第10話:俺はこの世界で一生貧乏のままなのか?
「カイト」と、リッカは満足そうにお腹をポンと叩きながら言った。「あたしの人生で一番美味しいご飯だったわ」
「俺は何も食ってねえけどな」
「あら。そう。ごめんなさいね」
その声には、微塵も反省の色がなかった。
空はすっかり暗くなっていた。マルカスの街の通りは静まり返り、宿屋の窓から漏れる温かな明かりが道端を照らし始めている。
俺はその一軒の前に立ち尽くしていた。ポケットの中には埃以外、何一つ残っていない。
「金がない奴に貸す部屋はないよ」と、宿の主人は顔も上げずに言い放った。「次」
俺は宿の外へ放り出された。
リッカは俺の隣に立ち、所在なさげに地面を見つめていた。
「……ごめんね」と、彼女は小さな声で呟いた。
「謝るなよ。お前に飯を食わせると決めたのは俺自身だ」
「でも、あんたベッドで眠れないじゃない」
「お前だって同じだろ」
「あたしは剣に戻るからいいの。剣にベッドなんていらないし」
彼女の姿は、青い光を帯びた一振りの剣へと変わっていった。俺はその剣を背中に背負い直した。かすかな輝きが、小さな常夜灯のように俺の肩をほんのりと温めてくれる。
俺は乗合馬車の停留所が見つかるまで街を彷徨い歩いた。そこはマルカスを出発する人々が雨風をしのぐための屋根付きの広い待合所で、木製の長いベンチがいくつも並んでいた。
俺はその中の一つに横たわり、自分の腕を枕代わりにした。
「おやすみ、リッカ」
「おやすみ、変なカイト」
「その呼び方やめろ」
リッカが小さくクスクスと笑った。俺はそれに言い返す間もなく、深い眠りに落ちていった。
「おい。あれ見ろよ」
「死んでるのか?」
「いや、息はしてる。ただの乞食だろ」
「あいつの背中にあるの、おもちゃの剣か?」
俺は片目を開けた。
ベンチの周りを七人もの人間が取り囲んでいた。籠を持った女、二人の老人、俺を指さして笑う小さな男の子、そして品定めするような立派な髭を蓄えた商人。
その全員が、じっと俺を見下ろしていた。
恥ずかしさで顔から火が出そうだった。俺は首がパキッと鳴るほどの勢いで跳ね起き、荷物をひったくると、俯いたままその場から足早に逃げ去った。
◆ ◆ ◆
次の日も同じだった。
その次の日も。
丸三日。三回こなしたムーンリーフの採取クエスト。稼いだ合計百二十ニッケルは、そのすべてがリッカの胃袋か宿屋の主人の懐へと消えていった。
三日目の朝、俺はまたしてもベンチの上で好奇の視線に囲まれて目を覚ました。今度はあの悪ガキが友達まで連れてきていた。
もはや恥ずかしさすら湧いてこなかった。ただ、睡眠ごときではどうにもならない疲労が全身にのしかかっていた。
俺はギルドへ向かい、まるで借金取りのような鋭い目でクエストボードを睨みつけた。
「ムーンリーフ……ムーンリーフ……迷子の猫探し……またムーンリーフか……」
掲示板の下の方へと視線を滑らせていくと、真新しい一枚の依頼書が目に留まった。
『スライムの討伐。南部の湿地帯周辺に現れるスライムを可能な限り討伐せよ。報酬:60ニッケル、討伐部位1個につき追加で10ニッケル。推奨ランク:F』
俺はその紙を二度見した。
六十ニッケル。しかも追加報酬付き。何より、剣を使って戦える依頼だ。
「リッカ」
「んー?」
「スライム退治に行くぞ」
「やっと?! 本物の戦いね!」
「あんまり浮かれるなよ。相手はスライムなんだから」
「戦いは戦いよ!」
俺がボードからその紙を剥がそうとした、まさにその瞬間だった。ギルドの頑丈な扉がドカンと大きな音を立てて開いた。
一人の男が息を切らしながら飛び込んできた。服は土埃まみれで、呼吸も荒い。男は部屋の中央で立ち止まり、喉が裂けんばかりに叫んだ。
「おい、みんな聞いてくれ! あの伝説の聖剣だ! 森の洞窟で岩に突き刺さっていたあの剣が……何者かに引き抜かれたぞ!!」
ギルド全体が一瞬にして静まり返った。
「なんだって?!」
「馬鹿な! 過去百年間、誰もビクともさせられなかったあの剣が?!」
