No.3外の世界
遅れて本当にごめんなさい
そよさんの部屋を出た後。私は今度こそ真っ直ぐ自分の部屋に戻った。
部屋に入ると姉さんは何処かへ行ったのか、居なかった。
私は姉さんが戻るまで窓の外を眺めて過ごすことにした。
暫くぼーっとしていると、この部屋に向かう足音が聞こえてくる。
コンコン。とノックの音が聞こえその後「入るわよ」という声がする。
扉が開き、姉さんが入ってきた、手にはビニール袋を持っている。
「戻っていたのね、どうだった?」
私の姿を見るなり、そう訊いてくる。
「楽しかったわ。明菜の話は聞いていて飽きないし」
明菜に病院内を案内してもらっている時にたくさん話をした。
ほとんど明菜が喋っていたけれど。
「明菜?貴方が他人を名前で、それも呼び捨てで呼ぶなんて。随分仲良くなったのね」
仲良くなったのは否定しないが明菜を呼び捨てなのは仕方がない。
「仕方がないでしょう、さん付けで呼んだら涙目で呼び捨てで呼んでって言ってくるのよ?」
涙目でプルプル震えながら『明菜って呼んでよぉ……』と言ってくるのだから、呼び捨てにするしかなかった。
「ふふっ。ああそうだ、目が覚めたばかりで何も食べてないでしょう?外で色々買ってきたから、好きなもの食べて」
言われてみれば、確かにお腹は空いているけれど……
「味なら大丈夫よ、あの施設の食事が微妙だったのは成長促進剤が混ぜられていたからなのよ」
……そう言われてしまったら、食べるしかない。
私はビニール袋からおにぎりを一つ取りだした。封を破り、少し逡巡してから意を決して口に入れる。
すると想像していた微妙な味はせず。代わりにいままで味わった事のない美味が広がる。
「……美味しい」
本当に美味しい。いままでのご飯はいったいなんだったのかと思いたくなってしまう。
「これには成長促進剤なんて物は入ってないから、ちゃんとした味がすると思うわ」
なるほど、それならばと納得する。
そういえばそんな物が食事に混ぜられていたわね……
……ん?
「……姉さん」
「何?」
「姉さん確か、私が味を微妙に感じるのは身体の構造が人間とは違うから、なんて言ってなかったかしら?」
そう言って姉さんを見ると、姉さんは目を逸らしながら答えた。
「そ、そうだったかしら?」
目が凄く泳いでいる。
私が半眼で睨んでいると、申し訳なさそうに。
「ごめんなさい。あれ、勘違いだったの」
と言った。
……ヱ?
「どういうこと?」
勘違い?
「ここに運び込まれた時に検査したんだけど、その結果貴方の身体構造は常人とそう変わらないらしいのよ……」
えぇ……
次の日。私は目が覚めた後やることが無いので、ぼーっとしていると朝食が運ばれて来た。
とりあえず運ばれて来た朝食を食べていると、部屋の外から聞き慣れた足音が聞こえてくる。
……姉さんかしら。
コンコンとノックの音が部屋に響き、「入るわよ」という声が聞こえる。
扉が開くと、予想通り姉さんが入ってくる。
「おはよう冥、調子はどう?」
「おはよう姉さん。……体調はかなり回復したわ」
挨拶を交わした後、適当に話をして時間を潰す。
一時間ほど経過した時、また足音が聞こえる。
コンコンとノックの音がしたあと、勢いよく扉が開かれる。
「おはよう、冥!遊びに来たよ!」
明菜が挨拶しながら入ってくる。
元気ね、明菜は。
「おはよう、明菜」
とりあえず挨拶を返す。
「おはよう、明菜ちゃん。病院では静かにね」
「あっ、はい……すみません」
姉さんに指摘されて少しシュンとしている。
そんな事よりも……
「何をしに来たの?」
「遊びに……もとい、お見舞いに来たんだよ。昨日のあれも気になったしね」
昨日のあれ?
私が首を傾げていると明菜が教えてくれる。
「ほら、学校がどうのこうのってヤツだよ」
ああ、あれ。
「そういえば、すっかり忘れていたわ」
そんな話もしたわね。
「学校がどうかしたの?」
「冥と同じ学校に通えたら嬉しいな~、って」
「あぁ、そういうこと。それなら貴女と同じ学校よ、竜人学園高等部」
「本当ですか!?やった!」
「……なに、それ?」
「え?」
「あ……」
不意に姉さんが、しまった。というような顔をする。
「姉さん、どうかしたの?」
尋ねてみれば、どこか気まずそうに
「ずっと研究所に居たから、外の事、特に一般常識を教えるのを忘れていたわ……」
……確かに。私は施設の外の事を何も知らない、病院等は判るけれども、それ以外が判らない。
「まず確認だけど。冥、あなたここが何処か判ってる?」
確か……
「日本」
「それじゃあ、日本の何処かは判る?」
「それは……。判らない」
「それじゃあ、そこから説明を初めましょうか」
そう言って、姉さんはにっこりと微笑んだ。
まず、日本という国。ここまではいいわね?
そして、ここはその首都に当たる東京都……ええそう、首都よ首都驚いた?あんまり?そう。
まあいいわ。
……まぁ首都といっても、辺境の島だけどね。
正式な名前は"竜人島"。竜に人に島と書いて竜人島ね。
さて、これでだいたいここについてわかったかしら?
ここについての説明はこれでおしまい、何か他に訊きたい事はある?
と。姉さんが話を締めくくろうとすると、大きな音が部屋中に響き渡る。
『付近に魔物が出現しました。直ちに近くのシェルターに避難してください。繰り返します……』
え?
「摩耶さん、冥、ちょっと行ってくるね」
え?
「行ってらっしゃい、気をつけてね」
「はい!行ってきます!」
明菜がそう言って慌ただしく部屋を出ていく 。
「……姉さん、今のは何?」
「魔物が出現したみたいね、アナウンスでも言っていたでしょう」
「……本気で言っているの、姉さん?」
「私はいつだって本気よ、冗談を言っているように見える?」
試しに魂を見てみるが、嘘を吐いていないことが判る。
……今まで流していたけれど、この目は本当に異常ね。魂と、そこに刻まれた情報が見えるなんて、それに見えるだけじゃなくてそれをしっかり理解できている。
って、今はそんな事より魔物の事よ。
「魔物なんてお伽噺の中だけだと思っていたのだけれど、本当にいるの?」
「半竜の貴女がそれを言うの?」
うっ……
「え、えぇっと……」
「まあいいわ。なんなら見に行く?」
「ヱ?」
「それじゃあ、さっそく行きましょうか」
そう言って姉さんは私の手を取り、立ち上がらせる。
「ちょっと、姉さん私これでも入院患者なのだけれど、勝手に病院から出て大丈夫なのかしら?」
「昨日病院中歩き回ってたんだから大丈夫よ」
「そういう問題?って、待って引っ張らないで、自分で歩けるから、ちゃんと歩けるから」
私の手を引っ張りながらどんどん進んで行く。
話を聞いていない……。
今回はかなり短いですごめんなさい




