偽界睡眠②
2年B教室には、永瀬紗奈とゾキョウが居た。そして、紗奈はゾキョウの「嘘拳」を片手で止めて、不気味な笑みを浮かべている。その目は、黒く光っていた。
紗奈?「ハハハッ…私に挑むのか?」
ゾキョウは青ざめる。一気に紗奈の気配がかわり、後ろに下がろうとした。その時…
ゾキョウ「!?」
ゾキョウは、誰かの偽界の中に居た。見渡す限り、灰色の階段が連なる。
メア「私を殺しに来たんだろう?最強の偽」
すると、階段の下からメアが上がってきた。そして、ゾキョウは冷や汗をかく。
階段が黒く染まり、ゆっくりと足音が近づく。そして、メアはゾキョウの前に姿を現した。
メア「私はメア、君らの思うように、私は最凶の偽様の眷属だ。ちなみに、今はこの子の体を乗っ取っている。」
ゾキョウ「脳を操作してか?随分偽らしくない事してんじゃねぇか」
メア「意識を取り込むと、うるさい奴が居るんでね。」
ゾキョウは息を呑み、ゆっくりと口を開いた。
ゾキョウ「お前、何をした。なんで俺はお前の偽界に居る」
メア「そっか〜。最強の偽レベルじゃ、できないんだ」
メアはそう言いながら、ゾキョウに歩いて近づく。
メア「私ら眷属には、2パターンの能力がある。最凶の偽様が、二つの能力を持っているからだ。一つは嘘操作、私が使える能力だ。これを私は使う。嘘を使って、お前をここまで無理やり招いたのさ」
ゾキョウ「もう一つはなんだ」
メア「わざわざ言うわけない。残念だけど、そんな甘い世界じゃないよ」
その瞬間、ゾキョウは後ろから黒い大きな棘で突き刺される。
ゾキョウ「ガハッ..」
メア「ビケと違って、隙がありすぎるね」
すると、メアの手に黒い霧が集中し、黒い銃へと変わった。
メアは、ゾキョウの頭に銃口を当てる。
メア「バイバイ。」
「バンッ」
メアは、撃つ寸前に銃口を上に向けて発砲した。その時…
「バキッ」
ゾキョウの嘘の塊が、割られた…
リースの偽界
ビケ「嘘の塊、見つけたぞ」
ビケは床から手を離し、立ち上がる。
ビケ「リースの偽界なら、嘘の塊壊せば出れるだろ。」
ビケはそう言って、ドヤった。しかし、希の表情は暗かった。
ビケ「希?」
希「実は、リースの能力にかかると、一生意識が覚める事はないんです。」
ビケ「!?」
希「偽が死んでも、偽界は壊れません。そして、この偽界には出口が無いんです。それが《偽睡》。何かの隙が生まれない限り、脱出は無理でしょう。」
ビケ「嘘だろ…」
ビケは頭を抱える。
ビケ(何かの隙?リースの気をそらすか?どうやって?ここは偽界だ。リースが死ねば、隙は生まれるかも…いや、希の言ってる事に嘘はなかったな。リースを殺してもほぼ意味がない。なら、嘘を極限に減らす…4月1日……2032……!!」
その時、急に頭を上げる。
ビケ「その隙って、どうやったら生まれる?」
希「さぁ?嘘で作られている空間なので、嘘が急激に少なくなったら…」
その言葉に、嘘はない。すると、ビケは笑い出した。
ビケ「ハハハッ。俺なりに、いい事気がついたな」
希「?」
するとビケは、生徒会室の窓を開け、そこから飛び降りた。
希「ちょ!!ビケ!?」
希は慌てて、窓を覗き込む。ビケの手は、黒く光る。
ビケ「《嘘拳》!!」
ビケは、思いっきり地面を殴った。その時…
ビケ「!?」
ビケの殴った地面に大穴が空き、そこから黒い煙が立ち上り、ビケを巻き込んだ。その黒い煙は柱のように、空高く突き上がった。
希(あれは…大量の嘘…)
すると、黒い煙の柱からビケがなんとか出てきて、地面に落ちる。そして、仰向けで倒れる。希は急いで下に降り、ビケに駆け寄る。
ビケ「ふー、上手くいったみたいだな」
希「何をしたんですか!?なんで嘘があんなに…」
ビケ「2032年、今年の4月1日は、逆エイプリルフールって言われてるんだ。13年に一度だっけな…逆エイプリルフールは、嘘をついてはいけない。だから、嘘の量が減ると思ったんだ。」
ビケは立ち上がり、服の土埃を払う。
