ビケの過去 後編
フィンとゴロソウジャが、コンテナの前に冷や汗をかきながら立っている。その視線の先に、真最強の男「瓶縫医」
瓶縫医はポケットからライトコインを取り出し、噛み砕く。
「バキッ」
その瞬間、フィンはゾッとする。瓶縫医から立ち昇る、白い煙、絶大なオーラをフィンは感じた。
フィン「リーダー、勝てるんすか??」
ゴロソウジャ「俺は能力を使えない。お前が先導しろ」
その頃、ビケはコンテナの横からヒョイと、瓶縫医の隣に出てくる。
ビケ「ついて来てたのかよ(小声)」
瓶縫医「心配だったんだよ。結果、俺が来て助かっただろ?」
数分前、瓶縫医はビケがフィンについて行ったのを確認し、距離を取りながらその後をついて行っていた。
そして、ビケの居る所の一つ前のコンテナに、瓶縫医は身を潜めていた。
そして、強大な嘘の力を感じ取った。
瓶縫医(誰かが嘘を放った!!これは、ビケの感じじゃないな!!)
瓶縫医はすぐにビケの所まで、地面を蹴って移動し、ビケの腕を掴んで、また地面を蹴ってコンテナの横まで連れていく。これを、1秒未満の間に成し遂げた。
瓶縫医「さて、ビケ。あいつらを倒すぞ。一番大事な情報は聞けた」
ビケ「よし。じゃあ、特訓の成果を活かす時だ」
ビケもポケットからライトコインを取り出し、噛み砕いた。
ゴロソウジャ(あれは真実だぞ??何故偽が、真実を補給している??)
ゴロソウジャ「まあ取り敢えず、片付けるとするか」
ゴロソウジャは、瓶縫医とビケの方に手を向ける。
ゴロソウジャ「《邪像偽》」
その瞬間、ゴロソウジャの手からゴロソウジャの三倍の大きさがある黒い嘘を固めたものが放たれた。
瓶縫医「中々厄介な事してくれるな…真羅万象《波》」
その時、瓶縫医の周りに、白い波紋が現れ、みるみる瓶縫医の前に広がってゆく。
そして、黒い嘘がその波紋に激突した瞬間、その嘘は粉の様に消えてゆく。
ゴロソウジャ「!?」
すると、瓶縫医は姿勢を低くする。そして、フィンの方を見る。
瓶縫医「《真拳》」
その瞬間、辺りが一気に白く光りる。そして、ゴロソウジャが気づいた頃には、隣に拳を突き出す瓶縫医が立っており、手から白い湯気が出ている。フィンは、奥のコンテナにめり込んで、地面に落ちて、倒れた。
ゴロソウジャ(速い!!)
ゴロソウジャは手の甲を、瓶縫医の顔面に向けて振る。それを、瓶縫医は体をそらし、避けた。
瓶縫医「分かるな。ビケ」
瓶縫医がそう呟く。その時、ゴロソウジャは気がつく。ビケが、ゴロソウジャの視線の中にいない。
ゴロソウジャ(まさか!!)
ゴロソウジャは、咄嗟に上を向く。そこには、拳をこちらに向けて落ちて来ているビケが居た。
ビケ「《嘘拳》!!」
しかし、ゴロソウジャは冷静にビケの拳を片手で受け止め、掴む。そして、地面に叩きつけた。
ビケ「ぐっ!!」
瓶縫医「ビケ!!」
そして、ゴロソウジャは瓶縫医の腹を蹴り、瓶縫医は飛ばされる。瓶縫医はバク転をして何とか受け身を取り、片腕を地面につきながらコンクリートの上に立つ。
ゴロソウジャ「一瞬油断したな。フィン、そろそろ起きろ」
ゴロソウジャがそう言って指を鳴らす。その瞬間、フィンは頭を上げる。
フィン「はいよ」
フィンは、一瞬で瓶縫医の真上に来た。そして、拳を丸める。
フィン「さっっきのお返しだ!!」
フィンは腹から少しの嘘が漏れながらも、瓶縫医に向けて拳を突き出す。瓶縫医は、冷静に立ち上がって、その拳を避ける。
瓶縫医「お前の能力は大体分かっている。触れた物体の存在を嘘にする…つまり消すことができる能力だろ」
フィン「おっと〜、何でバレた?」
瓶縫医「ビケを最初助けた時、お前のリーダーの攻撃はお前にも向かっていた。あの攻撃は強力そうだった。なのに、お前は無傷。コンクリートにも傷が入っていない。そして、俺を殴ろうとしとな。それは、殴るふりをして能力を発動し、俺を消すつもりだったのだろう」
フィン「流石最強の真だ。まあ、俺の能力は相手に触れれたら勝ち確定だ。」
フィンは一気に瓶縫医と距離を積める。そして、手のひらを瓶縫医の方に向け、掴もうと腕を伸ばす。
フィン(触れれば存在を消せる!!最強だろうと、もう無理だろ!!)
