No.2脱出の後
第二話、始まります。
真っ暗な場所に、私は居た。
………此処は何処?
私は何をしていた?
施設から脱出しようとしていたはず。
そんな事を考えていた時、声がした。脱出の最中に聞こえた、あの声。
………ユルサナイ……
許さない?
ウスギタナイ…ニンゲンドモ…
人間…人間に何かされた?
ワレノ…ワラワノタイセツナ、****ヲコロシタトガビトドモ……
大切な****を殺された…?
「……うぅ…んぅ…」
あれ……?
「夢…?」
あれは夢だったのだろうか、内容は……思い出せない。
「思い出せない、それよりも…ここは?」
改めて今居る部屋を見渡す。白い壁と天井…見覚えのない部屋だ。私の部屋に似ているけれども、1つ違う所がある。
窓がある。
外が見える。
何のへんてつもないただの町。
今まで見たことがない光景が見える。
姉さんの話が本当なら、あの四角い大きいモノがビルのはず。
そして、上に広がるあの青いモノが…
「あれが、空…」
なんて綺麗なんだろう、今まで見てきたどんなモノよりも美しい。
どれくらいそうしていたか。ぼーっと外を眺めていると、扉が開いた。
「あ、目が覚めたんだね!」
あの白竜の娘が入ってきた。
「もう体は大丈夫、痛い所はない?」
不安そうな顔をして聞いてくる。痛む所はない、大丈夫だ。
「大丈夫」
そう言うと彼女はホッと安堵した表情になる。
「良かった。でも、念のためまだ寝ていた方がいいよ」
そう言って布団を掛け直す白竜さん。
ここはどこか訊いてみようかしら。
「あの、ここはどこ?」
「ん?えっとね、ここは病院だよ。それよりもホントに大丈夫?」
とても心配しているようだ、魂が群青色になっている。
…ん?私は今なんて考えた、魂が群青色になっている?
「どうしたの、黒竜さん?」
白竜さんが不思議そうな顔で聞いてくる。魂も疑問を表す灰色になっている。
「なんでも、ない…」
つい、目を逸らしてそう言ってしまう。
「ホントに?」
うぅ…全然疑問の色が消えない、どうしよう。
どうしたものかと考えていたとき、部屋に誰かが入ってきた。
「8、見返目が覚めたのね!」
姉さんだった。
姉さんの魂は安堵と喜びで黄土色になっている。
やっぱり、魂が見えるうえに色で感情がわかるようになっている…?
「8、どうかした?」
姉さんも不思議そうな顔で聞いてくる。相変わらず鋭い。
姉さんなら、話しても大丈夫かな。
「ええと、その…」
「話してみて」
それから私は今の視界の事を姉さんに話した。
「おそらく、それは魔眼ね」
「黒竜さんって魔眼持ちだったんだ…」
姉さん達は心当たりがあるのか、感心した様子で話す。
「魔眼?」
「そう。世の中には目に特別な能力を発現させた人がいるの。目に魔力が宿ったりして発現した能力だから魔眼、そしてそれを持つ者を魔眼持ちというの」
「へぇ…」
なるほど、どうやら私はまた新しい能力に目覚めたようだ。
「黒竜さんの魔眼は今まで聞いた事のないモノですね。魂を見ているから…魂見の魔眼、かな?」
「いいわね、それ。これからはそう呼びましょう」
「あ、そうだ。せっかく目が覚めたんだから黒竜さんの名前、教えてください!」
魂見の魔眼…いい響き、気に入った。
それで、私の名前は、……名前?
「私、名前…無い」
そうだった。私は施設で過ごすより前の記憶が無い、名前も番号でしか呼ばれていない。
すると姉さんが。
「ああ、それなら私がもう考えてあるわ」
「なんて名前ですか?」
白竜さんが興味津々といった感じで姉さんに尋ねる。
「夜影冥。それが、貴方の新しい名前よ」
夜影冥。新しい、私の名前。
「嬉しい。ありがとう、姉さん」
「どういたしまして、喜んでくれてなりより」
「わたし白灯明菜、よろしくね!たぶん年同じだと思うから敬語やめるけどいいよね!」
「え、ええ…お好きにどうぞ」
…魂を見なくてもわかるくらいテンションが上がっている。
「ありがと!冥って呼ぶけど良い?わたしのことも明菜でいいから!」
「え、ええ…」
「やった!それじゃあここを案内してあげる!行こう!」
そう言うなり私の手を掴んで引っ張ってくる。
随分強引な人…でも魂を見る限り悪い人ではない。
病院の案内が一通り終わった頃に明菜が口を開く。(終始喋り続けていたが)
「そういえば、冥はどこの学校に行くの?」
学校?…そうか、普通なら私くらいの歳の子は学校に通うんだ…行けるのかな?