ビケ「さっき、嘘が急激に減ったら、可能性あるって言ったろ?今年の4月1日はみんな嘘をつかないよう気をつける。それを信じて攻撃したら、大当たりだ。偽界に穴が空いた。この嘘が噴き出ているところが、偽界の出口みたいなもんだ」
その時、希とビケは咄嗟に振り返った。何かの、気配がした。
紗奈「何…これ……」
そこには紗奈が居て、立ち上る嘘を見上げていた。
ビケ「なんだ、紗奈か。」
ビケは紗奈に近づき、言った。
ビケ「帰るぞ、紗奈。後で説明するから、ついてきて」
ビケはそう言って、紗奈の方に手を差し出す。
そして…
ビケ「…なんて、言うと思ったか?」
紗奈の手が黒く染まって、ビケの方に紗奈は手を丸め突き出すが、ビケはそれを止め、逆に紗奈の顔面を殴った。
希「え!?」
ビケ「ニセモンだろ、お前」
紗奈は校舎の壁に激突する。しかし、ゆっくりと立ち上がる。
ビケ「希、さっきリースの能力は、偽界を自由自在に変えることもできるって言ったよな?」
希「そうですけど…」
ビケ「あれは、リースが作ったニセモンだ。紗奈の気配がするが、その中のメアの気配がしない。で、この偽界内全体でも、メアの気配がない。要するに、紗奈の意識はここには無い」
希「つまり、私達の意識だけ閉じ込められている。」
ビケ「そうだな。まあどっちにしろ、紗奈の身がヤバいって事には変わりない。」
その頃、現実
「コツ…コツ……」
学校の廊下を、紗奈…いや、メアが歩く。
メア(最強の偽は弱いな。あの程度で私を殺しにきたのか。まあ、まだ数体いる。ついでに始末するか)
メアはそう言って、校舎を出た。
その時、メアの目の前にある最強の偽が現れた。
?「おっと〜、ちょっと待った。」
メアの前に現れたのは、青年の偽
ノシズ「俺はノシズって言うんだ。お前を殺しに来た」
その時、メアは上を見上げる。
メア(なにか、落ちて来て…)
「ドゴーン」
落ちて来たのは、巨大な偽だった。巨大な偽は、メアを潰し、元の大きさに戻った。
スルビア「ちょっと気づくのが遅かったな」
それは、最強の偽 スルビアだった。
ノシズ「うぃ〜。流石スルビア。」
スルビア「リースと合流するぞ。また殺されてないといいが…」
その時、スルビアの肩を、誰かが叩いた。
メア「惜しかったな。私はとっくに気がついていた」
無傷のメアはそう言って、微笑む。そして、スルビアとノシズの頭上に、黒い球体が現れる。
スルビア ノシズ「!?」
メア「《嘘操作》」
その球体は、一瞬にしてスルビアとノシズを消した。
メア「やっぱ雑魚だ。」
リースの偽界
ビケ「さて、ここから出るぞ」
ビケはそう言って、希を手招きする。そして、ビケの開けた大穴に、2人は飛び込もうとした。
しかし…
「ドガッ」
ビケは、紗奈の偽物に飛びつかれ、地面に落とされる。
ビケ「!?」
希はそのまま、大穴に置いてゆく。
そして、希の意識は目覚める。
希「!!」
希はすぐに立ち上がる。その目の前には、リース
リース「あれ?起きちゃった」
希はすぐにライトコインをポケットから取り出し、噛み砕いた。
希「貴方達の思い通りには、させません」
その頃、偽界に閉じ込められたままのビケの意識
ビケ「!?」
紗奈の偽物に抱きつかれ、ビケは倒れる。紗奈の偽物は、不気味な笑みを浮かべる。
紗奈の偽物「残念。」
ビケの腹には、ナイフが刺さっていた。
ビケ「ガハッ」
ビケの腹から嘘が漏れる。それでもビケは紗奈の偽物を振り落とし、立ち上がる。
ビケ「《コピー》!!」
ビケは、自分のコピーを3体作り出した。しかし…
「ズバッ」
紗奈の偽物は、一瞬にしてナイフでビケのコピーを切り刻む。ビケのコピーは粉のような嘘になって消えてゆく。
ビケ(なんで…こんなに強い)
紗奈の偽物「貴方のコピーと一緒。嘘があれば、偽界内を自由に編集できる。例えば、私みたいな偽物を最強にするとか」
紗奈の偽物は、ビケに向かって飛び襲う。
ビケは、手で嘘の漏れる部分を掴む。
ビケ(頼む…耐えろ!!)