フィンは、瓶縫医の腕を掴んだ。
フィン「勝ったぁ!!」
しかし、瓶縫医は消えなかった。
フィン「は…?へ???」
瓶縫医「偽の能力は嘘を使っている。嘘からできた真、嘘を真実に変えれば、能力は無効化される」
フィン「そんなの、もうチートじゃ…」
瓶縫医「すまんな。チート級にならないと、お前らのチート級能力に対応できないんでね」
瓶縫医はフィンの顎を蹴り、頭を掴む。そして、上の方に投げる。
フィン「っ!!」
瓶縫医「真羅万象 《鮫》」
すると、コンクリート地面から、真実で作られた白いサメが飛び出て来て、視線を浮いているフィンに向ける。そして、フィンをそのまま丸呑みにした。
瓶縫医「偽を倒す方法は三つ。一つは、偽の嘘の塊を破壊する。二つ目は、偽の嘘を空にする。三つ目が、真実を大量に流し込み、嘘を無くす事だ」
真実で作られたサメがコンクリートに潜る様に、頭から消えていった。
そこには、フィンの姿はもう無かった。
瓶縫医(後は、リーダーか)
その頃、地面に叩きつけられるビケと、ビケを踏みつけるゴロソウジャ。
ゴロソウジャ「まだまだ弱いな」
ビケ「こっちは手加減してんだよ…本気出してやろうかぁ??」
ゴロソウジャはビケを蹴り飛ばす。ビケは、ゆっくりと立ち上がる。
ビケ(さて…冷静だな。こういう相手は…取り敢えず感情を揺さぶらせる。)
ビケ「随分子供いじめが好きじゃねえかよ」
ゴロソウジャ「あ?弱い者いじめと言え」
ビケ「俺は弱くない…」
ビケ(うん。無理そうだ)
ビケはため息を吐き、頭をかく。
ビケ「よし、やるか」
その時、ビケから黒い湯気の様な物が立ち昇る。
ゴロソウジャ(感じが…変わった??)
ビケ「少し派手にやるぞ。今回は許してくれよ…《《ビケ》》」
その瞬間、コンクリートがひび割れる。
そして、辺りが黒く染まり光る。
ビケ「《嘘拳》」
その時、ビケは一瞬でゴロソウジャとの距離を詰めた。そして、ゴロソウジャの腹に黒く、重い一撃を入れた。
ゴロソウジャ「ガハッ!!」
ゴロソウジャは、視界が真っ暗になる。だが、必死にビケの方に手を向けた。
ゴロソウジャ「《邪像偽》!!」
口と頭と腹から黒い液体がゴロソウジャから垂れる。その嘘が手のひらの前に集まり、ビケの方へ飛んでゆく。しかし…
ビケ「《嘘玉》」
ビケはそう言って、人差し指と中指を立てて、ゴロソウジャの方に向ける。その瞬間、《邪像偽》の真ん中に穴が空き、崩壊してゆく。そして、ゴロソウジャの右肩に、黒い小さな嘘の固まった物が貫通していった。
ゴロソウジャ「ガハッ」
ゴロソウジャは、そのまま意識を失って、肩を落とした。すると、瓶縫医がビケの方へ向かって来た。
瓶縫医「大丈夫かビケ!?」
ビケ「うん。だいじょ…」
その時、ビケは青ざめて、地面に倒れる。
ビケ「ガハッ!」
瓶縫医「ビケ!!」
ビケ(反動が来た…嘘が体内で暴走しそうだ……)
ビケの体内の嘘は強力だった。そのため、戦力にはなるが、真実で弱めないと体内で暴走し、自爆する恐れがある。
ビケ(でも、ゴロソウジャは倒した。取り敢えず一安心…)
「ズッ」
その時、何かを突き刺す音が、ビケの耳に入って来た。
ビケ(…?)
