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諸君!これがプロである!!~ゲーム実況者の日常~  作者: 椋木美都
中学一年生編

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 第69話『いつメンばかりのほっこり二次会 後編』

春の山を登り切った先に広がっていたのは――視界を覆い尽くすほどに緑が生い茂る、巨大ジャングルのような山域だった。


「雨降ると滑りやすくなるから気をつけて!」


「うわ。土の部分踏んだらちょっと沈む!」


「霧の色おかしいだろ!虹色!?」


夏バイオームでは頻繁に激しい雨に見舞われる。さらに時折立ち込める虹色の霧が視界を遮り、先の見通しを極端に悪くしていた。


「テディ。この先どう行くのが正解?」


「俺こっちの蔦つたって行くからー。ヒルトあっちの蔦に飛び移ってみてよ」


「あっち……?やべぇミッションインポッシブル!ちゃんと見て?ミスって落ちたら即死なんだが」


「いけるいける!」


「こんな距離でミスる奴おりゅ?」


「えんり、ばたえる。ヒルト本当に行っちゃうから」


「テディが始めた物語だろ」


このエリアでは木々に絡みつく蔦が各所に張り巡らされており、上手く利用すれば一気に高度を稼ぐことができる。


「最悪!毒喰らった!ホットさん助けて!」


「サムろうさん大丈夫ですか?俺、救急キットありますよ!使います?」


「キャーイケメン!助かるー。やっぱ棘ある蔦は無理か」


ただ中には鋭い茨が混じっているものもあり、触れればダメージと同時に毒を受けてしまう。


「あぁーー!」


「りょくおー!?どないしてん!」


「タングステン。その手に持ってるキノコ有毒」


「らむた。今はりょくおーな。大丈夫まだ食ってない……もっさーごめん。SNSに配信したって投稿すんの忘れた!」


「おい」

「今更!?」

「もう始まって三十分経っとる!」


「ヤベ。まくれなにも聞こえてたか……」


「キミ何年目?そんなんでやっていけんのかって!」


「毒キノコ食ったんじゃなかったのかよ」


また、春の山に比べて食料となる植物の見極めはさらに難しくなっている。


一見して食べられそうな果実やキノコの中にも有害なものが多く紛れており、誤って口にすれば毒のダメージを負ってしまう。


「わぁーっ!?落ちる落ちるヘルプー!」


「けや!さんロープ垂らしました!早く掴んで!」


「タンドリーさんっ……!今俺のこと呼び捨てで呼ん(一生ついていきます!)だ?」


「けやさんルビ逆です」


――危ね。レゾクラIDで呼んだままだった……。


けやとサムろうは個人実況者でありながら、らむらすのゲーム仲間であり常連のコラボ相手でもある。加えて彼が運営するレゾクラ企画では、デバッグや進行サポートを好意で引き受けることも多かった。


『忍兵鬼ごっこ』(第18話参照)においても二人は裏方として参加しており、声や姿を表に出すことはなかったが、確かにその場にいた存在である。


当然かつての参加者であるタンドリーも、この二人のことは一方的に知っている。だが実際に通話で言葉を交わすのは今日が初めてだった。


――らむらすは最初の会話で呼び捨てでいいって言われたから問題なかったけど……こうなるなら裏でも全員さん付けで呼んどきゃよかった。


気を抜けば彼等のレゾクラIDである『keyaaaaa』と『SUMrou』という呼び方が、つい口をついて出そうになる。


なお、らむらすのコラボ相手――通称『らむらすランチ』にはらむらす、けや、サムろうの他にもう一人存在する。その人物が姿を現すのは、また別の機会になるだろう。


「腹減ったなぁー」


「ヒルト。俺……ってバナナ食っとるやんけ。食いもんあるんかい」


「あ。もさ彦さん。すいやせん」


登山に慣れてきたロクラメンはコラボを楽しむために別々に動き、他の実況者に付いていった。その直後――


「ケテ……タスケテ……」


「あれ!?何かしれっと気絶してる!」


「ばたえるさん大丈夫ですかー!?」


――ばたえるがテディとけやのすぐそばで倒れた。毒りんごを口にしたことで気絶したらしい。


カプットではプレイヤーが一定量のダメージを受けると気絶し、味方に回復処置を施されるまで動けなくなる。味方は救急キットを使って直接起こすことができるが、キットを持っていない場合は気絶者を背負って自分の位置まで運ぶことも可能だ。


