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諸君!これがプロである!!~ゲーム実況者の日常~  作者: 椋木美都
中学一年生編

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 第66話『初めましての殴り合い二次会 前編』

九人の活動者が好き勝手喋っています。フィーリングでどうぞ。

熱戦ウェルテックス祭の翌日。


「うぅ……ごめん先約だ……」


早朝に連絡を受けたテディは断腸の思いで、その後にある人物から来た誘いをリスケした。


そして時刻は二十時。プロゲーミングチーム『Quirk(クワーク) Hematite(ヘマタイト)』、女性ブイチューバーグループ『ユニオンストリーム』、ゲーム実況グループ『諸君!これがプロである!!』の三組が集結し、豪華メンバーによる二次会生配信が幕を開けた。


「――いやー。『熱戦ウェルテックス祭』お疲れ様でした」


「今日は無礼講の二次会ということで……」


「さがんは誰に対しても無礼講でしょ」


「ちょ、海女ちゃんうるさい」


「イントネーション違う!海女じゃなくて天邪鬼の天!」


「その表現でいいんだ……それではやってきましょう!ソロマッチ優勝した三人がいるチームで――『ワイルドアニモーズ』ー!!」


「「よいしょーー!!」」


『ワイルドアニモーズ』とは、物理演算によるふにゃふにゃとした挙動を特徴とする乱闘アクションゲームである。


プレイヤーはデフォルメされた二頭身キャラクターを操作し、パンチやキック、掴み投げといった素手格闘を駆使して相手を場外へと叩き落とす。


バトルロイヤルモードでは最後の一人、チーム対抗モードでは最後の一チームまで生き残れば勝利となる。


ステージごとに用意された多彩なギミックが戦況を大きく左右し、特殊アイテムによって戦場が一変することもあるのが特徴。


今回は寺岸神流(てらぎしかんな)の呼びかけにより、ウェルテックス祭ソロバトルロイヤルの優勝者とそのチームメイトが集結した。


これプロの三人に加え、QHのさがん、ギバ、ファイヴi、そしてユニオンストリームから歌観月天(うたみづきあま)、寺岸神流、万世(ばんせ)かくりの計九名が参加している。


テディはゲームホスト――試合のルール設定などを決める管理人の役割を引き受け、初戦はウェルテックス祭と同じメンバーでのチーム戦とした。


初戦は洋風の家の玄関ポーチを舞台としたステージ。前方と左右に口を開ける落下ポイントへ足を踏み外せば、そのまま脱落となる。


「――今日俺の配信のタイトル名『憂さ晴らし二次会』だから」


背後には見上げるほどの巨大な玄関扉。まるで自分たちが縮んでしまったかのような空間で、足元にはタイルの床が広がっている。そこへ全員が転送され、最初にさがんが口を開いた。


「ヤバ」


「えっ……あはは!マジじゃないですか」


「まず最初のターゲットは――」


画面に『Ready Fight‼』の表示が出た瞬間、さがんはライトブルーの髪色と同系統の瞳をギラつかせる。


「――決まってるよなぁ!これプロォォォ!」


「わー!ゴリラが来たー!」


開始直後、彼はチーム分けで黄色のゼッケンをつけたテディに襲いかかった。QHのゼッケンは水色で、ユニオンストリームは赤色である。


「オラオラオラ!」

「このっ!」

「離せ!」

「待ってキックどうやんの!」

「操作性忘れた!」

「助けてーー!」

「喰らえっ!」

「やめてーー!」


各所で大乱闘が勃発し、誰もが一斉に声を上げる。そして最初の脱落者は――


「嫌だ来ないでっ……うわぁーー!」


――さがんから逃げた末、まっすぐ落下したホットだった。


「おい早えーよ!」


「さがんさんの粘着ヤバすぎ!」


「テディ!ヘッドバットってどれ?」


「耳穴拡張して聞いてねって……言ったよーー!」


『ゴチンッ!』


「ぐわーー!」


そして説明を聞き忘れていたファイヴiが頭突きのやり方を聞いた瞬間――テディは勢いよくヘッドバットをかまし、そのまま場外へ放り投げた。


「お覚悟っ……えぇーー!?」


「何やってんだ」


ステージの左端では、神流がタンドリーへ飛び蹴りを仕掛ける。しかし難なく躱され、その勢いのまま自らが画面外へフェードアウトしていった。


――飛び蹴りってのはこうだろ!