ビケは、ゆっくりと瓶縫医の方を見る。そして、瓶縫医の後ろには、無傷のゴロソウジャが立っていて、ゴロソウジャの腕が、瓶縫医の背中に突き刺さっていた。
瓶縫医「…ガハッ」
瓶縫医は、血を吐いて倒れる。
ゴロソウジャ「油断は禁物だ」
ビケ「なん…でぇ……」
ゴロソウジャ「確かに俺は死にかけだった。だが、残りの嘘で、《死にそう》と言う真実を《嘘》にした。お前らはもうそこまで嘘残ってねえだろ。回復もできねえ。詰みだ」
事実、ビケの体内の嘘は暴走し、大量の嘘をビケは吐き出した。瓶縫医も重傷を負い、そこから補給した真実が漏れる。瓶縫医もビケも、もうライトコインを持っていない。
ゴロソウジャ「俺ももう嘘は残っていないが…使う必要はなさそうだな」
ゴロソウジャは、片足を上げる。そして、ビケの顔面に向かって、勢いよく振り下ろす。
ビケ(クソが!!動け体ぁぁ!!)
その時、ゴロソウジャの動きが止まる。ゴロソウジャは、白い唐草によって縛られていた。
「真羅万象《唐草》」
ゴロソウジャ「お前、どんだけ体内に真実残していやがった」
瓶縫医「手に…真実を集中させた……そうしたら…背中を…貫かれたって…関係………ない」
ゴロソウジャの横には、背中と口から大量の血を流し、冷や汗をかきながらも手を合わせて立っている、瓶縫医が居た。
瓶縫医(もう…真実は使い果たした……後は、頼むぞ……ビケ!!)
瓶縫医は、手を合わせたまま、ニコッと笑顔になりながら倒れた。その時、ビケが立ち上がる。そして、ゴロソウジャに巻きついていた唐草も消える。
ビケ「《嘘拳》!!」
ビケの目が黒く光り、ビケの拳は一直線にゴロソウジャの顔面に当たる。そのまま、ゴロソウジャは地面に擦りながら飛ばされ、手を地面に擦りつけ、勢いを殺し、立ち上がる。
ビケ(まだ嘘が暴走している…それがなんだ。チャンスじゃないか)
ビケ「今なら、できる」
ビケは、右手をゴロソウジャに向ける。
数日前
瓶縫医「さて、もう嘘はだいぶコントロールできるようになったな」
真の訓練場で、瓶縫医は腕を組み、感心しながらビケに言う。
ビケ「でも、気を抜くと暴走しそうだな…抑えきれなくなるって言うか…」
瓶縫医「そう言うときは、その状況を活かせばいい。嘘が暴れるなら、外に出してやればいい。」
ビケ「外に出す?」
瓶縫医「そう。その時の嘘のエネルギーは、とてつもないだろう。言葉はそれほどの力を持つ。」
ビケ「…もし、真実と嘘が混ざったら、どうなるんだろうな」
瓶縫医「その発想はなかったな…それは、俺にもわからんな。一つ言えるとしたら、それはとてつも無い力になるだろう。それぞれの、良さを活かせれば」
時は、現在に戻る。
ビケは、目を閉じた。
ビケ(暴れている嘘に、真実をぶつけさせる。それを繰り返して…真実の純粋さ、嘘の優しさを活かせ。そして、真実の残酷さ、嘘の卑劣さも活かす。その両方を中和させる)
ビケは冷や汗をかく。腕が爆発しそうなほど、嘘が暴れる。
「パチッ……バチバチッ」
嘘と真実が混ざる。
そして、ビケが目を開ける。
ビケ(今だ)
ビケ「《ゲル》」
ゴロソウジャは、目を見開く。
ゴロソウジャ「クソがぁぁ!!!」
ビケの手からは、黒色の光が放たれる。そして、ゴロソウジャを包み込んだ。そして、真実と嘘が一斉に暴れ出す。
ビケ「詰んだのは、お前だ」
その黒い光は、ゴロソウジャを巻き込み、爆発した。黒い霧が晴れると、消えてゆくゴロソウジャが居た。
ゴロソウジャ「お前…よくも……」