「誰が抜いたんだ?! 一体どこのどいつだ?!」
「わからねえ!」男は肩で息をしながら答えた。「俺は今その洞窟から戻ったばかりなんだが、台座の岩はもぬけの殻で、剣だけが綺麗さっぱり消えてたんだよ!」
俺はボードの前でピタリと硬直した。
伝説の聖剣。洞窟。台座の岩。
俺はおずおずと、すぐ隣にいた冒険者の袖を引いた。
「あの……すみません。その剣って、そんなにすごい物なんですか?」
男はまるで宇宙人でも見るような目で俺を振り返った。
「お前、知らないのかよ?! この地域で一番有名な宝剣だぞ! 金とダイヤモンドで装飾されてて、神秘的な青い光を放つんだ! その価値、なんと五千万ニッケルだぞ!」
「ご、ごせん……まん……?」
俺の目がこれ以上ないほど見開かれた。
頭の中で、冷たいベンチでの三日間、四十ニッケルの薬草採取、そして底なしのリッカの胃袋が一瞬でフラッシュバックした。それらの光景はすべて吹き飛び、脳裏にはただ一つの巨大な数字だけが神々しく輝いていた。
五千万ニッケル。
俺の顔にパッと希望の光が差した。
俺は掲示板の前から堂々と歩み出ると、これでもかと胸を張り、ギルドの端から端まで届くような大声で叫んだ。
「俺の名は天野海斗! その伝説の聖剣を引き抜いたのは、この俺だ!!」
室内にいた全員の視線が、一斉に俺へと突き刺さった。
ギルドの静寂はさらに深まり、自分の心臓の鼓動や呼吸の音さえはっきりと聞こえるほどだった。
誰もが俺を凝視していた。だがそれは、ベンチで寝ていた乞食を見る目ではなく、完全に頭のおかしい狂人を見る目だった。
やがて、顎髭を生やした一人の筋骨隆々な冒険者が眉をつり上げて尋ねてきた。
「ほう? じゃあ見せてもらおうか。その聖剣とやらは一体どこにあるんだ?」
俺はためらうことなく後ろを向き、背中からリッカを素早く引き抜くと、掲げるようにして全員に見せつけた。
「これだ!」
しばしの沈黙が流れた。
次の瞬間、誰かが吹き出した。
続いて別の誰かも吹き出した。
そして瞬く間に、ギルド全体が割れんばかりの爆笑の渦に包まれた。
「ぶわっはっはっは! あれかよ?! あの安っぽいオモチャの剣が?!」
「子供のオモチャでももうちょっとマシな作りしてるぞ!」
「おいおい兄ちゃん、嘘をつくにしてももう少しマシな嘘をつけよな!」
俺の耳までカッと赤くなった。
「本当なんだ! 俺は本当にあの岩から引き抜いたんだ! おいリッカ、何か言ってくれ!」俺は剣を小刻みに揺すった。「リッカ! こいつらに言ってやれ! お前が喋れるってことを証明してくれよ!」
剣はうんともすんとも言わなかった。
「リッカ!!」
何の反応も返ってこない。
俺は半狂乱で受付カウンターへと駆け寄り、リッカをドスンと机の上に置いた。茶髪の受付嬢が目をパチクリとさせた。
「受付さん、俺のこと覚えてますよね?! 天野海斗です! 最初にここで登録してもらった! これがその伝説の剣なんです! 証拠だってあります! よく見てください、前はダイヤとか付いてたんです、ただ俺のせいで姿が変わっちゃっただけで、本当なんですって……!」
受付嬢は剣を手に取り、まじまじと上から下まで眺め、刃の部分を指で撫でた後、非常に静かにカウンターの上へと戻した。彼女の顔には完璧な営業スマイルが浮かんでいたが、その瞳には明らかな同情の色が宿っていた。
「カイトさん、大変申し上げにくいのですが……これは、その伝説の剣ではありませんね」
「そんな……」
「それに率直な鑑定をさせていただきますと……こちらの剣、どう見積もっても150ニッケル以上の値はつかないかと」
その瞬間、背中に回したリッカから、俺にしか聞こえないほどの蚊の鳴くような声が届いた。
背後からは、依然として冒険者たちの下品な嘲笑が響き渡っている。
俺はリッカを手に取り、背中に縛り直すと、今すぐ地面が割れてその中に飲み込んでくれないものかと祈りながら、逃げるようにカウンターの隅へと身を引いた。




