出里逢  作者: 夜半野椿
第六章 可能性の代行者
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第二百三話 今この地球上で一番良い選手(3/?)

 3月6日。おれ達バニーズが副本拠地として使ってる大阪のドーム球場。

 強化合宿を終えて、JPBの球団2つと練習試合をやって、今日と明日の強化試合が終わったらいよいよWBF本番。この球場を使う理由は至ってシンプル。強化試合の相手は関西勢……今日がパンサーズ、明日がバニーズだから。


「おおっ、来たぞ!」

「今日からベストメンバーって感じだろうな……」


 試合前の練習。前の2カードも十分盛り上がったけど、今日は観客席の熱量が段違い。まぁ日本でも1、2を争う人気球団が帝国代表(チームエンパイア)と戦うからってのもあるんだろうけど、それ以上に……


「「「「「おおおおお!!!」」」」」


 今日の試合から、ついにあの幾重(いくえ)さんがスタメンで出るから。

 幾重さんのフリーバッティング。観客席はもちろん、おれ達選手の間でも感嘆の声が上がる。おれ達プロから見ても、打球の飛び方が他の選手とはものが違う。これでピッチャーもやっておれより速い球投げるんだよなぁ……ほんと別格だわ……


月出里(すだち)

「ん?」

「ぬしゃ去年、幾重さんを"半端もん"言うとったな?」

「うん」

「全くの同感たい」

「だよね」


 そんな中でも例外的に、幾重さんのバッティングを冷ややかに見てる人達も。今や日本を代表するスラッガーになった、我らが月出里さんと猪戸(ししど)さん。綿津見(わだつみ)さんが怪我で辞退するってのもあって、今大会の帝国代表(チームエンパイア)の打線は1番に月出里さん、4番に猪戸さんってのを監督がすでに明言済み。


「あぎゃん打たするべくして投げた球ばスタンドに放り込んどるだけで、周りは『あん人は別格や、勝てるわけなか』て言うばってん、おい達は生きた球ば打ち、三冠王や4割打者になった」

「うん。そんなので判断されてもね」


 ……いつもいがみ合ってるけど、メチャクチャ似た者同士だよなぁ、この2人……

 でもこういう負けん気は見習わなきゃだよな。おれだってピッチャーだけなら幾重さんに勝つつもりだし。


風刃(かざと)くん」

「!?き、妃房(きぼう)さん……」

「今日先発だよね?頑張ってね」

「はい……」


 今日投げる予定がないはずなのに、妃房さんもベンチ入り。強化合宿だけじゃなく前の練習試合でもわざわざベンチ入りしておれの投球ずっと見てたけど、ほんと何が気に入ったんだ……?

 っていうかすんげーでかいのが後頭部に当たってる。歯医者に行った時によくあるアレ……多分大きさだけなら秋崎(あきざき)さん以上。せっかくだからもうちょっと密着してくれねーかなぁ……?


「よう、妃房」

「あ、古垣(ふるがき)くん」


 こっちのベンチを訪ねてきたのは、今日のパンサーズの先発、古垣翔磨(ふるがきしょうま)さん。この人も確か妃房さんと同じで、肘の手術を挟んで去年一軍復帰した人。好投手揃いのパンサーズでも"エース候補の一角"と目されてるとか。


「随分差ァ付けられてもうたな、ほんま」

「そんなことないよ。古垣くんも参考にさせてもらったから」

「「……?」」

「今日見に来たのも、風刃くんだけじゃなくて古垣くんも目当てだから」

「そ、そうか……」


 参考……?と言うか……


「妃房さん、古垣さんと同い年でしたっけ?」

「うん。っていうか小学生の時にジュニアの全国大会で勝負したことあるんだよね」

「へぇ、そうなんすか。勝ったんすか?」

「ううん。ボッコボコにされた」

「え……!?」

「5年の時だったかな?アタシ、地元が新潟なんだけど、その頃のアタシってすんごい天狗になってたんだよね。元々お嬢様育ちだった上に野球でも地元で一番扱いだったから。でも所詮は"田舎のちょっと上手い奴"程度だったから、関西の超エリートの古垣くんにボロ負けして。一度は野球も辞めようかなって思ったくらいショックだったんだけど、まぁ逆にそのおかげで今のアタシがあって……」

「……そうなんすか」


 中学高校の頃からテレビで特集されるくらいの超有名人だった妃房さんでも、そういう時期があったんだなぁ……


「プロの実績とかは今はまだアタシの方が上かもしれないけど、古垣くんは絶対すごい投手になるよ。少なくともこっちのチームで打者やる片手間で投げてる人よりは」


 ……この人も月出里さん達と同じかぁ。


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