「ッラァ!」


『ドガッ!』


「ぎえっ!」


「タンドリーナイス!」


テディとさがんがバチボコに拳を交える最中、タンドリーが飛び蹴りで割り込み――さがんを場外ぎりぎりまで吹き飛ばした。


「早く落ちなっ!」


『ゴスッ』


「ヴァーー!海女ァーー!」


「ワシの名は歌観月天じゃコラァ!」


「えぇ?ギバいつダウンした?」


「止まれなくて勝手に落ちた……」


天はその隙を逃さず、さがんを殴りつけて場外へ突き落とす。一方ギバはさがんとテディの乱闘に巻き込まれ、ひっそりと脱落していた。


「調子乗るなよ新人……じゃなくて新ニワトリ!活動歴を言いなさい!」


「――喰らえ!一ヶ月パーンチ!」


『バキッ!』


「ァーーーー!」


天は次なる標的をタンドリーに定めて突撃するも、活動歴五年の彼女は一か月のパンチに易々とぶっ飛ばされてしまう。


「くっ……!」


「おぉ!」


だがここで五年の意地を見せる。飛ばされた先にいたテディを掴み――


「えっ僕までーー!?」


「なにぃ!?」


「テディー!」


「天ナイス!」


「ナイス道連れ!」


――そのまま彼ごと場外へ落ちていった。


「……ん?もう俺だけ?」


「いや……」


「ふっふっふ……ついに雌雄を決する時が来ましたか!」


「どこに……は?」


あっという間に残るはタンドリーと――開始直後からせっせと玄関扉によじ登り、上方から戦いを見下ろしていたかくりの二人だけが残った。


「やっと言えるわ。お前何してんの」


「来ましたか!じゃねーよ。やかましいな」


「一人だけクライミングゲームやってる」


「お黙り!勝つ為には何してもよかろう!ビリチームはかくりで学びなはれ!」


QHとユニオンストリームは数年前から大会を通じて交流がある。外見は可愛らしい少女だが、実は鏡の付喪神(つくもがみ)であるかくりに対してもQHは容赦なくツッコミを入れていた。一方で、彼女もまた彼らに遠慮なく言葉をぶつけていたが。


「……次はこれプロより先にユニ(オン)スト(リーム)やるぞ」


「よーし」


「まずはかくり了解」


「おいっ!」


「かくり頑張って!」


「いけいけー!」


タンドリーは先輩たちが発言している間に音もなくよじ登り、素早く彼女の隣に並んだ。


「あはは。タンドリー登るの早っ」


「早すぎて虫」


――まっずい。このままじゃタンドリーさんと一騎打ちに……って虫?


「……シャーシャーシャーシャーシャー!セミです!このかくりは敵じゃなくてセミです!」


「何だセミか……って馬鹿!」


テディとホットの軽口に触発され、かくりは最後の悪あがきを試みたが――当然タンドリーにツッコまれた。


「あれっ。僕の知り合いのクマゼミにそっくり」


「テディまでボケんな」


「蝉うるさっ」


「あははは……!かくり上手いんだけど!」


「かわいい!」


「可愛い??」


かくりのクマゼミの鳴き真似を純粋に称賛する天と神流。その光景に、さがんは思わず真顔になった。そして画面では――


「……ンミーンミンミンミンミー!!」


「「タンドリー!?」」


「王道だー!」


「これこれぇ!」


――かくりの隣でタンドリーがミンミンゼミの鳴き真似を始め、ギバとファイヴiが歓声を上げる。


『何だこの状況』『戦えw』『どうしたタンドリー!?』『何で二人共地味に上手いの?』


コメント欄すらざわつく中、現場はもはや収拾不能のカオスと化していた。


「はぁ……もうなにこれ……死ぬ……!」


「ホット笑わないで……!またツボ入っちゃふふふふふ!」


「これプロはいつまで笑ってんだ」


「ねぇちょっと待って戦う!戦うから……!」


『ワイルドアニモーズ』では、時間経過に応じてランダムな武器アイテムがステージへ出現する。


床に降りたかくりは運よくカラーボールのようなアイテムを拾いあげ、そのままタンドリーへと投げつけようとした。


「ヒヨっ子は卵の中にお(かえ)りたもう!」


「どっちですか」


「帰れって言ってるんですよぉー!あっ手が滑った!?」


「多分それ……」


プレイ経験があるファイヴiがかくりの持っているアイテムを説明しようとしたその時、かくりの体が七色に光った。


「眩しっ」


「えー何ですかこれっ!最強タイム!?これでかくりもタンドリーさんと肩並べられる……」


『ドゴッ!』


「へぶーー!?」


ゲーミング状態に突入したかくりは鼻息荒く反撃に出るも――タンドリーのボディーブロー一発であっけなく気絶してしまった。


「それただの発光ボールっすね。投げた範囲にいるキャラが光るやつ」


「使っても目立つだけでステータスの変化は特にないよー」


「無いんかよ!」


かくりがギバとテディの補足にツッコミを入れている隙に、タンドリーは間合いを詰め続ける。


「勝ちたい!アタシ勝ちたいんですわ!」


「舐めプしてると思われるだろ……いい加減さよならだ!」


身体の半分ほどもあるピコピコハンマーを拾い上げた彼は、ためらいなく振り抜く。


「イヤァーーー!」


「「かくりーー!」」


乾いた音とともに、かくりの体はあっけなく画面外へと弾き飛ばされた。


「タンドリーつえぇ」


「万世の攻撃全然当たってなかった」


「でしょう!これがウチのタンドリーなんですよ!」


「ドヤ顔やめろ」


一戦目はこれプロが勝利。だが余韻に浸る間もなく、メンバーは次なるステージへと転送された。

それぞれの呼ばれ方

テディ……全員同じ。

ホット:天・神流・かくり……ホットさん。それ以外……ホット。

タンドリー:天・神流・かくり……タンドリーさん。それ以外……タンドリー。

さがん:ホット・タンドリー……さがんさん。神流・かくり……さがさん。それ以外……さがん。

ギバ:ホット・タンドリー・神流・かくり……ギバさん。それ以外……ギバ。

ファイヴi:ホット・タンドリー……ファイブiさん。天・神流・かくり……イヴさん。さがん・ギバ……イヴ。テディ……ファイヴi。

歌観月天:ホット・タンドリー……天さん。テディ……歌観月さん。さがん・ギバ・ファイブi……天ちゃん。神流・かくり……天

寺岸神流:これプロ……寺岸さん。QH……寺岸or神流。天・かくり……神流

万世かくり:これプロ……万世さん、orかくりさん。QH……万世orかくり。天・神流……かくり

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