「私は、通えるかどうかまだわからないから…」
「そっか、同じ学校に通えるといいね!」
「…そうね」
明菜とはこの短時間でとても仲良くなれた。同じ学校に通えるというのなら、通いたい。
♪~~~♪~~♪
どこからか音楽が聞こえる。
なんの音…?
「ごめん、わたしだ。ちょっと待ってて」
明菜はポケットから何かを取りだし、少し操作してから耳にあてる。
「はいもしもし。…うんわたし、…うん…うん、わかった今戻るね。…うん、それじゃあ…はーい」
どうしたのだろうか…
「ごめんね、用事が入っちゃってもう帰らないと。」
「そう。それなら早く帰った方がいいわ、私は1人で戻れるから」
「うん、そうするね。それじゃあまたね、明日も来るから!」
そう言って明菜は去って行く。
「ふう…さて、戻ろうかしら」
私は自分の病室に向かって歩いて行く。
明菜と別れて自分の病室を目指して少し歩いていると何処からか声が聞こえる。
「~~♪~~♪~♪~」
「歌…?」
いったい何処から…?
私は声が聞こえる方に足を向けて歩き出す。
しばらく歩いた頃に、声のする場所を見つける。
そこは何のへんてつもないただの病室だった。ここから歌が聞こえる。
私は扉をノックして部屋に入る。
「~~♪~♪~~♪~♪」
そこには私と同じくらいの歳の女の子が居た。
首まである髪は若草色で、一目で普通の人間ではないと判る。
目は閉じられていて髪と同じ色の睫毛が揺れ、儚げな印象を受ける。
淡い緑の服を纏い、陽光を受けて楽しげに歌っている。
すると彼女は歌うのを止めて目を閉じたままこちらを振り返る。
「お客様ですか~?あまりこの辺りでは見ない顔ですね~?」
随分間延びした話し方で声を掛けてくる少女。
「ええ、最近ここに入院したので。ここには部屋に戻る途中で歌が聞こえたから寄ったの。」
「そうなんですか~それじゃあ、私の方が先輩ですね~」
「入院に先輩も後輩も無いと思うのだけれど…」
「それにしても~とても綺麗な方ですね~」
「ありがとう。…目を閉じているのに私の顔がわかるの?」
お礼ついでに疑問をぶつけてみた。
「わかりますよ~目は見えませんけど~その代わり大気や魔力の動きでモノを感知してますから~目に頼っている人達よりも~良く視えますよ~」
「へぇ…大気や魔力で、ね」
「そうだ~自己紹介がまだでしたね~私は~風上微風といいます~そよ風みたいに~優しい人になりなさいって意味らしです~よろしくね~」
「私は夜影冥、意味は…そういえば聞いてないわね…」
「冥さんですか~良い名前ですね~冥ちゃんって呼びますね~」
「ええ、どうぞ。こちらこそよろしくね、風上さん」
「そよって呼んでください~友達は皆そう呼びますので~」
「わかったわ、そよさん」
「はい~よろしくね~それよりも~部屋に戻らなくていいんですか~?」
そうだった、部屋に戻る途中だった。
「そういえば忘れていたわ、もう戻るわね」
「はい~お気をつけて~」
そうして私はそよさんの部屋を出て、今度こそ自分の部屋に向かう。
不思議な人だった………
やっと主人公の名前をだせました…
プロローグを含むと三話もかかるとは。
そんなこんなで主人公の名前が登場、長かった、長かったよ。
次回はこの小説の舞台についてなどを語る予定です。
最後に。この小説を読んでくださり、ありがとうございました!
次回を期待せず待っていてください!