ビケ「どんな言葉でも、いつかは消える。お前には、その時が来たんだ」
ゴロソウジャ「…神の嘘でも、消えると思うか…」
ビケ「消えるだろうね。嘘は信じられるけど、真実には敵わないから」
ゴロソウジャは、ゆっくりと消えていった。
ビケ「…ガッ」
ビケにも、限界が来た。ビケは、そのまま倒れてしまった。
ビケ(クソ…何とか…何とか瓶縫医を…)
ビケは、コンクリートの上を這いつくばりながら、必死に瓶縫医の方へ向かう。
瓶縫医「…びけ…たおし…たか……」
ビケ「うん……」
瓶縫医「俺は…もうダメそうだ……」
瓶縫医の視界がぼやけ、どんどんと目も挟まってゆく。
そして、ビケは目に涙を浮かべる。
ビケ「俺が…死なせねえ……」
瓶縫医「ビケ…頼み事がある」
ビケ「?」
瓶縫医は、力を振り絞って言った。
瓶縫医「俺には…娘と息子が居る…だがぁ…息子は出産直後に誘拐されて……行方知らずだ…探してくれ……」
ビケ「分かった…」
瓶縫医「そして…俺の妻は…妻の中には…最凶の偽の眷属が居た…」
ビケ「!?」
瓶縫医「そいつが…娘の紗奈の中に…移った可能性があるんだ…詳しい説明…できなくて…すまないが……何かあったら……守ってくれ………」
ビケ「分かった…瓶縫医の怪我が治るまで、絶対に守る」
瓶縫医「ははは…そうだな……これは…怪我だ…」
瓶縫医は、大きな深呼吸をして、こう言った。
瓶縫医「頼むぞ。ビケ」
瓶縫医は、そう言って、目を閉じた…
ビケ「ぺぬ…い…」
ビケも、体内から嘘が漏れ、意識を失ってしまった……
ビケ「……!!」
ビケは、周りが白い壁で覆われた部屋のベットで、目を覚ました。その隣の椅子には、一人の真のお姉さんが座っていた。
真のお姉さん「ここは偽専用の治療部屋です。ビケさんみたいな事例があったので、作ってあったんです。」
ビケ「そうなのか…そう言えば!瓶縫医は!!!」
ビケは、ベットから飛び起きる。そして、真のお姉さんは首を横に振った。
真のお姉さん「手遅れでした。あの後、大きな音に気がついたボスが向かった頃には、もう瓶縫医さんは息を引き取っていました。」
ビケ「嘘だ!!それが本当なら、その真実を嘘に…」
真のお姉さん「ビケさん。言葉の力にも、限界はあります。生物の生死までは、変えることはできないのです。」
ビケの目から、ハイライトが消える。
ビケ(嘘だ……嘘だ。瓶縫医は真最強だ……)
その時、ビケはハッとする。
ビケ「そうだ…託されたんだったな…」
ビケはベットから降り、涙目にながら独り言を言った。
ビケ「紗奈の護衛、そして、瓶縫医の息子の捜索を、俺は任されたんだ」
時は、現在に戻る。
ビケ「そこから、事情を雷蔵にも話した…そして、俺は今ここに居る。紗奈を守るために……」
ビケは、椅子に座りながらそう言って、ゾキョウは頷く。
ゾキョウ「なるほど。お前がここに居る理由は分かった…そして、元最強の偽達も、最凶の偽を解放しようとしていた事…」
ゾキョウは、椅子からゆっくりと立ち上がる。
ゾキョウ「よし。もういっか。申し訳ないけど、君は紗奈…眷属を守ろうとする。死んでもらうよ」
動かないビケの目の前で、ゾキョウはノートをひらつかせながら、そう言った…
次回予告
ゾキョウ「死んでもらうよ?」
動けないビケ。もうなすすべはなし
ビケ「…教頭先生よぉ〜……ちょっと爪が甘かったんじゃないか??」
時は、6日前に遡る。そして…
ビケ「……なんか、変だな」
「偽」第6話は続く…