ビケはライトコインを取り出し噛み砕く。その真実を、嘘が漏れているところに集中させる。
ビケ(…)
紗奈の偽物が迫る。そして、ギリギリまで近づいた。その時…
ビケ(今だ!!!)
ビケ「《ゲル》」
辺りは灰色の煙に包まれる。校舎はひび割れ、ビケの立っていた所には第2の大穴が空き、ビケは落ちてゆく。紗奈の偽物は、遠くまで飛ばされて、消えてゆく。
ビケ(上手いこと言ったな…これなら、邪魔されずに脱出できる)
そして、ビケの意識が戻る。
ビケ(よし!後は、紗奈の所に向かって…)
「ドサッ」
ビケ「……は??」
ビケの視界に最初に入ったのは…腹から血を流し、目を瞑って倒れている希だった
そして、リースの手には、血のついたナイフ。
数分前
希「貴方達の思い通りには、させません」
希はそう言って、ライトコインを噛み砕く。白い光が希から漂う。
希「《真拳》」
その瞬間、リースの視界から希が消えた。そして、リースの腹に、希の拳が食い込む。
リース「ガハッ……フフッ。」
リースは、希の姿が消えた瞬間、ナイフを持って前に突き出していた。そのナイフが、丁度希の腹を突き刺した。
希「くっ…」
希は、冷や汗をかく。激痛が襲い、今にも倒れそうだった。
それでも…
希(ここで…死ぬわけには…)
5年前
希「…」
1人の少女のお葬式。それは、永瀬 木花の葬式だった。
希と木花は、幼馴染だった。小中からずっと一緒だった。その木花が、謎の死を遂げた。
それを知っていたのは、木花の父…雷蔵だった。
希「雷蔵さん。」
雷蔵「希か…木花と仲良くしてくれて、ありがとうな」
雷蔵は椅子に座り、ぐったりとし暗い表情でそう言った。
希「木花…何で死ぬような…顔も損傷があって最後は見せてくれない…何があったんですか…」
雷蔵「……これを知ったら、君の未来は変わる。俺のとこで働いてもらう事になるぞ」
聞かされたのは「偽」の存在。希は、この日を境に「真」になった。
そして、木花のいとこの紗奈の護衛を任された。
5年後
希「私は…今死んだら、木花と顔を合わせられません。せめて、紗奈を守るビケが目覚めるまでは…」
その時、ビケの意識が戻る。希はそれに気がついた瞬間、力を抜いてしまった。
「バタン…」
時は、現在に戻る。
ビケ「お前…」
ビケは、リースを睨みながら立ち上がる。
リース「この子が勝手に自滅しただけだよ。パンチも弱いし、戦力になんないでしょ。居なくても貴方達は、困らない。なのに、何で怒ってるの?」
ビケ「…ゾキョウの戦いの時は、助けてもらったよ。一緒に紗奈を守るやつが居るってだけで、全然頼もしい。」
ビケは、手のひらを上げに挙げた。
ビケ「ごめんだけど、お前はちょちょっと倒す。早く紗奈の安全確保して、希を病院で治療してもらわなきゃいけないからな」
ビケの手のヒラに黒い煙が集まる。
ビケ「《嘘玉》」
次回予告
ついに第1章完結!
ビケ「じゃあな」
「バンッ」
VSリース 決着へ…
エイラ「私は味方だ。倒すよ」
共闘
希「死なないよね。」
そして…
ビケ「希、ありがとう」
「偽」第9話へ続く…