「りんごは毒あるって言ったじゃん」


「赤りんご持ってそう言ってたから……青りんごならセーフかと思って」


「ホットー。回復あるー?」


「え!けやさんごめんなさい。さっきサムろうさんに使っちゃった」


「おーいー。誰かー。回復プリーズ」


半数が負傷し、アイテムも枯渇しかけていたが――それでも全員無事に夏の山を踏破した。


「はぁ……危ねー」


「何とか来れたー」


チェックポイントにはナップザックと設営済みのテントが設置されており、そこに入ることでプレイヤーは怪我や状態異常を回復できる。


そして夏の山を越えた先に広がるのは、赤や橙に染まった木々が連なる山域だった。


「ゲホゲホ……また花粉か!」


「風で余計舞ってるね……」


この山では不意に強い突風が吹き抜けることがあり、体勢を崩した瞬間にそのまま滑落へと繋がる危険性がある。さらに秋らしい気候で、日没も早まっていた。


「俺、今日はなんやかんやで生きれてるわ」


「前回こせゆ隊でやった時は結構酷かった……」


ヒルトともさ彦が一列に並んで登っていると――


『ばぁ』


「ギャー!」


「お化けー!」


――目の前にりょくおー、えんり、ホットの幽霊がふわりと現れた。


「ははははは!三人死んでんだけど!えんり何やってんの!」


「回復間に合わんかったか……」


気絶には制限時間があり、タイマーがゼロになるとプレイヤーは死亡状態となる。その場合、仲間がチェックポイントの蘇生地点へ到達するまでは、幽体化した状態で周囲を彷徨う仕様だった。幽体状態のプレイヤーは空を飛んでナップザックの位置を知らせたり、簡単なナビゲートを行ったりできるが――


『早くチね!』


『コッチが近道ダヨ……』


『一緒に行こうよォ……』


「駄目だコイツら。道連れのことしか考えてない悪霊になっちゃった」


「死んでも敵かよ」


――中には生存者を妨害する行動に出る者も存在する。


「三人は何で死んだ?」


「木の上にあるナップザック取ろうとしたら突風で落ちた……」


「紫色の花触ったら毒で死んだ……」


「まくれなにヤシの実ぶつけられて死んだ……」


「雑魚死三銃士?」


「全員死因バラバラで草」


ヒルトともさ彦が笑いながら近くを登っている組に広めていると――不意に幽体の体が薄くなった。


『……んぇ?俺消えそう』


「あ、もう?」


「先頭がチェックポイントまで登ったんか。はやっ」


「ヒルト!もっさーん!そっちどうですかー?」


いち早く登頂したテディとタンドリーは死者を復活させ、そのまま上から後続の支援に回る。


そして最後に待ち受けていたのは――全てを白に塗り潰した雪山だった。視界の端から端までが雪に覆われ、吹きつける冷気が絶え間なく体力を削っていく。


「寒っ。死ぬ……」


「タンドリー今俺のこと呼び捨てにするだけじゃ飽き足らず死ねって言った?」


「サムろうさんじゃないです。らむらすランチ呼び捨てに厳しすぎだろ」


足元は深い雪に取られ、わずかに体勢を崩したその瞬間――吹き荒れる吹雪が視界を奪う。


「ホット。俺のリュックからチョコクッキー取って」


「はい……あれ?ばたえるさん無いです」


「え――らむさん??その手に持ってるクッキーって」


「あーん!あむっんむぅバリバリ!クチャックチュッ……んまっんまっ」


「俺のクッキーがぁー!」


さらに寒さの影響で、空腹の進行も早い。冬山では採取できる食材がほとんど見当たらず、補給は困難を極めていた。


「ふざけんなコルァ!返せ!」

「ゔぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙――!」

「らむらすー!」

「鼓膜を破壊させてから死ぬな!」

「もうゴールまで復活できないよ!?」

「かわいそ」


極限状態の中、ときに仲間割れが起こり、死人が出ることもあった。


「あと少し!」

「皆!寒さ対策大丈夫?カイロいる人言って!」

「あそこテッペンじゃね!?」

「いけるか!?俺の手ぇ掴め!」

「おんどりゃあああああ!」

「皆頑張れ!」


それでも最後には、吹雪の中で互いに手を取り、支え合う。その果てに広がる光景は――


「山頂きたー!」


「やったー!」


「空めっちゃ綺麗!」


――あまりにも美しかった。


冬空には宝石のような星々が無数に輝き、その上を巨大なオーロラが幾重にも流れていく。淡く揺れる光が、本作の目的である幻の木の実を幻想的に染め上げていた。


「ナイスナイス!」


「あれあれあれぇー?ホット泣いてるぅー?」


「ななな泣いてないっすよ?」


「テディは泣いてるぞ!」


「皆ぁ……おめでとう……!」


「優勝した時にそれ見せろよ」


「タンドリーももらい泣きしろ!」


「今ちょー号泣してます」


「嘘つけ!」


「――皆!登頂お疲れ!」


主にロクラメンがこれプロをいじり倒す中、復活したらむらすが満面の笑みで締めに入ろうとする。


「ん?」


「あれ?」


「らむた最後足あった?」


「最後……一人だけ楽して飛んでた奴おったな」


「ッスーー。何で俺だけ幽霊なんだよ!」


「「あはははははは!」」


こうして二時間に及ぶ十二人の登山は、無事に終わりを迎えたのだった。

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