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なんという強い意思なのだろう。ラスリークは内心、舌を巻いていた。だが、不器用な少年だ。自分の正しいと思う道を、損得では無く、ひたすら突き進んでいくしか出来ないのだろう。
「君は、ナルシア様を救う事が、この国の未来を救う事だと考えているのか?」
「そこまでは……、わからない。けど、俺はハンセン宰相に、炎の消滅を解決できる力があるとは思えない。その力があるのは、やはり……、ナルシアなんだと思う」
ラスリークはため息をつくと、遠くを見た。
「しかし、ナルシア様は今頃、雲の上だ。明日の朝には幽玄の搭に幽閉される。どうやって助けるつもりなんだ?」
「小型光線銃を貸して欲しいんだ。それと、護送船の見取図と進路。コンピューターに登録されている現在進行形のものがいい」
「小型光線銃? 船を爆破させる気か?」
「出口をつくるだけだ。今ならライナで追いつける。それに、空を飛んでいる今がチャンスなんだ。今なら警備兵も、ナルシア追放に戸惑っているはず。幽閉されてしまえば事件は風化され、俺に助け出すなんて不可能になる。隙をつけるのは今しか無いんだ」
ラスリークは、黙りこみ顎に手を当てた。ノーともイエスとも言えず、うろうろと思考の中をさまよっている。ロックにはラスリークの迷いがわかった。
その背中を後押しする様に、ロックはある言葉を呟いた。
「頼むよ。俺に、゛あの時″の借りを返してくれ」
そのロックの言葉に、ラスリークの顔は青ざめた。
「君は卑怯だな。私が君の頼みを断れない事を知っていて、そんな事を頼むとは」
ロックの強い眼差しに、ラスリークは情けない顔で微笑した。
地上から遥か彼方、天上を突き進む護送船イプテシナ号。
その船の一室へ、小柄な少年兵が質素な、パンやスープをのせたトレーを運んでいる。兵士は部屋の前まで来ると、器用にトレーを片手でかかえ、セキュリティカードをドアの横に付いている差し込み口へ通した。自動でドアは開き、兵士が中へ入るとすぐに閉じた。
窓も無い殺風景な小部屋の片隅でうずくまり俯くナルシアの姿があった。粗末な服を着せられたナルシアの顔色は悪く、青ざめている。
兵士が小さな机の上を見ると、朝、運んだ食料が手付かずのまま残されていた。兵士は、トレーを入れ替えながら、小さな声で呟いた。
「少しはお食べにならないと、体が持ちませんよ。……せめて、スープだけでも」
しかし、返事は無かった。絶望に心、奪われたように呆然としている。少年兵はその姿に同情を感じ得ずにはいられなかった。
しかし、ナルシアが抵抗や反抗の態度を取らないのは有難かった。だが、逃げだそうとしても空の上。逃げだす事など不可能なのだが。




