第二百三話 今この地球上で一番良い選手(4/?)
「プレイボール!」
「1番サードベースマン、月出里。背番号25」
「WBF2023開幕まであと3日と迫りました、帝国代表。ここまで対外試合は3勝1敗と、順調に仕上げてきております。ここまでスターティングメンバーや打順は流動的でしたが、おそらく今日のラインナップが本戦を想定したものでしょう……」
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WBF2023 帝国代表 スターティングメンバー
1三 月出里 右右 天王寺三条バニーズ
2右 草薙 右左 博多CODEヴァルチャーズ
3指 幾重 右左 ロサンゼルスドミニオンズ
4一 猪戸 右左 西東京雁芒ペンギンズ
5左 十握 右左 天王寺三条バニーズ
6中 ラディッシュ 右左 セントルイスロビンズ
7二 鉄炮塚 右右 西東京雁芒ペンギンズ
8遊 六車 右左 大宮桜幕ビリオンズ
9捕 小池 右右 西東京雁芒ペンギンズ
投 風刃 右右 天王寺三条バニーズ
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「先頭の"4割打者"月出里から始まる夢のようなラインナップ。日本を、そしてメジャーを代表する打者が世界の頂点に君臨すべく集っております」
「クッソォ、リプの奴ばっかやんけ……」
「リコは優勝チーム以外お呼びでないってか……」
「せめて昴がおったら……」
「こりゃせめてシドーには暴れてもらわんとリコのメンツがな」
「ってかあの外人誰や?」
まぁ確かにちょっと偏りはあるよな。草薙さんはほんとに今年からヴァルチャーズでほぼほぼエペタムズの選手だし、幾重さんもエペタムズ出身。そして全体的にリプの選手揃い。10年エペタムズの監督をやってた鈴鹿監督の贔屓に見えなくもない。
と言っても、監督は勝つことよりそんなことを優先するような人じゃない。ちょっと気持ち悪いけど。投げる側のおれだって援護の面で安心できるメンバーだし、結果的にそうなっただけ。ちょっと気持ち悪いけど。
「ボール!」
「まずは初球まっすぐ、外角外れましたがいきなり153km/h!帝国代表を迎え撃ちます、リーグ・コンサバーの関西松鶴パンサーズ。今日のパンサーズの先発を務めるのはプロ7年目、右の古垣翔磨。2019年シーズンの負傷からの治療が長引き、育成契約からの再スタートとなりましたが、昨シーズン実戦復帰し、支配下登録も勝ち取りました。一軍での登板は9試合に止まりましたが、47回を投げて防御率1.53と上々の成績。今シーズンは先発ローテーション入りを期待されております」
「ボール!」
「ストライーク!」
「まっすぐ続けてこれは入りました155km/h!身長189cm、この大きな身体から放つまっすぐが魅力です」
うん、威力がある。ここ最近のピッチャーはおれもそうだけどスリークォーターが左右問わず主流になりつつあって、それも多分全体的な球速アップの要因の1つ。けど古垣さんはわかりやすいくらい上から叩きつけるようなオーバースロー。妃房さんもサウスポーじゃ珍しく垂直に近いくらいのオーバースローだけど、もしかしたら対抗心もあるのかもしれない。
何にせよ、オーバースローならではのスピンの強さにスピードまで兼ね揃ったハイクオリティなまっすぐ。低めいっぱいのストライクを掠め取るのにも、高めで釣るのにも有効な球。
「……ボール!」
「これは外角高め、際どいところですが外れております!」
けど、そこはさすが月出里さん。
「インコース打った!これは少し詰まっておりますが……センター前落ちました!」
「「「「「おおおおお!!!」」」」」
「これぞ"4割打者"のバッティング!ノーアウト一塁、先頭バッター出塁!」
(嫌な奴やで……ただでさえ目ぇ良いのに、あれだけ詰まらせてポップフライにもならんのか……)
まっすぐ圧しのシンプルな配球。一見すると自分のまっすぐを過信してるように見えるけど、この時期の打者が相手。それに月出里さんの適応力を考えたら、生半可な変化球なんてただの遅い球。1番打者で対戦機会が最も多くなることを考えると、最初に速い球オンリーで隙を見せない攻めは間違ってない。それでも打ち返すから、月出里さんは幾重さん相手でもあんだけ大口叩けるんだよな。
「引っ張って強い当たり!しかしこれはセカンド正面!」
「アウト!」
「二塁アウト!」
「アウト!」
「一塁もアウトゲッツー!」
「「「「「あああああ……」」」」」
「完全にミスショットやなぁ……」
「まぁまぁこういうこともあるわ」
今の所変化球でストライクが取れてない。ちょっと立ち上がりで苦戦してる感じかな?
「3番指名打者、幾重。背番号16」
「「「「「光忠!光忠!光忠!光忠!」」」」」
「ランナーなしとなりましたが、ついにこの人に回ってきました!2021年シーズン、日本人史上2人目のメジャーシーズンMVP、2022年シーズンはメジャー史上初の投打ダブル規定到達!『前人未到』が世界で最も似合う男!"世界のスーパースター"幾重光忠!」
初回に先頭が出て、2番でゲッツー。2番バントがポピュラーな日本じゃ特に盛り下がりがちな展開なのに、この人が打席に向かうだけでこの盛り上がり。まぁ今までやってきたことを考えたらな……
(へっ……球場の連中もお茶の間の連中も大体こう考えとるやろうなぁ。『一軍半らしく、幾重の良い感じの噛ませになってくれ』ってなぁ。元々この試合自体そういうもんやし。けどな……)
「ボール!」
「ストライーク!」
「ファール!」
「ここもまっすぐ続けましたがファールゾーンへ!」
(俺はそんな大人しい奴やないで……!)
「ストライク!バッターアウト!!」
「スイングアウト!最後もまっすぐ154km/h!!」
「ええでええでショーマ!」
「メジャーのMVPがナンボのもんや!」
「今日勝ってパンサーズが実質世界最強や!」
さすがはパンサーズ応援団。たとえ幾重さんが出る試合でも、最優先は贔屓の選手でブレない。
「これでスリーアウトチェンジ!パンサーズ先発古垣、帝国代表相手に初回まずは3人で斬りました!」
「いやぁ、良いピッチャーだわ。ごめんなえいりーん」
「いえいえ、初見じゃしょうがないっすよ」
少し悔しそうにはしてるけど、それ以上に試合を心底楽しんでそうな感じの幾重さん。ほんとWBFに出るのが念願だったんだろうなぁ。




